肩関節唇損傷:BankartとSLAPの部位
本文の目次
1. Bankartでは前下方の関節唇を読む
Bankart(バンカート)病変は、肩甲骨の関節窩の前下方にある関節唇の裂傷へ対応する。前方へ肩が脱臼した際に生じることが多いと説明されるが、前方脱臼の全例に必ずBankart病変があるという条件にはしない。 既存の反復性肩脱臼教材は、初回の支持構造の損傷、その後の不安定感や再発の経緯を扱う。ここでは、それらの一般的な情報に、Bankartという具体的な損傷型の部位を対応させる。正常な肩関節の構造・支持は共通教材を参照する。
2. SLAPでは上方と長頭腱起始部の関係を読む
SLAP病変は、関節窩の上方にある関節唇の裂傷へ対応する。上腕二頭筋長頭腱の起始部を損傷に含むこともある。上方の関節唇という部位と、長頭腱の起始部も関わり得るという情報を合わせて読む。 全てのSLAP病変で長頭腱の起始部が必ず損傷するとはしない。Bankartの前下方という部位をSLAPへ交換せず、正常な腱の付着や一般的な断裂という語だけで二つの病変を同じ型へまとめない。
3. 損傷型の部位と症候は別に確認する
BankartとSLAPは、ともに関節唇の損傷を扱うが、代表的な損傷部位は異なる。病変の前下方・上方という構造情報を、痛みや外れそうな不安感という症候だけに置き換えない。関節唇損傷の症状は他の肩損傷と似ることがあり、常に特異的ではない。 本章は病的な構造と損傷型の対応を学ぶ教材である。肩を動かして痛みや不安感を誘発する検査、画像の判定、整復・固定の操作、手術・運動・薬剤の選択を示さない。症状だけから個人の損傷型や治療の適否を決めるものではない。