腰仙骨神経叢から足まで:主要神経の正常な連続
本文の目次
- 前枝と二つの感覚地図
- 腰神経叢から仙骨神経叢へ
- 腰部から表面へ出る枝
- 大腿神経は大腰筋の外側から出る
- 大腿神経の運動枝と伏在神経
- 内転筋管で伏在神経と血管の出口が分かれる
- 閉鎖神経は大腰筋の内側から骨盤へ
- 近い名前でも神経の行き先は同じでない
- 梨状筋の上下と臀部の枝
- 坐骨神経は二つの成分を一緒に運ぶ
- 大腿後面の皮膚は坐骨神経だけではない
- 脛骨神経は膝の後ろから後区画へ
- 総腓骨神経は外側から腓骨頸を回る
- 深腓骨神経は前区画から第1趾間へ
- 浅腓骨神経は外側区画から皮膚へ
- 腓腹神経は組合せが変わる感覚通路
- 内果の後ろで足底へ分かれる
- 内側足底神経は内側の筋と皮膚へ
- 外側足底神経は浅枝と深枝へ
- 感覚の模式範囲と根の数値を区別する
- 皮膚への枝と筋への枝を分けて読む
1. 前枝と二つの感覚地図
脊髄の前根を通る運動線維と後根を通る感覚線維は、脊髄神経で合流します。その後の前枝は両方を含み、腰神経叢や仙骨神経叢では線維の束が組み替わります。ここでいう神経叢の根は前枝で、前根だけではありません。皮膚分節は脊髄分節に対応する皮膚領域、末梢神経の皮膚領域は組み替わった枝に対応する領域です。両者を同じ地図として重ねることはできません。神経叢内の組替えは、運動線維が別の神経細胞へ乗り換えるシナプスではありません。
2. 腰神経叢から仙骨神経叢へ
腰神経叢は通常L1〜L4の前枝を主体に、大腰筋の内部に作られます。T12が加わる場合もあります。L4の一部はL5と腰仙骨幹を作って骨盤へ下り、仙骨前面の梨状筋前方で仙骨神経叢へ加わります。仙骨神経叢は通常L4〜S4の前枝に由来します。大腿神経と閉鎖神経は通常L2〜L4、坐骨神経は通常L4〜S3の線維を含みます。根の数値は代表的構成で、個人の支配や症状を数値だけから決めるものではありません。
3. 腰部から表面へ出る枝
腰神経叢の近位の枝には、腸骨下腹神経、腸骨鼠径神経、陰部大腿神経、外側大腿皮神経があります。腸骨下腹・腸骨鼠径神経は腹壁を通って下腹部や鼠径部の皮膚へ向かい、腹壁筋への運動枝も持ちます。陰部大腿神経は大腰筋の前面へ現れ、陰部枝と大腿枝へ分かれます。大腿枝は鼠径靱帯の下から大腿上前部の小領域へ、陰部枝は鼠径管へ向かいます。外側大腿皮神経は腸骨筋前面を外下方へ進み、上前腸骨棘付近で鼠径靱帯の近くを通って大腿外側の皮膚へ向かいます。その通過位置には変異があります。これらの皮膚領域を大腿神経の領域と一括しません。
腰部から二つの神経叢へ
4. 大腿神経は大腰筋の外側から出る
大腿神経は大腰筋の外側へ現れ、腸骨筋との間を下り、鼠径靱帯の深側から大腿前面へ入ります。鼠径靱帯直下では大腿動脈より外側にあり、大腿鞘には入りません。この位置を通る混合神経から筋枝と皮枝が出ます。腸骨筋への枝は鼠径靱帯より近位で出ることがあり、全ての筋枝が大腿三角だけで始まるとは限りません。筋の付着や作用の詳しい説明は、既存の股・大腿前内側の筋章を参照します。
5. 大腿神経の運動枝と伏在神経
大腿神経は大腿四頭筋、縫工筋、通常の恥骨筋などへ運動の枝を送ります。前大腿皮枝には中間大腿皮神経・内側大腿皮神経があり、大腿前面や前内側の皮膚へ向かいます。伏在神経は大腿神経から続く感覚枝で、内転筋管へ入り、大腿動脈に近接して下ります。伏在神経が下腿まで届くことを、大腿四頭筋への運動枝がそのまま下腿筋を支配することと混同しません。筋の詳しい付着や作用は、大腿前面の筋の説明で確認します。
6. 内転筋管で伏在神経と血管の出口が分かれる
伏在神経は内転筋管の屋根側から浅層へ出て、膝内側から下腿内側へ続きます。大腿動脈と静脈が膝後面へ抜ける内転筋腱裂孔は通りません。膝蓋下枝は膝前内側付近の皮膚へ、下腿内側皮枝は下腿内側から足内側の皮膚へ向かいます。遠位では大伏在静脈に近接する区間がありますが、神経と静脈は別の構造です。皮枝の細かい分岐や隣り合う領域との重なりには個体差があります。
大腿神経から伏在神経へ
7. 閉鎖神経は大腰筋の内側から骨盤へ
閉鎖神経は大腰筋の内側から出て、骨盤の側壁に沿い、閉鎖管を通って大腿内側へ入ります。前枝と後枝は通常、短内転筋の前後を通り、内転筋群へ枝を送ります。分岐は管の前・中・後で異なることがあります。前枝は長内転筋や薄筋などへ、後枝は外閉鎖筋や大内転筋の内転部などへ向かいます。短内転筋への枝は前枝だけと全員に固定しません。皮枝は大腿内側の小領域へ届くことがありますが、その皮膚領域は小さく変異もあります。
8. 近い名前でも神経の行き先は同じでない
閉鎖神経は外閉鎖筋へ枝を送りますが、内閉鎖筋神経は仙骨神経叢から出る別の神経です。副閉鎖神経は存在する場合に大腰筋内側から恥骨上枝付近を越えて恥骨筋などへ向かう変異性の枝で、閉鎖管を通る閉鎖神経の本幹と同一ではありません。内転筋群の全てを閉鎖神経だけとまとめず、大内転筋の坐骨顆部が坐骨神経の脛骨神経成分で支配される既存の説明を参照します。
9. 梨状筋の上下と臀部の枝
通常、上殿神経は梨状筋の上側から大坐骨孔を通って臀部へ出て、中殿筋・小殿筋・大腿筋膜張筋へ向かいます。下殿神経は梨状筋の下側から出て、大殿筋へ向かいます。内閉鎖筋神経は梨状筋下方から出て坐骨棘付近を回り、小坐骨孔から内閉鎖筋へ届き、上双子筋にも枝を送ります。大腿方形筋神経は坐骨神経より深側を下り、大腿方形筋と下双子筋へ向かいます。梨状筋への神経は仙骨神経叢の局所筋枝です。筋の起始・停止は既存の臀部筋章で読み、ここでは枝の通路を結びます。
閉鎖神経と内閉鎖筋神経
10. 坐骨神経は二つの成分を一緒に運ぶ
坐骨神経は脛骨神経成分と総腓骨神経成分がまとまった神経です。通常は梨状筋の下側から臀部へ出て、大殿筋の深側、短い外旋筋群の後方を通り、大腿後面を下ります。大腿後面で脛骨神経成分は半腱様筋・半膜様筋や大腿二頭筋長頭などへ、総腓骨神経成分は大腿二頭筋短頭へ枝を送ります。分かれる高さは膝窩付近がよく見られますが、骨盤内などで高く分かれる場合もあります。梨状筋を通る成分の位置にも変異があり、一本の図が全員の形を表すわけではありません。
11. 大腿後面の皮膚は坐骨神経だけではない
後大腿皮神経は仙骨神経叢から出る感覚神経で、通常は梨状筋の下側から臀部へ出て、大腿後面を下ります。下殿皮枝は臀部下方の皮膚へ、会陰枝は会陰側へ向かいます。坐骨神経と近い場所を通っても、同じ神経ではありません。後大腿皮神経は大腿後面の皮膚を受け持ち、坐骨神経は大腿後面の筋へ枝を出すので、皮膚と筋の行き先を分けます。臀部の上殿皮神経・中殿皮神経は腰・仙骨の後枝に由来する皮枝で、前枝から作られる上殿・下殿神経とは別です。
12. 脛骨神経は膝の後ろから後区画へ
坐骨神経から続く脛骨神経は通常L4〜S3の線維を含みます。膝窩では血管より浅い側を下り、膝窩筋などへの枝と、腓腹筋・ヒラメ筋などへの枝を送ります。ヒラメ筋の腱弓の深側から下腿後面の深い層へ進み、後脛骨動静脈に伴って足首の内側へ向かいます。浅い後区画と深い後区画の運動支配は脛骨神経へまとまり、細かい筋枝の出口は個体差があります。各筋の詳しい付着や作用は、下腿の筋の説明で確認します。
13. 総腓骨神経は外側から腓骨頸を回る
総腓骨神経は坐骨神経の一成分から続き、通常L4〜S2の線維を含みます。大腿二頭筋腱に近い膝外側を進み、腓骨頸の外側を回って、長腓骨筋の近くで浅腓骨神経と深腓骨神経へ分かれます。近位で外側腓腹皮神経や腓腹神経への交通枝が出ることもあります。本幹が外側を回ることと、二枝が同じ区画へ進むことは別です。深枝は前区画へ、浅枝は外側区画へ向かいます。分岐点や皮枝の組合せは一定の一座標には固定できません。
坐骨神経から膝後面へ
14. 深腓骨神経は前区画から第1趾間へ
深腓骨神経は前区画に入り、前脛骨動脈に近接して下り、前脛骨筋・長趾伸筋・長母趾伸筋などへ運動枝を送ります。足首前面では伸筋支帯の深側を通り、足背で内側枝と外側枝へ分かれます。外側枝は短趾伸筋・短母趾伸筋へ運動枝を送り、内側枝は母趾と第2趾の向かい合う側の小さな皮膚領域へ向かいます。典型的には第1趾間の皮膚が目印です。前区画の筋全体や足背全体の皮膚と同じ広さではありません。
15. 浅腓骨神経は外側区画から皮膚へ
浅腓骨神経は長腓骨筋・短腓骨筋へ運動枝を送った後、下腿遠位で深筋膜を貫いて皮下へ現れます。足背の内側・中間足背皮神経などへ分かれ、足背の広い皮膚領域へ向かいます。典型的な第1趾間は深腓骨神経、足外側縁は腓腹神経、足内側縁の一部は伏在神経として区別します。筋膜を貫く高さや枝の走行には変異があります。『浅い』という名前は全長が皮下を通ることや運動枝を持たないことを意味しません。
16. 腓腹神経は組合せが変わる感覚通路
腓腹神経は、脛骨神経由来の内側腓腹皮神経と、総腓骨神経側からの腓腹交通枝が合流して作られる形がよく見られます。ただし合流の有無・高さ・寄与する枝には変異があり、必ず二本が同じ高さで合流するとは限りません。下腿後外側を下り、小伏在静脈に近い区間を経て外果の後ろへ向かい、足外側縁の外側足背皮神経へ続きます。外側踵骨枝も皮膚へ向かいます。下腿筋へ運動枝を送る脛骨神経本幹と違い、この末梢通路は主に皮膚感覚を伝えます。
17. 内果の後ろで足底へ分かれる
脛骨神経は内果の後ろの屈筋支帯の深側を通って、足底へ進みます。通常は足首付近で内側足底神経と外側足底神経へ分かれますが、高さには変異があります。内側踵骨枝は踵の皮膚へ向かい、支帯より近位など異なる高さから出ることがあります。内果の後方では、前から後ろへ後脛骨筋腱・長趾屈筋腱・血管と脛骨神経・長母趾屈筋腱の通路を追います。神経と腱を一本にまとめず、既存の下腿筋章の通路と接続します。
18. 内側足底神経は内側の筋と皮膚へ
内側足底神経は母趾外転筋の深側へ入り、足底の内側へ進みます。代表的な運動枝は母趾外転筋、短趾屈筋、短母趾屈筋、第1虫様筋へ向かいます。足底の内側と通常内側3趾半の足底側皮膚に指神経を通じて感覚枝を送ります。趾先に近い爪床などへ届く枝もあります。足底側の地図を足背の全域へ広げません。神経の行き先と、個々の筋の付着や作用を分けて読むと、皮膚へ向かう枝との違いも整理できます。
19. 外側足底神経は浅枝と深枝へ
外側足底神経は足底を外側へ進み、浅枝と深枝へ分かれます。浅枝は通常外側1趾半の足底側皮膚へ指神経を通じて感覚枝を送り、運動枝も含みます。深枝は足底の深い層を内側へ進み、骨間筋や母趾内転筋などへ運動枝を送ります。本幹からも足底方形筋や小趾外転筋などへ枝が出ます。『浅枝は感覚だけ、深枝が全ての筋だけ』とは分けられません。足内在筋への支配は主要な通常関係として扱い、全微小枝と全個体差は未列挙です。
20. 感覚の模式範囲と根の数値を区別する
大腿前面の大腿神経系、大腿外側の外側大腿皮神経、大腿後面の後大腿皮神経、下腿内側の伏在神経、下腿後外側から足外側縁の腓腹神経、足背の浅腓骨神経と第1趾間の深腓骨神経、足底の脛骨神経から続く二枝を位置で並べます。隣り合う感覚領域は重なり、枝の構成にも個体差があります。境界線は数学的な線ではなく、模式図は個人の症状や診断を確定する地図ではありません。根の代表値と末梢の皮枝名から、患者の障害位置を一つに断定しません。
腓骨頸から深枝・浅枝へ
内果の後ろから足底へ
21. 皮膚への枝と筋への枝を分けて読む
大腿後面では、筋へ向かう坐骨神経の枝と、皮膚へ向かう後大腿皮神経が近い場所を通ります。同じ場所にある皮膚と筋だからといって、同じ神経が受け持つとは限りません。足背でも、浅腓骨神経の広い皮膚領域と、深腓骨神経の典型的な第1趾間の領域を分けて読みます。これらは境界に重なりや個体差のある模式範囲です。一枚の感覚図だけで、個人の支配範囲や障害位置を一つに決めることはできません。筋への枝、皮膚への枝、通過する場所をそれぞれ結び、感覚の地図と運動の行き先を区別します。
用語を確かめる
- 前枝
- 脊髄神経が分かれた枝。運動と感覚の線維を含み、神経叢の根になる。
- 前根
- 運動線維が脊髄から出る根で、混合性の前枝とは違う。
- 後根
- 感覚線維が脊髄へ向かう根。
- 神経叢
- 複数分節の線維束が組み替わり、末梢神経へ分かれるまとまり。
- 腰仙骨幹
- 通常L4の一部とL5から作られ、仙骨神経叢へ加わる束。
- 皮膚分節
- 一つの脊髄分節の感覚線維に対応する皮膚領域。
- 末梢神経の皮膚領域
- 神経叢で組み替わった末梢の皮枝が受け持つ模式範囲。
- 大腿鞘
- 大腿動静脈などの周囲の結合組織。大腿神経はその外側にある。
- 鼠径靱帯
- 骨盤前面の下縁を横切る帯。大腿神経はその深側から大腿へ入る。
- 閉鎖管
- 骨盤から大腿内側へ閉鎖神経・血管が通る短い通路。
- 内転筋管
- 大腿内側で血管と伏在神経などが通る筋の間の通路。
- 内転筋腱裂孔
- 血管が膝後面へ抜ける出口。伏在神経は通らない。
- 筋枝
- 筋へ向かう神経の枝。筋の内部感覚線維も含み得る。
- 皮枝
- 皮膚へ向かう感覚の枝。
- 腓骨頸
- 腓骨頭のすぐ下の細い部分。総腓骨神経が外側を回る。
- 前区画
- 下腿前面の筋の区画で、主に深腓骨神経の運動枝が入る。
- 外側区画
- 下腿外側の長・短腓骨筋の区画で、浅腓骨神経の運動枝が入る。
- 後区画
- 下腿後面の浅い・深い筋の区画で、脛骨神経の枝が入る。
- 深筋膜
- 筋のまとまりを覆う結合組織。浅腓骨神経の遠位皮枝がこれを貫く。
- 内果
- 脛骨遠位の内側の突出。脛骨神経はその後方から足底へ向かう。
- 外果
- 腓骨遠位の外側の突出。腓腹神経はその後方を通る。
- 伸筋支帯
- 足首前面で腱の通路を覆う帯。深腓骨神経も深側を通る。
- 屈筋支帯
- 内果後方で腱・血管・脛骨神経の通路を覆う帯。
- 第1趾間
- 母趾と第2趾の向かい合う側の小領域。典型的な深腓骨神経の感覚枝の目印。
- 足背
- 足の甲の側。足底とは別の面。
- 足底
- 足の裏の側。脛骨神経から続く足底神経が主要な枝を送る。
- 内在筋
- 足の内部で始まり止まる筋。下腿から長い腱で届く外在筋と区別する。
- 交通枝
- 別の枝の間を連絡する神経の枝。寄与する線維や合流位置は変異し得る。
- 変異
- 正常な構造や分岐の個体差。病気と同義ではない。
- 通常の構成
- 標準的な形として教示する代表値で、全個体での保証ではない。