食道・胃と、腹膜・主要血管のつながり
本文の目次
- 胸部の管を前後で分ける
- 横隔膜を越えて噴門へ
- 胃の位置には幅がある
- 噴門・胃底・胃体・幽門部
- 出口側の幅が狭まる
- 大小弯は二つの縁
- 前面に向くもの、後ろにあるもの
- 腹膜の面と胃の内腔を分ける
- 小網は肝臓と小弯をつなぐ
- 大網は前へ下がり折り返す
- 胃の後ろの網嚢
- 腹腔動脈から二つの弯へ
- 胃の静脈は門脈系へ集まる
- 食道では部位ごとの血管が合流する
1. 胸部の管を前後で分ける
食道は咽頭から胃へ続く筋性の管で、胸部では縦隔を通る。気管より後方にあり、さらに後ろには椎柱が位置する。空気の通る気管と、飲み込んだ物の通る食道は別の管である。胸部の模式を横から読むときは、前後を決めてから二つの通り道をたどる。
2. 横隔膜を越えて噴門へ
食道は横隔膜の食道裂孔を通って腹部へ入り、短い腹部の区間から胃の噴門へ続く。裂孔は横隔膜の開口、噴門は胃の入口という別の場所の名前である。胸部食道の外側を主に外膜とする説明を、腹部の一部の腹膜被覆や胃の漿膜まで一律に当てはめない。
食道の前後位置と、横隔膜の通過
3. 胃の位置には幅がある
胃は主に上腹部の左寄りで横隔膜の下にあり、食道と十二指腸の間をつなぐ。食道側と十二指腸側の端に比べ、その間の形と大きさは内容や姿勢で変わる。正面の図では本人の左が見る側の右にくる。図の一つの輪郭から、全員の胃が同じ高さ・同じ形と考えない。
4. 噴門・胃底・胃体・幽門部
食道が開く噴門の上方、本人の左側へふくらむ部分が胃底である。「底」という字でも胃の最も下の部分を指さない。胃体はその下へ続く主要部分で、十二指腸へ近づく側が幽門部である。四つの名前を単なる上下の四段として並べず、入口・左上のふくらみ・主要部・出口側という関係で読む。
5. 出口側の幅が狭まる
胃体から幽門部へ進むと、幅の広い幽門前庭から狭い幽門管へ続き、幽門の出口で十二指腸へつながる。噴門は食道側、幽門は十二指腸側であり、二つを同じ出口としない。胃底から幽門管へ独立した別の管が出るのではなく、胃の内腔は続いている。
6. 大小弯は二つの縁
胃の外側へ大きくふくらむ凸の縁を大弯、内側の凹の縁を小弯という。二つの縁は胃を囲む別々の管ではなく、同じ胃の輪郭の異なる側である。小弯は小網、大弯は大網へ続く場所としても読む。前面と後面を分ける説明と、大小弯を分ける説明は別の軸である。
噴門・胃底・幽門側を前面から読む
7. 前面に向くもの、後ろにあるもの
胃の前面は横隔膜、肝臓左葉、前腹壁などに向く。後方には網嚢という腹膜腔の一部を隔てて膵臓などがあり、左後方では脾臓や左腎周囲とも関係する。全部の場所で胃壁がそれらに直接貼り付くわけではない。隣接図の胃と膵臓の間に描いたすき間を、胃の内腔の一部としない。
8. 腹膜の面と胃の内腔を分ける
腹壁側の壁側腹膜と臓器表面側の臓側腹膜の面の間が腹膜腔で、通常は少量の液を含む狭いすき間である。胃壁の内側の胃内腔とは別で、食物が腹膜腔へ出て胃を取り巻く構造ではない。腹膜のひだの中には血管などが通る。ひだを、食物が通る追加の消化管として扱わない。
9. 小網は肝臓と小弯をつなぐ
小網は肝臓の下側から胃の小弯に続き、近位の十二指腸側へも広がる腹膜のひだである。胃と肝臓の間の部と、肝臓と十二指腸の間の部を含む。小網の位置は胃底の外側や大弯に垂れる大網と異なる。膜の間を通る血管と胃の内腔を分けて読む。
10. 大網は前へ下がり折り返す
大網は胃の大弯からエプロン状に下がり、小腸や横行結腸の前側を覆う。下がった腹膜のひだは折り返して横行結腸・横行結腸間膜側へつながる。成人では層が癒合し、いつも四枚が離れて見えるとは限らない。大弯から後腹壁へ一枚の膜が直線で渡るように省略すると、この前後と折り返しを見失う。
11. 胃の後ろの網嚢
網嚢は胃の後ろ側、小網の後ろ側にある腹膜腔の一部である。ここでは胃の後面と膵臓側との間の位置を取り出す。網嚢は胃内腔でも、独立した消化器の管でもない。腹膜腔全体の反転や網嚢の全境界・連絡口をこの断面だけで網羅するわけではない。
胃の前後と、大小網の連続
12. 腹腔動脈から二つの弯へ
腹腔動脈は腹大動脈から分かれ、通常左胃動脈・脾動脈・総肝動脈を出す。小弯沿いには左右胃動脈が走って吻合する。大弯沿いには左右胃大網動脈が走り、通常左は脾動脈、右は胃十二指腸動脈から続く。短胃動脈は脾動脈系から胃底へ向かう。右胃動脈の起始には変異があり、総肝動脈の一点から必ず出ると固定しない。
主要動脈の分岐と、胃への供給側
13. 胃の静脈は門脈系へ集まる
胃壁から戻る血液は門脈系へ集まる。通常左右胃静脈は門脈へ、短胃静脈と左胃大網静脈は脾静脈側へ、右胃大網静脈は上腸間膜静脈側へ向かい、これらが門脈側に集まって肝臓へ入る。胃の静脈がそのまま肝静脈へ入る道とは区別する。肝静脈は肝臓を通った先の帰還側である。
胃の血液が門脈側へ戻る三つの道
14. 食道では部位ごとの血管が合流する
食道の胸部は胸大動脈などの枝、腹部は左胃動脈などから血液を受ける。静脈の戻り道には胸部の奇静脈系、腹部の左胃静脈側などがある。食道の全長に一本の同じ親血管だけを当てはめない。ここでは胸腹部の主要なつながりに限り、頸部の全枝や全神経・リンパ路、細かな流入型は取り上げない。
用語を確かめる
- 食道裂孔
- 食道が横隔膜を越えて腹部へ入る開口。
- 噴門
- 食道が胃へ開く入口の領域。
- 胃底
- 噴門より上方・本人の左側へふくらむ胃の部分。
- 胃体
- 胃底の下へ続く胃の主要部分。
- 幽門前庭
- 胃体から幽門管へ続く、出口側の比較的広い部分。
- 幽門管
- 幽門前庭から出口側へ続く狭い部分。
- 小弯
- 胃の内側の凹の縁で、小網が続く側。
- 大弯
- 胃の外側の凸の縁で、大網が続く側。
- 壁側腹膜
- 腹壁側を覆う腹膜の部分。
- 臓側腹膜
- 臓器表面側を覆う腹膜の部分。
- 小網
- 肝臓と胃小弯・近位十二指腸をつなぐ腹膜のひだ。
- 大網
- 胃大弯から前へ下がり折り返す腹膜のひだ。
- 網嚢
- 胃や小網の後ろ側に位置する腹膜腔の一部。
- 胃大網動脈
- 大弯沿いを走る左右の主要動脈。通常左は脾動脈、右は胃十二指腸動脈から続く。
- 短胃動脈
- 通常脾動脈系から胃底へ向かう複数の短い動脈。
- 胃静脈の門脈還流
- 胃壁から直接門脈、または脾静脈・上腸間膜静脈側を経て門脈へ集まる通常の戻り道。