腹部・骨盤の動脈の供給と静脈の帰還

本文の目次

  1. 腹部の動脈の枝と静脈の帰還を分ける
  2. 腹腔幹から三つの主要な枝へ
  3. 胃の小弯と大弯の動脈を区別する
  4. 総肝・胃十二指腸・固有肝の連続
  5. 脾動脈の枝と膵の位置をつなぐ
  6. 上腸間膜動脈は後方の起点から前方へ出る
  7. 上腸間膜の腸枝と結腸枝
  8. 膵十二指腸の上下の動脈系がつながる
  9. 下腸間膜動脈から左結腸・S状・上直腸へ
  10. 結腸辺縁の連絡と枝の起点
  11. 腸間膜静脈は帰還先を追う
  12. 胃の静脈と肝への二つの流入
  13. 下大静脈の形成と腸骨の前後
  14. 腎・性腺と副腎の入口と出口
  15. 内腸骨動脈の後方と前方の枝
  16. 壁と会陰へ向かう骨盤の通路
  17. 骨盤臓器の枝と直腸の二系統
  18. 骨盤の静脈叢と腹壁の帰還

1. 腹部の動脈の枝と静脈の帰還を分ける

腹部大動脈は後腹膜側で脊柱の前のやや左に、下大静脈は通常その右側に位置します。動脈では供給する枝を末梢へ追い、静脈では臓器からどこへ集まるかを追います。消化管などから門脈を通って肝へ向かう帰還と、下大静脈へ向かう体循環の帰還は同じ一本ではありません。腸骨から下肢への連続、腎の血液と尿、肝への流入と肝静脈の帰還は既存教材へつなぎます。

2. 腹腔幹から三つの主要な枝へ

腹腔幹は通常、腹部大動脈の前面側から出る短い幹で、左胃動脈、総肝動脈、脾動脈へ分かれます。胃、肝、脾などの上腹部の供給を、この起点から追います。三枝の出方や分かれる位置には変異があるため、全員が同じ長さの三分岐をもつとはしません。これらの動脈と、同じ臓器から戻る静脈を同名の一つの管にしません。

3. 胃の小弯と大弯の動脈を区別する

左胃動脈は噴門側から胃の小弯側へ続き、食道側の枝も出します。小弯の右側には通常の右胃動脈が関わり、その起始には違いがあります。大弯側では胃十二指腸動脈側から右胃大網動脈、脾動脈側から左胃大網動脈が向かいます。脾動脈の短胃動脈群は胃底側へ、後胃動脈はみられる場合の別の枝として分けます。小弯と大弯の道を入れ替えず、吻合の形を全員同じに固定しません。

4. 総肝・胃十二指腸・固有肝の連続

総肝動脈は通常右へ進み、胃十二指腸動脈を分けた後、固有肝動脈として肝門側へ続きます。胃十二指腸動脈は十二指腸の上部の後方側を下がり、右胃大網動脈や上膵十二指腸動脈側へ分かれます。固有肝動脈は通常左右の肝動脈側へ続き、胆嚢動脈は一般に右肝動脈側から出ますが変異があります。胆管・門脈・動脈の局所配置と肝静脈の帰還は既存の肝教材を参照し、分泌物の管と血管を混ぜません。

5. 脾動脈の枝と膵の位置をつなぐ

通常の脾動脈の膵上縁に沿う走行と、脾静脈の膵後方の帰還は既存教材で対応させます。動脈側からは膵への枝、短胃動脈群、左胃大網動脈などが分かれ、脾門へ向かいます。膵への枝は同じ太さの一定本数の管とはしません。膵の管の内腔へ動脈が直接入るわけではなく、胃や脾への供給と膵液の通路は別です。

腹腔幹の三枝と肝側

腹腔幹の三枝と肝側。実線矢印は動脈側の供給を起点から追う。三枝の出方や枝の位置は通常模型で、実寸・全変異の列挙ではない。脾動脈の膵上縁沿いの走行と静脈の膵後方の帰還は既存教材へつなぐ。
実線矢印は動脈側の供給を起点から追う。三枝の出方や枝の位置は通常模型で、実寸・全変異の列挙ではない。脾動脈の膵上縁沿いの走行と静脈の膵後方の帰還は既存教材へつなぐ。

6. 上腸間膜動脈は後方の起点から前方へ出る

上腸間膜動脈は通常、腹腔幹より下で腹部大動脈の前面側から出ます。膵頸部の後方側から下へ進み、左腎静脈と十二指腸の水平部の前側を通って腸間膜へ続く概略です。上腸間膜動静脈と膵鉤状突起の前後は既存の膵教材を参照します。同じ前という語でも、何を基準にした前後かを明らかにし、体表の投影と臓器の後方の起始を一つの点にしません。

7. 上腸間膜の腸枝と結腸枝

上腸間膜動脈の空腸動脈群・回腸動脈群は腸間膜内で弓状の吻合をつくり、そこから直動脈が腸壁へ向かいます。弓状のまとまりと、その先の直動脈を別に読みます。通常の結腸側には中結腸動脈、右結腸動脈、回結腸動脈が関わります。回結腸側は終末回腸・盲腸など、中結腸側は横行結腸の近位側へ供給します。右結腸動脈の独立した起始などには変異があり、全員同じ枝数や弓の段数ではありません。

上腸間膜の位置と腸枝

上腸間膜の位置と腸枝。上段は構造の前後関係の要約で、上の箱から下の箱へ静脈や腸の内容が流れる図ではない。下段の実線矢印は腸枝から弓状吻合、直動脈、腸壁への供給。全枝数や実際の弓の形は未表示。
上段は構造の前後関係の要約で、上の箱から下の箱へ静脈や腸の内容が流れる図ではない。下段の実線矢印は腸枝から弓状吻合、直動脈、腸壁への供給。全枝数や実際の弓の形は未表示。

8. 膵十二指腸の上下の動脈系がつながる

通常、上膵十二指腸動脈側は胃十二指腸動脈を通じ腹腔幹側へ、下膵十二指腸動脈側は上腸間膜動脈側へつながります。膵頭部と十二指腸の周囲に前後の吻合があり、二つの起点からの供給を位置で対応させます。この連絡を、静脈の門脈合流や主膵管の合流に置き換えません。吻合があることだけから、どの流れでも常に代償できるといった臨床の結論は出しません。

胃の大弯と膵十二指腸

胃の大弯と膵十二指腸。上段は胃大弯への通常の二経路。下段は膵頭・十二指腸周囲の別の動脈系の連絡で、同じ臓器の位置に重ねた断面ではない。実線矢印は起点からの供給、破線は吻合を示し、どの状況でも同じ流量とはしない。
上段は胃大弯への通常の二経路。下段は膵頭・十二指腸周囲の別の動脈系の連絡で、同じ臓器の位置に重ねた断面ではない。実線矢印は起点からの供給、破線は吻合を示し、どの状況でも同じ流量とはしない。

9. 下腸間膜動脈から左結腸・S状・上直腸へ

下腸間膜動脈は腹部大動脈の前面側から出て、通常、左結腸動脈、S状結腸動脈群、上直腸動脈側へ分かれます。遠位の横行結腸側から下行・S状結腸、直腸の上部側という供給のまとまりです。横行結腸の近位と遠位の分け方は概略で、全員の境目を一点に固定しません。上直腸動脈はこの動脈の続きとして骨盤へ下がり、内腸骨動脈からの中直腸側や内陰部動脈からの下直腸側と分けます。

10. 結腸辺縁の連絡と枝の起点

結腸の腸間膜側の辺縁に沿う動脈の連絡は、上腸間膜系の結腸枝と下腸間膜系の結腸枝の吻合として読みます。辺縁動脈という名前は、結腸の全長に一本の同じ径の枝が必ず連続するという保証ではありません。起点の別の動脈系と、末梢の連絡を区別し、全微小枝やすべての副路をこの模式だけで完成させません。

上・下腸間膜の供給域

上・下腸間膜の供給域。分枝群をまとめて表示した供給の見取り。各群の全枝が同一の共通幹から出るという図ではない。近位・遠位の境目や辺縁の連続性を固定せず、直腸の中・下部側の別系統は本文と後の図で区別する。
分枝群をまとめて表示した供給の見取り。各群の全枝が同一の共通幹から出るという図ではない。近位・遠位の境目や辺縁の連続性を固定せず、直腸の中・下部側の別系統は本文と後の図で区別する。

11. 腸間膜静脈は帰還先を追う

上腸間膜静脈は通常、上腸間膜動脈の右側を上がり、小腸や近位側の結腸などから血液を集めます。脾静脈との通常の合流と膵頸部の関係は既存の問題へつなぎます。下腸間膜静脈は下行・S状結腸と上直腸側などから集め、通常は脾静脈側へ注ぎますが、上腸間膜静脈側や合流部へ向かう型もあります。動脈の起始と同じ名称の静脈が必ず一対一で同じ場所へ合流するとはしません。

12. 胃の静脈と肝への二つの流入

胃の左右の胃静脈は通常、門脈側へ戻ります。右胃大網静脈は上腸間膜静脈側へ、左胃大網静脈や短胃静脈群は脾静脈側へ集まる通常の経路です。門脈と肝動脈から肝へ入る血液は肝内の経路を経て、肝静脈から下大静脈へ戻ります。左右の胃動脈と同じ名前の静脈でも、供給する起点を静脈の出口として読むことはできません。肝内の血液と胆汁の機能は既存教材を参照します。

門脈側へ集まる静脈

門脈側へ集まる静脈。Vと矢印は静脈の帰還。右・左の胃大網側の通常の合流先を分け、門脈から肝へ入り肝静脈から下大静脈へ続く。下腸間膜静脈の脾静脈への矢印は通常型で、上腸間膜側や合流部へ注ぐ変異を否定しない。紙面の左右は体の左右の実寸ではない。
Vと矢印は静脈の帰還。右・左の胃大網側の通常の合流先を分け、門脈から肝へ入り肝静脈から下大静脈へ続く。下腸間膜静脈の脾静脈への矢印は通常型で、上腸間膜側や合流部へ注ぐ変異を否定しない。紙面の左右は体の左右の実寸ではない。

13. 下大静脈の形成と腸骨の前後

下大静脈は通常、左右の総腸骨静脈が集まって、腹部大動脈の右側を上がります。左総腸骨静脈は右へ向かう途中で、右総腸骨動脈の後方側を通る通常の位置です。左右を完全な鏡像の配置にしません。内外腸骨静脈からの形成や下肢からの帰還は既存教材を参照します。静脈の合流を動脈の分岐と同じ矢印にせず、通路が近いだけで血管の内腔をつなぎません。

14. 腎・性腺と副腎の入口と出口

腎動静脈と性腺血管の通常の入口・左右の静脈出口は既存教材へつなぎます。左腎静脈が大動脈の前を横切ること、右腎動脈が下大静脈の後方側を通ることも通常の位置関係として区別します。副腎への動脈は一般に、下横隔動脈側から上副腎動脈群、大動脈側から中副腎動脈、腎動脈側から下副腎動脈という複数の入口です。主な副腎静脈は通常、右は下大静脈へ、左は左腎静脈側へ戻り、動脈の複数の入口と一対一で同じ枝数にはしません。

腸骨の前後と副腎の出口

腸骨の前後と副腎の出口。上段は右総腸骨動脈の後方を左総腸骨静脈が通る通常の位置で、血液が動脈から静脈へ直接入る図ではない。下段は副腎の主な静脈出口の左右差。上・中・下副腎動脈の複数入口の図とは別に読む。
上段は右総腸骨動脈の後方を左総腸骨静脈が通る通常の位置で、血液が動脈から静脈へ直接入る図ではない。下段は副腎の主な静脈出口の左右差。上・中・下副腎動脈の複数入口の図とは別に読む。

15. 内腸骨動脈の後方と前方の枝

内腸骨動脈の通常の後枝側には腸腰動脈、外側仙骨動脈群、上殿動脈が関わります。前枝側には臓器へ向かう枝と、閉鎖動脈・下殿動脈・内陰部動脈などの壁や会陰へ向かう枝が関わります。出る順番や共通幹には変異があるため、すべてが同じ二段の木になるとはしません。正中仙骨動脈は通常、大動脈の終末近くの後面側から出る細い枝として別にし、内腸骨の全枝の親とはしません。

16. 壁と会陰へ向かう骨盤の通路

上殿動脈は通常、大坐骨孔の梨状筋の上側から殿部へ、下殿動脈は下側から殿部へ向かいます。内陰部動脈は大坐骨孔から出て坐骨棘付近を回り、小坐骨孔を経て陰部管側へ続く主要経路です。閉鎖動脈は閉鎖管を通る道として分けます。隣接する神経や筋の既存教材を参照し、同じ通路に伴う動脈・静脈・神経を同じ一本の構造へ置き換えません。

内腸骨の枝と骨盤の通路

内腸骨の枝と骨盤の通路。通常の後枝と前枝のまとまりを分けた概略で、群の全枝が同じ共通幹から出ると断定しない。下段の文字の矢印は内陰部動脈の主要な通路の順で、隣接する神経や筋の内腔へ入る図ではない。
通常の後枝と前枝のまとまりを分けた概略で、群の全枝が同じ共通幹から出ると断定しない。下段の文字の矢印は内陰部動脈の主要な通路の順で、隣接する神経や筋の内腔へ入る図ではない。

17. 骨盤臓器の枝と直腸の二系統

成人の臍動脈は近位の開いた部分から上膀胱動脈側へつながり、閉じた遠位の部分が内側臍索として残る通常の区別です。下膀胱動脈側、子宮・腟の動脈側、精管への枝などは臓器の型と変異を分けます。子宮動脈と尿管の局所交差は既存教材へつなぎます。上直腸側の主な静脈経路は下腸間膜静脈を経て門脈側へ、中・下直腸側の主な経路は骨盤の静脈を経て内腸骨静脈側へ戻ります。相互の連絡があるので、上下で血液が全く交通しない分離ではありません。

18. 骨盤の静脈叢と腹壁の帰還

膀胱・前立腺・子宮・腟の周囲などの静脈叢は、複数の静脈が連絡して内腸骨静脈側へ戻る通常のまとまりです。各臓器の動脈の分岐図と同じ枝数の木ではなく、細かな交通や個体差は別段階です。腹壁の腰静脈には下大静脈へ戻る経路と、上行腰静脈から奇静脈・半奇静脈系へ続く経路があります。下横隔・副腎・性腺の静脈や壁の細枝の全型を同一の模型へ押し込めず、主要な供給と帰還を別に追います。

成人の臍動脈と直腸帰還

成人の臍動脈と直腸帰還。上段は成人の動脈の近位の開いた道と遠位の索の区別。下段は主な直腸静脈の門脈系・体循環系の帰還を分け、破線で相互の交通を示す。上下の段は別の構造で、臍動脈と直腸静脈の間を直接つなぐ図ではない。
上段は成人の動脈の近位の開いた道と遠位の索の区別。下段は主な直腸静脈の門脈系・体循環系の帰還を分け、破線で相互の交通を示す。上下の段は別の構造で、臍動脈と直腸静脈の間を直接つなぐ図ではない。

用語を確かめる

腹腔幹
腹部大動脈の前面側から出る通常の短い動脈幹。
左胃動脈
腹腔幹側から胃の小弯側へ向かう通常の枝。
総肝動脈
腹腔幹から肝・胃十二指腸側へ続く通常の動脈。
固有肝動脈
総肝動脈が胃十二指腸動脈を分けた後、肝門側へ続く通常の動脈。
胃十二指腸動脈
総肝動脈側から十二指腸上部の後方を下がる通常の動脈。
右胃大網動脈
通常、胃十二指腸動脈側から胃の大弯へ向かう枝。
左胃大網動脈
通常、脾動脈側から胃の大弯へ向かう枝。
短胃動脈群
脾動脈側から胃底側へ向かう通常の枝のまとまり。
上腸間膜動脈
腹部大動脈から小腸・近位側の結腸などへ供給する動脈。
空腸動脈群
上腸間膜動脈から空腸へ向かう枝のまとまり。
回腸動脈群
上腸間膜動脈から回腸へ向かう枝のまとまり。
弓状吻合
腸間膜内などで動脈同士が弓状につながる関係。
直動脈
腸間膜の弓状吻合側から腸壁へ向かう直線状の枝。
中結腸動脈
通常、上腸間膜動脈側から横行結腸の近位側へ向かう枝。
右結腸動脈
右側の結腸へ向かう動脈。起始や独立枝の有無には変異がある。
回結腸動脈
通常、上腸間膜動脈側から終末回腸・盲腸などへ向かう枝。
上膵十二指腸動脈
通常、胃十二指腸動脈側から膵頭・十二指腸周囲へ続く枝。
下膵十二指腸動脈
通常、上腸間膜動脈側から膵頭・十二指腸周囲へ続く枝。
下腸間膜動脈
遠位側の結腸・上直腸側などへ供給する腹部大動脈の枝。
左結腸動脈
通常、下腸間膜動脈側から左側の結腸へ向かう枝。
S状結腸動脈群
通常、下腸間膜動脈側からS状結腸へ向かう枝のまとまり。
上直腸動脈
通常、下腸間膜動脈の続きとして直腸上部側へ向かう動脈。
結腸辺縁動脈
結腸の腸間膜側の辺縁に沿う動脈の連絡。全員同じ連続性ではない。
上腸間膜静脈
小腸や近位側の結腸などから門脈合流側へ戻る静脈。
下腸間膜静脈
遠位側の結腸・上直腸側などから、通常は脾静脈側へ戻る静脈。合流には変異がある。
胃大網静脈
胃の大弯側から戻る静脈。通常の右と左で合流側が違う。
総腸骨静脈
内外腸骨静脈が集まり、左右が下大静脈形成側へ続く静脈。
上副腎動脈群
通常、下横隔動脈側から副腎へ向かう枝のまとまり。
中副腎動脈
通常、大動脈側から副腎へ向かう動脈。
下副腎動脈
通常、腎動脈側から副腎へ向かう動脈。
内腸骨動脈後枝
通常、腸腰・外側仙骨・上殿などの枝へ続く側。
腸腰動脈
通常、内腸骨動脈後枝側から腸骨・腰側へ向かう枝。
内陰部動脈
骨盤から会陰側へ、坐骨孔と陰部管側を通る通常の動脈。
内側臍索
成人で臍動脈の閉じた遠位部が残る索。近位の開いた部分とは区別する。
静脈叢
複数の静脈が網状に連絡するまとまり。
上行腰静脈
腰部から上がり、奇静脈・半奇静脈系へ続く静脈の経路。