舌骨の上下と前・外側頸部の筋

本文の目次

  1. 首の前から、支える場所をたどる
  2. 舌骨と喉頭、下顎の目印
  3. 神経の出どころと、通る道
  4. 舌骨上の四筋と口腔底
  5. 顎二腹筋は二腹で一筋
  6. 茎突舌骨筋は後上方へ引く
  7. 顎舌骨筋が口の床を支える
  8. オトガイ舌骨筋は前上方へ引く
  9. 同じ筋でも、支える端で動きが変わる
  10. 舌骨下の四筋と深さ
  11. 胸骨舌骨筋は舌骨へまっすぐ
  12. 肩甲舌骨筋は二腹で向きを変える
  13. 胸骨甲状筋は喉頭へ届く
  14. 甲状舌骨筋は二つの目印を近づける
  15. 胸鎖乳突筋の二つの起こり
  16. 右の胸鎖乳突筋が働くとき
  17. 広頸筋は皮膚のすぐ下
  18. 斜角筋は頸椎と上の肋骨をつなぐ
  19. 前斜角筋と第1肋骨の前寄り
  20. 中斜角筋とその前の通路
  21. 後斜角筋は第2肋骨へ
  22. 筋の間、筋の前面を分ける
  23. 頸椎の前面と頭蓋底
  24. 頸長筋は椎体の前を支える
  25. 頭長筋は頭蓋底へ上がる
  26. 前頭直筋は環椎の前から短く届く
  27. 外側頭直筋は環椎の外から届く
  28. 浅い皮膚から深い支えへ

1. 首の前から、支える場所をたどる

首の筋は、下顎と舌骨、舌骨と胸骨・肩甲骨、頸椎と頭蓋骨をそれぞれつなぎます。前は顔と喉の側、後ろは背骨の後方です。正中は体の中央の線、外側はそこから離れる側です。前へ曲げる屈曲、後ろへ反らす伸展、横へ傾ける側屈、向きを回す回旋を分けて読みます。筋が短くなると、両端を近づける力が生まれます。どちらの端が支えられているかによって、動く側が変わります。下へ引く筋と上へ引く筋が協力して、一つの場所を支えることもできます。

2. 舌骨と喉頭、下顎の目印

舌骨は下顎の下にあるU字状の骨で、前の体と左右へ伸びる大角を持ちます。ほかの骨と直接関節を作らず、筋や靱帯に支えられます。舌骨より下に喉頭があり、その大きな軟骨の一つが甲状軟骨です。甲状軟骨の外側面の斜めの線が斜線です。下顎骨の内面には、筋が付く顎舌骨筋線と、正中のオトガイ棘があります。側頭骨の乳様突起は耳の後ろ、茎状突起はその近くから下へ伸びる細い突起です。

3. 神経の出どころと、通る道

V3は三叉神経の下顎神経です。そこから出る下歯槽神経の枝に顎舌骨筋神経があります。顔面神経は第VII脳神経、舌下神経は第XII脳神経、副神経は第XI脳神経です。C1などは頸神経の番号を表します。頸神経ワナは主にC1〜C3の線維が輪を作り、舌骨下の筋へ運動枝を送る経路です。C1の一部は舌下神経と一緒に進んでから別の筋へ向かいます。一緒に走ることと、その線維が舌下神経に由来することは別です。

4. 舌骨上の四筋と口腔底

舌骨より上の顎二腹筋、茎突舌骨筋、顎舌骨筋、オトガイ舌骨筋は、舌骨や口腔底の位置に関わります。口腔底は舌の下を支える口の床です。顎舌骨筋が左右から正中へ広がる板を作り、その上にオトガイ舌骨筋が走ります。顎二腹筋の前腹はその板より下、後腹と茎突舌骨筋は後上方から舌骨へ向かいます。舌骨を引く方向と層を、名前だけでなく付着先へ結び付けて見ます。

5. 顎二腹筋は二腹で一筋

前腹は下顎骨の内側にある二腹筋窩、後腹は側頭骨の乳突切痕から始まります。両腹は中間腱へ続き、その腱は結合組織の輪を介して舌骨の体と大角の境付近へつながります。下顎が固定されると舌骨を上げます。舌骨が支えられると下顎を下げ、口を開く動きを助けます。運動神経は前腹は顎舌骨筋神経(下歯槽神経から分かれるV3の枝)、後腹は顔面神経の枝です。前腹と後腹が中間腱でつながる一筋です。前腹は口腔底より下側、後腹は乳突部から前下方へ向かいます。

6. 茎突舌骨筋は後上方へ引く

側頭骨の茎状突起から始まります。舌骨体と大角の境付近へ停止します。停止近くで顎二腹筋の中間腱を挟む形が代表的です。舌骨を上げ、後ろへ引く働きを助けます。運動神経は顔面神経の枝です。顎二腹筋の後腹に近い細い筋で、茎状突起から舌骨へ下前方に向かいます。

7. 顎舌骨筋が口の床を支える

下顎骨内面の顎舌骨筋線から始まります。前方の線維は正中の顎舌骨筋縫線へ、後方の線維は舌骨体へ停止します。口腔底と舌骨を上げて支えます。舌骨が支えられると下顎を下げる働きも助けます。運動神経は顎舌骨筋神経(V3の下歯槽神経から分かれる枝)です。左右の筋が正中へ集まり、口腔底を支える薄い板を作ります。オトガイ舌骨筋より下側にあります。

8. オトガイ舌骨筋は前上方へ引く

下顎骨の内側にある下オトガイ棘から始まります。舌骨体の前面へ停止します。舌骨を前上方へ引き、口腔底を短くします。舌骨が支えられると下顎を下げる働きを助けます。運動神経は舌下神経に伴行するC1の線維です。左右一対の細い筋が顎舌骨筋の上側、舌の下側を前後に走ります。

舌骨上筋の付着と口腔底の層

上段は顎二腹筋の前腹・後腹から中間腱へ続き、結合組織の輪で舌骨へ支える経路の模式。茎突舌骨筋の停止はその近くにある。下段は口腔底の上下を示し、顎舌骨筋より舌側にオトガイ舌骨筋がある。図の幅・筋の角度・舌骨の形は実寸の断面ではない。
上段は顎二腹筋の前腹・後腹から中間腱へ続き、結合組織の輪で舌骨へ支える経路の模式。茎突舌骨筋の停止はその近くにある。下段は口腔底の上下を示し、顎舌骨筋より舌側にオトガイ舌骨筋がある。図の幅・筋の角度・舌骨の形は実寸の断面ではない。

9. 同じ筋でも、支える端で動きが変わる

下顎が支えられていると、顎二腹筋や顎舌骨筋は舌骨と口腔底を上げる働きを助けます。オトガイ舌骨筋は舌骨を前上方へ引きます。舌骨が下側の筋などに支えられると、これらの筋は下顎を下げる働きを助けます。下顎を下げるのは口を開く方向です。嚥下とは食べ物などを飲み込む動きで、その間には舌骨・口腔底・喉頭の位置が協調して変わります。一筋だけで嚥下の全過程を行うわけではありません。

舌骨上筋の固定条件と運動神経

上二段はどちらの骨を支えるかによって動く端が変わる関係。矢印は動く方向の記号で筋付着の図ではない。下段は運動神経の由来の対応で、C1線維が舌下神経と同行することを舌下神経自身の由来へ置き換えない。
上二段はどちらの骨を支えるかによって動く端が変わる関係。矢印は動く方向の記号で筋付着の図ではない。下段は運動神経の由来の対応で、C1線維が舌下神経と同行することを舌下神経自身の由来へ置き換えない。

10. 舌骨下の四筋と深さ

舌骨より下の胸骨舌骨筋、肩甲舌骨筋、胸骨甲状筋、甲状舌骨筋は、帯のような形を持つ筋です。胸骨舌骨筋と肩甲舌骨筋は浅い側、胸骨甲状筋と甲状舌骨筋は深い側にあります。胸骨柄は胸骨の上部、肩甲切痕は肩甲骨上縁のくぼみです。筋の間で、舌骨へ直接届くものと、甲状軟骨へ届くものを分けると、動く場所が見えてきます。

11. 胸骨舌骨筋は舌骨へまっすぐ

胸骨柄の後面、鎖骨の内側端や胸鎖関節の靱帯付近から始まります。舌骨体の下縁へ停止します。舌骨を下げ、その位置を支える働きに関わります。運動神経は頸神経ワナ(主にC1〜C3)です。正中の両側を縦に走り、胸骨甲状筋より浅い層にあります。

12. 肩甲舌骨筋は二腹で向きを変える

肩甲骨の上縁で、肩甲切痕に近い場所から下腹が始まります。中間腱と上腹を介して舌骨体の下縁へ停止します。舌骨を下げ、やや後ろへ引いて位置を支えます。運動神経は頸神経ワナ(主にC1〜C3)です。下腹と上腹が中間腱でつながります。中間腱は鎖骨付近へつながる筋膜性の輪で支えられ、胸鎖乳突筋の深い側にあります。

13. 胸骨甲状筋は喉頭へ届く

胸骨柄の後面と第1肋軟骨付近から始まります。甲状軟骨の斜線へ停止します。甲状軟骨を含む喉頭を下げる働きに関わります。運動神経は頸神経ワナ(主にC2〜C3)です。胸骨舌骨筋の深い側を走り、舌骨へ直接停止する筋ではありません。

14. 甲状舌骨筋は二つの目印を近づける

甲状軟骨の斜線から始まります。舌骨体の下縁と大角へ停止します。甲状軟骨が支えられると舌骨を下げ、舌骨が支えられると喉頭を上げます。運動神経は舌下神経に伴行するC1の線維です。胸骨甲状筋の上方に続く位置にある短い筋です。舌骨と甲状軟骨を近づけます。

舌骨下筋の浅深・付着先・二腹

囲みごとに筋の付着経路を分ける。胸骨舌骨筋と肩甲舌骨筋は舌骨へ、胸骨甲状筋は甲状軟骨へ届き、甲状舌骨筋が甲状軟骨と舌骨をつなぐ。肩甲舌骨筋の二腹と中間腱は一筋の区分。甲状舌骨筋はC1線維を舌下神経への伴行で受け、ほかの三筋の頸神経ワナと分ける。
囲みごとに筋の付着経路を分ける。胸骨舌骨筋と肩甲舌骨筋は舌骨へ、胸骨甲状筋は甲状軟骨へ届き、甲状舌骨筋が甲状軟骨と舌骨をつなぐ。肩甲舌骨筋の二腹と中間腱は一筋の区分。甲状舌骨筋はC1線維を舌下神経への伴行で受け、ほかの三筋の頸神経ワナと分ける。

15. 胸鎖乳突筋の二つの起こり

胸骨頭は胸骨柄前面の上部、鎖骨頭は鎖骨内側三分の一の上面から始まります。側頭骨の乳様突起の外側面と、後頭骨の上項線の外側部へ停止します。一側では同じ側へ首を傾け、顔を反対側へ向けます。両側では下位頸部の屈曲と上位頸部の伸展を組み合わせ、頭の位置を支えます。頭が支えられると胸骨・鎖骨を上げる働きも助けます。運動神経は副神経の運動枝(C2〜C3の枝は主に感覚・位置の情報を伝える)です。胸骨頭と鎖骨頭が上方でまとまる一筋です。首を横から見ると、前方と後方の三角形の領域を分ける目印になります。上項線は後頭骨の後面にある横の稜です。

16. 右の胸鎖乳突筋が働くとき

右の胸鎖乳突筋が一側で働くと、首は右へ傾き、顔は左へ向く働きが生まれます。同じ側への側屈と反対側への回旋が組み合わさります。両側では下位頸部を前へ曲げる力と、上位頸部で頭を後ろへ向ける力を組み合わせます。出発する姿勢とほかの筋の働きによって、頭全体の動きは変わります。頭が支えられれば、下側の胸骨・鎖骨を上げて吸気を助けることもあります。

17. 広頸筋は皮膚のすぐ下

胸の上部で大胸筋・三角筋を覆う浅い筋膜付近から始まります。下顎骨の下縁と下顔面の皮膚・皮下組織へ広がります。首の皮膚を張り、下口唇や口角を下げる働き、下顎を下げる働きを助けます。運動神経は顔面神経の頸枝です。皮下にある薄い広い筋で、胸鎖乳突筋より浅く、骨の間を厚い筋腹でつなぐ筋とは形が異なります。

胸鎖乳突筋の付着と片側・両側、広頸筋の浅さ

上は二頭が一筋へまとまる付着経路で、左右一対を一つの実体の分岐とした図ではない。中央は右SCMの同側側屈・反対側回旋と、両側の下位屈曲・上位伸展を言葉で分ける。下は広頸筋がSCMより浅い位置にあることを示す層の模式。
上は二頭が一筋へまとまる付着経路で、左右一対を一つの実体の分岐とした図ではない。中央は右SCMの同側側屈・反対側回旋と、両側の下位屈曲・上位伸展を言葉で分ける。下は広頸筋がSCMより浅い位置にあることを示す層の模式。

18. 斜角筋は頸椎と上の肋骨をつなぐ

頸椎には左右へ伸びる横突起があり、その先の前結節・後結節が斜角筋の付着の目印になります。前斜角筋と中斜角筋は第1肋骨へ、後斜角筋は主に第2肋骨へ向かいます。首が支えられると上の肋骨を持ち上げ、肋骨側が支えられると首を同じ側へ傾ける働きを助けます。筋束の付着の広がりや神経の分かれ方には個人差があります。

19. 前斜角筋と第1肋骨の前寄り

代表的にはC3〜C6横突起の前結節から始まります。第1肋骨上面の斜角筋結節付近へ停止します。一側で頸部を同じ側へ傾けます。両側で頸部の屈曲を助け、頸部が支えられると第1肋骨を上げます。運動神経は頸神経の前枝です。第1肋骨の鎖骨下動脈溝より前へ付きます。横隔神経はその前面を下り、鎖骨下静脈もこの筋の前側を通ります。

20. 中斜角筋とその前の通路

代表的にはC2〜C7横突起の後結節付近から始まります。第1肋骨上面で、鎖骨下動脈溝より後ろへ停止します。頸部を同じ側へ傾けて支え、頸部が支えられると第1肋骨を上げます。運動神経は頸神経の前枝です。前斜角筋の後ろにあります。前斜角筋との間を腕神経叢の根・幹と鎖骨下動脈が通ります。

21. 後斜角筋は第2肋骨へ

代表的にはC4〜C6横突起の後結節付近から始まります。第2肋骨の外面へ停止します。頸部を同じ側へ傾ける働きを助け、頸部が支えられると第2肋骨を上げます。運動神経は頸神経の前枝です。中斜角筋より後ろにあり、前・中斜角筋と異なって主に第2肋骨へ向かいます。付着や筋束には変異があります。

斜角筋の頸椎・肋骨への付着

上段は代表的な起始の高さと停止する肋骨の対応を並べた経路図。前・中は第1肋骨でも動脈溝の前後が異なり、後斜角筋は主に第2肋骨へ向かう。下段は固定条件と働きの比較。付着や筋束の全変異を一つに固定する図ではない。
上段は代表的な起始の高さと停止する肋骨の対応を並べた経路図。前・中は第1肋骨でも動脈溝の前後が異なり、後斜角筋は主に第2肋骨へ向かう。下段は固定条件と働きの比較。付着や筋束の全変異を一つに固定する図ではない。

22. 筋の間、筋の前面を分ける

腕神経叢は上肢へ向かう神経のまとまりで、頸部では根が集まって幹を作ります。代表的には、その根・幹と鎖骨下動脈が前斜角筋と中斜角筋の間を通ります。鎖骨下静脈は前斜角筋の前側を通り、動脈と同じ筋間の通路へ置きません。横隔膜へ向かう横隔神経は主にC3〜C5に由来し、前斜角筋の前面を下ります。筋を包む深い頸筋膜の一部である椎前筋膜の深い側を走ります。腕神経叢の通る筋間と、横隔神経の走る筋の前面は別の位置です。

前斜角筋の筋間・前面と神経血管

上段は第1肋骨付近の前後関係の模式で、前・中斜角筋間に腕神経叢の根・幹と鎖骨下動脈、前斜角筋の前側に静脈、前面に横隔神経を置く。下段は横隔神経が前斜角筋前面を下る経路。深さ・距離や手技の安全域、全解剖変異を表す図ではない。
上段は第1肋骨付近の前後関係の模式で、前・中斜角筋間に腕神経叢の根・幹と鎖骨下動脈、前斜角筋の前側に静脈、前面に横隔神経を置く。下段は横隔神経が前斜角筋前面を下る経路。深さ・距離や手技の安全域、全解剖変異を表す図ではない。

23. 頸椎の前面と頭蓋底

頸椎の椎体は背骨の前側の柱を作り、そのさらに前に頸長筋などがあります。第1頸椎は環椎と呼ばれ、頭蓋骨との間を支えます。環椎には前結節、外側塊、横突起があります。頭蓋骨の底にある後頭骨底部は、大後頭孔の前側です。大後頭孔は脊髄などが頭蓋内へ続く大きな開口です。後頭骨の外側の頸静脈突起は、外側頭直筋の停止の目印になります。

24. 頸長筋は椎体の前を支える

頸長筋は上・下の斜めの部分と縦の部分からなります。上の斜めの部分はC3〜C5横突起の前結節から環椎の前結節へ、縦の部分はC5〜T3付近の椎体からC2〜C4の椎体へ、下の斜めの部分はT1〜T3の椎体からC5〜C6横突起の前結節へ向かうのが代表的です。Tは胸椎・胸神経の番号で、ここでは椎体の高さを示します。頸神経前枝、代表的にはC2〜C6が運動枝を送り、頸部の屈曲と支持を助けます。三つの部分はいずれも頸長筋の中のまとまりです。

25. 頭長筋は頭蓋底へ上がる

C3〜C6横突起の前結節から始まります。後頭骨底部で、大後頭孔より前の下面へ停止します。頭を前へ曲げ、頸椎上端と頭の位置を支えます。運動神経は頸神経の前枝(代表的にはC1〜C3)です。頸長筋より外側・浅い位置から頭蓋底へ上がる細長い筋です。

26. 前頭直筋は環椎の前から短く届く

環椎の外側塊の前面と横突起の根元付近から始まります。後頭骨底部の下面で、大後頭孔より前へ停止します。頭を前へ曲げ、環椎と後頭骨の間の位置を支えます。運動神経は頸神経の前枝(C1〜C2)です。環椎から頭蓋底へ届く短い深層筋です。名前の「前」は頭蓋底の前側の位置を示し、額の表情筋を指しません。

27. 外側頭直筋は環椎の外から届く

環椎横突起の上面から始まります。後頭骨の頸静脈突起の下面へ停止します。頭を同じ側へ傾け、環椎と後頭骨の間を支えます。運動神経は頸神経の前枝(C1〜C2)です。前頭直筋より外側で、環椎の横突起から頭蓋底の外側へ短くつながります。

頸長筋三部と頭蓋底への長短の筋

上段は頸長筋の三部の代表的な付着対応で、矢印は起始から停止への対応記号。下段は頭長筋が頸椎から頭蓋底へ、前頭直筋と外側頭直筋が環椎から頭蓋底の前側・外側へ短くつながることを示す。前頭直筋を額の表情筋へ置き換えない。
上段は頸長筋の三部の代表的な付着対応で、矢印は起始から停止への対応記号。下段は頭長筋が頸椎から頭蓋底へ、前頭直筋と外側頭直筋が環椎から頭蓋底の前側・外側へ短くつながることを示す。前頭直筋を額の表情筋へ置き換えない。

28. 浅い皮膚から深い支えへ

皮下の広頸筋、その深い側の胸鎖乳突筋、舌骨の上下の筋、頸椎の前面や外側の筋は、それぞれ違う付着と役割を持ちます。顎二腹筋の二腹、肩甲舌骨筋の二腹、胸鎖乳突筋の二頭は、一筋の中の区分です。左右の働きを比較するときも、筋の名前と片側の働きを分けて読めます。筋束や付着には解剖学的な変異があります。正常な位置のまとまりを知ると、舌骨を動かす力と、頭・首や上の肋骨を支える力がどこでつながるかを追えます。

用語を確かめる

正中・外側
体の中央の線と、そこから離れる側。
固定と筋の作用
一方の付着先が支えられると、収縮で他方を近づける働きが生じます。
舌骨の体・大角
舌骨の中央の部分と、左右へ伸びる長い突起。
喉頭・甲状軟骨
喉にある発声と気道の構造、およびその大きな軟骨の一つ。
甲状軟骨の斜線
甲状軟骨外側面の斜めの線。胸骨甲状筋・甲状舌骨筋の付着の目印。
顎舌骨筋線・オトガイ棘
下顎内面の線と、正中にある小突起。筋が付く場所を示します。
乳様突起・茎状突起
側頭骨の耳後方の突起と、その近くの細い突起。
V3・下歯槽神経
三叉神経の下顎神経と、その枝の一つ。顎舌骨筋神経が下歯槽神経から分かれます。
顎舌骨筋神経
顎舌骨筋と顎二腹筋前腹へ運動枝を送るV3系の神経。
顔面神経・副神経・舌下神経
第VII、第XI、第XII脳神経。名前と、同行する他由来の線維を分けて読みます。
C1・頸神経前枝
頸神経の番号と、その前側へ分かれる枝。筋への運動枝を含みます。
頸神経ワナ
主にC1〜C3の線維が作る輪状の神経経路。舌骨下筋へ運動枝を送ります。
伴行する線維
別の神経と一緒に一定区間を走る線維。経路を共有しても由来は同一とは限りません。
口腔底
舌の下を支える口の床。顎舌骨筋などが支えます。
筋腹・中間腱
筋線維の多い部分と、二腹の間をつなぐ腱。
二腹筋窩・乳突切痕
下顎内面と側頭骨乳突部にある、顎二腹筋の起始のくぼみ。
顎舌骨筋縫線
左右の顎舌骨筋が正中でつながる腱性の線。
下オトガイ棘
下顎内面の正中の小突起の下側。オトガイ舌骨筋が起こります。
嚥下
食べ物などを飲み込む動き。舌骨・口腔底・喉頭などの協調を伴います。
胸骨柄・肩甲切痕
胸骨の上部と、肩甲骨上縁のくぼみ。
筋膜
筋などを包み、構造どうしをつなぐ結合組織の膜。
胸骨頭・鎖骨頭
胸鎖乳突筋の胸骨側と鎖骨側の起始部分。一筋の二頭。
上項線
後頭骨後面の横の稜。胸鎖乳突筋はその外側部へ付きます。
側屈・回旋・屈曲・伸展
横へ傾ける、向きを回す、前へ曲げる、後ろへ反らす動き。
横突起の前結節・後結節
頸椎横突起の前後の隆起。斜角筋などの付着の目印。
斜角筋結節・鎖骨下動脈溝
第1肋骨上面の付着の隆起と、鎖骨下動脈が通る溝。
腕神経叢の根・幹
上肢へ向かう神経が頸部でまとまる最初の部分。
鎖骨下動脈・鎖骨下静脈
上肢側への血液の流れに関わる動脈と静脈。前斜角筋との位置が異なります。
横隔神経・椎前筋膜
主にC3〜C5から横隔膜へ向かう神経と、頸椎前面などの筋を覆う深い頸筋膜。
環椎・外側塊
第1頸椎と、その左右の頭蓋骨を支える部分。
頭蓋底・大後頭孔・後頭骨底部
頭蓋骨の底、大きな後方の開口、その前側の後頭骨の部分。
頸静脈突起
後頭骨の外側にある突起。外側頭直筋が付く目印。
頸長筋の三部
上斜部、垂直部、下斜部という一筋内の線維のまとまり。
Tの高さ
胸椎・胸神経の番号。頸長筋の付着では椎体の高さを示します。
顎二腹筋
前腹と後腹が中間腱でつながる一筋です。前腹は口腔底より下側、後腹は乳突部から前下方へ向かいます。
茎突舌骨筋
顎二腹筋の後腹に近い細い筋で、茎状突起から舌骨へ下前方に向かいます。
顎舌骨筋
左右の筋が正中へ集まり、口腔底を支える薄い板を作ります。オトガイ舌骨筋より下側にあります。
オトガイ舌骨筋
左右一対の細い筋が顎舌骨筋の上側、舌の下側を前後に走ります。
胸骨舌骨筋
正中の両側を縦に走り、胸骨甲状筋より浅い層にあります。
肩甲舌骨筋
下腹と上腹が中間腱でつながります。中間腱は鎖骨付近へつながる筋膜性の輪で支えられ、胸鎖乳突筋の深い側にあります。
胸骨甲状筋
胸骨舌骨筋の深い側を走り、舌骨へ直接停止する筋ではありません。
甲状舌骨筋
胸骨甲状筋の上方に続く位置にある短い筋です。舌骨と甲状軟骨を近づけます。
胸鎖乳突筋
胸骨頭と鎖骨頭が上方でまとまる一筋です。首を横から見ると、前方と後方の三角形の領域を分ける目印になります。
広頸筋
皮下にある薄い広い筋で、胸鎖乳突筋より浅く、骨の間を厚い筋腹でつなぐ筋とは形が異なります。
前斜角筋
第1肋骨の鎖骨下動脈溝より前へ付きます。横隔神経はその前面を下り、鎖骨下静脈もこの筋の前側を通ります。
中斜角筋
前斜角筋の後ろにあります。前斜角筋との間を腕神経叢の根・幹と鎖骨下動脈が通ります。
後斜角筋
中斜角筋より後ろにあり、前・中斜角筋と異なって主に第2肋骨へ向かいます。付着や筋束には変異があります。
頸長筋
椎体の前面を縦に走る部分と、上下の斜めの部分からなる一筋です。頭蓋骨へ直接停止する頭長筋とは区別します。
頭長筋
頸長筋より外側・浅い位置から頭蓋底へ上がる細長い筋です。
前頭直筋
環椎から頭蓋底へ届く短い深層筋です。名前の「前」は頭蓋底の前側の位置を示し、額の表情筋を指しません。
外側頭直筋
前頭直筋より外側で、環椎の横突起から頭蓋底の外側へ短くつながります。