眼球・眼窩と七筋の正常局所解剖

本文の目次

  1. 眼窩は眼球の周囲の骨と軟部を分けて読む
  2. 眼窩の壁をつくる骨と隣の空間
  3. 視神経管と上眼窩裂は別の通路
  4. 四直筋の共通腱輪と筋円錐
  5. 内側直筋は鼻側へ向ける
  6. 外側直筋は耳側へ向ける
  7. 上直筋は上転だけの一本ではない
  8. 下直筋は下転・内転・外旋を分ける
  9. 上斜筋は滑車で腱の向きが変わる
  10. 下斜筋は眼窩の前方から起こる
  11. 上眼瞼挙筋は眼球ではなく上眼瞼へ届く
  12. 内転・外転と内旋・外旋を別の軸にする
  13. 上下作用の寄与は眼位で変わる
  14. 運動神経の枝と六筋の対応
  15. 眼球壁の層と筋が付く表面
  16. 房水の区画と硝子体側の空間
  17. 視神経の眼球側の出口と眼窩内の通路
  18. 眼動脈と網膜・毛様体側の枝を分ける
  19. 眼静脈は動脈の枝でなく帰還の通路
  20. 表面の保護と内部の平滑筋を分ける
  21. 眼球・眼窩・筋の関係を限定してまとめる

1. 眼窩は眼球の周囲の骨と軟部を分けて読む

この章は正常成人の眼球・眼窩と七つの骨格筋を、本人の鼻側と耳側、上と下、前と後で読みます。眼球の向きを変える六筋と、上眼瞼を挙げる一筋は作用の対象が違います。眼窩は眼球だけでなく脂肪、筋、神経や血管を含む空間です。左右の眼を紙面の左右へ無条件に写さず、一つの眼の関係を基準にします。

2. 眼窩の壁をつくる骨と隣の空間

眼窩は前方が広く、後方の尖端へ狭まります。通常、七骨の部分が壁に関わります。上壁は主に前頭骨と蝶形骨小翼、外側壁は頬骨と蝶形骨大翼、下壁は主に上顎骨と頬骨、後方の小部分は口蓋骨です。内側壁には上顎骨、涙骨、篩骨と蝶形骨が関わります。上方は前頭蓋窩、内側は篩骨洞側、下方は上顎洞側に近く、壁と孔を同じ構造にしません。

3. 視神経管と上眼窩裂は別の通路

眼窩尖端付近の視神経管には通常、視神経と眼動脈が通ります。上眼窩裂には動眼神経、滑車神経、外転神経や眼神経の枝などが通り、上眼静脈もこの領域から頭蓋側へ向かいます。下眼窩裂は眼窩の下方外側で、眼窩下神経や頬骨神経などの通路に関わります。動脈の流入、静脈の出口、運動神経の連絡を一つの孔へ集めず、全小枝や変異は区別して残します。

眼窩の壁と骨の対応

眼窩の壁と骨の対応。眼窩の四つの壁に関わる七骨の対応を上下内外の見出しで読む。紙面の行順は壁が直列につながる管を表さず、厚みや全骨境界は縮尺外。
眼窩の四つの壁に関わる七骨の対応を上下内外の見出しで読む。紙面の行順は壁が直列につながる管を表さず、厚みや全骨境界は縮尺外。

4. 四直筋の共通腱輪と筋円錐

四つの直筋は眼窩尖端付近の共通腱輪から前方へ走り、眼球の前方寄りの強膜へ停止します。四直筋で囲まれる筋円錐の内側に視神経などが位置します。共通腱輪は視神経管と上眼窩裂の一部の周囲に関わりますが、上眼窩裂を通る構造の全部を輪の内側へ入れません。斜筋や上眼瞼挙筋の起始を、四直筋と同じ腱輪へ一律に移し替えません。

5. 内側直筋は鼻側へ向ける

内側直筋は共通腱輪から眼球の鼻側へ沿って前方に走り、赤道より前方の鼻側の強膜へ停止します。主な作用は内転で、眼球の前方の視線を鼻側へ向けます。通常は動眼神経の下枝の支配を受けます。筋の停止を虹彩や水晶体へ置かず、眼球の外側の強膜を引くことと、瞳孔の大きさを変えることを分けます。

6. 外側直筋は耳側へ向ける

外側直筋は共通腱輪から眼球の耳側へ沿って前方へ走り、赤道より前方の耳側の強膜へ停止します。主な作用は外転で、視線を耳側へ向けます。通常は外転神経の支配を受けます。内側直筋との左右の配置を分け、外転神経を四直筋の全ての支配神経とはしません。

7. 上直筋は上転だけの一本ではない

上直筋は共通腱輪から眼球の上面に沿い、赤道より前方の上側の強膜へ停止します。通常は動眼神経上枝の支配です。正面を向いた基準の眼位では、上転に加えて内転と内旋の作用をもちます。筋の引く方向と眼球の視線の軸は完全に一致せず、眼位によって各作用の寄与が変わります。上直筋を、まぶた自体の皮膚に停止する筋と同じにはしません。

8. 下直筋は下転・内転・外旋を分ける

下直筋は共通腱輪から眼球の下面に沿い、赤道より前方の下側の強膜へ停止します。通常は動眼神経下枝の支配です。正面を向いた基準の眼位では、下転、内転、外旋の作用を区別します。下側にあるという名前だけから外転と決めず、強膜の停止と多軸の作用を対応させます。

四直筋:起始と強膜停止

四直筋:起始と強膜停止。共通腱輪から別々の四直筋へ対応する関係図。四つの筋を直列の一本にせず、強膜の上・下・鼻・耳側へ付く。視神経や上眼窩裂の全通過物はこの輪の図へまとめない。
共通腱輪から別々の四直筋へ対応する関係図。四つの筋を直列の一本にせず、強膜の上・下・鼻・耳側へ付く。視神経や上眼窩裂の全通過物はこの輪の図へまとめない。

9. 上斜筋は滑車で腱の向きが変わる

上斜筋は通常、視神経管の近くの蝶形骨から起こり、眼窩の内側上方を前方へ走ります。腱は前内側上方の滑車を通り、そこから後方外側へ向きを変えて、赤道より後方の上側・外側の強膜へ停止します。滑車は停止そのものではありません。通常は滑車神経の支配で、基準の眼位では内旋、下転、外転の作用があります。起始の高さだけから上転としません。

10. 下斜筋は眼窩の前方から起こる

下斜筋は通常、眼窩底の前内側にある上顎骨から起こり、下直筋の下を通って後方外側へ走り、赤道より後方の下側・外側の強膜へ停止します。四直筋の尖端起始と違い、前方の起始です。通常は動眼神経下枝の支配で、基準の眼位では外旋、上転、外転の作用をもちます。上斜筋の滑車を通る腱とは別です。

11. 上眼瞼挙筋は眼球ではなく上眼瞼へ届く

上眼瞼挙筋は通常、視神経管の上方付近の蝶形骨小翼から起こり、上直筋の上を前方へ走ります。前方の腱膜は上瞼板や上眼瞼の皮膚へ広がり、上眼瞼を挙げます。通常は動眼神経上枝の支配です。眼球運動六筋の強膜停止と違い、停止の対象は上眼瞼側です。平滑筋の上瞼板筋の交感性の連絡を、上眼瞼挙筋全体の支配へ置換しません。

斜筋と挙筋:異なる走行

斜筋と挙筋:異なる走行。三つの別の走行を行に分ける。上斜筋の滑車は停止ではなく方向転換点。下斜筋は前方起始、挙筋は強膜でなく上眼瞼へ届く。矢印は管の流れや眼球運動の方向ではない。
三つの別の走行を行に分ける。上斜筋の滑車は停止ではなく方向転換点。下斜筋は前方起始、挙筋は強膜でなく上眼瞼へ届く。矢印は管の流れや眼球運動の方向ではない。

12. 内転・外転と内旋・外旋を別の軸にする

内転・外転は視線が鼻側・耳側へ向く運動、上転・下転は視線の上下の運動です。内旋・外旋は視線の軸の周りの回転で、眼球の上極が鼻側へ寄るものを内旋、耳側へ寄るものを外旋として読みます。一筋の作用は一方向だけとは限りません。両眼の紙面上の回転を同じ時計方向へ固定せず、本人の鼻側・耳側を基準にします。

13. 上下作用の寄与は眼位で変わる

上・下直筋の上下方向の作用は、眼球が外転した眼位で読みやすくなります。上・下斜筋の上下方向の作用は、眼球が内転した眼位で読みやすくなります。これは筋の向きと眼球の軸による正常な関係です。上直筋の上転と下斜筋の上転を同じ停止位置にせず、眼位の条件を省いて各筋を一軸だけの装置としません。ここから臨床の検査手順や診断を定めません。

眼位と多軸作用の比較

眼位と多軸作用の比較。内旋は上極が鼻側へ、外旋は耳側へ寄る視線軸周りの回転。内外転とは別の軸。表は基準眼位と眼位条件を教示し、単一筋で一方向だけを保証せず、診察手順や診断を定めない。
内旋は上極が鼻側へ、外旋は耳側へ寄る視線軸周りの回転。内外転とは別の軸。表は基準眼位と眼位条件を教示し、単一筋で一方向だけを保証せず、診察手順や診断を定めない。

14. 運動神経の枝と六筋の対応

通常、動眼神経上枝は上直筋と上眼瞼挙筋、下枝は内側直筋・下直筋・下斜筋へ向かいます。滑車神経は上斜筋、外転神経は外側直筋へ向かいます。視神経は眼球からの視覚情報の連絡で、これら七筋の運動支配神経ではありません。眼神経の感覚枝とも区別し、頭蓋内の全走行や全視路は既知の神経教示を参照します。

七筋の通常の運動支配

七筋の通常の運動支配。左右欄は神経から筋への対応で、本人の左右や全頭蓋内走行を示さない。動眼神経の上下枝、滑車・外転神経を区別。
左右欄は神経から筋への対応で、本人の左右や全頭蓋内走行を示さない。動眼神経の上下枝、滑車・外転神経を区別。

15. 眼球壁の層と筋が付く表面

既に学んだ眼球壁は外側の角膜・強膜、中間の脈絡膜・毛様体・虹彩、内側の網膜を分けます。外眼筋の腱が付く強膜と、水晶体を毛様体へつなぐ毛様小帯は、眼球の外側と内側の別の連絡です。強膜と角膜の移行部を角膜輪部、前後を分ける周の基準を眼球の赤道として読み、直筋の前方停止と斜筋の後方停止を対応させます。

16. 房水の区画と硝子体側の空間

角膜と虹彩の間が前房、虹彩と水晶体の間が後房です。水晶体より後方の大きな区画は硝子体を含み、後房そのものではありません。前後二つの房は眼球前方側にある別の小区画です。虹彩中央の瞳孔という開口、水晶体という組織、硝子体という内容を別にし、房水産生や視覚の全機能は既存教材を参照します。

17. 視神経の眼球側の出口と眼窩内の通路

視神経乳頭は通常、眼底で中心窩より鼻側にあり、網膜の神経節細胞の軸索が集まり眼球の後方へ出る領域です。眼窩内の視神経は眼球から尖端の視神経管へ続き、筋円錐内で筋の停止とは別の通路をとります。中心窩と視神経乳頭を同じ場所にせず、乳頭から出る線維を外眼筋の腱とはしません。視交叉以後の全回路はこの局所の図へまとめません。

眼球の区画:前から後へ

眼球の区画:前から後へ。前後の位置を読む区画模式で、線なしの別の組織・空間。後房を水晶体後方の大区画へ置き換えない。虹彩の開口や網膜の出力・光学機能の全てはこの並びだけで表さない。
前後の位置を読む区画模式で、線なしの別の組織・空間。後房を水晶体後方の大区画へ置き換えない。虹彩の開口や網膜の出力・光学機能の全てはこの並びだけで表さない。

18. 眼動脈と網膜・毛様体側の枝を分ける

眼動脈は通常、内頸動脈系から出て、視神経管を通り眼窩へ入ります。網膜中心動脈は視神経側を通り、網膜の内側の層への供給に関わります。後毛様体動脈の枝は眼球後方側から入り、脈絡膜などへの供給に関わります。網膜外側の視細胞側と脈絡膜の関係を、網膜中心動脈が全眼球を単独で養うことへ広げません。前毛様体の小枝や全変異は別に残します。

19. 眼静脈は動脈の枝でなく帰還の通路

上眼静脈は通常、上眼窩裂を通って海綿静脈洞側へ向かいます。下眼静脈には上眼静脈や海綿静脈洞側への連絡、下眼窩裂を介した翼突静脈叢側への連絡などがあり、出口には変異があります。左右の眼静脈を眼窩内で一つに合流させず、動脈の流入と静脈の帰還を別の矢印で追います。全交通枝や疾患の伝播はこの範囲から断定しません。

20. 表面の保護と内部の平滑筋を分ける

結膜は眼瞼内面から眼球前方の強膜側へ反転しますが、透明な角膜の表面を同じ結膜の続きで覆うわけではありません。外眼筋は眼窩内で強膜へ腱を付ける骨格筋で、毛様体筋や瞳孔の括約・散大の平滑筋とは場所も作用も異なります。上眼瞼挙筋と上瞼板筋の区別も保ちます。涙器の全経路と平滑筋の全調節は別の学習範囲です。

眼窩の通路:情報と血流

眼窩の通路:情報と血流。矢印は視覚情報の連絡、動脈流入、静脈帰還を別の行で示す。A/V文字を併記し色だけに頼らない。後毛様体群と網膜中心の供給を一本の全眼球供給へせず、静脈の出口の変異を残す。
矢印は視覚情報の連絡、動脈流入、静脈帰還を別の行で示す。A/V文字を併記し色だけに頼らない。後毛様体群と網膜中心の供給を一本の全眼球供給へせず、静脈の出口の変異を残す。

21. 眼球・眼窩・筋の関係を限定してまとめる

壁と孔、腱と神経、動脈の枝と静脈の出口、眼球と眼瞼を別の関係として読むことが、この正常局所のまとまりです。七筋の起始・停止・作用・支配を教示しますが、左右や筋頭を独立した本体へ増やすことはしません。眼位、細枝、涙器、平滑筋、変異や全視路の範囲は別に残し、処置・臨床検査・疾患診断をこの模式から定めません。

用語を確かめる

眼窩
眼球と周囲の筋・神経血管などを収める骨性の空間。
鼻側・耳側
本人の鼻へ近い側と外側の耳へ近い側。
眼窩尖端
眼窩の後方で狭くなる部分。
前頭骨・蝶形骨
頭蓋の骨で眼窩の上壁などに関わる。
頬骨・上顎骨
眼窩の外側・底などをつくる顔面の骨。
涙骨・篩骨・口蓋骨
眼窩の内側や底の一部などへ関わる骨。
視神経管
視神経と通常の眼動脈の通路。
上眼窩裂
眼窩後方で複数の神経や静脈が通る裂隙。
下眼窩裂
眼窩の下方外側の通路となる裂隙。
共通腱輪
眼窩尖端付近の四直筋の起始に関わる腱の輪。
筋円錐
四直筋の間で囲まれる領域のまとまり。
強膜
眼球壁外側の丈夫な線維性組織。
眼球の赤道
眼球の前後を読むための周の基準。
起始・停止
筋の付着の二端。神経の起点や管の開口とは別。
内側直筋
眼球の鼻側に沿う直筋。
外側直筋
眼球の耳側に沿う直筋。
上直筋
眼球の上側に沿う直筋。
下直筋
眼球の下側に沿う直筋。
上斜筋
滑車を経て眼球後方の強膜へ腱が届く筋。
下斜筋
眼窩底前内側から後方外側へ走る筋。
滑車
上斜筋の腱の向きを変える前内側上方の構造。
上眼瞼挙筋
眼窩内から上眼瞼へ届く骨格筋。
腱膜
腱が広がった膜状の連絡。
上瞼板
上眼瞼を支える密な結合組織の板。
内転・外転
視線が鼻側または耳側へ向く運動。
上転・下転
視線が上方または下方へ向く運動。
内旋・外旋
上極が鼻側または耳側へ寄る、視線軸の周りの回転。
眼位
眼球が向いている位置。
動眼神経上枝・下枝
上直筋と挙筋、他の三筋などへ向かう別の枝。
滑車神経・外転神経
通常は上斜筋と外側直筋の運動支配へ向かう別の脳神経。
眼神経
三叉神経の感覚の部門。外眼筋の運動支配と別。
角膜輪部
角膜と強膜の移行部。
脈絡膜・毛様体・虹彩
眼球壁の中間の層に関わる構造。
網膜
眼球壁の内側の神経組織。
毛様小帯
毛様体側から水晶体へ連絡する線維。
前房・後房
角膜と虹彩の間、虹彩と水晶体の間の別の空間。
硝子体
水晶体より後方の大きな区画にある透明な内容。
視神経乳頭
網膜の出力線維が集まり眼球から出る領域。
中心窩
網膜中央部の小さなくぼみ。通常、乳頭より耳側。
網膜中心動脈
視神経側を通り網膜内側の層へ供給する動脈。
後毛様体動脈
眼球後方側から脈絡膜などへ向かう動脈の枝。
眼静脈・海綿静脈洞
眼窩からの静脈帰還と頭蓋内の出口側の関係。
翼突静脈叢
頭蓋外の翼突筋付近の静脈の網。
結膜
眼瞼内面から眼球前方の強膜側へ反転する表面の膜。
平滑筋と骨格筋
眼内の毛様体・虹彩側と、眼窩内の七筋などで区別する筋組織。