脳の深部・髄膜・脳室と脊髄下端の位置関係

本文の目次

  1. 深部の核と白質を位置で分ける
  2. 内包の前脚・膝・後脚
  3. 頭蓋硬膜の二層と脊髄の硬膜
  4. 大脳鎌と小脳テント
  5. 静脈洞とくも膜下腔は別のすき間
  6. 側脳室の角と体
  7. 第三脳室から中脳水道へ
  8. 第四脳室の底と出口
  9. 脳槽はくも膜下腔の広がり
  10. 脊髄円錐と硬膜嚢の終わり
  11. 終糸は神経根の束ではない
  12. 根糸から神経根、脊髄神経へ
  13. 前根・後根と前枝・後枝を区別する
  14. 頸神経の番号と椎骨の出口

1. 深部の核と白質を位置で分ける

大脳の深部には灰白質の核があり、その間を白質が通ります。レンズ核は外側の被殻と内側の淡蒼球を合わせた区分です。尾状核や視床を、すべてレンズ核に含めるわけではありません。脳梁は左右の大脳半球を結ぶ白質で、前方から吻・膝・体・膨大に区分して位置を読みます。硬膜のひだである大脳鎌とは別の構造です。

2. 内包の前脚・膝・後脚

内包は大脳深部の白質です。前脚は尾状核頭とレンズ核の間、後脚は視床とレンズ核の間にあります。二つの脚が曲がってつながる部分が内包膝です。前と後の局所を分けて眺めると、内側に接する構造が尾状核頭から視床へ変わることがわかります。核の名称と内包の区分を同じものにしないで位置を対応させます。

内包の前脚・後脚と隣の核

右半球の内側を画面左、外側を画面右として広げた二つの独立した局所位置図。前の局所では尾状核頭とレンズ核の間に内包前脚、後の局所では視床とレンズ核の間に内包後脚を置く。レンズ核の内側の淡蒼球と外側の被殻を直接名付ける。二段を同じ一断面の投影や寸法として扱わず、内包膝・線維の全経路は描かない。
前と後の局所を分けると、内包の内側に接する核が変わります。二段は別の位置関係を広げた図です。

3. 頭蓋硬膜の二層と脊髄の硬膜

頭蓋内では、骨の内面に沿う骨膜層と、その内側の髄膜層が硬膜をつくります。大部分では二層が重なっています。髄膜層は内側へ折り返して硬膜のひだをつくり、大後頭孔を通って脊髄硬膜へ続きます。脊髄硬膜は筒状に神経組織を囲み、椎管の壁との間には脂肪や静脈叢を含む通常の硬膜外腔があります。頭蓋と椎管の膜の接し方を一律に扱わないことが大切です。

4. 大脳鎌と小脳テント

大脳鎌は大脳縦裂に入る、ほぼ縦向きの硬膜のひだです。小脳テントは大脳後頭葉と小脳の間に張る棚のようなひだです。小脳テントの前内側にはテント切痕があり、そこを脳幹が通ります。大脳鎌と小脳テントは向きも隔てる部位も異なり、脳の実質を左右につなぐ脳梁とも区別します。

5. 静脈洞とくも膜下腔は別のすき間

硬膜静脈洞は硬膜の葉の間にある静脈血の通路で、周囲を硬膜が囲み、支持します。頭蓋骨に沿う洞は骨膜層と髄膜層の間、硬膜のひだに沿う洞はその葉の間にあります。その内側にあるくも膜と軟膜の間はくも膜下腔で、脳脊髄液や血管、くも膜小柱を含みます。両者は連絡に関わる構造をもっていても、一つの大きな腔ではありません。どの膜の間にある空間かを確かめます。

硬膜の二層・大脳鎌・小脳テント

上段は頭蓋骨側から骨膜層、両層の離れる静脈洞、髄膜層、くも膜、くも膜下腔、軟膜を順に置いた局所模式。静脈洞をくも膜下腔へ接続する管として描かない。中段は左右半球の間の大脳鎌と、その下の別の白質である脳梁。下段は画面左が前、右が後の独立した前後位置模式で、後頭部側の大脳と小脳の間の小脳テント、前内側の開いた部分の脳幹を示す。精密な正中矢状断や全硬膜静脈洞の配置ではない。
上段は頭蓋骨に沿う静脈洞の局所です。鎌は縦、テントは棚状のひだです。下段は前後を読むために間隔を広げ、テント切痕を閉じた板にしません。

6. 側脳室の角と体

左右の側脳室は、それぞれ大脳内部でC字状に曲がった広がりをもちます。前角は前頭葉、体は主に頭頂葉、後角は後頭葉、下角は側頭葉の内部へ延びます。体・後角・下角が出会う広がりが側脳室三角部です。下角は後角の単なる真下の直管ではなく、側頭葉へ曲がって前方へ向かいます。個体によって広がり方は異なります。

7. 第三脳室から中脳水道へ

第三脳室は左右の間脳の間にあり、側壁の主要部分を視床と視床下部がつくります。中脳水道は第三脳室と第四脳室をつなぐ細い通路で、中脳の内部を通ります。水道の背側には中脳蓋、腹側には被蓋があります。側脳室から第三脳室への連絡と、その後に中脳内部を通る連絡を、同じ場所の穴として重ねないでたどります。

8. 第四脳室の底と出口

第四脳室は橋・上部延髄と小脳の間にあります。その底をつくるのは橋と上部延髄の背面です。第四脳室から外側のくも膜下腔へは、一つの正中口と左右一対の外側口が開きます。脳脊髄液の連続はこれらの開口を通して脳・脊髄の表面へ広がります。成人の脊髄中心管を、全長で広く開いた主な流路として描くことはできません。

9. 脳槽はくも膜下腔の広がり

脳の表面の凹凸に対し、くも膜はすべての溝の深部へ密着するわけではありません。くも膜と軟膜の間が局所で広がった部分を脳槽といいます。小脳と延髄の間の小脳延髄槽、橋の腹側にある橋槽などがあり、どちらもくも膜下腔の一部です。脳室の壁に囲まれた内側の腔とは位置が異なります。

側脳室の各部と第四脳室・脳槽の位置

上段は一側の側脳室を外側から読む形の模式で前が画面左、後が右。前角を前頭葉、体を主に頭頂葉、後角を後頭葉、前方へ曲がる下角を側頭葉と直接対応させ、合流部に三角部を名付ける。下段は別の広げた前後位置図で前が画面左。橋と上部延髄の背面が第四脳室の底になり、小脳が後方にある。橋の前の橋槽と小脳・延髄の間の小脳延髄槽はくも膜下腔の広がりとして別に示す。脳室出口・全脳槽・全CSF流路は描かない。
側脳室の下角は側頭葉へ曲がります。下段は面と空間の隣接を広げた別図で、二つの脳槽を脳室の枝としてつなぎません。

10. 脊髄円錐と硬膜嚢の終わり

成人の脊髄の下端は細くなって脊髄円錐となり、通常はL1〜L2付近の椎骨の高さで終わります。終わりの高さには個体差があります。一方、硬膜嚢は通常S2付近まで続きます。脊髄円錐より下のくも膜下腔の広がりが腰槽で、脳脊髄液の中に馬尾の神経根と終糸があります。S2まで脊髄の実質が続くという意味ではありません。

11. 終糸は神経根の束ではない

脊髄の下端からは細い終糸が下方へ延びます。硬膜嚢の内側を下る終糸内部は軟膜性です。硬膜嚢が終わるところより下では、硬膜に包まれた終糸外部が尾骨方向へ続きます。周りの馬尾は各部の出口へ向かう神経根の束です。終糸を馬尾の一本の神経根や、脊髄実質の長い延長として扱わないで区別します。

12. 根糸から神経根、脊髄神経へ

脊髄から出入りする細い前根糸・後根糸は、それぞれ前根・後根へ集まります。後根上には後根神経節があり、前根と後根は合流して短い混合性の脊髄神経をつくります。下位の神経根は椎管内を下行して、それぞれの出口へ向かいます。脊髄の区分の名称と、脊椎の出口の高さを一対一の同じ断面としないで読みます。

脊髄円錐・腰槽・終糸

成人の通常の椎骨の高さを示す長さを広げた模式で、上が頭側。脊髄実質はL1〜L2付近の脊髄円錐で終わり、硬膜嚢はS2付近まで続く。円錐より下のくも膜下腔を腰槽として、下行する馬尾の神経根と中央の細い終糸を分ける。終糸内部は硬膜嚢内、終糸外部は硬膜嚢より下で硬膜に包まれ尾骨方向へ続く。高さの個体差、神経根の全出口・骨の精密形・手技部位は示さない。
脊髄の実質と硬膜嚢は同じ高さで終わりません。腰槽の中には神経根と終糸があります。縦の寸法は広げてあり、終端の高さには個体差があります。

13. 前根・後根と前枝・後枝を区別する

前根と後根が合流した後、短い脊髄神経は前枝と後枝に分かれます。前枝と後枝はどちらも感覚線維と運動線維を含む混合性の枝です。後枝は主に固有背筋と背部の皮膚へ、前枝は体幹の前外側や四肢へ向かいます。前枝という名前だけで運動専用、後枝という名前だけで感覚専用と判断できません。後根神経節も、後枝上の神経節という意味ではありません。

14. 頸神経の番号と椎骨の出口

頸椎は七個ですが、頸神経は八対あります。C1〜C7脊髄神経は原則として同番号の頸椎の上方から出ます。C8は第7頸椎と第1胸椎の間から出て、T1以下では原則として同番号の椎骨の下方から出ます。神経の番号と椎骨の番号の対応を、C8のところで確かめます。神経根の出口は、脊髄円錐の終わりの高さとは別の目印です。

神経根の合流と神経枝・C8の出口

上段は一側の神経の連続を広げた図で、後が上、前が下。細い根糸から後根と前根へ集まり、後根上に後根神経節を示す。両根が短い混合性の脊髄神経へ合流した後に、後枝と前枝が分かれる。両枝はともに混合性で、後根と後枝を一つの名称にしない。血流やCSFの矢印を使わない。下段は独立した椎骨の出口の模式で、第7頸椎と第1胸椎の間をC8脊髄神経が通る。椎間孔の全骨形・全神経分布や神経叢は描かない。
前枝と後枝は両根が合流した後の枝です。下段は別の出口の図で、神経の番号と椎骨の番号の対応を確かめます。

用語を確かめる

レンズ核
被殻とその内側の淡蒼球を合わせた大脳深部の区分。
内包前脚
尾状核頭とレンズ核の間にある内包の部分。
内包後脚
視床とレンズ核の間にある内包の部分。
内包膝
前脚と後脚の間の曲がる部分。
脳梁膨大
脳梁の後方の厚い部分。
骨膜層
頭蓋骨の内面に沿う硬膜の外側の層。
髄膜層
硬膜の内側の層。頭蓋内で折り返しをつくり、脊髄硬膜へ続く。
大脳鎌
大脳縦裂に入る縦向きの硬膜のひだ。
小脳テント
後頭葉と小脳の間の棚状の硬膜のひだ。
テント切痕
小脳テントの前内側で脳幹が通る開いた部分。
硬膜静脈洞
硬膜の葉の間にある静脈血の通路。
側脳室下角
側頭葉の内部へ延びる側脳室の部分。
側脳室三角部
側脳室の体・後角・下角が出会う広がり。
中脳水道
中脳内部で第三脳室と第四脳室をつなぐ通路。
第四脳室の底
橋と上部延髄の背面がつくる第四脳室の面。
小脳延髄槽
小脳と延髄の間にあるくも膜下腔の広がり。
腰槽
脊髄円錐より下のくも膜下腔の広がり。馬尾と終糸を含む。
終糸内部
硬膜嚢内を下る軟膜性の終糸の部分。
終糸外部
硬膜嚢より下で硬膜に包まれ、尾骨方向へ続く終糸の部分。
後根神経節
後根上のふくらみ。後枝上の神経節という意味ではない。
脊髄神経前枝
前根・後根の合流後に分かれ、体幹前外側や四肢へ向かう混合性の枝。
C8脊髄神経
第7頸椎と第1胸椎の間から出る第八頸神経。