食道・胃と、腹膜・主要血管のつながり

本文の目次

  1. 胸部の管を前後で分ける
  2. 横隔膜を越えて噴門へ
  3. 胃の位置には幅がある
  4. 噴門・胃底・胃体・幽門部
  5. 出口側の幅が狭まる
  6. 大小弯は二つの縁
  7. 前面に向くもの、後ろにあるもの
  8. 腹膜の面と胃の内腔を分ける
  9. 小網は肝臓と小弯をつなぐ
  10. 大網は前へ下がり折り返す
  11. 胃の後ろの網嚢
  12. 腹腔動脈から二つの弯へ
  13. 胃の静脈は門脈系へ集まる
  14. 食道では部位ごとの血管が合流する

1. 胸部の管を前後で分ける

食道は咽頭から胃へ続く筋性の管で、胸部では縦隔を通る。気管より後方にあり、さらに後ろには椎柱が位置する。空気の通る気管と、飲み込んだ物の通る食道は別の管である。胸部の模式を横から読むときは、前後を決めてから二つの通り道をたどる。

2. 横隔膜を越えて噴門へ

食道は横隔膜の食道裂孔を通って腹部へ入り、短い腹部の区間から胃の噴門へ続く。裂孔は横隔膜の開口、噴門は胃の入口という別の場所の名前である。胸部食道の外側を主に外膜とする説明を、腹部の一部の腹膜被覆や胃の漿膜まで一律に当てはめない。

食道の前後位置と、横隔膜の通過

胸部を横から見た前後の位置関係の模式。画面左が前、右が後。気管、その後ろの食道、さらに後ろの椎柱を別の構造で示す。食道は縦隔を下り、横隔膜に空白で示した食道裂孔を通って腹部の短い区間から胃の噴門へ続く。茶色の矢印は食道内容の胃方向を示し血管ではない。下の胃は接続先の位置記号で胃底や幽門の精密側面形を示さない。胸部の各高さの詳細隣接や裂孔の形・筋・神経は省略する。
左を前、右を後にした位置関係の模式です。気管と食道を分け、食道が通る横隔膜の開口を空白で示しています。下の胃は接続先の記号で、胃底・幽門の投影ではありません。矢印は食道内容が胃へ進む向きです。

3. 胃の位置には幅がある

胃は主に上腹部の左寄りで横隔膜の下にあり、食道と十二指腸の間をつなぐ。食道側と十二指腸側の端に比べ、その間の形と大きさは内容や姿勢で変わる。正面の図では本人の左が見る側の右にくる。図の一つの輪郭から、全員の胃が同じ高さ・同じ形と考えない。

4. 噴門・胃底・胃体・幽門部

食道が開く噴門の上方、本人の左側へふくらむ部分が胃底である。「底」という字でも胃の最も下の部分を指さない。胃体はその下へ続く主要部分で、十二指腸へ近づく側が幽門部である。四つの名前を単なる上下の四段として並べず、入口・左上のふくらみ・主要部・出口側という関係で読む。

5. 出口側の幅が狭まる

胃体から幽門部へ進むと、幅の広い幽門前庭から狭い幽門管へ続き、幽門の出口で十二指腸へつながる。噴門は食道側、幽門は十二指腸側であり、二つを同じ出口としない。胃底から幽門管へ独立した別の管が出るのではなく、胃の内腔は続いている。

6. 大小弯は二つの縁

胃の外側へ大きくふくらむ凸の縁を大弯、内側の凹の縁を小弯という。二つの縁は胃を囲む別々の管ではなく、同じ胃の輪郭の異なる側である。小弯は小網、大弯は大網へ続く場所としても読む。前面と後面を分ける説明と、大小弯を分ける説明は別の軸である。

噴門・胃底・幽門側を前面から読む

胃を前から見た通常の部位関係の模式。本人の右は画面左、本人の左は画面右。上の食道が噴門へ入り、胃底は噴門の上方かつ本人の左側のふくらみ、胃体は主要部分である。出口側は画面左下寄りの幽門前庭から幽門管、幽門を経て十二指腸へ続く。小弯は内側の凹の縁、大弯は外側の凸の縁。矢印による血流表示はなく、線はラベルの指示線。幽門と十二指腸を短く省略し、胃の形・大きさ・高さ・曲がりを全例の精密投影にはしない。
本人の左を画面右に置いた前面模式です。胃底は噴門より左上のふくらみで、「底」を最下部と読みません。幽門前庭・幽門管・出口から十二指腸への続きと、大小弯を分けます。輪郭の形と高さは一例として省略しています。

7. 前面に向くもの、後ろにあるもの

胃の前面は横隔膜、肝臓左葉、前腹壁などに向く。後方には網嚢という腹膜腔の一部を隔てて膵臓などがあり、左後方では脾臓や左腎周囲とも関係する。全部の場所で胃壁がそれらに直接貼り付くわけではない。隣接図の胃と膵臓の間に描いたすき間を、胃の内腔の一部としない。

8. 腹膜の面と胃の内腔を分ける

腹壁側の壁側腹膜と臓器表面側の臓側腹膜の面の間が腹膜腔で、通常は少量の液を含む狭いすき間である。胃壁の内側の胃内腔とは別で、食物が腹膜腔へ出て胃を取り巻く構造ではない。腹膜のひだの中には血管などが通る。ひだを、食物が通る追加の消化管として扱わない。

9. 小網は肝臓と小弯をつなぐ

小網は肝臓の下側から胃の小弯に続き、近位の十二指腸側へも広がる腹膜のひだである。胃と肝臓の間の部と、肝臓と十二指腸の間の部を含む。小網の位置は胃底の外側や大弯に垂れる大網と異なる。膜の間を通る血管と胃の内腔を分けて読む。

10. 大網は前へ下がり折り返す

大網は胃の大弯からエプロン状に下がり、小腸や横行結腸の前側を覆う。下がった腹膜のひだは折り返して横行結腸・横行結腸間膜側へつながる。成人では層が癒合し、いつも四枚が離れて見えるとは限らない。大弯から後腹壁へ一枚の膜が直線で渡るように省略すると、この前後と折り返しを見失う。

11. 胃の後ろの網嚢

網嚢は胃の後ろ側、小網の後ろ側にある腹膜腔の一部である。ここでは胃の後面と膵臓側との間の位置を取り出す。網嚢は胃内腔でも、独立した消化器の管でもない。腹膜腔全体の反転や網嚢の全境界・連絡口をこの断面だけで網羅するわけではない。

胃の前後と、大小網の連続

上部は前面から見た取付関係の模式で、肝臓と胃の小弯側を小網がつなぎ、大弯側から大網が下がる。横行結腸と小腸の前側を大網が覆う関係を取り出し、全臓器投影は示さない。下部はこれと独立した前後断面の位置模式で、画面左が前、右が後。胃の後ろに網嚢を置き、さらに後ろの膵臓と胃内腔を分ける。大網は前側を下がり下端で折り返して横行結腸側へつながる代表線で示す。網嚢の両側の短い膜線は面の位置の省略で、全境界や連絡口を閉じた袋として描かない。成人の腹膜層の癒合、全腹膜反転、肝十二指腸部の細部・左腎脾臓の投影は省略。胃の内腔や食物が網の中へ出る道は描かない。
上部は大小弯への取付、下部は前後の位置と大網の折り返しを別の模式にしています。胃の後ろの網嚢を胃内腔から分けます。大網は前へ下がって結腸側へ戻る代表線で、成人の四層をいつも分離して描くものではありません。全腹膜反転や網嚢の全境界・連絡口は省略しています。

12. 腹腔動脈から二つの弯へ

腹腔動脈は腹大動脈から分かれ、通常左胃動脈・脾動脈・総肝動脈を出す。小弯沿いには左右胃動脈が走って吻合する。大弯沿いには左右胃大網動脈が走り、通常左は脾動脈、右は胃十二指腸動脈から続く。短胃動脈は脾動脈系から胃底へ向かう。右胃動脈の起始には変異があり、総肝動脈の一点から必ず出ると固定しない。

主要動脈の分岐と、胃への供給側

上部は腹大動脈、腹腔動脈、通常の左胃動脈・脾動脈・総肝動脈への分岐を示す。下部は独立して取付先を取り出し、左右胃動脈が小弯側、左右胃大網動脈が大弯側へ向かい、短胃動脈が胃底へ向かう関係を示す。右胃動脈は肝動脈系で起始変異あり、左胃大網動脈・短胃動脈は脾動脈系、右胃大網動脈は胃十二指腸動脈からの通常の連続を直接ラベルで示す。向かい合う矢印は枝から弯側への供給方向で、弯沿いの吻合の精密形や衝突を表さない。箱は名前と行き先の関係で実際の血管形・胃の左右投影・全枝・固定支配域を示さず、赤は名前付き動脈の識別で酸素量の量的表示ではない。
上部は通常の親動脈、下部は枝と胃の行き先の関係です。弯の二組と胃底への短い枝を分け、右胃動脈の起始を全例で固定しません。矢印は供給側から胃側へ向かう意味で、吻合の実形や全供給境界は省略しています。

13. 胃の静脈は門脈系へ集まる

胃壁から戻る血液は門脈系へ集まる。通常左右胃静脈は門脈へ、短胃静脈と左胃大網静脈は脾静脈側へ、右胃大網静脈は上腸間膜静脈側へ向かい、これらが門脈側に集まって肝臓へ入る。胃の静脈がそのまま肝静脈へ入る道とは区別する。肝静脈は肝臓を通った先の帰還側である。

胃の血液が門脈側へ戻る三つの道

胃壁の領域から上へ向かう通常の静脈還流の順序模式。小弯側の左右胃静脈は門脈へ向かう。胃底の短胃静脈と左大弯側の左胃大網静脈は脾静脈側へ、右大弯側の右胃大網静脈は上腸間膜静脈側へ向かい、門脈側へ集まって肝臓に入る。左右胃静脈、短胃静脈・左胃大網静脈、右胃大網静脈の三つのまとまりを省略して示し、全枝・吻合・他の門脈流入・個体差は描かない。箱の左右は実際の本人左右投影ではなく道の区別である。青は名前付き静脈の識別で酸素量の表示ではない。矢印は血液の戻りで胃の内腔や食物の移動ではない。肝静脈を胃からの直接の行き先として描かない。
下の胃壁側から上へ血液の戻り道を読みます。直接門脈へ向かう胃静脈と、脾静脈・上腸間膜静脈側を経る道を分けています。箱の並びは左右投影ではなく、他の流入や全変異を省略した連続の模式です。

14. 食道では部位ごとの血管が合流する

食道の胸部は胸大動脈などの枝、腹部は左胃動脈などから血液を受ける。静脈の戻り道には胸部の奇静脈系、腹部の左胃静脈側などがある。食道の全長に一本の同じ親血管だけを当てはめない。ここでは胸腹部の主要なつながりに限り、頸部の全枝や全神経・リンパ路、細かな流入型は取り上げない。

用語を確かめる

食道裂孔
食道が横隔膜を越えて腹部へ入る開口。
噴門
食道が胃へ開く入口の領域。
胃底
噴門より上方・本人の左側へふくらむ胃の部分。
胃体
胃底の下へ続く胃の主要部分。
幽門前庭
胃体から幽門管へ続く、出口側の比較的広い部分。
幽門管
幽門前庭から出口側へ続く狭い部分。
小弯
胃の内側の凹の縁で、小網が続く側。
大弯
胃の外側の凸の縁で、大網が続く側。
壁側腹膜
腹壁側を覆う腹膜の部分。
臓側腹膜
臓器表面側を覆う腹膜の部分。
小網
肝臓と胃小弯・近位十二指腸をつなぐ腹膜のひだ。
大網
胃大弯から前へ下がり折り返す腹膜のひだ。
網嚢
胃や小網の後ろ側に位置する腹膜腔の一部。
胃大網動脈
大弯沿いを走る左右の主要動脈。通常左は脾動脈、右は胃十二指腸動脈から続く。
短胃動脈
通常脾動脈系から胃底へ向かう複数の短い動脈。
胃静脈の門脈還流
胃壁から直接門脈、または脾静脈・上腸間膜静脈側を経て門脈へ集まる通常の戻り道。