小さな筋の付着と存在変異を分ける
本文の目次
- 小さな筋も付着先から働きを読む
- 膝関節筋の起始と停止
- 膝伸展と滑膜を引く働き
- 中間広筋の深側と大腿神経
- 最小斜角筋は存在の変異を残す
- 第1肋骨と胸膜頂を覆う膜
- 最小斜角筋の作用・支配と位置
- 通常の中斜角筋との比較
- 袋・膜への停止と個人差
1. 小さな筋も付着先から働きを読む
膝関節筋と最小斜角筋は、位置の離れた小さな筋です。膝関節筋では大腿骨から膝上方の滑膜側へ届く束を追い、最小斜角筋では存在する場合の頸椎から第1肋骨・胸膜頂を覆う膜側への束を追います。名前が似た筋群と同じ付着・働きへ置き換えず、存在に個人差のある筋を全員に同じ形で描かないようにします。
2. 膝関節筋の起始と停止
膝関節筋は、大腿骨の遠位の前面側から、膝蓋上部の滑膜包・関節包側へ届く小さな筋束です。膝蓋上包は膝の関節腔と連なる滑膜性の袋状部分で、膝蓋骨の上方にあります。大腿四頭筋腱から膝蓋骨、膝蓋靱帯を介して脛骨粗面へ続く主な力の経路とは、届く先を分けます。筋束の数や中間広筋との連続の程度は一様ではありません。
3. 膝伸展と滑膜を引く働き
膝を伸ばすとき、膝関節筋は膝蓋上部の滑膜側を近位へ引き上げ、関節面の間へ挟み込まれにくくする働きを助けます。大きな膝伸展力を脛骨へ伝える四頭筋群の経路と、滑膜側を引く小束の役割を区別します。膝関節筋だけを大腿四頭筋の新しい第五の頭として足しません。
4. 中間広筋の深側と大腿神経
膝関節筋は中間広筋の深側、大腿骨前面と膝蓋上包の近くにあります。運動神経は大腿神経の枝で、中間広筋への枝と関係する細枝として扱います。筋束が小さいことや位置が深いことだけから、別の神経へ支配を変更しません。中間広筋の膝伸展の付着・神経は、その筋の説明へ戻って比較します。
膝関節筋:位置と付着
5. 最小斜角筋は存在の変異を残す
最小斜角筋は、前・中斜角筋の近くでみられることのある変異性の小筋です。前・中・後斜角筋が通常の比較の基準となりますが、最小斜角筋を全員に同じ左右一対として足すことはできません。筋がない場合や、束・腱の形と周囲との位置が異なる場合を残します。小さな筋の名前があることと、全員に同じ形で存在することは別です。
6. 第1肋骨と胸膜頂を覆う膜
最小斜角筋を示す通常の模式では、下位頸椎、代表的にはC7の横突起側から、第1肋骨の内側寄りと胸膜頂を覆う膜側への付着を追います。C6側からの束など、起始や停止には変異があります。胸膜頂は肺の上端の周囲を包む胸膜の上方部分で、その上を補強する膜は肺の内腔でも気道でもありません。
7. 最小斜角筋の作用・支配と位置
存在する最小斜角筋の束は、胸膜頂を覆う膜へ張力を加え、第1肋骨側を支える方向の付着として読みます。運動神経は頸神経の前枝側の枝として扱い、ここでは全個体の髄節や細枝を一つに固定しません。頸部と胸郭上部の境界で前・中斜角筋の近くに位置しますが、腕神経叢や鎖骨下血管との前後関係を、全変異で同じ並びとしません。臨床的な圧迫や症状の判定には進めません。
最小斜角筋:存在する場合
8. 通常の中斜角筋との比較
中斜角筋は通常、第1肋骨で鎖骨下動脈溝より後ろへ向かい、前斜角筋との間の通路と関係します。最小斜角筋は、その通常の位置関係の説明を置き換える名前ではありません。筋の存在と付着を個別に見て、同じ第1肋骨に関わることだけで、起始・停止・通路が完全に同じと結論しないようにします。
9. 袋・膜への停止と個人差
骨だけでなく、関節の滑膜側や膜・筋膜へ付く筋があります。膝関節筋の滑膜を引く方向と、最小斜角筋の胸膜頂を覆う膜への付着は、別の部位・別の袋と膜です。付着先・働き・神経・近くの構造を対応させつつ、個人差のある筋束の数・左右の存在・神経血管の細かな位置を一律に決めない読み方を保ちます。
用語を確かめる
- 膝関節筋
- 大腿骨遠位前面側から膝蓋上部の滑膜側へ届く小筋。
- 最小斜角筋
- 下位頸椎と第1肋骨・胸膜頂を覆う膜側の間にみられることのある変異性の小筋。
- 遠位
- 付け根から離れる方向。ここでは大腿骨の膝に近い側。
- 近位
- 付け根に近づく方向。膝から大腿側へ向かう方向。
- 滑膜
- 関節包内面などを覆う膜で、関節軟骨の表面そのものとは異なる。
- 膝蓋上包
- 膝蓋骨の上方にあり、関節腔と連なる滑膜性の袋状部分。
- 関節包
- 関節を包む組織。外側の線維性部分と内側の滑膜を分ける。
- 筋束
- 筋を構成する線維のまとまり。束の数だけで別筋本体を加算しない。
- 中間広筋
- 大腿直筋の深側にある大腿四頭筋の一筋。
- 大腿神経
- 大腿前面の筋などへ枝を送る神経。
- 大腿四頭筋腱
- 四頭筋の力を膝蓋骨へ伝える腱。
- 脛骨粗面
- 膝蓋靱帯が届く脛骨の前上部の突出。
- 横突起
- 椎骨から外側へ出る突起。
- 胸膜頂
- 肺上端周囲を包む胸膜の上方の部分。
- 胸膜頂を覆う膜
- 胸膜頂の上方を補強する膜で、肺の内腔ではない。
- 頸神経前枝
- 頸部の脊髄神経が分かれた前枝側。
- 変異
- 個人による存在・形・位置などの違い。
- 鎖骨下動脈溝
- 第1肋骨上面の鎖骨下動脈に関わる溝。