骨盤から足へ、足から骨盤へ:下肢の動脈と静脈の連続

本文の目次

  1. 足へ届く流れと戻る流れ
  2. 総腸骨動脈の二つの出口
  3. 鼠径靱帯で外腸骨から大腿へ
  4. 大腿深動脈と回旋動脈は別の枝
  5. 大腿から膝窩へ続く境界
  6. 膝窩から下腿の三つの動脈へ
  7. 前脛骨動脈は足背へ続く
  8. 後脛骨動脈は内果後方から足底へ
  9. 腓骨動脈は後外側へ向かう別系統
  10. 足底動脈弓を作る二つの経路
  11. 足背と足底から趾へ向かう枝
  12. 組織での交換から静脈へ
  13. 同伴深静脈が膝窩・大腿へ集まる
  14. 大伏在静脈は内側の浅い還流
  15. 小伏在静脈は後方の浅い還流
  16. 浅静脈と深静脈をつなぐ交通
  17. 大腿から腸骨・下大静脈へ戻る
  18. 分岐と合流を位置のまとまりで読む

1. 足へ届く流れと戻る流れ

動脈は心臓から離れる向きに血液を運び、静脈は心臓へ戻る向きに運びます。下肢では骨盤から大腿・下腿・足へ届く動脈の枝と、足から骨盤へ戻る静脈の合流を別々に追います。足の組織での交換は微小循環を介しますが、同名の動脈と静脈が一本の管の枝として分かれるわけではありません。赤いAを動脈、青いVを静脈とし、白黒でもA/Vと矢印で読む図を用います。

2. 総腸骨動脈の二つの出口

腹大動脈から左右の総腸骨動脈へ続き、総腸骨動脈は内腸骨動脈と外腸骨動脈に分かれます。内腸骨動脈は骨盤内や臀部などへ枝を出し、外腸骨動脈は下肢へ向かう主要な通路です。内腸骨動脈を外腸骨動脈の途中の別名としません。ここでは内腸骨動脈の全ての枝の走行を列挙しません。

3. 鼠径靱帯で外腸骨から大腿へ

外腸骨動脈は鼠径靱帯の深側を通って大腿へ入り、大腿動脈という名になります。これは同じ通路の部位による名称の変化です。その場で外腸骨動脈が大腿動脈と静脈に分岐するのではありません。鼠径部では大腿静脈が動脈の内側に位置しますが、図は位置の縮尺や処置の目印を示すものではありません。

4. 大腿深動脈と回旋動脈は別の枝

大腿動脈は大腿を下る本幹と、近位で分かれる大腿深動脈を区別して読みます。大腿深動脈は大腿の深部へ向かい、穿通動脈を出します。内側・外側大腿回旋動脈は大腿骨近位の周囲へ向かう枝で、多くは大腿深動脈から出ますが、大腿動脈から直接出るなどの変異があります。回旋動脈を左右の別名とせず、また全員で同じ起始としません。筋の付着や神経支配はそれぞれ別の関係です。

5. 大腿から膝窩へ続く境界

大腿動脈は内転筋管を通り、内転筋腱裂孔を抜けて膝の後方へ出ると膝窩動脈へ続きます。大腿深動脈がそのまま膝窩動脈になるわけではありません。伏在神経は内転筋管を通った後に浅層へ向かい、この腱裂孔は通りません。血管の通路を、同じ近くにある神経の通路へそのまま当てはめません。膝周囲には吻合する枝がありますが、ここでは膝関節動脈網の全枝を示しません。

動脈A:骨盤から膝へ

動脈A:骨盤から膝へ。名称変化と分岐を区別する。内外側大腿回旋動脈の起始には変異があり、図は多くみられる一つのモデル。
名称変化と分岐を区別する。内外側大腿回旋動脈の起始には変異があり、図は多くみられる一つのモデル。

6. 膝窩から下腿の三つの動脈へ

膝窩動脈から前脛骨動脈の系統と、後脛骨動脈・腓骨動脈の系統へ分かれる通路を読みます。通常の一つのモデルでは、前脛骨動脈が分かれた後の共通の短い部分を脛腓骨動脈幹とし、後脛骨動脈と腓骨動脈に分かれます。簡略図で腓骨動脈を後脛骨動脈の枝と示すこともありますが、起始や分岐の高さには変異があります。三つを同じ名前の連続や、必ず同じ高さから出る枝とはしません。

7. 前脛骨動脈は足背へ続く

骨間膜は脛骨と腓骨の間をつなぐ結合組織の膜です。前脛骨動脈は下腿近位でその開口を通って前区画へ入り、骨間膜の前側を下ります。足関節前方を越えると足背動脈へ続きます。足背は足の甲側です。深腓骨神経はこの区画で近くを走りますが、血管から分かれる神経ではありません。足背動脈という名称を、後脛骨動脈が足底へ進む通路と入れ替えません。

8. 後脛骨動脈は内果後方から足底へ

屈筋支帯は足首内側で腱などの通路を覆う帯状の組織です。後脛骨動脈は下腿の深い後区画を下り、内果の後方で屈筋支帯の深側を通って足底へ向かいます。内果は足首の内側の骨の突出です。足底への主要な出口は内側足底動脈と外側足底動脈です。近くを通る脛骨神経は別の構造で、動脈の枝ではありません。足背動脈と後脛骨動脈を、足首で同じ一本に改名する通路とはしません。

9. 腓骨動脈は後外側へ向かう別系統

腓骨動脈は下腿の後外側で腓骨に近い深部を下り、下腿外側や足首・踵に関わる枝を送ります。穿通枝や交通する枝がありますが、その全ての細かな通路はここでは示しません。腓骨動脈がそのまま足背動脈へ改名するのではありません。足背動脈の通常の連続は前脛骨動脈からです。神経の深腓骨・浅腓骨という区分と、動脈の分岐を一対一にはしません。

動脈A:下腿の別経路

動脈A:下腿の別経路。前脛骨・後脛骨・腓骨の系統を別に追う。脛腓骨動脈幹は通常モデルの一つで、全員の起始を固定しない。
前脛骨・後脛骨・腓骨の系統を別に追う。脛腓骨動脈幹は通常モデルの一つで、全員の起始を固定しない。

10. 足底動脈弓を作る二つの経路

後脛骨動脈から分かれた内側足底動脈は足底の内側へ、外側足底動脈は外側を進んだ後に深部で内側へ向かいます。通常、外側足底動脈の深部と足背動脈の深足底枝との交通が深い足底動脈弓を作ります。足背動脈の深足底枝は第1中足骨間の近位から足底側へ向かう通路です。内側足底動脈だけがこの深い弓の主な形成部になるとはしません。弓の形や各経路の寄与には変異があります。

11. 足背と足底から趾へ向かう枝

足背側では足背動脈から背側中足動脈の系統へ、さらに背側趾動脈へ続きます。第1背側中足動脈と、弓状動脈を介することの多い他の枝を区別しますが、弓状動脈の存在や形成には変異があります。足底側では深い足底動脈弓から底側中足動脈の系統へ続き、総底側趾動脈が固有底側趾動脈へ分かれる通路を読みます。ここでいう趾は足の指で、手の背側指動脈と同じ部位ではありません。全ての趾の微小枝の形を同一にはしません。

動脈A:足背・足底・趾

動脈A:足背・足底・趾。通常、外側足底動脈の深部と足背動脈の深足底枝が交通して深い足底動脈弓を作る。枝の経路と弓の寄与には変異がある。
通常、外側足底動脈の深部と足背動脈の深足底枝が交通して深い足底動脈弓を作る。枝の経路と弓の寄与には変異がある。

12. 組織での交換から静脈へ

動脈の細い枝から毛細血管の系統で組織との交換が行われ、細静脈を経て静脈側へ戻ります。ここからは足から骨盤へ向かう向きを追います。足背・足底の静脈網には交通があり、浅い還流と深い還流を単一の一本にまとめません。動脈図の枝分かれを、そのまま静脈の合流数や個人の血管数へ写し替えることはできません。

13. 同伴深静脈が膝窩・大腿へ集まる

足底の深い静脈は内側・外側足底静脈の系統から後脛骨静脈へ、足背の深い静脈は前脛骨静脈へ続きます。腓骨静脈も下腿の深部から戻り、これらの深静脈の還流は膝窩静脈へ集まります。下腿では動脈に伴う静脈が一対など複数のことがありますが、大腿静脈まで常に二本とするわけではありません。膝窩静脈は内転筋腱裂孔を通って大腿静脈へ続きます。同伴は近くを走る意味で、静脈が動脈の枝になる意味ではありません。

14. 大伏在静脈は内側の浅い還流

足背静脈弓の内側から、内果の前方を通る大伏在静脈へ続きます。大伏在静脈は下腿と大腿の内側の皮下を上り、近位大腿で深静脈である大腿静脈へ注ぎます。鼠径靱帯を越えて外腸骨静脈へ直接改名する浅い本幹ではありません。大腿静脈は深静脈であり、大伏在静脈とは別です。大伏在静脈と同じ通路を一対で走る同名動脈があるとはしません。

15. 小伏在静脈は後方の浅い還流

足背静脈弓の外側から、外果の後方を通る小伏在静脈へ続きます。小伏在静脈は下腿後面の浅層を上り、通常は膝窩静脈へ注ぎます。大伏在静脈の通常の入口である大腿静脈と区別します。上方への延長や他の浅静脈との交通など、終末の形には変異があります。いつも同じ位置で一つの出口に注ぐとはしません。

浅静脈V:二つの還流

浅静脈V:二つの還流。内果前方を通る大伏在静脈と外果後方を通る小伏在静脈を区別。深静脈へ注ぐ入口を示し、動脈の枝としてつながない。
内果前方を通る大伏在静脈と外果後方を通る小伏在静脈を区別。深静脈へ注ぐ入口を示し、動脈の枝としてつながない。

16. 浅静脈と深静脈をつなぐ交通

深筋膜は筋のまとまりを包む結合組織の膜です。穿通静脈はこの膜を横切って浅い静脈と深い静脈を連絡します。正常の一般的な模式では、弁が浅い側から深い側への還流を助け、逆流を抑えます。表面同士の交通や深い静脈同士の交通もあるので、全ての交通枝を同じ通路とはしません。これは正常な連絡の説明で、病的な逆流の診断や弁の機能検査の説明ではありません。

17. 大腿から腸骨・下大静脈へ戻る

大腿深静脈など大腿深部からの還流は大腿静脈へ注ぎます。大腿静脈は鼠径靱帯の深側を通ると外腸骨静脈へ続き、外腸骨静脈と内腸骨静脈が合流して総腸骨静脈となります。左右の総腸骨静脈は下大静脈へ集まります。内腸骨静脈は骨盤側からの別の流入で、外腸骨静脈の途中の別名ではありません。左右で周囲構造との関係が違っても、同じ名前の型を別の血管種とはしません。

深静脈V:足から骨盤へ

深静脈V:足から骨盤へ。還流は上向きの矢印で示す。下腿の同伴静脈の数を大腿へ一律に当てはめず、合流と名称変化を分ける。
還流は上向きの矢印で示す。下腿の同伴静脈の数を大腿へ一律に当てはめず、合流と名称変化を分ける。

18. 分岐と合流を位置のまとまりで読む

動脈は骨盤から大腿、膝、下腿、足へ下る向き、静脈は足から下腿、膝、大腿、骨盤へ上る向きに追います。図の矢印はこの血流の向きや連続関係を示し、解剖学的位置を縮尺どおり写したものではありません。名称が変わる境界、別に分かれる枝、別々の血管が合流する場所を区別します。根幹の説明から、全ての細枝・全変異・個人の厳密な走行が分かるとはしません。

動脈Aと静脈V:別の向き

動脈Aと静脈V:別の向き。心臓から離れる動脈と心臓へ戻る静脈を別の通路として読む。微小循環と穿通静脈を区別する模式で、個人の全流路ではない。
心臓から離れる動脈と心臓へ戻る静脈を別の通路として読む。微小循環と穿通静脈を区別する模式で、個人の全流路ではない。

用語を確かめる

動脈
心臓から離れる向きに血液を運ぶ血管。
静脈
心臓へ戻る向きに血液を運ぶ血管。
総腸骨動脈
腹大動脈から左右へ分かれ、内腸骨・外腸骨動脈へ続く動脈。
内腸骨動脈
骨盤内や臀部などへ枝を送る系統。
外腸骨動脈
鼠径靱帯を越えて大腿動脈へ続く系統。
鼠径靱帯
骨盤と大腿の境にあり、外腸骨血管が深側を通る靱帯。
大腿動脈
外腸骨動脈から続き、大腿を下る主要動脈。
大腿深動脈
大腿動脈から分かれ、大腿深部へ枝を送る動脈。
回旋
ある構造の周囲へ回る向き。内側・外側大腿回旋動脈は異なる枝。
穿通動脈
深い部位から別の区画へ貫いて向かう動脈の枝。
内転筋管
大腿内側で大腿血管などが通る管状の通路。
内転筋腱裂孔
大腿血管が膝後方へ通る、大内転筋の腱性部の開口。
膝窩
膝の後方のくぼんだ部位。
膝窩動脈
大腿動脈から続き、膝後方から下腿へ枝を送る動脈。
前区画
下腿で骨間膜の前側に位置する筋などのまとまり。
後区画
下腿で後側に位置する筋などのまとまり。
脛腓骨動脈幹
通常モデルで後脛骨・腓骨動脈へ分かれる共通の短い幹。
前脛骨動脈
下腿前区画を下り、足背動脈へ続く動脈。
後脛骨動脈
下腿後区画を下り、内果後方から足底へ向かう動脈。
腓骨動脈
腓骨に近い後外側の深部を下る動脈。
内果・外果
足首の内側・外側にある骨の突出。
足背
足の甲側。
足底
足の裏側。
足背動脈
前脛骨動脈から足背へ続く動脈。
内側・外側足底動脈
後脛骨動脈から分かれ、足底の内外へ向かう二つの動脈。
吻合
別の血管の経路が交通すること。
深足底枝
足背動脈から足底側へ向かう枝。
足底動脈弓
通常は外側足底動脈と深足底枝の交通が作る足底深部の弓。
中足・趾
中足は足の前部の骨の並びに関わる部位、趾は足の指。
同伴深静脈
動脈に近接して走る深い静脈。動脈の枝という意味ではない。
浅静脈
皮下など浅い部位を通る静脈。
大・小伏在静脈
大は下肢内側、小は主に下腿後面を通る別の浅静脈。
穿通静脈
深筋膜を横切り、浅静脈と深静脈を連絡する静脈。
総腸骨静脈
内腸骨・外腸骨静脈が合流し、下大静脈へ続く静脈。
骨間膜
脛骨と腓骨の間をつなぐ結合組織の膜。
屈筋支帯
足首内側で腱などの通路を覆う帯状の組織。
深筋膜
筋のまとまりを包む結合組織の膜。