ICFの能力と実行状況:環境・支援・背景を読む
本文の目次
1. 行えた活動に、評価した環境を残す
ICFの能力と実行状況を読む際は、何を行えたかに加えて、どんな環境を前提に評価したかを残す。能力は標準化された環境、実行状況は現在の生活環境での活動・参加を表す。用具や他者の支援の有無は、どちらの評価点についても別に記録できる。 本章は既評価記録の読み方を扱う。一般的な心身機能・活動・参加の区分や、支援後に活動できることと身体機能の回復との違いは、既存の共通教材を参照する。
2. 標準化環境と現在環境を分ける
能力の評価では、異なる環境による影響をそろえるため、標準化された環境を用いる。実行状況は、本人が今の生活環境で実際に行っている状況を捉える。「病院で行ったから能力」「自宅で行ったから実行状況」という場所の名前だけでは分類しない。記録がどの環境を前提としているかを読む。 標準化環境の遂行と現在環境の遂行は、同じ課題でも異なる側面の情報である。両者を比較するときは、支援の条件も残し、支援ありの値を無支援の値と同じ条件で得たものとして扱わない。
3. 支援ありの能力を実行状況へ変えない
WHOの導入資料は、標準的な能力の既定記録を支援なしとして説明し、追加評価点により、能力と実行状況の双方について支援あり・なしを補って記録できることを示している。したがって、標準化環境での支援あり追加記録は、支援があることだけを理由に実行状況へ変更しない。現在環境での無支援記録も、無支援という理由だけで能力へ変更しない。 評価する環境の軸と支援条件の軸を分ける。既定の無支援能力と支援ありの追加能力を一つの値として混ぜず、何を比較しているかを明確にする。本章で患者に評価を実施したり、評価点の数値を割り当てたりする手順は扱わない。
4. 同じ環境でも本人ごとに促進・阻害を読む
環境因子は、状況を記述する本人の視点で捉える。同じ建物の形やサービスでも、ある人の遂行を促進し、別の人には阻害となることがある。例えば、車椅子での通行に役立つ段差のない経路でも、触って分かる手掛かりがない場合に、視覚情報を使えない人の方向確認を妨げることがある。環境の名称だけで全員への作用を決めない。 阻害は、存在する障壁だけでなく、必要なサービスや用具がないことによっても生じる。記録する人、対象の課題、実際に説明された作用を合わせ、促進・阻害を区別する。ここでの例は環境をどう整備すべきかという設計や介入の指示ではない。
5. 分類されない個人因子も背景として残す
環境因子は個人の外部にある。建物、交通サービス、他者の態度や支援などが含まれる。一方、本人の教育歴、習慣、経験、対処の仕方などは個人の背景として捉える。ICFでは個人因子の関与を認めるが、個人因子そのものは分類・コード化されていない。 分類表にないことを、関与しない、記録しなくてよいという意味へ置き換えない。本人の教育歴と現在の教育サービス、本人の経験と他者の態度など、似た言葉でも何を指しているかを分けて記録する。環境因子の分類欄へ個人コードを創作して入れたり、個人背景を一括して削除したりしない。