脊髄内の感覚交叉と、下行路からの運動連絡
本文の目次
1. 灰白質の中継と、白質の通路
脊髄の横断面では、中央寄りの灰白質を白質が囲んでいます。後方の白質を後索、側方の白質を側索と呼びます。前外側という位置は前方と外側に広がる側を指します。神経細胞へ情報を渡す場所と、長く上がる・下る線維が通る場所を分けると、一つの経路を断面の中で追えます。図の小さな印は代表的な通路の所在で、白質全体を一種類の線維だけに分ける地図ではありません。
2. 後索では、延髄までの区間を分ける
後索の代表的な体性感覚の経路では、後根神経節に細胞体を持つ感覚ニューロンの中枢側の軸索が、後根から脊髄へ入り、同じ側の後索を上がります。この長い上行区間の終わりに、延髄の薄束核・楔状束核で別の細胞へつながります。その後の内弓状線維の交叉と内側毛帯は、既存の延髄の経路へ続きます。脊髄に入った感覚線維が全て、ただちに後角で別の細胞へ乗り換えるわけではありません。
3. 脊髄視床路は、後角から正中を越える
体からの侵害受容や温度の情報を運ぶ代表的な経路として、前外側系のうち視床へ向かう脊髄視床路を見ます。後根神経節の感覚ニューロンから、脊髄後角のニューロンへ情報が渡ります。後角で入力を受けた細胞の軸索は、中央の灰白質の連絡部より腹側にある前白交連を通って正中を越え、反対側の前外側の白質を上がります。入力側で短く上下してから中継する線維もあるので、図の一断面を、全線維が入口と全く同じ髄節で交叉する規則にはしません。
脊髄内の感覚の中継と交叉
4. 脊髄から視床へ上がる道
脊髄視床路の代表的な線維は、脳幹を上がって視床へ届き、そこから大脳の体性感覚皮質へ連絡します。体の情報を扱う視床VPLと皮質の対応は、既存の視床の説明と結び付けて読めます。前外側系には脳幹の別の領域へ向かう連絡もあるため、全ての線維を視床と皮質だけの一本の道にまとめません。ここでは体からの代表経路を扱い、顔の三叉神経系を同じ入口・中継へ重ねません。また、侵害受容の情報が届くことと、本人が経験する痛みは同じ一つの記録ではありません。
5. 皮質脊髄路から、脊髄の細胞へ
皮質脊髄路が脳幹を下り、多くの線維が錐体交叉を経る経路は、既存の通路図を参照します。交叉した外側皮質脊髄路は、脊髄の側索を下ります。そこから脊髄の灰白質へ連絡し、多くは介在ニューロンを介して運動ニューロンへ影響します。一部には運動ニューロンへ直接つながる連絡もあります。いずれの場合も、前角の運動ニューロンは大脳から来た細胞とは別の細胞です。この運動ニューロンの軸索が、前根と脊髄神経を経て筋へ向かいます。
6. 交叉と、細胞の乗り換えを別に追う
交叉は、神経線維が正中を越えることです。シナプスでの中継は、別の細胞へ情報が渡ることです。脊髄視床路では後角での中継の後に、その細胞の軸索が正中を越えます。皮質脊髄路では錐体交叉を経た軸索が脊髄を下り、そこで別の細胞と連絡します。線が交差して見える場所を全てシナプスにしたり、大脳から前根・筋まで一本の同じ細胞の軸索にしたりせず、場所と細胞のつながりを分けてたどりましょう。
下行路から脊髄の細胞、筋へ
用語を確かめる
- 後索
- 脊髄の後方の白質。後索系の代表的な上行線維が通る。
- 側索
- 脊髄の側方の白質。上行・下行の複数の線維束が通る。
- 後角
- 脊髄灰白質の後方に伸びる部分。感覚の処理や中継に関わる。
- 前角
- 脊髄灰白質の前方の部分。骨格筋へ軸索を伸ばす運動ニューロンがある。
- 前白交連
- 脊髄の中央の灰白質連絡部より腹側にある、左右の白質の連絡。
- 前外側系
- 脊髄前外側を通る上行性の経路のまとまり。視床へ向かう道だけに限定しない。
- 脊髄視床路
- 脊髄から視床へ向かう代表的な感覚の経路。後角中継後の軸索が脊髄内で交叉する。
- 後索―内側毛帯系
- 後索から延髄の核を経て、交叉後に内側毛帯として上がる代表的な体性感覚経路。
- 皮質脊髄路
- 大脳皮質から脊髄へ下る線維の経路。末梢まで同じ軸索が延びる道ではない。
- 外側皮質脊髄路
- 主として錐体交叉を経た線維が脊髄側索を下る経路。
- 介在ニューロン
- 中枢内で他の神経細胞へ情報をつなぐ細胞。全経路に同数の介在細胞が必須という意味ではない。
- 交叉
- 神経線維が正中を越えること。細胞間のシナプス中継と区別する。
- 中継
- ここではシナプスを介して別の神経細胞へ情報が渡ること。
- 対側
- 体の正中を基準にした反対側。紙面上の左右だけで決めない。