骨盤内の支持構造と尿道の局所の通路
本文の目次
- 骨盤の位置は同じ軸で読む
- 女性型の前後を膀胱・子宮腟・直腸で分ける
- 子宮の傾きと曲がりを分ける
- 腹膜のくぼみと臓器の内腔は別である
- 広間膜は腹膜の二重のひだである
- 卵巣をつなぐ三つの関係を分ける
- 子宮の支持はひだ・索・骨盤底で役割が違う
- 子宮動脈と尿管の交差、卵巣血管の入口
- 女性型の尿道は腟とは別に開く
- 骨盤底と会陰の膜を同じ平面にしない
- 精巣の被膜と陰嚢の壁を分ける
- 精索は複数の通路をまとめた束である
- 精管の骨盤内の交差を位置で読む
- 男性型の膀胱底の下に前立腺がある
- 射精管の開口と尿道の通路を分ける
- 男性型の尿道を通る領域で区分する
- 括約筋と尿道球腺は別の周囲構造である
- 尿道海綿体と陰茎海綿体を分ける
- 性腺への血管と骨盤・会陰の血管を分ける
- 体性神経と自律神経を別の連絡として読む
- 近接・支持・内腔の連続を区別してまとめる
1. 骨盤の位置は同じ軸で読む
この章では正常成人の一般的な女性型・男性型の配置を、本人の左右、前後、上下を固定して読みます。骨盤腔は骨盤の内側、会陰は骨盤底より下の領域です。前は恥骨側、後ろは仙骨・直腸側です。図の左右と本人の左右を区別し、臓器の形、支持、管の内腔を別の関係として追います。配置には個人差があり、一つの図から全ての人の形を確定しません。
2. 女性型の前後を膀胱・子宮腟・直腸で分ける
女性型の正中付近では、前から恥骨、膀胱と尿道、その後ろに子宮・腟、さらに後ろに直腸を読みます。腟の前壁には尿道と膀胱が近く、後壁には直腸が近接します。子宮頸部は腟の上部へ突き出し、その周囲のくぼみを腟円蓋と呼びます。近接している二つの臓器を、内腔が直接つながる一本の管とはしません。
3. 子宮の傾きと曲がりを分ける
通常の子宮では、子宮頸部の軸が腟の軸に対して前へ傾く前傾と、子宮体部が頸部に対して前へ曲がる前屈を区別します。子宮体部は膀胱の上方に近い位置をとりますが、傾きや曲がり、膀胱の充満による位置の変化には幅があります。前傾と前屈を同じ角度の別名にせず、後方へ傾く配置なども個人差として残します。
4. 腹膜のくぼみと臓器の内腔は別である
腹膜は子宮の前面側で膀胱へ反転して膀胱子宮窩を、後面側で直腸へ反転して直腸子宮窩をつくります。直腸子宮窩は後腟円蓋の上方に近接しますが、腟腔そのものではありません。子宮頸部や腟の全表面を腹膜で包まれた袋とはしません。男性型では膀胱と直腸の間の腹膜の反転を直腸膀胱窩として区別します。これらのくぼみは尿や精液の輸送管ではありません。
5. 広間膜は腹膜の二重のひだである
子宮広間膜は子宮の側方から骨盤壁へ広がる腹膜の二重のひだです。子宮に関わる広い部分を子宮間膜、卵管付近の部分を卵管間膜、卵巣の門側をつなぐ短い部分を卵巣間膜として区別します。これらは同じ厚い腱の三つの別名ではありません。広間膜が存在することを、子宮の主要な支持がこの薄いひだだけで担われることと同じにはしません。
6. 卵巣をつなぐ三つの関係を分ける
卵巣間膜は卵巣の門側を広間膜へつなぐ短い腹膜のひだです。卵巣提索は卵巣と骨盤側壁の間にあり、卵巣の血管などを通します。固有卵巣索は卵巣の子宮側の端と、卵管の付着部に近い子宮の角をつなぐ結合組織の索です。卵巣の表面は通常の腹膜の漿膜で全体を包まれるわけではなく、卵巣間膜の付着と表面の被覆を分けます。卵管と卵巣の間に閉じた管が直結するわけではないという既知の関係も保ちます。
7. 子宮の支持はひだ・索・骨盤底で役割が違う
子宮円索は子宮の角付近から鼠径管を通って大陰唇側へ向かい、子宮の前方への位置に関わります。子宮頸部や腟上部の側方を支える基靭帯、後方の仙骨側へつながる仙骨子宮靭帯は、腹膜の広間膜と区別する結合組織の支持です。基靭帯は側方の筋膜性のまとまりで、骨格筋の一本とはしません。下方からは骨盤底の筋や筋膜も支えます。一つの索だけで臓器が完全に吊り下がるとせず、支持の役割を分けます。
卵巣の付着:三つの関係
8. 子宮動脈と尿管の交差、卵巣血管の入口
子宮動脈は通常、内腸骨動脈系から子宮へ向かい、子宮頸部の外側付近で尿管の上方を横切ります。尿管はこの動脈の枝ではなく、膀胱へ向かう別の内腔です。卵巣動脈は通常、腹部大動脈から起こり、卵巣提索側を通って卵巣へ向かいます。卵巣静脈は通常、右が下大静脈へ、左が左腎静脈へ注ぎます。動脈の起始を静脈の合流へ写し替えず、細枝や交通の変異は残します。
9. 女性型の尿道は腟とは別に開く
女性型の尿道は膀胱から下り、恥骨結合の後方、腟の前方を通って腟前庭へ開きます。外尿道口は陰核より後方で腟口より前方にある別の開口です。腟前庭は小陰唇の間の領域で、腟腔そのものではありません。尿道の通路が腟の前壁に近いことと、尿道口が腟の内腔へ開くことを混同しません。尿管は腎から膀胱へ、尿道は膀胱から体外へという既知の区別を保ちます。
10. 骨盤底と会陰の膜を同じ平面にしない
骨盤底の筋のまとまりである骨盤隔膜には肛門挙筋群と尾骨筋が含まれ、骨盤内の臓器を下方から支えます。会陰膜は尿生殖の領域で会陰の浅い側と深い側を区別する結合組織の膜で、骨盤隔膜の筋全体と同じものではありません。尿道や腟が通る位置と、肛門側の通路を分けます。外尿道括約筋の骨格筋と、周辺の膜や平滑筋を一枚の板としてまとめません。ここでは筋の起始・停止を改めて列挙しません。
11. 精巣の被膜と陰嚢の壁を分ける
精巣と精巣上体の基本的な位置・通路は既に学んだ関係です。ここでは陰嚢の壁と、精巣の被膜を分けます。陰嚢の皮膚の下には平滑筋を含む肉様膜などがあります。精巣鞘膜は壁側と臓側をもつ漿膜で、そのさらに内側に精巣を直接包む線維性の白膜があります。漿膜の面の間の空間と、精子が通る管の内腔は別です。鞘膜を精巣全体の一様な閉鎖膜として描かず、後方の付着部などの違いを残します。
12. 精索は複数の通路をまとめた束である
精索は精管、精巣動脈、蔓状静脈叢、神経やリンパ管などを含む束で、精管一本と同じものではありません。精巣動脈は通常腹部大動脈から来て、蔓状静脈叢の還流は精巣静脈へ集まります。精巣静脈も通常、右は下大静脈へ、左は左腎静脈へ注ぎます。精索の被覆の層と、その中を通る血管・管を分けます。腸骨鼠径神経は鼠径管内で精索に伴いますが、通常は精索の内容そのものに含めません。
13. 精管の骨盤内の交差を位置で読む
精索は鼠径管を通る束で、深鼠径輪から浅鼠径輪へ続く通路をもちます。精管は骨盤内では膀胱の後方へ向かい、膀胱に近い所で尿管の上方を横切ります。その先に精管膨大部があり、精嚢の管との関係へ続きます。尿管と精管が交差することは、二つの内腔がそこで合流する意味ではありません。精子の全輸送経路と分泌の役割は既存の教示を参照し、ここでは隣接する管の位置を分けます。
精巣の被膜:外から内へ
14. 男性型の膀胱底の下に前立腺がある
男性型では前立腺が膀胱の下方にあり、前立腺部尿道を囲み、直腸はその後方に位置します。精嚢は膀胱底の後方、前立腺の上方に近い位置です。前立腺を膀胱の内腔に浮く腺や、直腸の管の一部とはしません。膀胱の充満や個人差で位置関係には幅があり、正中の図から左右の全ての細部を確定しません。
前後の配置:二つの通常モデル
15. 射精管の開口と尿道の通路を分ける
射精管は前立腺内を通り、前立腺部尿道の後壁にある精丘付近へ開きます。前立腺小室はこの付近にある小さな盲端のくぼみで、射精管そのものと同じ管ではありません。尿は膀胱から尿道へ来て、射精管から来る通路とは起点が異なります。精液成分の全説明や射精の機能調節を改めて教示するのでなく、局所の開口と内腔の対応を読む範囲です。
16. 男性型の尿道を通る領域で区分する
男性型の尿道は、膀胱壁内の短い壁内部、前立腺内の前立腺部、その先の中間部(膜様部)、尿道海綿体内の海綿体部として読むことができます。壁内部を別に数えない三つの主要区分の表し方もあり、名前を省いた表と通路が消えることを同じにしません。尿道海綿体へ入る前の短い中間部と、その後の長い海綿体部は別です。尿道を尿管の続きとして直接精索へ入れません。
17. 括約筋と尿道球腺は別の周囲構造である
外尿道括約筋は尿道の周囲の骨格筋で、男性型では短い中間部の周囲などに位置します。膀胱頸の平滑筋と同じ組織ではなく、女性型の周囲の筋のまとまりも一律に同じ輪へ簡略化しません。尿道球腺は男性型の深い会陰の領域にあり、その管は近位の海綿体部尿道へ開きます。腺そのものが尿道の途中で管へ改名するのではありません。処置の通路や制御機能の全体はここから断定しません。
尿道の領域と別の開口
18. 尿道海綿体と陰茎海綿体を分ける
陰茎を横断する模式では、背側に対をなす陰茎海綿体、腹側に尿道を囲む尿道海綿体を区別します。背側・腹側は体の解剖学的な向きで読みます。尿道海綿体は近位で陰茎球、遠位で亀頭へ続きます。尿道を二つの陰茎海綿体の内腔へ入れず、血液の流入する組織と尿・精液が通る尿道の内腔を別にします。これは断面の配置で、全血管や勃起の調節を描くものではありません。
陰茎の横断:背側と腹側
19. 性腺への血管と骨盤・会陰の血管を分ける
精巣・卵巣の動脈は通常大動脈側から来ますが、子宮や前立腺などの骨盤内の臓器は内腸骨動脈系の枝からも供給を受けます。会陰や外性器へ向かう主要な系統に内陰部動脈があります。子宮・前立腺などの静脈叢の還流は内腸骨静脈系へ向かう通路をもち、性腺静脈の左右で異なる合流と区別します。臓器ごとの全ての動静脈枝、交通や起始の変異をこのまとまりだけで確定しません。
20. 体性神経と自律神経を別の連絡として読む
会陰の感覚や外尿道括約筋などの骨格筋に関わる陰部神経は、主にS2–S4に由来する体性神経です。骨盤内臓神経はS2–S4に由来する副交感性の連絡で、仙骨内臓神経という交感性の連絡とは区別します。下下腹神経叢には下腹神経側などの交感性の連絡と骨盤内臓神経側の連絡が加わり、臓器側の神経叢へ続きます。勃起組織へ向かう海綿体神経の自律性の連絡と、陰茎・陰核の背神経の体性感覚を同じ一本の別名にしません。各筋の支配と全ての小枝は既存の筋・神経の教示と分けます。
骨盤の神経:体性と自律性
21. 近接・支持・内腔の連続を区別してまとめる
隣り合う臓器は内腔が合流するとは限らず、支持のひだや索は輸送管ではありません。女性型の子宮動脈と尿管、男性型の精管と尿管の交差では、上下の位置とそれぞれの内腔を分けます。図の左右・前後・上下を揃え、変異や支持組織の厚さの幅を残します。内分泌、発生、リンパの全経路、全性差・個人差、手術の判断をこの正常局所の配置だけで確定しません。
尿管との交差:上と下を分ける
用語を確かめる
- 骨盤腔
- 骨盤の内側の空間。
- 会陰
- 骨盤底より下の領域。
- 恥骨結合
- 前方で左右の恥骨をつなぐ関節。
- 子宮頸部
- 子宮の下方の細い部分。
- 腟円蓋
- 腟上部で子宮頸部の周りにできるくぼみ。
- 前傾・前屈
- 頸部と腟の軸の傾き、体部と頸部の曲がりという別の関係。
- 腹膜腔
- 腹膜の面の間の空間。臓器の内腔とは別。
- 膀胱子宮窩
- 膀胱と子宮の間の腹膜の反転でできるくぼみ。
- 直腸子宮窩
- 子宮後方と直腸の間の腹膜のくぼみ。
- 直腸膀胱窩
- 男性型で膀胱と直腸の間にできる腹膜のくぼみ。
- 子宮広間膜
- 子宮側方の腹膜の二重のひだ。
- 子宮間膜
- 広間膜の子宮に関わる広い部分。
- 卵管間膜
- 広間膜の卵管付近の部分。
- 卵巣間膜
- 卵巣の門側を広間膜につなぐ短いひだ。
- 卵巣門
- 血管や神経などが出入りする卵巣の付着側の領域。
- 卵巣提索
- 卵巣と側壁の間で卵巣血管などを通すひだ。
- 固有卵巣索
- 卵巣の子宮側の端と子宮の角をつなぐ結合組織の索。
- 子宮円索
- 子宮の角付近から鼠径管を通り大陰唇側へ向かう索。
- 基靭帯
- 子宮頸部・腟上部の側方の筋膜性支持のまとまり。
- 仙骨子宮靭帯
- 子宮頸部側から仙骨側への結合組織の支持。
- 骨盤隔膜
- 肛門挙筋群や尾骨筋による骨盤底の筋のまとまり。
- 会陰膜
- 尿生殖領域の浅深を区別する結合組織の膜。
- 腟前庭
- 小陰唇の間で尿道口や腟口などが開く領域。
- 外尿道口
- 尿道が体表側へ開く口。
- 陰核
- 外性器の感覚に関わる勃起組織をもつ構造。尿道口ではない。
- 精巣鞘膜
- 精巣付近の壁側・臓側の漿膜。
- 白膜
- 精巣を直接覆う線維性の被膜。
- 肉様膜
- 陰嚢壁で平滑筋を含む層。
- 精索
- 精管や精巣血管・神経などを含む束。
- 蔓状静脈叢
- 精巣からの還流が集まる静脈の網。
- 鼠径管・鼠径輪
- 腹壁の通路と、その深い側・浅い側の入口。
- 精管膨大部
- 精管の膀胱後方に近い拡がった部分。
- 精嚢
- 膀胱底後方・前立腺上方に近い対の付属腺。
- 前立腺
- 膀胱下方で前立腺部尿道を囲む腺。
- 精丘
- 前立腺部尿道後壁の隆起。
- 前立腺小室
- 精丘付近の小さな盲端のくぼみ。
- 壁内部・前立腺部
- 膀胱壁内と前立腺内という尿道の区分。
- 中間部・海綿体部
- 尿道海綿体に入る前と、その中を通る尿道の別区分。
- 外尿道括約筋
- 尿道周囲の骨格筋。
- 尿道球腺
- 深い会陰の腺で、管が近位海綿体部尿道へ開く。
- 陰茎海綿体・尿道海綿体
- 背側の対の勃起組織と、腹側で尿道を囲む組織。
- 内陰部動脈
- 内腸骨動脈系から会陰などへ向かう動脈。
- 骨盤内臓神経・仙骨内臓神経
- 副交感性と交感性という別の連絡。
- 下下腹神経叢
- 骨盤内で交感・副交感性の連絡が加わる神経叢。
- 海綿体神経・背神経
- 勃起組織へ向かう自律性の連絡と陰茎・陰核の体性感覚の連絡。