神経系の区分と基本回路
本文の目次
- 細胞とその突起を分ける
- 中枢は頭の中だけではない
- 一本の神経にも多くの線維がある
- 灰白質と白質は成分の偏り
- 内側と外側は場所によって違う
- 細胞体の集まりと線維の束
- 求心と遠心は中枢を基準にする
- 情報の到着と実際の作用
- 反射と意思による運動
- 反射弓と数える接続
- 局所の応答と上位への枝
- 骨格筋へ達する体性の出力
- 自律の節前と節後
- 二ニューロン型ではない例
- 交感系と副交感系の入口
- いつも正反対とは限らない
- 放出する場所と物質名
- どの情報で分類したか
1. 細胞とその突起を分ける
ニューロンは一個の神経細胞で、細胞体と突起を持つ。軸索はその突起の一つで、活動電位を他の場所へ伝える。細胞体に続く長い軸索を、別の一個の細胞として足すわけではない。ニューロンどうしの連絡では、別の細胞との接続をシナプスという。神経組織には、ニューロンの働きや環境を支えるグリア細胞もある。細胞、細胞の一部分、細胞が集まる組織という大きさの違いを最初に分けて読む。
2. 中枢は頭の中だけではない
脳と脊髄を合わせて中枢神経系(CNS)という。脊髄は頭部の外にあっても中枢である。中枢につながる末梢の神経や神経節は末梢神経系(PNS)に属する。神経節は、末梢に神経細胞の細胞体が集まる構造である。頭部にも末梢の神経があるので、頭の内外だけで中枢と末梢を決めない。この構造上の区分と、情報がどちらへ向かうかという区分は別に読む。
3. 一本の神経にも多くの線維がある
末梢神経は、多数の軸索などが支持組織とともに束を作る構造である。軸索とその周囲の構造を合わせた細い経路を神経線維と呼ぶ。一つのニューロンの軸索と、多数の線維を含む一本の末梢神経は同じ大きさではない。感覚の情報を中枢へ送る線維と、中枢からの出力を運ぶ線維が同じ束に含まれるものを混合神経という。束が一本という記録から、ニューロンが一個、情報の向きが全て同じとは決められない。
一個の細胞と線維の束
4. 灰白質と白質は成分の偏り
灰白質にはニューロンの細胞体、樹状突起、シナプスなどが多い。樹状突起は、他の細胞からの入力を受けることに関わる突起である。白質には主に髄鞘を持つ軸索が多い。髄鞘は軸索を包み、活動電位の伝導に関わる構造である。これらは多い成分の違いを示す呼び方で、灰白質が細胞体だけ、白質が有髄軸索だけという意味ではない。どちらにもグリアなどがあり、白質を細胞のない場所とは呼ばない。
5. 内側と外側は場所によって違う
大脳の表面の皮質は灰白質で、その内側には白質がある。ただし、大脳の内部にも細胞体が集まる灰白質の領域がある。脊髄の断面では、中央寄りに灰白質、外側に白質がある。この二つの典型例でも内外の配置は同じではない。中枢神経系のどこでも、外側は灰白質、内側は白質と固定して読まない。
灰白質と白質の位置
6. 細胞体の集まりと線維の束
中枢で神経細胞の細胞体が集まる領域を神経核、末梢で集まる構造を神経節という。ここでの神経核は、多数の細胞体の集まりであり、一個の細胞の中にある核とは別の意味である。情報を運ぶ線維の束は、末梢では神経、中枢では伝導路などと呼ばれる。細胞体の集まりと、線維が通る束を区別する。神経節という名前だけで、その場所に必ず別のニューロンへのシナプス中継があるとも決めない。
7. 求心と遠心は中枢を基準にする
中枢神経系へ向かう情報を求心性、中枢から末梢へ向かう情報を遠心性という。ここでの「心」は心臓を目印にする意味ではない。頭側・足側や、一個のニューロンの細胞体へ近づくかどうかでも決めない。感覚ニューロンの細胞体が末梢の感覚神経節にあっても、そこから脊髄へ続く枝を進む情報は中枢へ向かうので求心性である。この神経節では、同じ感覚ニューロンの末梢側と中枢側の枝が連続しており、細胞体があることを別ニューロンへの中継と取り違えない。
場所の区分と情報の向き
8. 情報の到着と実際の作用
受容器は刺激を受け取り、神経の入力へつなぐしくみである。入力は求心性経路を通って中枢へ入り、中枢では複数の情報が処理されて出力につながる。この処理を統合という。遠心性経路の先で、力を出す筋や分泌する腺などを効果器と呼ぶ。腺は物質を作り、分泌する組織である。受容器の入力、神経の出力、効果器が実際に働いた記録は別々で、一段階の到着だけでは残り全てを測ったことにならない。心筋や平滑筋、腺などの働きを調節するのが自律神経系である。この調節にも中枢の統合や出力があり、自律神経系を末梢だけの働きとしない。
9. 反射と意思による運動
ここでは、中枢を含む基本反射を読む。反射は受容器への刺激をきっかけに、神経回路を通って生じる非随意の応答である。非随意とは、その応答を起こすために意思による開始の判断を必要としないことを指す。速い動きや、本人が意識しなかった動きという特徴だけでは、反射の回路を確認したとはいえない。骨格筋が効果器になる体性反射も、内臓の働きに関わる自律反射もある。骨格筋へ向かう体性の出力を、随意運動だけに限らない。自律の調節も、反射だけで起こるわけではない。
10. 反射弓と数える接続
基本反射では、受容器から求心性経路、中枢での処理、遠心性経路、効果器へとつながる。この一連の経路を反射弓という。中枢内で感覚ニューロンから運動ニューロンへ直接一回のシナプスを介する経路が単シナプス性である。間に情報をつなぐ介在ニューロンがあれば、複数のシナプスを介する多シナプス性の経路になり得る。全反射に一個の介在ニューロンが必須という意味ではない。中枢内の神経細胞間シナプスだけを数えるときは、神経から筋への神経筋接合部をその数に混ぜない。
中枢内で数える接続
11. 局所の応答と上位への枝
脊髄や脳幹でつながる局所の経路は、大脳での意識的な判断が先に行われなくても反射の応答を起こせる。脳幹は脳の一部で、脊髄と他の脳の領域を結ぶことにも関わる。反射を全て脊髄だけの働きともしない。感覚入力には、局所の回路へ入る枝と、脳の上位の領域へ向かう枝がある場合がある。また、上位からの入力で局所反射の起こり方が調節されることもある。局所経路があることは、脳から独立して一切調節されないという意味ではない。別の枝が保たれると明示された模型では、一枝の変化を全ての経路の消失へ広げない。
局所の応答と上位への枝
12. 骨格筋へ達する体性の出力
骨格筋へ達する末梢の体性遠心の典型では、中枢に細胞体を持つ一個の運動ニューロンの軸索が筋へつながる。神経筋接合部では、神経の終末から放出されたアセチルコリン(ACh)が筋側の受容体へ作用する。数えているのは、中枢から骨格筋までの末梢の運動出力である。その上流の中枢内の情報処理が、全て一個のニューロンでできるという意味ではない。同じ骨格筋への出力は、意思による運動にも体性反射にも使われる。呼吸に使う横隔膜も骨格筋で、自動的な呼吸と意識的に変える呼吸のどちらも、この筋への体性の運動出力を使う。
13. 自律の節前と節後
心筋、平滑筋、腺などへ向かう典型的な自律遠心は、二個のニューロンを介する。中枢に細胞体を持ち、末梢の自律神経節へ軸索を伸ばすのが節前ニューロンである。神経節でその入力を受け、効果器へ軸索を伸ばすのが節後ニューロンである。節前の軸索が中枢の外を通る部分と、中枢にある節前の細胞体は、一個のニューロンの別の部分である。典型的な自律神経節では節前から節後へのシナプスがあり、感覚神経節に細胞体があることとは接続の意味が違う。
末梢への出力を比べる
14. 二ニューロン型ではない例
典型的な自律遠心の二ニューロン型には、別の構成をとる例もある。腎臓の上方にある副腎の中心部を副腎髄質という。ここでは交感系の節前線維が分泌細胞へつながり、その細胞がアドレナリンなどを血液へ放出する。神経による入力から、血液で運ばれるホルモンへという連絡である。この分泌細胞を、臓器へ軸索を伸ばす通常の節後ニューロンとして付け足して数えない。
神経の入力から血液へ
15. 交感系と副交感系の入口
自律遠心には交感系と副交感系がある。代表的な節前ニューロンの細胞体が出る領域は、交感系では脊髄の胸腰部、副交感系では脳幹と脊髄の仙髄である。胸腰部と仙髄は脊髄の区分名であり、同名の骨の高さをそのまま示すものではない。この区分は、神経の出発点と接続に基づく。交感系を気持ちの緊張だけ、副交感系を安心だけに置き換えない。両系の活動は、その時の体の状態や臓器によって変わる。
16. いつも正反対とは限らない
心拍数の一般的な調節では、交感系は増やす向き、副交感系は減らす向きに働く。これは全臓器の全作用が必ず反対になるという法則ではない。例えば、唾液腺の分泌には両系が関わり、分泌の量や性質の変化を心拍数と同じ一つの増減へ置き換えられない。汗を出すエクリン汗腺は主に交感系に支配される。全臓器が常に両系から同じ程度に支配されるとも決めない。臓器と、比べる働きを一緒に確かめる。
17. 放出する場所と物質名
交感系と副交感系の典型的な節前ニューロンは、どちらも神経節などでAChを放出する。節後では、典型的な交感系の多くがノルアドレナリンを、副交感系がAChを使う。ただし、エクリン汗腺を支配する交感系の節後ニューロンはAChを使う。骨格筋へ達する体性の運動ニューロンもAChを使う。物質名だけで副交感系と決めず、どの細胞がどこで放出し、どの相手へつながるかを合わせて読む。同じ物質でも、受け手の受容体や下流のしくみで作用は違い得る。
18. どの情報で分類したか
一本の末梢神経という構造、そこに含まれる求心性の線維、細胞体のある神経節、効果器の応答は別の観測である。名前が一つ分かっても、全ての情報方向、接続、働きが分かったとはいえない。入力が中枢へ到着した記録だけでは、遠心性経路や効果器が実際に働いたことは未確認である。逆に、効果器の応答が一つ見えても、候補となる入力経路や原因が複数あるなら、それだけで一つへ特定できない。構造、向き、接続、応答の記録を分けて、直接確かめた範囲を読む。
用語を確かめる
- ニューロン
- 一個の神経細胞。細胞体と突起を持つ。
- 軸索
- ニューロンの突起の一つ。活動電位を他の場所へ伝える。
- 末梢神経
- 多数の軸索などが支持組織とともに束を作る末梢の構造。
- 神経線維
- 軸索とその周囲の構造を合わせた細い経路。
- 混合神経
- 求心性と遠心性の線維を同じ束に含む末梢神経。
- 中枢神経系(CNS)
- 脳と脊髄を合わせた構造上の区分。
- 末梢神経系(PNS)
- 中枢につながる末梢の神経や神経節などの構造上の区分。
- 灰白質
- 細胞体、樹状突起、シナプスなどが多い神経組織の領域。これらだけからなるという意味ではない。
- 白質
- 主に髄鞘を持つ軸索が多い神経組織の領域。グリアなどもあり、細胞のない場所ではない。
- 神経核
- 中枢で神経細胞の細胞体が集まる領域。一個の細胞の核とは別。
- 神経節
- 末梢で神経細胞の細胞体が集まる構造。名前だけではシナプス中継の有無は決められない。
- 伝導路
- 中枢で情報を運ぶ線維の経路。
- 求心性
- 中枢神経系へ向かう情報の方向。
- 遠心性
- 中枢神経系から末梢へ向かう情報の方向。
- 受容器
- 刺激を受け取り、神経の入力へつなぐしくみ。
- 統合
- 中枢などで複数の情報を処理し、出力へつなぐこと。
- 効果器
- 神経の出力などを受け、力や分泌などの実際の作用を示す筋・腺など。
- 非随意
- その応答を起こすために、意思による開始の判断を必要としないこと。
- 反射
- 受容器への刺激をきっかけに、神経回路を通って生じる非随意の応答。ここでは中枢を含む基本反射を扱う。
- 反射弓
- 基本反射の受容器から、求心性経路、中枢での処理、遠心性経路、効果器へつながる経路。
- 介在ニューロン
- 他のニューロン間で情報をつなぐニューロン。
- 単シナプス性
- ここでは、反射経路の中枢内の神経細胞間シナプスを一回介すること。
- 多シナプス性
- 複数の神経細胞間シナプスを介すること。数える経路と範囲を確かめる。
- 脳幹
- 脳の一部。脊髄と他の脳の領域を結ぶことにも関わる。
- 体性遠心
- 骨格筋へ向かう運動出力。随意運動だけでなく体性反射にも使われる。
- 自律遠心
- 心筋・平滑筋・腺などへ向かう出力。典型的には節前と節後の二ニューロンを介する。
- 節前ニューロン
- 典型的な自律遠心で、中枢に細胞体があり末梢の自律神経節などへ軸索を伸ばすニューロン。
- 節後ニューロン
- 典型的な自律遠心で、末梢の自律神経節に細胞体があり効果器へ軸索を伸ばすニューロン。
- 副腎髄質
- 副腎の中心部。交感系の節前線維による入力を受けた分泌細胞がホルモンを血液へ放出する。
- 交感系
- 自律神経系の一部。代表的な節前細胞体の出る領域は脊髄の胸腰部。
- 副交感系
- 自律神経系の一部。代表的な節前細胞体の出る領域は脳幹と脊髄の仙髄。
- エクリン汗腺
- 汗を出す腺の一種。主に交感系に支配され、節後でAChを使う代表例。
- アセチルコリン(ACh)
- 神経の伝達物質。両自律系の節前や、体性の神経筋接合部など複数の経路で使われる。
- ノルアドレナリン
- 典型的な交感系の節後の多くで使われる伝達物質。物質名だけで全経路の分類を決めない。