鼻腔・副鼻腔、口腔・歯と唾液腺の局所関係

本文の目次

  1. 鼻腔の入口、左右、床と屋根
  2. 鼻甲介の下に鼻道がある
  3. 副鼻腔は周囲の骨の中にある
  4. 副鼻腔ごとに開口先を分ける
  5. 鼻前庭、呼吸部、嗅部と感覚
  6. 鼻へ来る動脈と戻る静脈
  7. 口腔を歯列の外と内で分ける
  8. 硬口蓋、軟口蓋、口峡と口腔底
  9. 歯の層、歯髄、歯周の支え
  10. 乳歯と永久歯の通常の並び
  11. 歯へ入る血管を上下で分ける
  12. 歯と歯肉の一般感覚の枝
  13. 口蓋と口腔底の血管・感覚
  14. 三大唾液腺はそれぞれの場所にある
  15. 耳下腺管は頬の前庭へ開く
  16. 顎下腺管と舌神経の隣接
  17. 舌下腺は複数の小管から開く
  18. 耳下腺の中を通る神経と血管
  19. 腺へ届く分泌線維の由来と同伴枝
  20. 顎下腺・舌下腺の血管は導管と別
  21. 開口、血液、神経を別の関係として読む

1. 鼻腔の入口、左右、床と屋根

外鼻孔から入った鼻腔は、後方の後鼻孔で上咽頭へ開きます。鼻中隔が左右を分け、前方の鼻中隔軟骨、篩骨の垂直板、鋤骨などがその支えです。床は硬口蓋で、その下に口腔があります。屋根の中央付近には篩骨の篩板があり、前方の鼻骨側と後方の蝶形骨側へ続きます。鼻腔の中の通路と、周囲の骨内の副鼻腔は同じ空間全体の名称ではありません。

2. 鼻甲介の下に鼻道がある

外側壁には上・中・下鼻甲介が張り出し、それぞれの下に上・中・下鼻道があります。上・中鼻甲介は篩骨の部分、下鼻甲介は独立した骨です。鼻甲介は突き出した構造、鼻道はその下の空間として区別します。涙の排出路である鼻涙管は下鼻道へ開きます。鼻涙管の開口を、涙腺の分泌口や副鼻腔の開口と一つにしません。

鼻甲介の下が鼻道

一側の鼻腔を前から見る位置模式。画面左の鼻中隔と右の外側壁の間に、上・中・下鼻甲介が張り出し、各鼻甲介の下に同名の鼻道を直接表示。床は硬口蓋で下に口腔がある。骨の細かな組成や前後の開口は描かない。
鼻甲介は張り出した構造、鼻道はその下の空間です。一側を広げた位置模式で、大きさの比は示しません。

3. 副鼻腔は周囲の骨の中にある

主な副鼻腔は前頭洞、上顎洞、篩骨蜂巣、蝶形骨洞です。前頭洞は前頭骨内で眼窩の上方、上顎洞は上顎骨内で眼窩の下方にあります。篩骨蜂巣は鼻腔と眼窩の間、蝶形骨洞は鼻腔の後上方の蝶形骨内にあります。上顎洞の床と上顎の奥歯の根との距離、蝶形骨洞とその上方のトルコ鞍側との関係には個体差があります。洞の大きさや骨の含気の広がりを一定にしません。

4. 副鼻腔ごとに開口先を分ける

通常、前頭洞、上顎洞、前・中篩骨蜂巣は中鼻道側へ排出します。前頭洞は前頭陥凹側の通路を介し、上顎洞の自然開口は内側壁の上方にあります。前篩骨蜂巣は篩骨漏斗側、中篩骨蜂巣は篩骨胞側などを介して中鼻道へ続きます。後篩骨蜂巣は上鼻道、蝶形骨洞は上鼻甲介より上後方の蝶篩陥凹へ開きます。全ての副鼻腔を下鼻道へ開くものとは考えず、細かな通路の型差も残します。

副鼻腔と鼻涙管の開口先

左に排出する洞または鼻涙管、右に鼻腔側の開口先を置いた対応図。前頭洞・上顎洞・前中篩骨蜂巣から中鼻道、後篩骨蜂巣から上鼻道、蝶形骨洞から蝶篩陥凹、鼻涙管から下鼻道へそれぞれ矢印を引く。隣接、管の形、相対的な高さの図ではない。
通常の開口先を対応させます。鼻涙管は涙の排出路です。細かな通路の型差や洞の位置はこの対応図に含めません。

5. 鼻前庭、呼吸部、嗅部と感覚

外鼻孔のすぐ内側の鼻前庭では、前方に皮膚や鼻毛があります。その奥の鼻腔の大部分は呼吸部の粘膜で、嗅上皮は上方の限られた範囲にあります。嗅覚を受ける嗅神経Iと、粘膜の触れ方や刺激などを伝える一般感覚は別です。鼻腔の一般感覚は、前上方の前篩骨神経などのV1側と、後下方の鼻口蓋神経・後鼻枝などのV2側が主な経路です。感覚範囲を個体差のない鋭い境界線にしません。

6. 鼻へ来る動脈と戻る静脈

鼻腔へは顎動脈の蝶口蓋動脈、眼動脈からの前・後篩骨動脈などが血液を供給します。鼻中隔前方には、顔面動脈の上唇動脈側や大口蓋動脈側などの枝も関わり、複数の動脈のつながりがあります。顎動脈・顔面動脈は外頸動脈系、眼動脈は通常内頸動脈系です。静脈は顔面静脈側、眼静脈側、翼突筋静脈叢側などへ連絡して戻ります。これらの血管は粘膜の周囲を走り、副鼻腔の排出用の開口とは別の道です。

7. 口腔を歯列の外と内で分ける

口腔前庭は、外側の口唇・頬と、内側の歯・歯肉との間の空間です。歯列の内側は固有口腔で、舌がその中に位置し、後方は口峡を通じて口咽頭へ続きます。口唇・頬の外は皮膚、内は粘膜で、粘膜の下には筋などの組織があります。歯と歯肉は空間を区切る側の構造で、歯の内部の歯髄腔を固有口腔と呼ぶわけではありません。

歯列の外と内の空間

口腔を上から読む区画模式で、画面下が前方の口唇、上が後方の口峡・口咽頭側。外周を口唇と頬の内面、内側の帯を歯と歯肉として、その間に口腔前庭、帯の内側に舌を含む固有口腔を示す。後方の口峡は開いたまま。歯の本数や上顎・下顎歯列の実形を表さない。
口腔前庭は口唇・頬と歯・歯肉の間、固有口腔は歯列の内側です。帯は歯と歯肉の位置の模式で、歯数を数える図ではありません。

8. 硬口蓋、軟口蓋、口峡と口腔底

口腔の天井の前方は、上顎骨と口蓋骨が支える硬口蓋で、鼻腔と口腔を隔てます。その後方の軟口蓋は主に筋などの柔らかな組織です。後方の口峡の側には口蓋舌弓があり、その後ろの口蓋咽頭弓との間に口蓋扁桃があります。口腔底では顎舌骨筋が主な筋性の支えとなり、その上に舌側の組織や舌下腺などが位置します。口腔底の粘膜面と、その下の筋や腺を分けて読みます。

9. 歯の層、歯髄、歯周の支え

歯冠は口腔側へ出た部分、歯根は歯槽内にある部分で、その境付近が歯頸です。歯冠の表面はエナメル質、歯根の表面はセメント質で、その内側には象牙質があります。中央の歯髄には血管や神経があり、歯根の中の根管へ続きます。歯根膜はセメント質側と歯槽骨側をつなぐ結合組織で、歯肉は歯頸周囲などを包みます。歯髄の内部の道と、歯根の外側の支持組織は別です。

歯の層と外側の支え

一歯の断面模式。歯冠表面のエナメル質、根表面のセメント質、その内側の象牙質と中央の歯髄・根管を描く。歯髄の血管・神経は直接文字で示し、個々の束の形は描かない。根の外側の歯根膜は歯槽骨との間、歯肉は頸部周囲にある。根は一つに簡略化しており、全歯種の根数や厚さを固定しない。
表面の被覆、血管・神経を含む内側の歯髄、外側の歯根膜と歯槽骨を分けます。色に加えて文字と輪郭で各層を示した模式です。

10. 乳歯と永久歯の通常の並び

永久歯では正中から奥へ、切歯、犬歯、小臼歯、大臼歯の順に並びます。上下・左右の一つの区画では通常、切歯2、犬歯1、小臼歯2、大臼歯3で、第三大臼歯を含めると全体で32本に相当します。乳歯は同じ一つの区画で切歯2、犬歯1、乳臼歯2で、通常全体で20本です。乳歯には小臼歯がありません。歯の欠如や第三大臼歯の萌出の違いがあるため、成人の口内に必ず32本見えるとは考えません。

11. 歯へ入る血管を上下で分ける

上顎の歯には上歯槽動脈群が関わります。後上歯槽動脈は顎動脈から、前上歯槽動脈は眼窩下動脈側から来て、中上歯槽動脈の有無や分岐には違いがあります。下顎の歯には主に顎動脈の下歯槽動脈が下顎管を通って届きます。細かな枝は根の先などから歯髄へ入ります。静脈は血液を戻し、同伴する歯槽静脈から翼突筋静脈叢側などへ続きます。歯髄へ血液が届くことと、唾液が歯の表面へ届くことを区別します。

12. 歯と歯肉の一般感覚の枝

上顎の歯の一般感覚はV2の上歯槽神経群、下顎の歯はV3の下歯槽神経側が主な対応です。上顎の口蓋側の歯肉では大口蓋神経や鼻口蓋神経、下顎の舌側の歯肉では舌神経が関わります。下顎の奥歯の頬側の歯肉では主に頬神経、前方の頬・口唇側ではオトガイ神経側が関わります。歯髄の感覚を受ける枝と、その周囲の粘膜の感覚を受ける枝を一つにせず、分布の重なりも残します。

13. 口蓋と口腔底の血管・感覚

硬口蓋の血液供給では、顎動脈の下行口蓋動脈からの大口蓋動脈が主要な経路です。口腔底には舌動脈の舌下動脈、顔面動脈のオトガイ下動脈側などが関わります。血液は静脈を通じて顔面静脈・舌静脈側などへ戻ります。硬口蓋の一般感覚は主にV2の大口蓋・鼻口蓋神経、口腔底や舌前方の一般感覚はV3の舌神経側です。感覚の枝名と、血液を供給する動脈名は別々に対応させます。

14. 三大唾液腺はそれぞれの場所にある

耳下腺、顎下腺、舌下腺が三大唾液腺で、通常それぞれ左右にあります。耳下腺の主な部分は耳の前下方、下顎枝の後外側付近にあります。顎下腺の大きな部分は下顎骨の下、顎舌骨筋の下面側にあり、深部はその後縁を回って口腔底側へ続きます。舌下腺は顎舌骨筋の上、舌の下の口腔底にあります。口唇や頬などには小唾液腺もあり、三大唾液腺の名を全唾液腺の一覧としません。

15. 耳下腺管は頬の前庭へ開く

耳下腺管は腺から前へ出て、咬筋の表面側を横切ります。咬筋の前縁付近で内側へ向きを変え、頬筋を貫いて、上顎第二大臼歯に向かい合う頬粘膜の耳下腺乳頭へ開きます。この場所は口腔前庭です。耳の近くの腺から出ることと、中耳や外耳道に導管が開くことは同じではありません。管の向きや長さは模式図の形に固定しません。

16. 顎下腺管と舌神経の隣接

顎下腺管は腺の深部から口腔底を前方へ進み、舌小帯の左右にある舌下小丘へ開きます。これは固有口腔の床の粘膜面です。通常、舌神経は後方で管の外側からその下を回り、前方では内側へ移る関係があります。神経は管の壁の外の隣接構造であり、管の内腔を通る唾液と同じ道を流れません。神経と管の交差の位置や枝の違いも残します。

17. 舌下腺は複数の小管から開く

舌下腺には複数の小舌下腺管があり、口腔底の舌下ヒダに沿って開きます。全ての小管を舌下小丘の一つの孔へ集めるものとは考えません。大きな舌下腺管がある場合には顎下腺管へ合流したり、舌下小丘側へ別に開いたりする型があります。舌下ヒダの複数の開口と、顎下腺管の舌下小丘の開口を区別し、全ての人で同じ一管の型としません。

口腔底で開口先を分ける

左に顎下腺から顎下腺管を通って舌小帯の左右の舌下小丘へ開く経路、右に舌下腺から複数の小舌下腺管を通って舌下ヒダ沿いの複数開口へ進む経路を別々に置く対応図。矢印は唾液が開口へ進む向き。大きな舌下腺管の型差、舌神経と導管の隣接、筋の位置は描かない。
顎下腺管の舌下小丘と、小舌下腺管の舌下ヒダ沿いを分けます。図は開口先の対応で、腺や管の実際の位置・長さを示しません。

18. 耳下腺の中を通る神経と血管

耳下腺内では通常、浅い側から顔面神経、下顎後静脈、外頸動脈という代表的な深さの順を読みます。外頸動脈は腺内で浅側頭動脈と顎動脈へ分かれ、腺にも血液を供給する枝を出します。下顎後静脈は主に浅側頭静脈と顎静脈の合流からでき、頸部の静脈系へ戻ります。顔面神経は腺内を通って表情筋側の枝へ続きますが、そこを通ることだけで耳下腺の分泌線維の起源を顔面神経と決めません。深さや分岐の細かな違いもあります。

耳下腺管と腺内の深さ

上段は腺から前方の咬筋表面を横切り、その前縁で内側へ曲がって頬筋を貫き、上顎第二大臼歯に面する口腔前庭の頬粘膜へ開く導管の経路を順に読む対応図。下段は別パネルで、浅い顔面神経、下顎後静脈、深い外頸動脈の代表的深さを同じ形の箱で並べる。下段の矢印は深さの順で、流れではない。
上段は唾液の経路、下段は別の深さの模式です。顔面神経が腺内を通ることだけで、耳下腺の分泌線維の起源を決めません。

19. 腺へ届く分泌線維の由来と同伴枝

耳下腺へ届く節後副交感線維は、耳神経節から耳介側頭神経に伴って来ます。その節前線維の由来は舌咽神経IX側です。顎下腺と舌下腺では顔面神経VIIの鼓索側から舌神経に伴って来た節前線維が顎下神経節で中継し、節後の枝がそれぞれの腺へ届きます。三叉神経の枝に同伴することと、分泌線維の節前の由来が三叉神経であることを同一にしません。これらの線維は唾液を運ぶ導管の内腔とは別です。

20. 顎下腺・舌下腺の血管は導管と別

顎下腺には主に顔面動脈からの腺枝などが供給し、舌下腺には舌動脈の舌下動脈や顔面動脈系の枝が関わります。静脈の血液は顔面静脈側・舌静脈側などへ戻ります。腺の周囲に来る血管は腺組織を養う道、導管は腺が分泌した唾液を粘膜面へ運ぶ道です。三大唾液腺を全て同じ一本の動脈や静脈だけで説明しません。

21. 開口、血液、神経を別の関係として読む

鼻道には副鼻腔からの排出路や鼻涙管の開口があり、口腔にはそれぞれの唾液腺管の開口があります。粘膜や歯、腺へ血液を届けて戻すのは血管、一般感覚や分泌への信号を伝えるのは神経です。開口の場所を知っただけで、血管の流入先や神経の由来まで同じと決めません。空間の境界、管が開く場所、周囲を走る血管と神経を順に対応させます。

用語を確かめる

鼻腔
外鼻孔から後鼻孔までの左右の通路。
鼻中隔
左右の鼻腔を分ける壁。
後鼻孔
鼻腔後方から上咽頭へ開く口。
硬口蓋
鼻腔と口腔の間にある骨性の部分。
鼻甲介
鼻腔外側壁から張り出す構造。
鼻道
各鼻甲介の下にある空間。
鼻涙管
涙嚢から下鼻道へ続く排出管。
副鼻腔
鼻腔周囲の骨内にある含気腔。
篩骨蜂巣
篩骨内の複数の含気腔。
蝶篩陥凹
上鼻甲介の上後方で蝶形骨洞が開く場所。
鼻前庭
外鼻孔すぐ内側で前方が皮膚に覆われる部分。
蝶口蓋動脈
顎動脈から鼻腔へ入る主要な枝。
口腔前庭
口唇・頬と歯・歯肉の間の空間。
固有口腔
歯列の内側の空間。
口峡
口腔と口咽頭の間の開き。
口腔底
舌の下の粘膜とその下の支えの領域。
歯冠
歯の口腔側へ出る部分。
歯根
歯槽内にある歯の部分。
歯髄
歯の内部の血管や神経を含む組織。
歯根膜
歯根と歯槽骨をつなぐ結合組織。
象牙質
エナメル質やセメント質の内側で歯髄を囲む組織。
エナメル質
歯冠表面の硬い組織。
セメント質
歯根表面の組織。
小臼歯
永久歯の犬歯と大臼歯の間の歯。
歯槽神経
歯の一般感覚へ向かう主要な神経群。
耳下腺
耳前下・下顎枝の後外側付近の大唾液腺。
顎下腺
下顎骨の下の主部と口腔底へ続く深部をもつ腺。
舌下腺
顎舌骨筋の上で舌の下の口腔底にある腺。
耳下腺乳頭
上顎第二大臼歯に面する耳下腺管の開口部。
舌下小丘
舌小帯の左右にある顎下腺管などの開口部。
舌下ヒダ
舌下腺の上にある口腔底の粘膜の隆起。
下顎後静脈
耳下腺内で浅側頭静脈と顎静脈が合わさる主要静脈。
耳神経節
耳下腺へ向かう副交感線維の中継部。
顎下神経節
顎下腺・舌下腺へ向かう副交感線維の中継部。