冠動脈の枝と心臓静脈の合流・戻り道

本文の目次

  1. 冠動脈は大動脈基部から心筋へ
  2. 溝を目印に、外面の血管を読む
  3. 左冠動脈の主幹から前室間枝と回旋枝へ
  4. 前室間枝の対角枝と中隔枝
  5. 回旋枝と左心室の外側
  6. 右冠動脈と右辺縁枝
  7. 後室間枝の道と冠優位の条件
  8. 灌流領域は粗い対応と型差を分ける
  9. 動脈の供給と静脈の戻り道
  10. 大心臓静脈は前面から左側を回る
  11. 中心臓静脈は後室間溝から戻る
  12. 小心臓静脈は右側の冠状溝を戻る
  13. 後面の冠静脈洞へ合流する
  14. 冠静脈洞を通らない前心臓静脈

1. 冠動脈は大動脈基部から心筋へ

右冠動脈と左冠動脈は、大動脈の基部から起こる。大動脈へ出た血液の一部がこの枝へ入り、心筋へ送られる。心臓の腔内を通る血液の経路と、心臓の壁に分布する冠血管の経路を区別する。左右の冠動脈を肺動脈の枝としてつながない。

2. 溝を目印に、外面の血管を読む

冠状溝は心房と心室の境界を走る。前室間溝と後室間溝は、左右心室の間にある外面の溝で、前面と後面を区別する目印になる。主な冠血管はこれらの溝に沿う。溝は心腔の内側の管ではなく、心臓表面の位置関係である。

3. 左冠動脈の主幹から前室間枝と回旋枝へ

左冠動脈の主幹は、通常、前室間枝と回旋枝という二つの主な道へ分かれる。前室間枝は前室間溝を心尖側へ進み、回旋枝は左側の冠状溝を回る。前室間枝はLAD、前下行枝とも呼ばれる。同じ道の別名と、主幹から分かれた別の枝を混同しない。

4. 前室間枝の対角枝と中隔枝

前室間枝からは、左心室の前外側の壁へ向かう対角枝と、心室中隔の内部へ入る中隔枝が出る。対角枝は心臓表面を進む枝、中隔枝は壁の内部へ入る枝として、方向と行き先を結び付ける。中隔枝は主に中隔の前方に血液を送るが、中隔全体がこの枝だけで供給されるという意味ではない。

5. 回旋枝と左心室の外側

回旋枝は左側の冠状溝を進む。そこから左心室の外側の壁へ向かう主な枝が鈍縁枝で、左辺縁枝とも呼ばれる。前室間枝が前面の室間溝を走る道と、回旋枝が房室の境界を回る道を分けて読む。枝の本数や細かな分布は一定の図に固定しない。

6. 右冠動脈と右辺縁枝

右冠動脈は右側の冠状溝を進む。右辺縁枝は右心室の縁に沿って心尖側へ向かい、右心室の壁に血液を送る。右冠動脈の起始、冠状溝を回る道、右辺縁枝が心室へ下る道を順に対応させる。洞結節枝や房室結節枝を全例同じ親動脈へ割り当てない。

冠動脈の起始と前面の主な道

上段は大動脈基部から右冠動脈と左冠主幹へ分かれ、右冠動脈から右辺縁枝、左冠主幹から前室間枝と回旋枝へつなぐ接続図。下段は心臓前面の外面の部分模式で、画面左が本人の右、画面右が本人の左。右冠動脈は右側、回旋枝は左側の冠状溝を進む部分として横向き線で示す。右辺縁枝は右心室の縁を心尖側へ、前室間枝は左右心室の間の前面を心尖側へ進む。上段の箱の左右は実位置を表さず、下段は全体の精密投影・隠れた後面・全枝を示さない。
左右冠動脈は大動脈基部から起こります。左冠主幹の主な枝は前室間枝と回旋枝、右冠動脈の主な枝の一つは右辺縁枝です。下段は前面を取り出した外面図で、本人の右は画面左です。赤い矢印は心尖側への動脈の道を示します。箱の並びは実位置を表さず、通常の主な道の対応であり、全枝・全例の形・精密投影ではありません。

7. 後室間枝の道と冠優位の条件

後室間枝は、後室間溝を心尖側へ走る枝で、PDA、後下行枝とも呼ばれる。この枝を出す動脈の所属が、冠優位を区別する手掛かりとなる。右優位の型では右冠動脈から、左優位の型では回旋枝から起こる。後室間枝を、条件を付けず常に右冠動脈の枝として覚えない。

8. 灌流領域は粗い対応と型差を分ける

前室間枝とその枝は左心室前方の壁と中隔前方、回旋枝と鈍縁枝は左心室外側、右辺縁枝は右心室、後室間枝は心室下面や中隔後方の一部へ向かう。これは位置を理解するための大まかな対応で、隣り合う領域の境界や後方の分配を全例同じにするものではない。冠優位は心臓全体が一方の冠動脈だけで供給されるという意味でもない。

対角枝・中隔枝・鈍縁枝の方向

上段の前室間枝から対角枝が斜めに分かれ、左心室前外側の壁の表面へ向かう箱に入る。もう一つの中隔枝は、別の心室中隔内部へ入る箱に向かう。表面の道と内部へ入る道を別々の矢印で示す。下段は回旋枝が冠状溝を回る横の道で、そこから鈍縁枝が左心室外側の壁へ向かう。方向と主な供給先の関係図で、箱の並びは実投影・灌流境界・枝数を示さない。
前室間枝の対角枝は左心室前外側の表面へ、中隔枝は心室中隔の内部へ向かいます。回旋枝の鈍縁枝は左心室外側の壁へ向かいます。矢印は枝と主な行き先の対応を示し、実投影・固定本数・灌流領域の厳密な境界を表しません。中隔全体を前室間枝だけで供給するという意味ではありません。

冠優位の条件と後室間枝

上下に二つの条件付き例を示す。上の右優位では右冠動脈の箱から、下の左優位では回旋枝の箱から、それぞれ後面の後室間溝を取り出した枠内の後室間枝へつなぐ。各後室間枝は心尖側へ下り、心室下面と中隔後方の一部へ向かうと表示する。同時に二つの動脈から必ず起こる図ではない。箱の左右は実位置ではなく、後面の精密投影、共同優位の分類、出現率、後外側枝全配分を示さない。
右優位の例では後室間枝は右冠動脈から、左優位の例では回旋枝から起こります。後室間枝の親動脈と、後室間溝を心尖側へ進む道を分けて読みます。二つの条件付き例で、全例の分岐、共同優位の詳細、出現率、厳密な灌流境界を示しません。冠優位は心臓全体が一方の動脈だけで供給されるという意味ではありません。

9. 動脈の供給と静脈の戻り道

冠動脈から心筋内の毛細血管へ血液が供給され、その先は心臓の静脈へ集まって戻る。大きな静脈は表面の動脈に沿うことが多いが、両者は別の管であり、役割と流れの行き先も異なる。動脈名と静脈名を一対一の置き換えで覚えるのではなく、溝・枝・合流先をそれぞれ確かめる。

10. 大心臓静脈は前面から左側を回る

大心臓静脈は前室間枝に沿って前室間溝を上り、その後、左側の冠状溝を回って後面の冠静脈洞へ続く。前面の動脈は心尖側へ枝を送り、静脈は血液を集めて冠静脈洞側へ戻す。前面から後面までの道は関連単元の図も参照して確かめる。

11. 中心臓静脈は後室間溝から戻る

中心臓静脈は後室間溝で後室間枝に沿い、心室の後方・下面側から血液を集めて冠静脈洞へ流入する。後室間枝が右冠動脈か回旋枝のどちらから起こるかと、中心臓静脈の合流先は別の関係である。中心臓静脈を全て大心臓静脈へ入る道として描かない。

12. 小心臓静脈は右側の冠状溝を戻る

小心臓静脈は右冠動脈に沿い、右側の冠状溝を進んで通常は冠静脈洞へ続く。大心臓静脈が左側を回る道と、小心臓静脈が右側を回る道を区別する。小心臓静脈には発達や流入の個体差があるため、全例必ず同じ一本の経路が見えるとは扱わない。

13. 後面の冠静脈洞へ合流する

冠静脈洞は心臓後面の房室間溝にある太い静脈性の通路で、右心房へ開く。大心臓静脈が続く道に加え、中心臓静脈や通常の小心臓静脈がここへ合流する。図の合流先は冠静脈洞であり、三本の静脈を全て大心臓静脈の枝として一列につながない。

14. 冠静脈洞を通らない前心臓静脈

前心臓静脈は右心室前面から血液を集め、冠静脈洞を通らず右心房へ直接入る。冠静脈洞を経る大心臓静脈・中心臓静脈・通常の小心臓静脈の道とは、途中の構造が異なる。冠動脈の枝の出方と、静脈の合流・戻り先を別々に読むと、冠優位と静脈還流も取り違えにくくなる。

心臓静脈の通常の合流と直接還流

上段は心臓後面の外面を取り出した部分模式で、画面左が本人の左、画面右が本人の右。左から続く大心臓静脈と右側を回る通常の小心臓静脈、後室間溝を上る中心臓静脈を、冠静脈洞の別々の入口へつなぐ。冠静脈洞は後面の房室間溝にあると表示し、戻り先の右心房の箱へつなぐ。中心臓静脈と小心臓静脈を大心臓静脈の枝としてつながない。下段は前心臓静脈から右心房へ直接つなぎ、冠静脈洞を通らないと表示する。静脈の通常経路の部分模式で、右心房の箱の位置、全静脈の実投影、細枝・欠如・流入変異を示さない。
大心臓静脈は左側から冠静脈洞へ続き、中心臓静脈は後室間溝から、通常の小心臓静脈は右側から冠静脈洞へ戻ります。冠静脈洞は後面の房室間溝にあり、右心房へ開きます。前心臓静脈は冠静脈洞を通らず右心房へ直接戻ります。青い矢印は静脈還流の向きです。後面では本人の左は画面左です。後面の部分模式と別の直接還流図で、箱の実位置・全静脈・細枝・流入変異を表しません。

用語を確かめる

左冠動脈主幹
左冠動脈の起始から前室間枝・回旋枝へ分かれるまでの主な幹。
前室間枝(LAD)
前室間溝を走る左冠動脈の主な枝。前下行枝とも呼ばれる。
対角枝
前室間枝から左心室の前外側の壁へ向かう表面の枝。
中隔枝
前室間枝から心室中隔の内部へ入る枝。
回旋枝
左側の冠状溝を回る左冠動脈の主な枝。
鈍縁枝
回旋枝から左心室外側の壁へ向かう主な枝。左辺縁枝とも呼ばれる。
右冠動脈
大動脈基部から起こり、右側の冠状溝を進む冠動脈。
右辺縁枝
右冠動脈から右心室の縁を心尖側へ向かう枝。
後室間枝(PDA)
後室間溝を心尖側へ走る枝。親動脈は冠優位の型によって異なる。
冠優位
後室間枝の親動脈の所属を手掛かりにする型の区別。心臓全体の独占的な灌流を意味しない。
大心臓静脈
前室間枝に沿い、左側の冠状溝を回って冠静脈洞へ続く静脈。
中心臓静脈
後室間溝で後室間枝に沿い、冠静脈洞へ流入する静脈。
小心臓静脈
右冠動脈に沿い、通常は右側の冠状溝から冠静脈洞へ続く静脈。
冠静脈洞
心臓後面の房室間溝にある静脈性の通路で、右心房へ開く。
前心臓静脈
右心室前面から、冠静脈洞を通らず右心房へ直接戻る静脈。