cAMPの生成と分解の基盤

本文の目次

  1. 細胞内で情報をつなぐ分子
  2. ATPからcAMPを作る
  3. 水を使ってcAMPを分解する
  4. 生成速度と残る量を分ける

1. 細胞内で情報をつなぐ分子

細胞の受容体が受け取った情報を、細胞内で中継する小さな分子やイオンをセカンドメッセンジャーといいます。cAMPはその一つで、環状アデノシン一リン酸という分子です。環状とは、分子の中に輪になる結合があるという意味です。細胞外から来たシグナル分子や受容体そのものと、細胞内のcAMPを分けて考えます。全ての受容体が同じ中継分子を使うわけではありません。

2. ATPからcAMPを作る

cAMPを作る酵素がアデニル酸シクラーゼです。酵素は化学反応を進みやすくする物質で、この反応の材料はATPです。ATPはアデノシン三リン酸で、塩基・糖・三つのリン酸を持つヌクレオチドです。cAMPができる際には、二つのリン酸が結ばれたピロリン酸も生じます。ピロリン酸はPPiとも表します。細胞外のシグナル分子自体をcAMPへ変える反応ではありません。ATPと水からADPと無機リン酸ができる反応とは、生成物が異なります。

3. 水を使ってcAMPを分解する

cAMPを分解する酵素がホスホジエステラーゼです。水を使って環状の結合を切る加水分解により、5′-AMPが生じます。AMPはアデノシン一リン酸の略称です。5′は糖の中の結合位置を示す表記で、リン酸が五つという意味ではありません。cAMPと5′-AMPは、リン酸の数が一つでも結合のつながり方が異なります。この分解でATPへ直接戻るわけではなく、できた5′-AMPを同じcAMPの信号として数え続けません。

4. 生成速度と残る量を分ける

受容体への入力、新しいcAMPの生成、既にあるcAMPの分解は、別々の過程です。一定期間に残るcAMP量には、初めにあった量と、その期間の生成・分解の両方が関わります。生成速度とは、単位時間に作られる量です。生成速度だけから、後に残る量を決めることはできません。記録を比べる際は、区画・期間・初期量・生成側・分解側のどこが同じかを確認します。残量の差だけで、確認済みの入力や生成条件を書き換えないようにします。

cAMPの生成と分解

生成と分解を上下二段の枠で区分。上段はアデニル酸シクラーゼの名前の下にATP、下向き反応矢印、その下にcAMPとピロリン酸。下段はホスホジエステラーゼの名前の下にcAMPと水、下向き反応矢印、その下に5′-AMP。枠の下に生成と分解は別の反応、ATPへ直接戻らないという説明。
上段はアデニル酸シクラーゼによる生成で、ATPからcAMPとピロリン酸ができます。下段は別の酵素ホスホジエステラーゼによる分解で、水を使ってcAMPから5′-AMPができます。分解の産物をATPへ読み替えません。上下の矢印は二つの化学反応を示し、区画の間を移動する矢印や反応速度の比較ではありません。細胞内で残るcAMP量を読む際は、本文のとおり初期量と生成・分解の両方を確かめます。

用語を確かめる

セカンドメッセンジャー
受容体が受け取った情報を細胞内で中継する小さな分子やイオン。
cAMP
環状アデノシン一リン酸。細胞内で情報を中継する分子の一つ。
環状
ここでは、分子の中に輪になる結合があること。
ATP
アデノシン三リン酸。塩基・糖・三つのリン酸を持ち、ここではcAMP生成の材料。
ヌクレオチド
塩基・糖・リン酸を持つ材料。ATPやAMPはその例。
酵素
化学反応を進みやすくする物質。
アデニル酸シクラーゼ
ATPからcAMPを作る反応を触媒する酵素。
ピロリン酸(PPi)
二つのリン酸が結ばれたもの。ATPからcAMPができる反応で生じる。
ホスホジエステラーゼ
ここではcAMPの環状の結合を加水分解し5′-AMPを生じる酵素。
加水分解
水を使って化学結合を切る反応。
5′-AMP
アデノシン一リン酸で、リン酸が糖の5′位置に結合したもの。5′はリン酸の個数ではない。
初期量
指定した記録期間の初めにあった量。
生成速度
単位時間に作られる量。記録期間の終わりに残る量とは別。
残る量
指定した時点で、その区画に存在する対象物質の量。生成だけでなく分解なども関わる。