頭へ入る動脈、頭から戻る静脈:頭頸部の主要経路

本文の目次

  1. 頭へ向かう動脈と胸部へ戻る静脈
  2. 総頸動脈の出発点は左右で違う
  3. 総頸動脈から内頸・外頸へ
  4. 内頸動脈と頭蓋内側の枝
  5. 椎骨動脈は鎖骨下から後方の入口へ
  6. 外頸動脈の主要な八つの枝
  7. 上甲状腺動脈と下甲状腺動脈を分ける
  8. 舌動脈は舌へ向かう
  9. 顔面動脈は下顎の縁から顔へ
  10. 咽頭・後頭・耳の後ろへ向かう別の枝
  11. 顎動脈と浅側頭動脈は終わりの二枝
  12. 静脈は同名動脈の枝ではない
  13. 内頸静脈は頭蓋内から深い頸部へ
  14. 外頸静脈は浅い頸部を下る
  15. 顔面と下顎後の還流を分ける
  16. 前頸静脈と下部の交通
  17. 内頸と鎖骨下が腕頭静脈へ合流する
  18. 頭蓋内静脈洞の位置と後方の出口
  19. 海綿静脈洞の二つの出口を区別する
  20. 入口・分岐・合流を同じ名前だけでまとめない

1. 頭へ向かう動脈と胸部へ戻る静脈

動脈は心臓から離れる向きに、静脈は心臓へ戻る向きに血液を運びます。頭頸部では、頸部から頭へ入る動脈の分岐と、頭から頸部を下って胸部へ戻る静脈の合流を分けて追います。内・外という名前が似ていても、内頸動脈と内頸静脈は別の血管です。図はA/V、名称、矢印で読み、色だけで区別しません。

2. 総頸動脈の出発点は左右で違う

通常、右総頸動脈は腕頭動脈から、左総頸動脈は大動脈弓から直接起こります。その先では各側の頸部を上ります。左右に対応する名前があっても、胸部の出発点まで鏡像とは限りません。腕頭動脈は通常右側の幹ですが、腕頭静脈は左右からの還流を受ける別の血管です。起始の共通幹などの変異を、全員の形とはしません。

3. 総頸動脈から内頸・外頸へ

総頸動脈は頸部で内頸動脈と外頸動脈に分かれます。分岐は通常、甲状軟骨の上縁付近で見られますが、高さには個人差があります。内頸動脈は通常、頸部では枝を出さずに頭蓋内へ向かい、外頸動脈は頸部や顔面・頭皮などへ枝を送ります。内外の二本を一本の途中の別名とはしません。

4. 内頸動脈と頭蓋内側の枝

内頸動脈は頭蓋底の側頭骨にある頸動脈管を通り、頭蓋内側へ続きます。眼動脈は内頸動脈から出て眼窩へ向かう枝です。頸部で眼動脈が分かれるという意味ではありません。脳への内頸動脈系と椎骨・脳底動脈系、脳底の動脈輪は別に学んだ供給のつながりです。ここではその輪の枝を全て描き直すのでなく、頸部からの入口の違いを追います。

動脈A:総頸から内頸・外頸へ

動脈A:総頸から内頸・外頸へ。通常、総頸動脈は内頸・外頸動脈へ分かれる。各側の関係を示し、左右の血管がこの図の中で合流する意味ではない。
通常、総頸動脈は内頸・外頸動脈へ分かれる。各側の関係を示し、左右の血管がこの図の中で合流する意味ではない。

5. 椎骨動脈は鎖骨下から後方の入口へ

椎骨動脈は通常、鎖骨下動脈から分かれます。多くは第6頸椎の横突孔へ入り、上位の頸椎の横突孔を通って上り、第1頸椎付近で向きを変えて大後頭孔から頭蓋内へ入ります。横突孔は椎骨の横突起にある孔で、脊髄が通る椎孔と同じではありません。左右の椎骨動脈は合流して脳底動脈へ続きます。横突孔に入る高さや起始には変異があり、内頸動脈から分かれる通常枝ではありません。

動脈A:椎骨系の別の入口

動脈A:椎骨系の別の入口。椎骨動脈は通常、鎖骨下動脈から起こる別の入口。横突孔は脊髄の椎孔と別で、左右の椎骨動脈が頭蓋内で合流する関係をまとめた模式。
椎骨動脈は通常、鎖骨下動脈から起こる別の入口。横突孔は脊髄の椎孔と別で、左右の椎骨動脈が頭蓋内で合流する関係をまとめた模式。

6. 外頸動脈の主要な八つの枝

通常の外頸動脈の主要枝として、前方の上甲状腺・舌・顔面動脈、内側の深部へ向かう上行咽頭動脈、後方の後頭・後耳介動脈、終わりの二枝である顎・浅側頭動脈を区別します。この八つは八本の連続した別名ではありません。複数の枝が共通の幹から出るなど、起始や順序には変異があります。主要な枝の名前が分かっても、各枝の全ての細枝が分かったとはしません。

7. 上甲状腺動脈と下甲状腺動脈を分ける

上甲状腺動脈は通常、外頸動脈の近位から前下方へ向かい、甲状腺の上部などへ枝を送ります。喉頭へ向かう枝もあります。下甲状腺動脈は通常、鎖骨下動脈側の甲状頸動脈幹から出る別の系統です。上・下という名を一本の単なる途中の改名とはせず、起始の違いを分けます。上甲状腺動脈が総頸動脈や分岐付近から起こる変異もあります。

8. 舌動脈は舌へ向かう

舌動脈は外頸動脈から分かれ、舌の深部や口底へ向かう枝を送ります。舌へ届く動脈の入口と、顔面の表層を上る顔面動脈の通路を区別します。舌背・舌下などの枝がありますが、その全ての細かい分布を同じ一枚の図で確定しません。舌動脈と顔面動脈が共通幹をもつ場合もあり、二つの名前がいつも別々の高さから出るとは限りません。

9. 顔面動脈は下顎の縁から顔へ

顔面動脈は外頸動脈から分かれて顎下の領域を通り、咬筋の前縁付近で下顎の下縁を越えて顔へ上ります。咬筋は下顎を動かす筋で、ここでは血管が近くを通る位置の目印です。顔面動脈は唇や鼻などへ枝を送ります。顎動脈の深い顔面への通路や、舌動脈の舌への通路と入れ替えません。細枝の終わり方や他の枝との交通には個人差があります。

10. 咽頭・後頭・耳の後ろへ向かう別の枝

上行咽頭動脈は外頸動脈の内側から深部へ向かい、咽頭などの領域へ枝を送ります。後頭動脈は後頭部の頭皮へ、後耳介動脈は耳介の後方や近くの頭皮へ向かいます。咽頭は口や鼻の奥から続く通路、後頭は頭の後ろ、耳介は外から見える耳の部分です。三つは同じ一本の名称変化ではなく、向かう領域が違う枝です。

11. 顎動脈と浅側頭動脈は終わりの二枝

外頸動脈は通常、耳下腺内の下顎頸付近で顎動脈と浅側頭動脈に分かれます。顎動脈は深い顔面へ向かい、側頭下窩から翼口蓋窩の領域へ続く枝を送ります。中硬膜動脈は通常、顎動脈から出て硬膜へ向かう枝です。頭蓋内の組織へ届く動脈を全て内頸動脈由来とはしません。浅側頭動脈は耳の前から頬骨弓を越え、側頭部の頭皮へ上ります。深部と表層の通路を分け、全ての顎動脈の枝をここで列挙しません。

動脈A:外頸の主要八枝

動脈A:外頸の主要八枝。外頸動脈の主要な通常枝を整理する分岐図。位置・間隔は縮尺どおりでなく、共通幹などの変異や全細枝は示さない。
外頸動脈の主要な通常枝を整理する分岐図。位置・間隔は縮尺どおりでなく、共通幹などの変異や全細枝は示さない。

12. 静脈は同名動脈の枝ではない

組織との交換を担う微小循環から細静脈を経て、静脈の還流へ戻ります。頭皮・顔面の浅い還流と、頭蓋内から頸部の深い還流には交通があります。同じ名前の動脈と静脈が近くを通っても、静脈が動脈から直接分かれる枝になるわけではありません。動脈の分岐図を、そのまま静脈の合流数へ写し替えません。

13. 内頸静脈は頭蓋内から深い頸部へ

S状静脈洞は頭蓋底の頸静脈孔付近で内頸静脈へ続きます。内頸静脈は頸部の深部を下り、頸動脈鞘内で内頸動脈や総頸動脈の近くを走ります。頸動脈鞘はこれらの血管などを包む結合組織のまとまりです。通常、静脈は動脈の外側に位置しますが、位置関係や太さには個人差があります。内頸静脈は内頸動脈の途中の別名でも、顔面の浅い動脈の枝でもありません。

14. 外頸静脈は浅い頸部を下る

通常、外頸静脈は下顎後静脈の後枝と後耳介静脈などが合わさってでき、胸鎖乳突筋の表層を下って鎖骨下静脈へ注ぎます。胸鎖乳突筋は首の側面にある筋で、ここでは浅い静脈との位置を区別する目印です。内頸静脈の深い通路とは別です。終末や交通の形には変異があり、外頸静脈が内頸静脈と同じ合流だけで腕頭静脈へ直接改名するとしません。

15. 顔面と下顎後の還流を分ける

浅側頭静脈と顎静脈は通常、耳下腺内で下顎後静脈へ集まります。下顎後静脈の前枝は顔面静脈と合わさって総顔面静脈をつくり、通常、内頸静脈へ注ぎます。後枝は後耳介静脈などとともに外頸静脈側へ向かいます。深い顔面には翼突筋静脈叢などの交通もあります。この説明は一つの通常の合流モデルで、顔面の静脈が全て外頸静脈だけへ戻るとはしません。

16. 前頸静脈と下部の交通

前頸静脈は頸部前面の浅い還流の通路です。左右の前頸静脈は頸部下部で頸静脈弓を介して交通することがあります。外頸静脈側や鎖骨下静脈側への終末など、通路には変異があります。左右を結ぶ交通と、一方の血管が近位へ続いて改名することを区別します。前頸静脈を外頸動脈の前方の枝と対応させる必要はありません。

17. 内頸と鎖骨下が腕頭静脈へ合流する

通常、内頸静脈と鎖骨下静脈が合流して腕頭静脈となり、左右の腕頭静脈は上大静脈へ集まります。外頸静脈は通常、鎖骨下静脈へ注いでからこの還流へ合わさります。頭頸部からの深い通路と浅い通路を、上肢からの鎖骨下静脈の通路へ結ぶ説明です。腕頭動脈の左右の起始を、腕頭静脈の左右の合流へそのまま当てはめません。

静脈V:顔面・下顎後の分流

静脈V:顔面・下顎後の分流。下顎後静脈の前枝は顔面静脈と、後枝は後耳介静脈などと合流する通常モデル。顔面全てが外頸だけへ戻る図ではない。
下顎後静脈の前枝は顔面静脈と、後枝は後耳介静脈などと合流する通常モデル。顔面全てが外頸だけへ戻る図ではない。

静脈V:深浅から胸部へ

静脈V:深浅から胸部へ。頭頸部の深い還流と浅い還流を別に追う。内頸と鎖骨下の合流で腕頭静脈となり、外頸は通常鎖骨下に流入する。
頭頸部の深い還流と浅い還流を別に追う。内頸と鎖骨下の合流で腕頭静脈となり、外頸は通常鎖骨下に流入する。

18. 頭蓋内静脈洞の位置と後方の出口

硬膜静脈洞は硬膜の間にある静脈血の通路です。上矢状静脈洞は大脳鎌の上の付着縁、下矢状静脈洞は下の遊離縁に沿います。下矢状静脈洞と大大脳静脈の還流は直静脈洞へ集まります。直静脈洞は大脳鎌と小脳テントの接合部に沿う通路です。後方では上矢状・直静脈洞などから静脈洞交会や横静脈洞の系統へ流れ、横静脈洞はS状静脈洞を経て内頸静脈へ続きます。左右への配分や交会の形には変異があり、全ての静脈血が完全に対称な一つの交点を通るとはしません。

静脈V:頭蓋内後方の出口

静脈V:頭蓋内後方の出口。大脳鎌・小脳テント付近の通路から後方の出口を追う模式。交会や左右への配分には変異があり、全還流を同じ一点に固定しない。
大脳鎌・小脳テント付近の通路から後方の出口を追う模式。交会や左右への配分には変異があり、全還流を同じ一点に固定しない。

19. 海綿静脈洞の二つの出口を区別する

海綿静脈洞は蝶形骨のトルコ鞍の両側にある静脈血の通路で、眼窩側などからの還流と交通します。トルコ鞍は下垂体が位置する頭蓋底の骨のくぼみです。上錐体静脈洞は海綿静脈洞から横・S状静脈洞の接合部へ向かい、下錐体静脈洞は内頸静脈の上部へ向かいます。上錐体が下錐体へ直列につながる一本道という意味ではありません。他の静脈叢への交通もあり、ここでは全ての頭蓋内の細枝や通路を示しません。

静脈V:海綿から別々の出口

静脈V:海綿から別々の出口。上錐体静脈洞は横・S状の接合部へ、下錐体静脈洞は内頸静脈上部へ向かう。二つの別の出口を示し、全交通は示さない。
上錐体静脈洞は横・S状の接合部へ、下錐体静脈洞は内頸静脈上部へ向かう。二つの別の出口を示し、全交通は示さない。

20. 入口・分岐・合流を同じ名前だけでまとめない

頭への動脈の入口、外頸動脈から各領域への分岐、頭から頸部への静脈の合流を別の向きとして読みます。頸動脈管と頸静脈孔、横突孔と大後頭孔は、それぞれ異なる通路の境界です。図は主要な関係を表す模式で、骨や血管の位置を縮尺どおり写したものではありません。通常のモデルを個人の全ての枝や左右差へ当てはめず、示していない交通や変異も残します。

用語を確かめる

総頸動脈
頸部を上り、内頸・外頸動脈へ分かれる動脈。
内頸動脈
通常、頸部では枝を出さず、頭蓋内側へ続く動脈。
外頸動脈
頸部・顔面・頭皮などへ枝を送る系統。
腕頭動脈
通常右側で、右総頸と右鎖骨下動脈へ分かれる幹。
大動脈弓
胸部で大動脈が弓をつくる部分。
甲状軟骨
喉頭を形づくる軟骨の一つ。
頸動脈管
側頭骨内で内頸動脈が通る頭蓋底の管。
眼動脈
内頸動脈側から眼窩へ向かう枝。
鎖骨下動脈
上肢へ続く本幹と頸部などへの枝をもつ動脈。
椎骨動脈
通常、鎖骨下動脈から頸椎付近を上り頭蓋内へ入る動脈。
横突孔
頸椎の横突起にある孔。脊髄の椎孔とは別。
大後頭孔
頭蓋底の後頭骨にある大きな孔。
脳底動脈
左右の椎骨動脈が合流して続く動脈。
上甲状腺動脈
通常外頸動脈側から甲状腺上部などへ向かう枝。
甲状頸動脈幹
通常、鎖骨下動脈から起こり、下甲状腺動脈などを出す幹。
舌動脈
舌の深部や口底へ向かう系統。
顔面動脈
顎下から下顎の縁を越え顔へ上る系統。
上行咽頭動脈
外頸動脈から深部の咽頭などへ向かう枝。
後頭動脈
後頭部の頭皮などへ向かう枝。
後耳介動脈
耳介の後方や近くの頭皮へ向かう枝。
顎動脈
外頸動脈の終枝で、深い顔面などへ向かう動脈。
浅側頭動脈
外頸動脈の終枝で、耳の前から側頭部の頭皮へ上る動脈。
耳下腺
耳の前下方にある唾液をつくる腺。
側頭下窩・翼口蓋窩
顔面の深部にある異なる空間。
中硬膜動脈
通常、顎動脈から硬膜へ向かう枝。
内頸静脈
頭蓋内などから頸部深部を下り、鎖骨下静脈と合流する静脈。
外頸静脈
通常、胸鎖乳突筋の表層を下り、鎖骨下静脈へ注ぐ静脈。
頸動脈鞘
頸動脈・内頸静脈などを包む結合組織のまとまり。
頸静脈孔
頭蓋底でS状静脈洞から内頸静脈への通路となる孔。
下顎後静脈
通常、浅側頭・顎静脈が集まり、前後の還流へ分かれる静脈。
総顔面静脈
通常、顔面静脈と下顎後静脈前枝が合わさる通路。
前頸静脈・頸静脈弓
頸部前面の浅い還流と、下部で左右を交通する弓。
腕頭静脈
通常、内頸静脈と鎖骨下静脈が合流してできる左右の静脈。
硬膜静脈洞
硬膜の間にある静脈血の通路。
大脳鎌・小脳テント
大脳の左右の間、また大脳と小脳の間にある硬膜のひだ。
静脈洞交会
後頭部側で複数の静脈洞の系統が集まる領域。形や配分には変異。
横静脈洞・S状静脈洞
頭蓋内後方から内頸静脈へ続く通路。
海綿静脈洞
トルコ鞍の両側にある静脈血の通路。
上・下錐体静脈洞
海綿静脈洞から別々の出口へ向かう二つの通路。
模式・変異
模式は主要関係を整理した表現、変異は通常モデルと異なる個人の形。