診察で得る身体情報を機序と条件から理解する基盤

本文の目次

  1. 話を、確かめたい身体の変化へつなぐ
  2. 話した経験と、身体から得た情報を合わせる
  3. 目的と、情報を得やすい条件を確かめる
  4. 見える形や動きを、場所と条件へ結ぶ
  5. 触れた性状と、その場所を対応づける
  6. 触れることで生じた痛みの情報
  7. 加えた刺激から生じる響きを読む
  8. 身体の中で生じた音を聴く
  9. 異なる方法の情報を、一つの部位へ合わせる
  10. 値を、測った条件へ結ぶ
  11. 繰り返しの変動と、一定のずれ
  12. 体温の測定場所と、深部の温度
  13. 温度は、熱の出入りと時間に関わる
  14. 心臓の駆出と、動脈に伝わる脈
  15. 一拍の動脈圧の高い時期と、低い時期
  16. 高さと、腕に合う装置条件
  17. 呼吸の回数と、肺胞へ届く空気
  18. 光の拍動成分から、Hbの結合割合へ
  19. 信号が得られる条件と、値の確かさ
  20. 覚醒と、理解している内容
  21. 情報の到着と、課題への応答
  22. 力を出すことと、動きを合わせること
  23. 反射は、入力から筋への連絡を示す
  24. 感覚の種類、部位、応答を保つ
  25. 身体機能と、活動の条件

1. 話を、確かめたい身体の変化へつなぐ

医療面接は、本人との対話から、健康に関わる経験や背景を知る過程です。今困っていることだけでなく、始まり方と経過、普段の状態、これまでの病気や服用している薬なども、その変化を理解する情報になります。現在の症状やこれまでの経過・背景をまとめた情報を病歴と呼びます。たとえば「歩くと息苦しい」という話なら、いつから、どのくらいの活動で、普段とどう変わったかをつなぐと、今確かめたい変化が具体になります。相手の言葉を聴き、意味や時刻を確かめることは、経験を病名に置き換えることとは違います。

2. 話した経験と、身体から得た情報を合わせる

身体診察では、身体を見たり触れたり、音などを調べたりして、現在の身体についての情報を得ます。本人が経験した息苦しさは面接で知る情報であり、胸郭の動きや呼吸の回数は観察から得る情報です。訴えの始まりや活動との関係を知ったうえで、その時点の身体情報を合わせると、経験と身体の変化を異なる側面から捉えられます。経験、観察、測定をそれぞれの情報源と時刻に結び、合わない点や不明な点も残します。話した内容をそのまま観察した事実としたり、一つの所見だけで全ての原因が確かめられたことにしたりはしません。

3. 目的と、情報を得やすい条件を確かめる

何をなぜ確かめたいかを分かる言葉で説明し、理解された内容や本人の希望、痛みや疲れなどの負担を確かめることは、協力して情報を得る条件を整えます。周囲に話を聞かれたくない、指示が聞こえにくい、使う言語が違うといった事情も、話し方や応答に関わります。説明がどのように伝わったかを本人の言葉で確かめ、必要な支援や環境の調整を合わせます。たとえば動作の指示を十分に聞き取れなかったために動かなかった場合、その記録だけで動かす力が弱いとはいえません。何を説明し、どの条件で得た応答なのかを残すことが、後の身体評価を支えます。

4. 見える形や動きを、場所と条件へ結ぶ

視診は、目で身体の形、色、動きなどを観察する方法です。胸郭が呼吸に合わせて動く様子、左右の形の違い、皮膚の色などは、見て得る情報です。どこを、いつ、どの姿勢や照明のもとで見たかを合わせます。色の見え方は光の条件に、身体の見える形や動きは姿勢や活動にも関わります。見えている変化の範囲を具体に残すと、同じ条件の前の記録と比べたり、別の方法で得た情報と合わせたりできます。見た表情や動きは本人の経験を知る手掛かりですが、本人が感じた痛みの強さを直接見て測った値ではありません。

5. 触れた性状と、その場所を対応づける

触診は、身体に触れることで、温かさ、硬さ、腫れ、動きなどの性状を確かめる方法です。見たふくらみと、触れて得た硬さは、同じ部位の別の情報です。皮膚に触れて得る温かさには局所の血流や周囲の環境なども関わり、身体の内部の温度そのものを数値として測った記録とは違います。部位や左右、比較した条件を保って、何が触れて分かったかを残します。触れることによる負担や、本人の応答も、触れて得た性状とは区別して合わせます。

6. 触れることで生じた痛みの情報

圧痛は、押されるなどの圧が加わったときに生じる痛みです。触れた部位の硬さは調べる側が触れて得る性状であり、そのときに痛かったという言葉は本人の経験についての情報です。二つは同じ接触の機会に得られても、情報源が異なります。どの部位で、どのような接触の際に、どんな応答があったかを分けると、触れて得た性状と経験を対応づけられます。顔をしかめたことも観察情報として残せますが、その反応だけを本人が語る痛みの程度へ置き換えません。

見える性状と、触れた性状・経験

上段は照明から身体表面へ光が届き、身体から観察する目へ進む光の矢印を置く。目で形・色・動きを観察する。下段は手と身体表面が接触する。接触から触れた温かさ・硬さの情報へ進む経路と、痛みが生じる場合に本人が経験し言葉で伝える経路を別にする。
視診では、照明などの条件のもとで身体から届く光によって形・色・動きを観察します。触診では、接触から得た温かさや硬さと、そのとき本人が経験した痛みを分けます。痛みが生じた場合の経験を言葉で知ることと、調べる側が触れて得た性状は別の情報です。

7. 加えた刺激から生じる響きを読む

打診では、身体へ加わった短い機械的刺激によって振動が生じ、その音や響きから身体の情報を得ます。振動は、物体がゆれ動くことです。空気を多く含む部分と、密な組織や液体が多い部分では、振動の伝わり方や響きが異なり得ます。得られる音は、内部の状態だけでなく、部位の大きさや形、刺激の条件にも関わります。音の違いは身体の状態を考える情報になりますが、一つの響きの名前から一つの病名が決まるわけではありません。何によって音を生じさせ、どの部位で得た情報なのかを保ちます。

8. 身体の中で生じた音を聴く

聴診は、身体の中で生じる音を聴いて情報を得る方法です。聴診器は、その音を聴くために使う器具です。呼吸音は、呼吸に伴う気流などによって生じ、胸部の組織などを通って表面へ伝わる音です。心音には、心臓の弁が閉じる過程に伴う血液や周囲の構造の振動による音などがあります。音の生成と、聴く場所までの伝わり方は別の段階です。音の強さが違っても、音の発生が変わったのか、伝達や聴く位置が違ったのかを、他の情報と合わせて考えます。外から刺激を加えて音を得る打診と、身体の中の活動から生じる音を聴く聴診では、音を生じさせる過程が異なります。

外から生じる響きと、身体内の音

上段は身体表面の外から加わる短い機械的刺激から、内部の空気や周囲の組織の振動と響きへ進む。下段は身体内の気道を通る気流で音が生じ、波状線が組織を通って表面へ伝わり、接触する聴診器で聴く関係。上下で音を生じさせる起点を分ける。
打診では、外から加わった短い機械的刺激で身体が振動し、内部の空気や組織の状態・形などで響きが変わります。聴診の下段は気流に伴う音の代表模型で、身体内で生じた音が組織を通って表面へ伝わります。音が生じる過程と伝わる過程を分け、位置や伝達条件と合わせます。

9. 異なる方法の情報を、一つの部位へ合わせる

見える形、触れた性状、加えた刺激からの響き、身体内で生じた音は、同じ身体について得た異なる側面の情報です。たとえば胸部では、見た動きと聴いた呼吸音を、同じ時点や姿勢などの条件に合わせて記録できます。ある方法で変化が見られなかったことだけで、別の方法が捉える性状まで同じだとは決まりません。何を観察したのかを具体にし、異なる情報が合うところと、追加で確認したいところを分けます。各方法が得る情報を合わせることが身体の理解を支えますが、手順や病名の判断まで一つの記録から自動的に決まるわけではありません。

10. 値を、測った条件へ結ぶ

測定値は、ある場所の量を、ある方法と時点で数値として記録したものです。体温、血圧、呼吸数では、測っている対象も単位も違います。同じ血圧という名前の値でも、測定部位、装置や方法、姿勢、安静か活動中か、時刻が違えば、比較に使う条件が変わります。値に単位と測定条件を合わせて残すと、身体に起きた変化と、測り方の違いによる変化を区別しやすくなります。本人の経験、見えた動き、装置が記録した数値も、それぞれ得られた情報として保ちます。

11. 繰り返しの変動と、一定のずれ

同じ対象を同じ条件で繰り返し測っても、値には偶然の変動が生じることがあります。一方、装置が基準より常に同じだけ高く記録するような一定方向のずれは、系統誤差です。繰り返した値が近いことは、ばらつきが小さいという情報であり、基準となる値に近いことの保証ではありません。同条件で変動を確かめることと、装置や方法に一定のずれがないかを確かめることは、別の確認です。測定回数を増やしただけで、一定のずれが直るわけではありません。

12. 体温の測定場所と、深部の温度

体温は身体の温度です。深部体温は、体の内部の主要な部分の温度を指します。皮膚の表面や腋窩(わきの下)などで得る値は、その場所の温度と方法に関わり、深部体温と常に同じ値になるとは限りません。表面では周囲の温度や局所の血流なども影響します。どの部位で、どの方法を用いて、いつ測ったかを合わせることで、その部位の温度の推移を比較できます。触れて温かく感じたことも身体情報ですが、深部の温度を数値として直接測った情報とは違います。

13. 温度は、熱の出入りと時間に関わる

身体では代謝や筋の活動による熱産生と、皮膚などからの熱放散が続きます。その出入りと、体温を調節する働きによって実際の温度が変わります。日内変動は一日の中で起きる変動で、体温の推移にも時刻や活動状態が関わります。測定した一つの温度は、その部位と時点での情報です。それだけから調節の目標水準や、温度が変わった原因まで一つに決めることはできません。時刻、活動、測定条件を合わせると、温度がどう推移したかを熱の出入りへ結び付けて考えられます。

14. 心臓の駆出と、動脈に伝わる脈

心臓から血液が機械的に駆出されると、動脈の圧や壁の変化が拍動として末梢へ伝わります。この動脈の拍動が脈です。ある部位の脈を一定時間に何回捉えたかが脈拍数で、間隔がそろっているかも別の情報になります。心臓の電気的な興奮、機械的な駆出、動脈で捉える脈は、連なる別の段階です。脈の回数を記録しただけでは、一拍で出た血液の体積や、各組織へ単位時間に届いた血液量を直接測ったことにはなりません。

15. 一拍の動脈圧の高い時期と、低い時期

血圧は、血液が血管の壁へかける圧です。一拍の動脈圧の最高を収縮期血圧、最低を拡張期血圧として読みます。順序を「収縮期/拡張期」とすると、一周期の最大と最小を対応させた記録になります。心室が送り出していない時期にも、動脈の壁が弾性で戻り、蓄えた血液を末梢へ押し出せます。そのため、一拍で圧が低くなる時期を、全身の流れが止まった時期と同じには扱いません。流れの量には圧差と血管の抵抗も関わります。

動脈の拍動と、一拍の圧

二時点の動脈で壁の膨らむ場所が末梢側へ移る。破線矢印は拍動の伝播、管内の実線矢印は血流。下段の動脈圧曲線では山が最高、周期末が最低になる。
動脈の圧や壁の変化が末梢へ伝わる拍動と、血管内を流れる血液を分けます。下段は一拍の動脈圧の模式的な推移で、最高と最低を収縮期・拡張期へ対応させます。縦軸は個人の血圧値を示す数値尺度ではありません。

広がって蓄え、戻って送る

同じ弾性動脈の部分を二段で比較する。上段の駆出中は左右の管の間で動脈の壁が広がり、大きい内腔に貯留増と直接書く。左から入る血流矢印と右へ出る血流矢印を管内に置く。下段は駆出していない時期と直接表示し、同じ左右の接続の間の動脈が小さい内腔へ戻った形にする。下段の左には流入0と書いて流入矢印を描かず、右の管には末梢側への流出矢印と流出ありの文字を置く。下段の内腔には貯留減と表示する。上から内向きの矢印は壁の戻りで、右向きの血流矢印とは別の対象へ向かう。広がった動脈の内腔に前に蓄えた血液が後で出るため、流入0から流出0と推定しない。段階の形・間隔は模式で、血液生成や体積比・圧の数値・全部の非駆出期が同じ弛緩段階という主張はない。
弾性動脈の部分模式です。駆出中に壁が広がって蓄え、心室からの流入が0の時期にも、壁が戻り末梢への流出を支えます。この後の区間では貯留が減ります。非駆出を全て弛緩期という名前に固定せず、壁が血液を新しく作る意味にもなりません。形は大小の関係を示し、量比や瞬間の流量は表しません。

16. 高さと、腕に合う装置条件

静水圧は、液体の重さに関わる圧です。同じ連続した液体で他の条件が同じなら、低い位置では上にある液体の重さの分だけ圧が高くなります。腕の測定点が心臓の高さと異なることも、血圧の記録へ影響し得ます。カフは、腕などを取り囲む空気を入れる袋で、血圧の測定に使う装置の一部です。腕に対してカフの大きさが適切でないことも記録に影響し得るため、測定部位、腕や体の位置、装置の条件を合わせて値を比べます。条件による差を、心臓の働きの変化だけへ置き換えることはできません。

17. 呼吸の回数と、肺胞へ届く空気

呼吸数は、単位時間に呼吸した回数です。一回に出入りする体積が一回換気量です。死腔は、換気される部位のうちガス交換へ直接参加しない部分と、その容積を指します。そこに出入りする空気量は、一回の換気量のうちガス交換に関わる量へ影響します。肺胞へ届く新しい空気の量は、一回の体積、死腔、回数の組合せに関わります。同じ呼吸数でも、一回の量や死腔が違えば、単位時間の肺胞換気は異なり得ます。胸郭などの呼吸運動の回数、空気の体積、肺胞と血液の間の交換は、それぞれ別の情報です。

呼吸の回数と、肺胞へ届く量

上下に同じ三回の呼吸運動を並べる。一回の体積を表す棒は甲が長く乙が短い。斜線を付けた死腔分は同じ幅、肺胞へ届く分は異なる幅。
同じ期間に同じ回数だけ呼吸しても、一回に出入りする体積や死腔によって、肺胞へ届く新しい空気の量は変わります。棒の幅は体積を表す模式的な比較で、患者の換気量や正常値ではありません。上下の死腔分を同じにし、一回量だけを変えた模型です。

18. 光の拍動成分から、Hbの結合割合へ

パルスオキシメータは、光の吸収を使って動脈血酸素飽和度を推定する装置です。代表的な装置では、酸素が結び付いたヘモグロビン(Hb)と、結び付いていないHbが二種類の光を異なる割合で吸収する性質を使います。動脈の拍動に伴う吸収の変化を取り出し、SpO2という推定値へ結びます。酸素飽和度は、Hbの酸素結合部位のうち酸素が結合している割合です。SpO2はその割合の推定であり、血液中のHb量や酸素の総含有量を直接示す値ではありません。PaO2は動脈血に溶けた酸素の分圧、すなわち溶けた酸素を圧力で表す指標で、Hbへの結合割合とは別です。組織へ届いた血液量や細胞の酸素利用も、別の段階として確かめます。

同じ割合でも、結合量は違う

同じ大きさの枠で同じ血液体積を比較する。甲は100部位のうち80部位、乙は200部位のうち160部位に酸素が結合し、両方の割合は80%。塗った丸と白い丸を分け、一丸を10部位分とする。同じ割合でも結合量と結合していない部位数が違う。
同じ血液体積の比較で、丸一個をHb結合部位10個分とする模型です。80/100と160/200は同じ80%でも、Hbに結合した酸素の量は異なります。塗られていない部位は酸素が結合していない側です。この比較の割合は、Hb量や組織へ流れる血液量そのものを表しません。

19. 信号が得られる条件と、値の確かさ

パルスオキシメータの推定には、動脈の拍動による光の変化を取り出せることが必要です。体の動きによる変化が重なると、拍動の信号と区別しにくくなることがあります。末梢の灌流、つまり組織へ血液が流れ届くことが少ない場合にも、拍動成分が得にくくなります。表示された数値だけでなく、信号が得られた条件を合わせることで、その推定値をどこまで確かな情報として読めるかを考えられます。

二種類の光と、拍動からの推定

組織内の動脈血を二種類の光が通り、反対側で受光する。動脈の実線と破線の輪郭は拍動による変化。受光情報から拍動成分を取り出し、酸素が結合した部位の割合を推定する。
二種類の光が組織を通って受光側へ届きます。酸素が結合したHbと結合していないHbの光吸収の違いを利用し、動脈の拍動に伴う吸収変化を取り出してSpO2へ結びます。推定するのは酸素結合部位の割合で、Hb量や血液の酸素総量ではありません。

20. 覚醒と、理解している内容

覚醒は、目を覚まして反応できる程度です。意識の内容には、自己や周囲の状況、会話を理解する側面があります。呼びかけに反応したことと、話の内容を理解したことは、別の情報です。普段の状態と比べ、どの時点にどのような反応や会話があったかを保つと、覚醒と内容の変化を分けて捉えられます。目を開けているという一つの観察から、理解の全てを確定することはできません。

21. 情報の到着と、課題への応答

課題への応答には、情報が届くこと、その内容を理解すること、反応を表せることが関わります。聴こえ方、使う言語、説明の分かりやすさが違えば、同じ言葉でも伝わり方は変わります。届いていない指示への無反応は、理解できた指示へ応答しなかった記録とは違います。情報がどう届いたかと理解された内容を確かめることで、応答が乏しかった理由を、意識や認知の変化だけへ直結させず、さらに確認する点を整理できます。

22. 力を出すことと、動きを合わせること

筋力は、筋が力を発揮する働きです。協調運動は、複数の筋や身体部分の働くタイミングや大きさを調整して、動きを合わせることです。物を支える力についての情報と、狙った位置へ動きを合わせる情報は、異なる観点を持ちます。同じ力を出せても、動きの調整まで同じとは限りません。どの課題で、どの部位の力や動きが、どんな条件で観察されたかを合わせると、力の発揮と調整の働きを分けて伝えられます。

23. 反射は、入力から筋への連絡を示す

反射は、ある入力に対して神経の回路を通り非随意の応答が生じる働きです。非随意とは、応答の開始に意思による判断を必要としないことです。代表的な筋の反射では、受容器が筋の長さの変化などを捉え、求心性の経路で中枢へ情報を送り、中枢の処理から遠心性の経路で筋へ出力が届きます。この入力から効果器までの連絡が反射弓です。意思に沿って力を出す課題と、特定の入力に続く反射の応答は、筋を使っていても確かめる過程が違います。受容器、中枢、筋への出力の連絡を、単なる応答の速さや一つの筋力値だけと同じ情報にはしません。

局所の応答と上位への枝

左の受容器から情報の矢印が局所の中枢へ入り、統合の箱へつながる。統合は複数の情報を処理して出力へつなぐ段階を表す。そこから別の実線矢印が局所の中枢の外へ出て、下の筋などの効果器へ達する。同じ入力の途中から上へ分かれる破線矢印を上行枝とし、上位中枢へ向かわせる。上位中枢から局所の統合へ戻る別の破線矢印は、上位からの調節を表す。上行と上位からの入力は反対の方向の別の経路である。局所経路、上行枝、上位の調節を同時に図示することで、局所の応答が可能であることと、上位の影響がないことを取り違えない。全ての反射がこの接続数、同じ位置、同じ上行枝を持つという意味ではない。円や箱は受容器、処理、効果器の段階の模式で、ニューロン数を数える記号ではない。矢印はいずれも情報方向を示す。
一つの入力から局所の経路と上行枝が分かれる指定回路の模式です。局所の中枢から効果器へつながり、上位からの調節も別の矢印で示します。実線・破線の矢印はいずれも情報の向きで、物質の移動ではありません。枠は処理の段階で、細胞の数や実際の神経路の走行は示しません。局所の中枢には脊髄や脳幹などがあり、脳からの影響がないという意味ではありません。

24. 感覚の種類、部位、応答を保つ

感覚には、触れた感じや、身体の位置の感じなど、異なる種類があります。どの感覚について、身体のどの部位や左右で、どんな条件のもとにどのような応答が得られたかを分けて記録します。本人が感じた内容を言葉で報告したことと、指示に沿って手足を動かしたことも、感覚の情報と運動出力の情報として区別します。部位と条件をそろえて比べると、どこでどの感じ方が変わったかを伝えられますが、その記録だけで原因を一つの場所へ確定することはできません。

25. 身体機能と、活動の条件

身体機能は、力を出す、動きを合わせる、感じるなど、身体の各部が担う働きです。活動は、物を扱う、移動するなど、具体的な行為を行うことです。一つの力の値だけで、活動の全てが決まるわけではありません。同じ手の力でも、扱う物の形や重さ、周囲の配置、使える支援によって活動のしやすさは変わります。力、協調、感覚の情報と、環境の条件、その行為を経験した人の困りや希望を合わせることで、活動について得られた情報を捉えられます。

物を支える力と、位置へ合わせる動き

上段で手が物に接触して支え、上向きの矢印が支える力に対応する。下段は手の二位置と目標を置き、経路に沿って動きのタイミングや大きさを合わせる。
上段は物を支える力の発揮、下段は目標の位置へ手を動かす際の調整です。力を出す働きと、複数の筋や身体部分のタイミング・動きの大きさを合わせる働きを分けます。課題ができたかは、説明の理解や環境・支援などの条件とも合わせます。

用語を確かめる

医療面接
本人との対話を通じて、健康に関わる経験や経過、背景などの情報を得る過程。
病歴
現在の症状やその経過、これまでの病気などの関連する背景をまとめた情報。
身体診察
身体を見たり触れたり、音などを調べたりして身体についての情報を得ること。
視診
目で身体の形、色、動きなどを観察する方法。
触診
身体に触れて、温かさ、硬さ、腫れ、動きなどの性状を確かめる方法。
圧痛
押されるなどの圧が加わったときに生じる痛み。
打診
身体へ加わった短い機械的刺激から生じる振動や響きを調べて情報を得る方法。
振動
物体がゆれ動くこと。音の生成や伝わり方に関わる。
聴診
身体の中で生じる音を聴いて情報を得る方法。
聴診器
身体の中で生じる音を聴くために使う器具。
呼吸音
呼吸に伴う気流などによって生じ、組織などを通って伝わる音。
心音
心臓の活動に伴う音。代表的には弁が閉じる過程に伴う血液や周囲の構造の振動などにより生じる。
測定値
ある対象の量を、特定の方法と時点で数値として記録したもの。
測定条件
測る部位、装置や方法、姿勢、時刻、安静や活動など、値を得た際の条件。
偶然変動
同じ対象を同条件で繰り返し測る場合などに生じる、一定の方向へ固定されないばらつき。
系統誤差
装置や方法などによって生じる、一定方向の測定のずれ。
体温
身体の温度。部位、方法、時点を合わせて値を読む。
深部体温
体の内部の主要な部分の温度。表面の値と常に一致するとは限らない。
日内変動
一日の中で生じる変動。体温の推移にも時刻が関わる。
脈
心臓の機械的な駆出に伴って動脈の圧や壁へ伝わる拍動。
脈拍数
ある部位で捉えた脈の単位時間あたりの回数。
血圧
血液が血管の壁へかける圧。
収縮期血圧
一拍の動脈圧の最高の値。
拡張期血圧
一拍の動脈圧の最低の値。
静水圧
液体の重さに関わる圧。同じ連続した液体で他条件が同じなら、低い位置ほど上にある液体の重さによる圧が大きい。
カフ
腕などを取り囲む、空気を入れる袋。血圧測定に使う装置の一部。
呼吸数
単位時間に呼吸した回数。
一回換気量
一回の呼吸で出入りする空気の体積。
死腔
換気される部位のうちガス交換へ直接参加しない部分と、その容積。
肺胞換気
肺胞へ届く新しい空気の出入り。単位時間の量には一回量、死腔、呼吸数が関わる。
パルスオキシメータ
光の吸収と動脈の拍動に伴う変化を使い、動脈血酸素飽和度を推定する装置。
SpO2
パルスオキシメータで得る、動脈血酸素飽和度の推定値。Hb量や酸素の総含有量を直接表すものではない。
酸素飽和度
Hbの酸素結合部位のうち、酸素が結合している部位の割合。
PaO2
動脈血に溶けた酸素に対応する分圧。Hbへの酸素結合割合とは別の指標。
灌流
組織へ血液が流れ届くこと。
覚醒
目を覚まして反応できる程度。
意識の内容
自己や周囲の状況、会話などを理解する側面。
筋力
筋が力を発揮する働き、またはその力。
協調運動
複数の筋や身体部分の働くタイミングや大きさを調整し、動きを合わせること。
反射
ある入力に対して神経の回路を通り、応答の開始に意思による判断を必要としない非随意の応答が生じる働き。
反射弓
受容器から求心性経路、中枢での処理、遠心性経路、効果器へ続く反射の連絡。
求心性
末梢から中枢へ向かう情報の方向。
遠心性
中枢から末梢へ向かう情報の方向。
感覚
刺激や身体の状態について得る感じ方や情報。種類と部位、本人の応答を分けて捉える。
身体機能
力の発揮、運動の調整、感覚など、身体の各部が担う働き。
活動
物を扱う、移動するなどの具体的な行為を行うこと。身体機能に加えて環境や支援などの条件にも関わる。