腹膜の面・空間と、間膜の連続

本文の目次

  1. 臓器の表面と、面の間のすきま
  2. 壁から臓器へ折り返して続く
  3. 腹膜内と後腹膜は配置の違い
  4. 大嚢と、胃の後方にある網嚢
  5. 網嚢孔を四方向の隣接から読む
  6. 小網の面と、厚い自由縁
  7. 大網は前へ下がり、折り返す
  8. 腸間膜は後腹壁から腸へ広がる
  9. 横行とS状の結腸間膜を区別する
  10. 区画の境は、完全な壁ではない
  11. 骨盤への広がりと、臓器間の反転
  12. 面・ひだ・空間を一続きで読む

1. 臓器の表面と、面の間のすきま

腹壁の内側を覆う壁側腹膜と、臓器の表面を覆う臓側腹膜を分ける。腹膜腔はその腹膜の表面間に関係するすきまで、胃や腸の内腔でも、臓器の組織が詰まった部分でもない。表面には少量の液があり、臓器の動きに伴うすべりを助ける。腹膜内臓器という名前から、臓器が大きな空洞の中に孤立して浮いていると考えない。

2. 壁から臓器へ折り返して続く

腹膜は壁側と臓側で別の場所を覆うが、折り返しで続く。腸間膜では二葉の間に組織があり、血管・リンパ管・神経が臓器へ向かう。面の間にある腹膜腔、ひだの内部の組織、腸の内腔は三つの別の場所である。腸の付着部から腹壁側へたどれることと、腸の中が腹膜腔に開くことを混同しない。

腹膜の面、腸間膜の内部、腸の内腔

拡大した局所の断面模式で画面左が前、右が後。腹壁内面に沿う壁側腹膜から、後腹壁側と腸の間のひだの二葉へ連続する。腸の外表を覆う臓側腹膜を別に名付けし、腸の白い内腔、腸間膜内の淡色の組織と血管・リンパ管・神経の位置、腹膜腔の白いすきまを分ける。腸間膜は後腹壁まで続き、腸を空間に孤立して浮かせない。模式では面の間隔を広げ、実際の寸法や全腹部の精密投影、全血管枝は示さない。
左が前、右が後の局所断面模式です。白いすきまの腹膜腔、ひだ内の組織、腸の内腔は別です。腸間膜の付着を残し、臓器が空洞に孤立して浮く配置にしません。

3. 腹膜内と後腹膜は配置の違い

腹膜内臓器は大部分を臓側腹膜に覆われ、間膜などを介して周囲につながる。門や付着部まで全表面が同じ覆いになるとは限らない。後腹膜は腹膜の背側に関係する配置で、腹膜腔内のもう一つの袋の名前ではない。腎のように初めから後腹膜にある構造と、膵の主要部や上行・下行結腸のように発生中の付着で固定される構造を区別する。臓器全体の被覆は部位差も合わせて読む。

4. 大嚢と、胃の後方にある網嚢

腹膜腔の主要な広がりを大嚢、胃と小網の後方に関係する部分を網嚢と呼ぶ。網嚢は小嚢とも呼ばれ、胃の内腔とは別の空間である。胃を前後から見ると、前方の大嚢側と後方の網嚢側を分けて読めるが、二つは別々に閉じた袋ではない。網嚢孔が両者の連絡に関係する。

5. 網嚢孔を四方向の隣接から読む

網嚢孔は大嚢と網嚢の連絡部で、肝十二指腸間膜の自由縁の後方に関係する。前方はその自由縁、後方は腹膜に覆われた下大静脈、上方は肝尾状葉、下方は十二指腸上部が目印となる。腹膜腔の連絡を示す名称であり、消化管や血管の壁に開いた穴ではない。周囲には臓器と血管があるため、何もない広い窓のように考えない。

大嚢・網嚢の連絡と、網嚢孔の周囲

上段は大嚢と網嚢の空間の連絡を網嚢孔として示す独立した模式。線は空間の連絡で血流・消化管の内腔や器具の通過を示さない。その下の前後模式は画面左が前、右が後で、胃の後方に網嚢、さらに後方に膵側を置く。下段は別の四方向の位置模式で、網嚢孔の前方に肝十二指腸間膜自由縁、後方に腹膜に覆われた下大静脈、上方に肝尾状葉、下方に十二指腸上部を置く。間隔は拡大した模式で、孔の実際の広さ、全境界面、手技や通過の可否は示さない。
上は腹膜腔の空間の連絡、下はその連絡部の四方向の隣接です。下段の左は前、右は後です。網嚢孔を血管や消化管に開く穴へ置き換えず、何もない広い窓として扱いません。

6. 小網の面と、厚い自由縁

小網は肝側と胃小弯側・十二指腸上部をつなぐ。胃側の肝胃間膜と、十二指腸側の肝十二指腸間膜を区別する。肝十二指腸間膜の自由縁には胆管・肝動脈・門脈が関係する。通常、胆管は本人の右側、肝動脈は左側、門脈はその背側にある。三つは同じ内腔へ合流する管ではなく、走行や動脈の枝には型差がある。自由縁の後方の網嚢孔は、このひだの中を通る管とも別の場所である。

小網の二部分と、自由縁内の通常の位置

上は肝側と胃小弯側をつなぐ肝胃間膜、肝側と十二指腸上部をつなぐ肝十二指腸間膜を分けた付着の模式。下は独立した自由縁の横断の通常型で画面上が前、下が後、本人右が画面左、本人左が画面右。胆管を本人右、肝動脈を本人左、門脈をその背側に置く。三つの内腔は別で、合流線・血流矢印は示さない。全分枝や全走行型、精密な臓器の投影は省略する。
上は小網の付着、下はその自由縁の独立した横断模式です。下の上方が前、下方が後です。門脈の通常の背側位置を読み、血管と胆管を同じ内腔へまとめません。

7. 大網は前へ下がり、折り返す

大網は胃大弯側から前方へ下がり、小腸などの前を覆う折り返しとして関係する。下降して戻る層と横行結腸側とのつながりを、胃や腸の内腔とは別に読む。成人では層の癒合があり、折り返しの間をどこでも同じ厚さの開いた空洞としては扱わない。大網は腹膜のひだで、網嚢全体や小網の自由縁の別名ではない。

大網の前方への下降と、成人の層の関係

画面左が前、右が後の局所の層と付着の模式。胃大弯側から前方へ下降し戻る大網の層を淡色の帯で示し、横行結腸側の付着を分ける。小腸の外形をその後方に独立して置く。帯は腹膜の層と組織の付着で、消化管の内腔ではない。層の成人での癒合を説明し、折り返しの全域を一つの開いた腔へ固定しない。全腹部の精密投影、癒合の全型差や全層の寸法は示さない。
左が前、右が後です。大網の下降と戻る層、臓器の外形を分けています。成人では層の癒合があるため、折り返しを全例で同じ広さの開いた袋へ置き換えません。

8. 腸間膜は後腹壁から腸へ広がる

空腸・回腸の腸間膜は後腹壁の付着から腸へ広がる。ひだの二葉の間に血管などが関係し、ひだの両側には腹膜腔の空間が関係する。付着する根と、自由に動き得る腸側の縁を同じ線にしない。腸の位置が動いても、後腹壁との連続がなくなるわけではない。根の細かな走行と各血管の全枝は、この付着関係だけから一律に決まらない。

9. 横行とS状の結腸間膜を区別する

横行結腸間膜とS状結腸間膜は、それぞれの結腸と後腹壁の付着に関係する。腹膜腔の上部では横行結腸間膜が区分の目印となり、結腸上部と結腸下部を分けて読む。S状結腸間膜を同じ高さの仕切りへ置き換えない。間膜の長さや付着、結腸の可動性には個体差がある。

10. 区画の境は、完全な壁ではない

横行結腸間膜を目印に上と下を分けても、腹膜腔を完全に閉じた二袋にはしない。上行結腸と下行結腸の外側には傍結腸溝が関係し、隣り合う空間の連続をたどれる。溝は独立した管ではなく、結腸の外側と腹壁側の位置関係で読む。左右の広がりや上方の制限は同一ではなく、どの方向にも同じように開くと固定しない。

11. 骨盤への広がりと、臓器間の反転

腹膜の空間は腹部から骨盤側へ連続し、臓器の表面間で反転してくぼみを作る。くぼみの位置は、その前後にある膀胱・生殖器・直腸との関係から読む。臓器の組合せや反転する高さには性差や個体差があり、単一の図で全例を置き換えない。腹膜のくぼみは膀胱や腸の内腔と同じ場所ではない。

横行結腸間膜の上下と、傍結腸溝の連続

本人右が画面左、本人左が画面右の前面の位置模式。横行結腸間膜を淡色帯で置き、その上に結腸上部、その下に結腸下部を名付けする。上行・下行結腸の外形の外側に左右の傍結腸溝の位置を破線で示す。破線は独立した管や流体の流れる方向ではなく、外側の空間の広がりを示す。上下を完全な閉鎖袋にせず、骨盤側の腹膜腔への連続を説明する。左右の上方の連絡と制限を同一にしない。全陥凹・全反転・S状結腸間膜の詳細や全臓器の精密投影は省略。
本人の右は画面左です。横行結腸間膜は上下を読む目印で、外側の空間を閉鎖しません。破線は傍結腸溝の位置で、血流や独立した管ではありません。骨盤への連続と左右の違いを合わせて読みます。

12. 面・ひだ・空間を一続きで読む

腹壁を覆う面から折り返し、ひだを介して臓器の表面へ続く道と、その周囲の空間を分けてたどる。網嚢と大嚢の連絡、間膜の付着、後腹膜の配置は、それぞれ空間・ひだ・臓器の位置を示す。近い場所にあることから消化管の内腔や血管を一つにつなげず、動く臓器と固定側の付着を合わせて読む。

用語を確かめる

壁側腹膜
腹壁の内側を覆う腹膜。
臓側腹膜
臓器の表面を覆う腹膜。
腹膜腔
腹膜の表面に囲まれる潜在的なすきま。
腹膜反転
壁側と臓側などの面が折り返して連続する関係。
腹膜内臓器
大部分が臓側腹膜で覆われ、付着や間膜との関係を持つ臓器。
後腹膜
腹膜の背側に関係する位置の区分。
大嚢
腹膜腔の主要な広がり。
網嚢
胃と小網の後方に関係する腹膜腔の部分。小嚢とも呼ぶ。
小嚢
網嚢を指す別の呼び方。
網嚢孔
大嚢と網嚢の連絡部。
肝尾状葉
網嚢孔の上方に関係する肝の部分。
小網
肝側と胃小弯・十二指腸上部をつなぐ腹膜のひだ。
肝胃間膜
小網のうち肝と胃側をつなぐ部分。
肝十二指腸間膜
小網のうち肝と十二指腸上部をつなぐ部分。自由縁に血管と胆管が関係する。
大網
胃大弯側から前方へ下がり折り返す腹膜のひだ。
腸間膜
空腸回腸と後腹壁をつなぎ、その二葉の間に組織と血管などが関係するひだ。
横行結腸間膜
横行結腸と後腹壁をつなぐひだ。上部と下部の位置区分にも関係する。
S状結腸間膜
S状結腸と後腹壁をつなぐひだ。
結腸上部・結腸下部
横行結腸間膜を目印とする腹膜腔の位置区分。
傍結腸溝
上行・下行結腸の外側に関係する腹膜腔の広がり。