参政権・請願と自由権

法令基準日:2026年4月1日。適用時点は限定的に確認しています。

本文の目次

  1. 権利の名前だけで覚えない
  2. 公務員と選挙人の規定
  3. 請願は平穏に、保護は請願したため
  4. 損害の賠償を求める規定
  5. 18条の二つの文を分ける
  6. 思想・良心と信教を読み分ける
  7. 表現の自由、検閲、通信の秘密
  8. 22条は各項の文言を保つ
  9. 学問の自由と具体的な判断
  10. 文の主語と条件を使って確かめる

1. 権利の名前だけで覚えない

憲法の権利の規定を読むときは、誰について、どの行為や利益を、どの条件で保障しているかを分けます。この章では、公務員や選挙に関わる権利、請願や賠償を求める権利、自由に関する規定をたどります。同じ「権利」という言葉があっても、条文の主体や対象は同じとは限りません。

2. 公務員と選挙人の規定

15条は、公務員を選定し罷免することを国民固有の権利とし、すべての公務員を全体の奉仕者と定めます。一部の支持者だけの奉仕者ではありません。公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障します。さらに、投票の秘密を侵してはならず、選挙人はその選択に関して公的にも私的にも責任を問われません。この最後の規定の対象は、選挙人の選択です。選挙に関係するあらゆる行為の責任がなくなる、と広げないようにしましょう。

3. 請願は平穏に、保護は請願したため

16条は、何人も平穏に請願する権利を持つと定めます。請願は、公的な機関へ事項について希望や意見を申し述べることです。条文には損害の救済、公務員の罷免、法律・命令・規則の制定、廃止又は改正が挙げられ、その他の事項も含まれます。主体を日本国籍の人だけに絞ったり、事項を法律の廃止だけに狭めたりしてはいけません。請願をしたために、いかなる差別待遇も受けないという保護も定められています。希望が採用されたときだけ保護される、という条件はありません。

4. 損害の賠償を求める規定

17条は、何人も公務員の不法行為によって損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に賠償を求めることができると定めます。損害を元に戻すための金銭などを求めるのが賠償です。「公務員の不法行為」「損害」「法律の定め」「国又は公共団体」をつないで読みます。この条文の存在だけで、具体的な請求の全要件が満たされ、必ず賠償が認められると結論づけるわけではありません。個々の請求の要件は国家賠償法などで続けて学びます。

5. 18条の二つの文を分ける

18条は、何人もいかなる奴隷的拘束も受けないと定めます。続く文は、犯罪による処罰の場合を除き、その意に反する苦役に服させられないと定めます。奴隷的拘束は、人を奴隷のように支配下へ置く拘束、苦役は苦しい労働を強いることについての規定です。明記された犯罪処罰の例外は後の文に結び付きます。例外があるという理由で、前の文の奴隷的拘束も認められると読むと、二つの保障を混同します。

6. 思想・良心と信教を読み分ける

19条は、思想及び良心の自由を侵してはならないと定めます。20条は信教の自由を何人にも保障し、宗教団体が国から特権を受けたり政治上の権力を行使したりしてはならないと定めます。2項は何人も宗教上の行為・祝典・儀式・行事への参加を強制されないとし、3項は国及びその機関の宗教教育その他いかなる宗教的活動も禁じます。宗教団体、参加を強制される人、国及びその機関という異なる主体を区別しましょう。「政治上の権力」をあらゆる政治活動という言葉に置き換えないことも大切です。現実の行事が宗教的活動に当たるかは、事実と判例を踏まえる次の学習です。

7. 表現の自由、検閲、通信の秘密

21条1項は、集会、結社、言論、出版その他一切の表現の自由を保障します。2項には、検閲をしてはならないことと、通信の秘密を侵してはならないことが書かれています。思想・良心の自由を定める19条と、表現の自由を定める21条を対応させて覚えましょう。検閲という言葉をあらゆる規制の名前にするのではなく、その判例上の意味や具体的な当てはめは次の学習で確かめます。

8. 22条は各項の文言を保つ

22条1項は、何人も公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を持つと定めます。2項は、何人も外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されないと定めます。第1項に書かれた公共の福祉の条件と、2項の保障対象を区別します。第2項に同じ条件の語句がないことだけで、現実のすべての制限の可否まで判断しないようにしましょう。「外国に移住」と「一時的な海外旅行」は同じ言葉ではありません。

9. 学問の自由と具体的な判断

23条は学問の自由を保障します。自由の条文の場所と文言を確認することは、研究や教育に関する問題を考える土台です。ただし、この一文だけで大学や研究活動に関わる具体的な争いの結論まで出せるわけではありません。まず思想・良心、表現、学問という自由の種類と、対応する条文を区別できるようにしましょう。

10. 文の主語と条件を使って確かめる

選挙人の責任免除の対象はその選択です。請願の保護は、平穏な請願をしたための差別待遇を防ぎます。賠償を求める規定には法律の定めという条件があり、苦役の例外を奴隷的拘束へ移してはいけません。信教では三つの異なる主体、22条では各項の対象と条件を保ちます。演習では、書き換えられた主体や対象、落とされた条件を一つずつ見つけてみましょう。

18条の奴隷的拘束の禁止と意に反する苦役の禁止を別々に示し、犯罪処罰の例外が後者だけにつながる比較図

18条の奴隷的拘束の禁止と意に反する苦役の禁止を別々に示し、犯罪処罰の例外が後者だけにつながる比較図
18条の奴隷的拘束の禁止と意に反する苦役の禁止を別々に示し、犯罪処罰の例外が後者だけにつながる比較図