皮膚と付属器の位置と通路
本文の目次
- 皮膚の層と付属器を位置でつなぐ
- 厚い表皮には透明層を含む五層を読む
- 乳頭層と網状層は真皮の浅深を分ける
- 毛根を囲む鞘と外側の結合組織を分ける
- 立毛筋の斜めの連絡と皮脂腺の管
- 汗腺の巻いた分泌部から導管へ
- 毛包開口と表面への直接開口
- 爪母の上のひだと爪甲の周囲
- 爪半月の見え方と根元・先端
- 浅い血管と深い血管の網を分ける
- 神経終末の所在は血管の所在と同じでない
- 毛包の周囲の神経と深浅の図
- 無毛部と有毛部の組合せを比べる
- 位置と通路の模型で示せる範囲
1. 皮膚の層と付属器を位置でつなぐ
表面側の表皮、その下の真皮、さらに下の皮下組織という並びは既存教材を参照します。ここでは表皮内の区分、真皮の浅深、毛包や爪の周囲、腺の管を位置でつなぎます。毛包や汗腺の上皮は表皮から続く付属器の上皮で、真皮の深さにあることだけを理由に結合組織へ変わるわけではありません。角化、免疫、感覚、熱調節の機能全体は別の既存教材につなぎます。
2. 厚い表皮には透明層を含む五層を読む
手掌・足底の厚い皮膚では、深い側から基底層、有棘層、顆粒層、透明層、角質層という表皮の五層を区別します。通常の薄い皮膚では透明層が明瞭な独立層として現れず、四層として読みます。ここでの厚い・薄いは表皮の組織像の区分であり、皮下脂肪を含む全体の厚さや、すべての細胞の大きさを比べる語ではありません。
3. 乳頭層と網状層は真皮の浅深を分ける
表皮の直下の乳頭層は疎な結合組織を中心とし、表皮側へ突出する真皮乳頭をつくります。その深側の網状層は密な不規則性の結合組織を中心とします。真皮乳頭は真皮側の突出で、表皮側の下向きの隆起と同じ側の名前ではありません。両層の線維は連続しており、二つの独立した袋として分離する模式にはしません。
厚い表皮と真皮の浅深
4. 毛根を囲む鞘と外側の結合組織を分ける
毛包の内部では、毛根の外側に内毛根鞘、さらに外毛根鞘の上皮が位置します。外毛根鞘の外側は基底膜の厚く見える硝子膜を介して結合組織性の鞘に続きます。これは毛根を囲む関係であり、分泌物が四つの層を順番に流れる管の図ではありません。毛球・毛母・毛乳頭の形成と栄養の関係は既存の毛の教材を参照します。
5. 立毛筋の斜めの連絡と皮脂腺の管
立毛筋は毛包側の結合組織と浅い真皮側を斜めに結ぶ平滑筋です。毛をつくる毛母そのものでも、毛包の内腔を流れる管でもありません。代表的な皮脂腺では腺の小葉から短い導管が毛包の上部側へ開き、毛包を経て表面へ続きます。毛包を出口としない皮脂腺の例もあるので、この通常模型を全皮脂腺の唯一の経路にしません。
毛根の囲みと別の通路
6. 汗腺の巻いた分泌部から導管へ
代表的なエクリン汗腺では真皮の深部から皮下組織側にかかる巻いた分泌部があり、導管が表面へ上がります。真皮内の導管は一般に重層立方上皮の部分、表皮内は表皮を通る螺旋状の部分として区別します。巻いた分泌部の上皮と、運ぶ導管の上皮を同じ役割にしません。分泌部には分泌細胞の外側を支える筋上皮細胞があり、導管全体を立毛筋と呼ぶわけではありません。
7. 毛包開口と表面への直接開口
エクリンの代表的な導管は皮膚表面へ直接開き、アポクリンの代表的な導管は毛包へ開きます。通常のアポクリンは大きな内腔の分泌部をもつ腺として区別しますが、図の大きさを実測値や全身共通の比率にしません。汗腺という名前だけで同じ出口、同じ分布、同じ主な放熱の働きとしないことは、既存の腺の教材で確認します。
8. 爪母の上のひだと爪甲の周囲
爪母は根元側で爪甲の主要な形成に関わり、爪甲の下の爪床が支持と付着に関わります。根元側を覆う近位爪郭と、両側を囲む側爪郭を区別します。近位爪郭の角質が爪甲上へ続く薄い爪上皮、いわゆる甘皮を、爪甲全体や爪母そのものと同一にしません。指先側の遊離縁の下には爪下皮があり、根元側の甘皮とは反対側の位置です。
9. 爪半月の見え方と根元・先端
爪半月は爪甲の根元側で白い半月形に見える部分で、爪母側の上皮が厚いことなどに関係します。すべての指で同じ大きさにはっきり見えるとは限りません。爪下皮は遊離縁の下、爪上皮は根元側の爪郭から爪甲上へ続く部分です。爪半月の見え方だけを新しい爪の作られる場所の全範囲や、個人の正常異常の判定に使いません。
爪の根元と遊離縁
10. 浅い血管と深い血管の網を分ける
皮膚の通常の血管配置では、真皮と皮下組織の境界付近の深い網と、真皮の浅い側の網を区別します。浅い側から真皮乳頭の毛細血管側へ続き、静脈側へ戻ります。動脈側からの枝分かれと静脈側の集まりを別の矢印で読みます。表皮内に血管を描かず、表皮への物質の移動を血管の枝そのものに置き換えません。細かな網の形と密度は部位で異なります。
真皮の血流と表皮の境界
11. 神経終末の所在は血管の所在と同じでない
皮膚の自由神経終末の一部は表皮へ入り、表皮に血管がないことから神経終末もないとはいえません。メルケル細胞と関係する終末は表皮の基底層側、マイスナー小体は主に無毛部の真皮乳頭側、パチニ小体は深い真皮から皮下組織側などに位置する通常の対応です。これは感覚終末の位置の見取りであり、全ての部位に全ての小体が同じ数だけあるとはしません。
12. 毛包の周囲の神経と深浅の図
毛のある皮膚では毛包の周囲に神経終末のまとまりがあり、毛包の位置に沿って読みます。無毛部のマイスナー小体の図を毛包の必須構成へ移すわけではありません。模式図の点や囲みは所在を示し、血流の矢印や腺の分泌物の矢印とは別です。受容と中枢へ向かう感覚機能の詳細は既存の感覚教材を参照します。
13. 無毛部と有毛部の組合せを比べる
手掌・足底の厚い表皮の通常模型では毛包がなく、エクリン汗腺が表面へ開く配置を読みます。有毛部の模型では毛包と通常の皮脂腺の関係を読むことができます。同じ身体の表面でも表皮の区分と付属器の組合せが違うため、一枚の有毛部の図を全身の同じ構造配置として扱いません。分泌量や熱の出入りの実測比較はここでは行いません。
汗腺の管と二つの出口
14. 位置と通路の模型で示せる範囲
表皮・真皮・皮下組織、毛根の囲み、爪の根元と先端、腺の出口をまず位置として対応させます。血管の流れ、神経終末の所在、腺の導管を別の連続として読みます。深さは通常の概略で、全身の全付属器・微小枝・個体差を同じ寸法で示した図ではありません。見え方の違いを診断や処置へ直結させず、感覚・免疫・熱調節は既存の機能教材へつなぎます。
神経終末の通常の深さ
用語を確かめる
- 基底層
- 表皮の最も深い層。
- 有棘層
- 基底層の表面側に続く表皮の層。
- 顆粒層
- 有棘層と透明層または角質層の間の層。
- 透明層
- 厚い表皮で顆粒層と角質層の間に明瞭にみられる層。
- 角質層
- 表皮の最表面側の角化した層。
- 乳頭層
- 真皮の浅い側の疎な結合組織を中心とする部分。
- 網状層
- 真皮の深い側の密な不規則性結合組織を中心とする部分。
- 真皮乳頭
- 表皮側へ突出する真皮側の部分。
- 内毛根鞘
- 毛根を囲む上皮性の内側の鞘。
- 外毛根鞘
- 内毛根鞘の外側を囲む、表皮から続く上皮性の鞘。
- 硝子膜
- 外毛根鞘と結合組織性の鞘の間の厚く見える基底膜。
- 結合組織性の鞘
- 毛包の上皮の外側を囲む結合組織。
- 立毛筋
- 毛包側と浅い真皮側を斜めに結ぶ平滑筋。
- 分泌部
- 分泌物をつくる腺の部分。
- 導管
- 腺の分泌物を出口へ運ぶ上皮性の通路。
- 筋上皮細胞
- 汗腺などの分泌部の上皮の外側に位置する収縮性の細胞。
- 重層立方上皮
- 複数の細胞層からなり、表層の細胞が立方状の上皮。
- 近位爪郭
- 爪の根元側を覆う皮膚のひだ。
- 側爪郭
- 爪甲の左右の側を囲むひだ。
- 爪上皮
- 根元側の爪郭から爪甲上へ続く角質の部分。甘皮として知られる。
- 爪下皮
- 爪甲の遊離縁の下にある角質の厚い部分。
- 爪半月
- 爪甲の根元側に白い半月形として見える部分。見え方には差がある。
- 毛細血管
- 動脈側と静脈側の間にある細い血管。
- 血管網
- 複数の血管がつながる配置。神経網とは別。
- メルケル細胞
- 表皮の基底層側で感覚終末と関係する細胞。
- マイスナー小体
- 主に無毛部の真皮乳頭側にある感覚終末の構造。
- パチニ小体
- 深い真皮や皮下組織側などにある層状の感覚終末の構造。
- 自由神経終末
- 特殊な小体で包まれない神経の終末。一部は表皮内へ入る。