頸神経叢の浅い皮枝と皮膚領域
本文の目次
- 頸神経叢の深いまとまりから皮膚へ
- 胸鎖乳突筋の後縁で浅い側へ出る
- 小後頭神経は耳の後ろ寄りへ上る
- 大耳介神経は筋の浅い面を上る
- 頸横神経は前へ横切る
- 鎖骨上神経群は下へ、鎖骨の先へ
- 枝の領域と、分節の地図を分ける
1. 頸神経叢の深いまとまりから皮膚へ
頸神経叢は、主に第1〜第4頸神経の前枝が連絡してつくるまとまりです。胸鎖乳突筋の深い側に位置し、首の皮膚へ向かう枝と、筋へ向かう枝を持ちます。ここでは皮膚の感覚を伝える小後頭神経、大耳介神経、頸横神経、鎖骨上神経群を、走行と皮膚の位置で読んでいきます。深く胸部へ下る横隔神経や、上肢へ向かう腕神経叢は、既存の章へつなげて読みます。
2. 胸鎖乳突筋の後縁で浅い側へ出る
浅い四つの皮枝は、胸鎖乳突筋の後縁の中ほど付近から浅い層へ出て、異なる方向へ広がります。この付近は頸部の神経点と呼ばれます。一本の神経が一つの点で四等分されるという意味ではなく、神経叢から来る枝が近い領域で浅くなる目印です。出る位置や分岐には個体差があります。首の側面の筋の縁を目印にすると、浅い皮枝と深い神経の通路を分けて追えます。
深い叢と、浅い皮枝の出現
3. 小後頭神経は耳の後ろ寄りへ上る
小後頭神経は、主にC2の前枝に由来し、C3の寄与がある場合もあります。胸鎖乳突筋の後縁に沿って上へ進み、耳の後ろ寄りや後頭部外側の皮膚の感覚を伝えます。既存の章で読んだ大後頭神経は、C2後枝の内側枝です。同じC2という番号があっても、小後頭神経と大後頭神経では出発する枝と経路が違います。
4. 大耳介神経は筋の浅い面を上る
大耳介神経は、主にC2・C3に由来します。胸鎖乳突筋の浅い面を上り、耳介下部、耳下腺のある部位や下顎角付近などの皮膚の感覚に関わります。耳下腺は耳の前下方付近にある唾液腺です。ここで耳下腺付近という表現は皮膚の領域を示し、唾液の分泌を指示する神経の役割とは別です。耳の周囲の皮膚全体を、この一本だけの領域へまとめるわけではありません。
5. 頸横神経は前へ横切る
頸横神経は、横頸神経とも呼ばれ、主にC2・C3に由来します。胸鎖乳突筋の浅い面を前方へ横切り、広頸筋の深い側から前頸部の皮膚へ広がります。大耳介神経とは由来する高さが重なりますが、筋の面を上る経路と、前へ横切る経路が違います。皮膚の感覚を伝える頸横神経と、広頸筋を動かす顔面神経の頸枝も、役割が異なります。
6. 鎖骨上神経群は下へ、鎖骨の先へ
鎖骨上神経群は、主にC3・C4に由来します。浅い層を下行して鎖骨を越え、上胸部や肩の上面などの皮膚の感覚を伝えます。内側・中間・外側の枝として整理され、末梢で広がる範囲には重なりや個体差があります。鎖骨を越える皮膚の枝と、肩や上肢の筋へ向かう腕神経叢の運動枝を、名前の近さだけで一つの神経へまとめません。
四つの皮枝:走行と皮膚
7. 枝の領域と、分節の地図を分ける
四つの皮枝を、上る・前へ横切る・下るという経路と、耳の周囲・前頸部・鎖骨の先という皮膚の位置へ対応させます。隣り合う皮膚領域は重なり、境界には個体差があります。耳の周囲には、ほかの脊髄神経や脳神経に由来する感覚枝も加わります。一つの末梢神経の皮膚領域と、一つの脊髄分節に対応するデルマトームは、そのまま同じ地図ではありません。
用語を確かめる
- 頸神経叢
- 通常、主にC1〜C4の前枝が連絡してつくる神経のまとまり。
- 胸鎖乳突筋
- 首の側面の浅い筋。ここでは浅い皮枝の出現や走行を読む目印。
- 皮枝
- 皮膚へ向かい感覚を伝える神経の枝。
- 前枝
- 混合脊髄神経が分かれた枝の一つ。前根とは別の部分。
- 後縁
- ここでは胸鎖乳突筋の後ろ側の縁。
- 頸部の神経点
- 胸鎖乳突筋後縁中ほど付近で、皮枝が浅い側へ出る領域の目印。
- 小後頭神経
- 主にC2前枝由来で、耳の後ろ寄り・後頭部外側の皮膚へ向かう皮枝。
- 大後頭神経
- C2後枝の内側枝で、後頭部の皮膚へ向かう既存参照神経。
- 大耳介神経
- 主にC2・C3由来で、胸鎖乳突筋の浅い面を上り、耳の周囲などの皮膚へ向かう皮枝。
- 耳下腺
- 耳の前下方付近にある唾液腺。皮膚の感覚領域と分泌の神経を区別する。
- 頸横神経
- 主にC2・C3由来で、前頸部の皮膚へ向かう皮枝。横頸神経とも呼ぶ。
- 広頸筋
- 頸部の皮下にある薄い筋。顔面神経の頸枝による運動支配は既存本文を参照。
- 鎖骨上神経群
- 主にC3・C4由来で、鎖骨を越えて上胸部や肩上面の皮膚へ広がる皮枝の群。
- デルマトーム
- 一つの脊髄分節に対応する皮膚領域の整理。末梢神経一本の地図と区別する。