正常な腎・尿路の構造と体液調節の基盤

本文の目次

  1. 腎と膀胱を同じ地図で読む
  2. 組織の領域と、その中を通る管
  3. 腎小体から尿細管へ続く
  4. 血管内と管腔内の二つの流れ
  5. 濾過障壁を越える成分
  6. 押す圧と、濾過に反対する条件
  7. 同じ体積毎時間でも、記録する場所が違う
  8. 三つの移動は出発点と到着点で分ける
  9. 腎の処理量と、膀胱から出す量
  10. 濃さと体積から、同じ成分の量へ
  11. 尿細管上皮の両側を追う
  12. 近位で戻る成分と、戻す仕組み
  13. 係蹄の下る側と、上る側
  14. 髄質の条件をつくることと、利用すること
  15. ADHは集合管の通りやすさを変える
  16. ナトリウムとカリウムを調整する別の情報
  17. レニンの放出から、二つの作用先へ
  18. 腎の状態を伝える入力と、結果を分ける
  19. 尿管は尿を運ぶ筋のある管
  20. 蓄える時期と、出す時期
  21. 壁の平滑筋と、出口の骨格筋
  22. 伸展の入力と、上位からの調節
  23. 酸性を表す言葉と、炭酸水素イオン
  24. 呼気と尿で、別の成分を調整する
  25. 血中の情報が骨髄へ届く
  26. ビタミンDの材料から、肝と腎へ
  27. 腎での活性化と、作用する場所

1. 腎と膀胱を同じ地図で読む

腎臓は横隔膜の下、脊柱の左右にある一対の臓器で、腹膜より後ろの後腹膜に位置する。本人の左右を基準にする。通常の成人で、空に近い膀胱は主に骨盤腔にある。腎臓で形成した尿は尿管を通って膀胱へ運ばれ、膀胱に蓄えられる。尿道は膀胱から体外へ続く別の管である。尿を形成する場所、運ぶ管、蓄える場所を分けて追う。

腎(後腹膜)と尿路

本人正面の胴体の位置模式。図の左に本人の右、図の右に本人の左と明示する。横隔膜の曲線より下、中央の脊柱の左右に二つの腎を描き、後腹膜の腎と直接名を置く。左右の尿管の白い管腔が下の膀胱へ入り、膀胱から尿道が体外側へ続く。尿の矢印はそれぞれの尿管を下り、膀胱の出口へ向く。腎は尿を形成する場所、尿管は尿を運ぶ管、膀胱は尿を蓄える場所として識別し、血管・腹膜腔へ尿が流れる経路は描かない。これは前面投影の位置模式で、後腹膜の奥行きや実寸、膀胱の正確な尿体積は図の面積から決めない。
本人を正面から見る位置模式です。本人の右は図の左です。腎は横隔膜の下・脊柱の両側の後腹膜、空に近い通常成人の膀胱は主に骨盤部にあります。太い矢印は尿の経路です。奥行き・個人の高低差・実寸や尿量は示しません。後腹膜の空間の意味は先行の解剖説明で確認します。

2. 組織の領域と、その中を通る管

腎臓の外側の組織領域が皮質、内側が髄質である。皮質や髄質そのものが尿の流れる空間ではない。尿細管や集合管がこれらの領域を走り、その内側の管腔を液が進む。集合管の出口から腎杯という受け口へ尿が渡り、腎杯が合流する腎盂から尿管へ続く。腎盂は形成した尿を集める側の空間で、糸球体の濾過を行う場所や血管ではない。

3. 腎小体から尿細管へ続く

糸球体は毛細血管がまとまった構造で、それをボウマン嚢が包む。この二つで腎小体をつくる。腎小体は皮質にあり、ボウマン嚢の内側の腔が濾液を受ける。腎小体と尿細管を合わせた基本的な機能単位をネフロンという。管腔の液は近位尿細管、ヘンレ係蹄、遠位尿細管を経て集合管へ進む。集合管へつながることと、ネフロンの基本構成の呼び名を分ける。

組織の中を、管腔が通る

腎の断面を大きく描く。外側の点模様の組織が皮質、内部の斜線の組織領域が髄質で、尿が走る白い空間とは別である。代表として二つの髄質の領域に白い集合管が走り、その末端が別々の小さい腎杯の内腔へ開く。腎杯は白い接続路で腎盂へ合流し、腎盂から尿管へ連続する。尿の矢印はこの白い内腔だけを進み、皮質や髄質の塗り全体を通る矢印にはしない。腎盂を糸球体や血管の位置として描かない。断面・分枝数・寸法の正確な再現ではなく、組織領域と集尿の空間の違いを示す。
腎の切断面の位置模式です。点の外側帯は皮質、斜線の内側領域は髄質という組織です。白い集合管の内腔から腎杯・腎盂・尿管へ尿が続きます。皮質や髄質そのものを尿の空洞にしません。分枝数・領域の比率・実寸は省略しています。

4. 血管内と管腔内の二つの流れ

血液は輸入細動脈から糸球体へ入り、輸出細動脈から出る。輸出後は尿細管周囲の毛細血管へ続き、髄質を通る直血管の経路もある。一方、糸球体から濾過された液はボウマン嚢の腔へ入り、尿細管の管腔へ進む。尿細管上皮と血管の間の細胞間領域を間質、そこにある液を間質液という。管腔から上皮を越えた物質は間質を経て周囲の毛細血管へ戻り得る。管腔の液が輸出細動脈を通るわけではない。

5. 濾過障壁を越える成分

糸球体の血液側とボウマン嚢の腔の間には濾過障壁がある。毛細血管の内皮、基底膜、ボウマン嚢側の足細胞という細胞がこの境界に関わり、一枚の細胞膜だけでできた壁ではない。通常、水や小さな溶質は濾液へ移りやすく、血球や大きなたんぱく質は血管側に保たれる。血液全体が丸ごと濾液になるという意味ではなく、すべてのたんぱく質の濾過が厳密にゼロという一般化もしない。

6. 押す圧と、濾過に反対する条件

糸球体の毛細血管内の静水圧は、液をボウマン嚢の腔へ押し出す向きに働く。ボウマン嚢の腔の静水圧は、その移動に反対する。血漿たんぱく質が水を血管側へ引く膠質浸透圧も、通常は濾過に反対する側の条件である。同じ障壁で他の条件が保たれる模型なら、押す側の圧が増す場合と、反対する側が強まる場合では濾過を進める力の変化が違う。濾過はこの圧の関係による移動で、尿細管上皮が物質を運ぶ過程とは別である。

濾過を促す圧と、反対の条件

左は糸球体の血液側、右はボウマン腔側で、間に内皮・基底膜・足細胞が関わる別の濾過障壁がある。同じ障壁を三つの行へ繰り返し示す。一行目の血液側の静水圧の矢印は左の血液側から右の腔側へ向く。二行目のボウマン腔の静水圧は腔側から血液側へ、三行目の血漿の膠質浸透圧も血液側へ引く作用を示す。これらは圧の作用方向であり、同量の血液が逆流する絵ではない。下の拡大は内皮・基底膜・足細胞を同じ順に直接名で示し、障壁を一枚の細胞膜としない。三つの矢印の長さや障壁の帯の太さは圧や膜厚の数値ではない。
同じ濾過障壁に対する三つの圧の作用方向を示す模式です。矢印は血流や成分の実移動量を表しません。血液側の静水圧は腔側への濾過を促し、ボウマン腔の静水圧と血漿たんぱく質の膠質浸透圧は通常これに反対します。矢印の長さを強さに対応させず、実際の圧や障壁の厚さは未提示です。

7. 同じ体積毎時間でも、記録する場所が違う

腎血流量は腎の血管内を通る血液の体積を単位時間で表す量である。糸球体濾過量(GFR)は、糸球体から濾過される液の体積を単位時間で表す。割合そのものではない。尿流量は最終的な尿の出口を通る体積を単位時間で表す。途中で水が再吸収され、成分が追加されるため、GFRと最終尿流量は同じ量ではない。心拍出量に対する腎血流の割合を使う比較は、その割合が指定された条件で行う。

8. 三つの移動は出発点と到着点で分ける

濾過は糸球体の血液側からボウマン嚢の腔へ、再吸収は尿細管の管腔側から血液側へ、尿細管分泌は血液側から管腔側へ向かう。分泌で加わった物質も尿へ進み得るので、尿へ出る全成分が糸球体の濾過だけを入口にするわけではない。尿細管分泌という物質移動と、レニンなどを血中へ放出する内分泌の働きは別の段階である。

9. 腎の処理量と、膀胱から出す量

同じ成分、同じ期間、同じ質量単位で、濾過量F、再吸収量R、分泌量Sを追う。腎の模型内で生成・分解・蓄積や他の出入りがなければ、尿側への排泄量EはF−R+Sで求められる。この腎の処理出口を通る量と、膀胱に蓄えた後に体外へ排尿する量は、同じ時刻や期間で必ず等しいとはいえない。間の尿路や膀胱で量が変わるなら、その蓄積と出入りも別に追う。

10. 濃さと体積から、同じ成分の量へ

通常の尿の大部分は水で、尿素や尿酸などの老廃物と電解質などを含む。尿素や尿酸は代謝で生じる成分の例である。溶けた成分の濃度は、その成分の質量を尿の体積で割った値で、濃度に対応する尿体積を掛けると成分の質量へ戻せる。同じ排泄質量でも水の体積が少なければ濃度は高くなる。尿が濃いことだけで成分の排泄量が多いとは決められない。期間の量と単位時間の率も分けて読む。

腎の出口と、膀胱の蓄積

上の腎の処理範囲に左の血液と右の管腔を別に置く。濾過Fは血液から管腔へ、再吸収Rは管腔から血液へ、分泌Sは血液から管腔へ向かう破線で示す。図内に同じ成分と期間、生成・分解・蓄積なしの条件を置き、E=F−R+Sを明示する。右の管腔から腎出口Eの成分が下の膀胱へ届き、膀胱で蓄える量とそこから排尿する量は別の出入りとして描く。膀胱は腎の無蓄積という囲みの外である。腎出口と膀胱からの量を同時刻・同期間で必ず等しくする図ではない。
同じ成分・同じ期間の質量を追う腎の模型です。生成・分解・蓄積や他の出入りがない範囲では、腎出口E=F−R+Sです。破線は成分の移動で、全血の丸ごとの移動ではありません。腎から出た後は膀胱の蓄積を別に追うため、このEを同じ期間の排尿量と必ず等しくしません。図の面積や矢印の長さは質量の値ではありません。

11. 尿細管上皮の両側を追う

尿細管上皮の頂端側は管腔に向き、基底側は基底膜や間質に向く。基底膜は細胞の外の層で、各細胞の細胞膜とは別である。再吸収では、管腔側から上皮を越えた成分が間質へ出て、周囲の毛細血管へ戻る。分泌では血液側から間質を経て管腔へ加わる向きを追う。細胞の間を通る経路もあり、すべてが一つの細胞内だけを通るとは限らない。上皮の境界と毛細血管壁を一枚の膜として扱わない。

血液と管腔は別の流れ

左右へ広げた経路模型。左上は輸入細動脈が糸球体の毛細血管内へ入る。そこから別の輸出細動脈が下の周囲の毛細血管へ続き、静脈側へ出る。右上のボウマン腔は血管の外の別空間で、濾過の破線矢印が血液側から腔側へ向く。右の白い尿細管内腔はボウマン腔から下へ連続する。上皮の内外の膜と左の毛細血管壁は別の輪郭で、間に間質がある。再吸収の破線矢印は管腔から上皮と間質を越え血液へ、分泌はその逆へ向く。実線の矢印は各管内の流れで、分泌や再吸収という物質移動とは別である。模式の横の距離や各通路の幅は測定していない。
経路を左右へ広げた模式です。左の血液は糸球体から輸出細動脈を経て周囲の毛細血管へ、右の濾液はボウマン腔から尿細管へ進みます。破線の矢印は成分の移動で、再吸収と分泌は上皮・間質・毛細血管壁を越えます。血管の分枝や直血管の走行は省略し、全物質が同じ通路や速さで動く意味にはしません。

12. 近位で戻る成分と、戻す仕組み

近位尿細管では、濾過されたブドウ糖やアミノ酸、ナトリウム(Na⁺)や水などが多く再吸収される。ここで再吸収する向きは管腔から体内側である。物質によって輸送の仕組みは違い、すべてを水と一緒に受動的に押し戻す操作ではない。膜の通路、物質を動かす勾配、勾配を保つ働きを分ける。近位でも水は再吸収されるため、腎で水を戻す全過程がADHの存在だけで始まるわけではない。

13. 係蹄の下る側と、上る側

ヘンレ係蹄は髄質へ下り、折り返して上る尿細管の部分である。代表的な下行脚では水が通りやすく、周囲との浸透圧条件に応じて管腔から水が出る。太い上行脚では塩を管腔から間質へ運ぶ一方、水は通りにくい。この性質の違いにより、管腔の水と塩が常に同じ割合で一緒に出るわけではない。ここでは細い部分を含む全区間の輸送体や定量割合を並べるのではなく、代表的な区間差を追う。

14. 髄質の条件をつくることと、利用すること

係蹄の区間ごとに異なる水と塩の移動は、髄質の間質の浸透圧条件を作り、保つことに関わる。血流や他の成分の移動もその保持に関わるため、一つの塩の矢印だけで全体ができるわけではない。集合管は、この周囲の条件を利用して水を戻し得る。周囲に水を動かす条件があることと、集合管の壁が水を通しやすいことは別である。ADHを加えれば無条件に髄質の勾配や水そのものが新しく作られるとはいわない。

係蹄の区間で、動く対象が違う

白い管腔が左の下行脚を下り、折り返して右の太い上行脚を上る。両側の間に髄質の間質を別の背景領域として示す。左から間質へ向く破線は水の移動、右から間質へ向く破線は塩の移動と直接名を添える。下行脚は水が通りやすく、太い上行脚では塩を運ぶ一方で水は通りにくいと図内で区別する。実線矢印は管腔内の流れで、破線の移動とは別である。これは代表的な性質の模式で、全区間の輸送体、血管の全走行、比率や測定値を示さない。
代表的な下行脚と太い上行脚を、同じ管腔の続きとして描きます。水と塩は壁を越える別の移動です。区間差は髄質の条件を作り保つ一部で、血流や他の成分の役割は省略しています。矢印の数・長さ、領域の面積を移動量や正常比率に対応させません。

15. ADHは集合管の通りやすさを変える

抗利尿ホルモンADHはバソプレシン、AVPとも呼ばれ、視床下部で合成され後葉から血液へ放出される。正常に応答する集合管ではADHが水透過性を高める。管腔より間質側の有効な浸透圧が高いなど、水を動かす条件があれば、管腔から間質へ水が正味に移り得る。透過性だけを記録しても、勾配や移動量は確定できない。水を作る作用や、腎のすべての区間に同じ水移動を起こす作用ともしない。

通路と、水を動かす条件

上下の集合管上皮を同じ配置で比較する。左は管腔、中央は両側に細胞膜を持つ上皮、右は間質である。どちらもADHに応答して水透過性が高いと図内に置く。一つ目は有効な勾配なしという指定模型で、左右両向きの水移動を示し正味の水移動なしと明記する。二つ目は間質側の有効浸透圧が高い条件で、水の破線矢印が管腔から上皮の二膜を越え間質へ向く。膜を通れる状態と、水を動かす周囲の条件を別にする。ADHが水や髄質の勾配を無から作る形にはしない。矢印は定量の流量や実測された通路数ではない。
どちらもADHに応答して水透過性が高い集合管という、二つの指定条件を比較します。①は有効な勾配がない模型で正味移動なし、②は間質側の有効な浸透圧が高い条件で管腔から間質へ水が移り得ます。通りやすさだけから移動量を決めず、矢印の長さや数を水量の測定値にはしません。全腎の水再吸収がADHだけで始まる意味でもありません。

16. ナトリウムとカリウムを調整する別の情報

副腎皮質から出るアルドステロンは、遠位尿細管の後半や集合管などで、ナトリウムの再吸収とカリウム(K⁺)の尿への排泄を促す方向に働く。カリウムを血液側から管腔へ加える移動は尿細管分泌である。Na⁺の戻り、K⁺の追加、水の正味移動は別の対象と条件を持つ。アルドステロンによるNa⁺調整と、ADHによる集合管の水透過性調整を同じ作用へまとめない。ホルモン名だけから最終尿量や濃度の値までは決まらない。

17. レニンの放出から、二つの作用先へ

レニンは腎から血液へ出る酵素で、肝臓や脂肪細胞で作られるアンジオテンシノーゲンをアンジオテンシンⅠへ変える。アンジオテンシン変換酵素(ACE)がⅠをⅡへ変え、一段目の生成物が次の材料になる。アンジオテンシンⅡは末梢血管を収縮させるほか、副腎皮質のアルドステロン分泌を促す。血管へ直接働く枝と、別のホルモンを介して尿細管の成分移動を調整する枝を分ける。

18. 腎の状態を伝える入力と、結果を分ける

腎へ届く血液の灌流が低下する情報、糸球体の近くにある尿細管でのNaClの情報、交感神経の入力などが、レニン放出の調節に関わる。NaClは塩化ナトリウムを表す。通常、灌流低下やその部位へのNaClの到達低下などはレニン放出を促す方向の入力になり得る。入力を受けて放出されることと、下流で血管や尿細管が実際に応答することは別である。一つの圧や尿量の結果から、働いた入力が一種類だったとは逆算しない。

19. 尿管は尿を運ぶ筋のある管

形成された尿は集合管の出口から腎杯、腎盂、尿管へ進み、膀胱に届く。尿管の壁には平滑筋があり、収縮が管に沿って伝わる蠕動によって尿の輸送を助ける。重力だけで流す空の排水管ではない。尿管が運ぶことは糸球体で尿の材料を濾過することや、膀胱で尿を蓄えることとは別である。尿管と、膀胱から体外へ続く尿道を取り違えない。

尿管は、壁の動きで運ぶ

左右に続く同じ尿管部分を前後の二場面で描く。上では左寄りの壁が狭まり、その右側に尿がある。下では狭まる場所が右へ進み、同じ尿が膀胱側へ移る例を示す。前後の横の縮尺と向きは同じで、尿そのものを新しく作る矢印はない。収縮の引出線は管の狭まった壁へ、尿という直接名は管腔の液に置く。赤い外側は平滑筋を含む尿管の壁で、端を閉じた袋にしない。尿管輸送を重力だけの流れや排尿完了と同じにしない。
尿管の一部分を同じ縮尺・向きで比べる位置模式です。狭まる場所が進み、その先の尿の輸送を助けます。赤い壁は平滑筋を含む管の壁で、尿道とは別です。収縮の進む速度、尿量、必ず同じ移動量になるという条件は示しません。端は省略した管の続きです。

20. 蓄える時期と、出す時期

膀胱は尿管から届く尿を蓄える。蓄尿時には排尿筋が弛緩し、膀胱が広がって内容を受け入れ、出口側は尿を保持する。排尿時には膀胱の排尿筋が収縮して押し出す力を生み、出口側の抵抗が下がるように協調する。押す力があることと出口が開いていることは同じ記録ではない。尿が膀胱へ届いたことだけで、その期間に体外への排尿まで完了したとはいえない。

21. 壁の平滑筋と、出口の骨格筋

膀胱壁の排尿筋は平滑筋で、自律神経の調節を受ける。外尿道括約筋は横紋を持つ骨格筋で、体性の運動出力を受けて出口の保持や開放に関わる。出口には平滑筋を含む構造もあり、全性別・全成人に同じ独立した内括約筋の輪があると固定しない。排尿の協調では、膀胱の収縮を強めることと、出口の骨格筋を緩めることを別の出力として追う。

蓄える時期と、出す時期

上下に同じ膀胱と尿道を同じ位置関係と縮尺で描く。上の蓄尿場面では排尿筋が弛緩して内容を受け入れ、出口側を保持する。下の排尿場面では膀胱壁の排尿筋の収縮を内向きの作用矢印で示し、尿道を通る尿の太い実線矢印は別にする。尿道の外尿道括約筋は同じ二つの紫の筋部分で示し、蓄尿時の保持と排尿時の弛緩を直接名で分ける。排尿筋は平滑筋、外尿道括約筋は横紋を持つ骨格筋と図内に示す。尿が膀胱へ到着しただけで体外への排尿が終わるとはしない。模式で出口全形と全性別の内括約筋を同じ輪として描かない。
同じ膀胱と尿道を同じ縮尺で上下に置いた、協調の模式です。蓄尿では排尿筋が弛緩し出口を保持、排尿では押す力と出口の抵抗低下を組み合わせます。図の輪郭面積から尿量や排尿完了を決めません。外尿道括約筋は骨格筋として示し、全性別に共通の独立した内括約筋の輪は追加していません。

22. 伸展の入力と、上位からの調節

膀胱が伸びた情報は求心性の神経経路で中枢へ届き、蓄尿や排尿の回路に使われる。脊髄の回路と脳の上位からの調節が、自律神経と体性神経の出力を協調させる。伸展を感じたことや排尿筋への情報到着だけで、尿の排出完了は保証されない。意思が出口の保持や排尿の時機に関わる一方、すべての働きが毎回の意識的判断だけで作られるわけではない。反射的な利用と上位の調節を二者択一にしない。

情報は、壁と出口へ分かれる

上の左に膀胱の伸展、右に脳の上位調節の段階を別の機能枠で置く。膀胱の伸展から求心性の破線矢印が脊髄の回路へ入り、脊髄の回路と上位の調節の間にも上下の別の方向を示す。脊髄の回路から下の二つの出力へ分かれ、自律神経の出力先は平滑筋の排尿筋、体性神経の出力先は骨格筋の外尿道括約筋と直接名を付ける。破線は神経の情報で、尿の運搬矢印ではない。枠は機能段階であり一個の神経細胞や核の解剖図ではない。情報が到着しただけで実排尿が終わるとはしない。反射と上位や意思の利用を二者択一にしたり、全入力が毎回必ず脳を通る一本の直列回路にしたりしない。
伸展の入力と、壁・出口への別の出力を追う機能模式です。枠は一個の細胞や神経核ではありません。脊髄の回路と上位の調節が協調し、反射的な利用と意思の関わりを両立させます。破線は神経情報で、尿の流れや排尿完了の記録とは別です。実際の神経の全走行・接続数は省略しています。

23. 酸性を表す言葉と、炭酸水素イオン

pHは溶液の酸性・アルカリ性を表す尺度で、低いほど酸性が強い側を表す。H⁺は正の電荷を持つ水素イオンである。炭酸水素イオンは重炭酸イオンとも呼ばれ、HCO₃⁻で表す。体内での酸の変化を抑える緩衝にも関わる成分で、分子の二酸化炭素CO₂と同じ形ではない。血液のpHと尿のpHは、測る区画の違う記録である。

24. 呼気と尿で、別の成分を調整する

肺は分子の二酸化炭素を呼気へ出す。腎は、濾過された炭酸水素イオンの回収や、酸を尿へ排泄する働きによって体内の酸塩基調節を支える。尿中で酸は他の成分と関わる形でも運ばれるため、水素イオンという一成分の名前だけで全酸排泄量を表すわけではない。呼吸によるCO₂の排出と腎の調整は別経路であり、一つの尿成分だけから体内全体のpHや変化の原因までは決まらない。

25. 血中の情報が骨髄へ届く

腎はエリスロポエチン(EPO)というホルモンを血液へ出し、骨髄での赤血球の形成を促す。骨髄は骨の内部にある、血液細胞をつくる組織である。赤血球は血液で酸素を運ぶ細胞だが、EPOという情報は赤血球そのものでも尿の成分を濾過する操作でもない。放出する場所が腎であることと、赤血球をつくる場所が骨髄であることを分ける。

26. ビタミンDの材料から、肝と腎へ

ビタミンDは食物から入るほか、皮膚で作られる材料もある。皮膚のプロビタミンD₃という材料は、紫外線の反応でプレビタミンD₃という途中の形になり、体温による熱異性化でビタミンD₃になる。異性化は分子内の配置が変わることを指す。この皮膚の変化は、活性型へ至る肝・腎の代謝とは別の段階である。材料がその経路へ供給されることと、後の変化を行う場所の働きが保たれることを分ける。

27. 腎での活性化と、作用する場所

ビタミンDの材料は肝での変化を経て、腎で活性型へ至る変化を受ける。活性型ビタミンDは、腸でのカルシウムやリンの吸収を促し、正常な調節に関わる。腎が食物や皮膚の材料をすべて一から作るわけでも、腎だけで骨や腸の全調節が完了するわけでもない。腎は尿へ成分を出すことに加え、血中の情報や分子の変化を通して全身の働きにも関わる。

用語を確かめる

腎皮質
腎臓の外寄りにある組織。腎小体や尿細管の一部がある。
腎髄質
腎臓の内寄りにある組織。ヘンレ係蹄の一部や集合管などが通る。尿が集まる空間そのものの名前ではない。
腎杯
腎髄質の先端から出た尿を受ける、腎臓内の杯状の通路。尿は腎杯を通って腎盂へ集まる。
腎盂
腎杯から尿が集まり、尿管へ続く漏斗状の通路。尿を形成する腎の組織や、血液を運ぶ血管とは区別する。
腎小体
糸球体と、それを包むボウマン嚢からなる構造。ここで血液側から濾液側への濾過が行われる。
糸球体
腎小体にある毛細血管の集まり。血液が流れ、その一部の水や小さな溶質が濾液側へ移る。
ボウマン嚢
糸球体を包む袋状の構造。内側のボウマン腔で濾液を受け、尿細管へつながる。
ボウマン腔
ボウマン嚢の中で濾液を受け取る空間。糸球体の血管内とは別で、近位尿細管の管腔へ続く。
ネフロン
腎の基本的な構造・機能の単位。腎小体と尿細管からなり、尿細管は集合管へつながる。
尿細管
腎小体から来た濾液が流れる、ネフロンの管状の部分。壁を通じて再吸収や分泌が行われる。
ヘンレ係蹄
近位尿細管と遠位尿細管の間で、髄質側へ下りて戻る尿細管の区間。下る側と上る側では、水や塩の通りやすさが異なる。
集合管
複数のネフロンの尿細管から液を受け取り、腎杯側へ運ぶ管。通過中の水などの調整にも関わる。
濾液
糸球体の血液側から、濾過によってボウマン腔へ移った液。尿細管を通る間に量や成分が調整され、最初の濾液がそのまま最終尿になるわけではない。
血管内
血管の壁の内側で、血液が流れる場所。糸球体でも、ボウマン腔や尿細管の管腔とは別の経路である。
管腔
管の壁に囲まれた内側の空間。この単元の尿細管の管腔は、濾液が流れる側を指す。
間質
細胞や管、血管の間にある組織の領域。ここにある液は、血管内の血液や尿細管の管腔内の液と区別する。
輸入細動脈
糸球体の毛細血管へ血液を運び入れる細い動脈。
輸出細動脈
糸球体の毛細血管から血液を運び出す細い動脈。その先は尿細管周囲の毛細血管などへつながる。
尿細管周囲毛細血管
尿細管の周りにある毛細血管。尿細管と間質でやり取りされた物質を、血液側へ戻す経路などに関わる。
直血管
主に髄質を通る細長い毛細血管。髄質へ血液を供給し、水や溶質をやり取りする。
濾過障壁
糸球体の血液側とボウマン腔の濾液側を隔てる、いくつかの層からなる仕切り。通常、水や小さな溶質は通りやすく、血球や大きなたんぱく質は保たれる。
頂端側
尿細管の上皮細胞で、管腔に面する側。ここで物質を受け取ったり管腔へ出したりする。
基底外側
尿細管の上皮細胞で、管腔側とは反対に、主に間質へ向かう側。細胞の側を表す語で、基底膜や血管壁そのものの名前ではない。
糸球体濾過量
単位時間に、糸球体からボウマン腔へできる濾液の体積。通常は両腎の合計を指し、尿として体外へ出る体積や血液の流量とは区別する。
腎血流量
単位時間に腎臓の血管内を流れる血液の体積。濾液の体積や最終尿の体積とは別の量。
尿流量
決めた記録地点を通る尿の体積を、単位時間で表した量。腎から流れ出る地点か、膀胱に蓄えた後の排尿かを区別して使う。
濾過
糸球体の血液側から、濾過障壁を通ってボウマン腔へ水や溶質が移る過程。血液全体がそのまま流れ出ることではない。
再吸収
尿細管などの管腔にある物質が、上皮や間質を経て血液側へ戻る過程。
尿細管分泌
血液側から尿細管の壁を通って、管腔へ物質を加える過程。ホルモンを血液へ放出する分泌とは、向きと対象が違う。
尿への排泄
成分が最終尿に残り、尿路を通って体外へ出ること。腎処理の収支では腎から尿へ出た量を扱う場合があり、膀胱を経た同時刻の実排尿量と同一にはしない。
ADH
正常に応答する集合管などで、水の通りやすさを調節するホルモン。水を新しく作るのではなく、水の正味移動には勾配などの条件が必要。
髄質の浸透圧勾配
髄質の深さによって、間質の溶質の濃さが異なる状態。集合管から水が戻るための駆動条件の一つとなる。
アルドステロン
副腎皮質から血液へ出るホルモン。腎の遠位側の区間で、Naの再吸収やKの尿への追加を調節する。
レニン
腎から血液へ放出され、アンジオテンシノーゲンを変換する酵素。尿細管が物質を管腔へ加える分泌とは別の経路。
アンジオテンシノーゲン
主に肝臓などで作られる、レニンが作用する材料のたんぱく質。レニンという酵素そのものではない。
ACE
アンジオテンシンIをアンジオテンシンIIへ変換する酵素。特定の一臓器だけに存在するという意味ではない。
アンジオテンシンII
レニンとACEによる変換の後にできる信号分子。血管の収縮や、副腎皮質からのアルドステロン放出を促す働きに関わる。
腎の灌流
腎臓の血管に血液が流れ、組織へ供給されること。濾液が尿細管を流れることとは別。
尿管
腎盂から膀胱へ尿を運ぶ管。壁の平滑筋の蠕動が輸送を助ける。
尿道
膀胱から体外へ尿を運ぶ通路。腎臓から膀胱へ運ぶ尿管とは接続が違う。
蠕動
管の壁の収縮が順に進み、内容物の輸送を助ける運動。尿管では、尿を膀胱側へ送る働きがある。
蓄尿
膀胱が尿を受け入れて保持する時期。通常、排尿筋は弛緩し、出口を閉じる側の働きが保たれる。
排尿
膀胱の尿を尿道から体外へ出すこと。通常、排尿筋の収縮と出口の弛緩が協調する。
排尿筋
膀胱の壁をつくる平滑筋。蓄尿では弛緩して受け入れ、排尿では収縮して尿を押し出す働きに関わる。
外尿道括約筋
尿道を閉じる働きに関わる横紋筋(骨格筋)。体性神経の出力を受け、意思による調節と反射的な調節の両方に関わる。
膀胱の伸展情報
膀胱が広がったことを中枢へ伝える求心性の情報。脊髄の回路や上位中枢の調節につながり、蓄尿と排尿の出力の切替えに関わる。
pH
液体の酸性・アルカリ性を表す値。同じ条件では、pHが低いほど酸性が強い。
水素イオン
酸性・アルカリ性に関わるイオン。H+と表し、腎は尿への酸の排泄などを通じて体内の酸塩基調節を支える。
炭酸水素イオン
HCO3−と表すイオン。体液の酸塩基調節を支え、腎は濾過された分を回収するなどして体内の量を調節する。
EPO
腎から血液へ出て、骨髄での赤血球づくりを支えるホルモン。腎臓の中で赤血球を作るという意味ではない。
ビタミンDの活性化
皮膚や食物から来たビタミンDの材料が、肝臓を経て腎臓でも変化し、作用する形になる段階。活性型ビタミンDは、腸でのカルシウムやリンの吸収を促す働きに関わる。
後腹膜
腹膜より後ろにある位置。腎臓は通常ここにあり、腹膜腔という膜の間隙の中身ではない。
間質液
細胞や管、血管の間にある間質という領域の液。血管内の血液や尿細管内の濾液とは別の区画である。
静水圧
液体が壁や境界を押す圧。糸球体では血管側とボウマン腔側の圧を分けて読む。
膠質浸透圧
血漿たんぱく質などの大きな溶質が、水をその側へ引く条件。糸球体の血漿たんぱく質による条件は通常、濾過に反対する。
尿素・尿酸
代謝で生じ、尿に含まれる老廃物の例。尿の大部分を占める水とは別の成分である。
プロビタミンD₃
皮膚でビタミンD₃へ至る反応の出発材料。紫外線によってプレビタミンD₃という途中の形になる。
プレビタミンD₃
紫外線の反応でできる途中の形。体温による熱異性化を経てビタミンD₃へ進む。
熱異性化
熱によって分子内の配置が変わる反応。皮膚のプレビタミンD₃からD₃への変化は、肝・腎での活性化とは別の段階である。