運動器・皮膚・体の調節
本文の目次
- 皮膚の層と役割
- 汗と熱の放散
- 毛を作る細胞と色素
- 筋、腱、靱帯
- 代謝と排出をつなぐ
- 濾過と再吸収
- 尿を作ることと出すこと
- 下肢の筋と姿勢
- 筋収縮とATP
- 有酸素性エネルギー代謝
- 一回の力と反復する力
- 筋線維の性質と構成
- 材料と酵素をつなぐ
- 血管とホルモンへの二つの経路
- 血液の濃度と細胞内の貯蔵
- 関節の動く範囲と力
- 筋線維の中で連なる変化
- 脂質の貯蔵と皮脂の分泌
- 腎の単位と二つの流れ
1. 皮膚の層と役割
表皮と真皮、その下の皮下組織の層を分けてみる。表皮の外側の角質層はバリア機能を担う。真皮では線維芽細胞がコラーゲンなどを作り、皮膚の弾力と強さを支える。皮下組織では脂肪細胞が多く集まり、衝撃や外気から体を保護するとともに、脂質としてエネルギーを蓄える。
2. 汗と熱の放散
汗が皮膚上で蒸発するとき、気化熱によって熱が奪われる。汗が分泌された量と、その後に蒸発した量は同じとは限らない。液体のまま流れ落ちることと、皮膚上で蒸発することを区別する。
3. 毛を作る細胞と色素
毛乳頭の毛細血管は毛母細胞へ栄養を運ぶ。毛母細胞が分裂すると、新しい細胞が押し上げられ、次第に角化して毛を作る。メラノサイトが作ったメラニン色素は毛母細胞へ渡され、その量が毛の色に関わる。
4. 筋、腱、靱帯
関節を動かす骨格筋は、腱を介して骨につながっている。筋組織は筋細胞と結合組織からできるが、腱は結合組織で構成される。靱帯は骨同士を連結して関節を補強する。関節軟骨は関節面を覆い、衝撃を和らげ、動きを滑らかにする。
5. 代謝と排出をつなぐ
アミノ酸の分解で生じたアンモニアは、肝臓で尿素へ代謝される。尿素は血液によって腎臓へ運ばれ、尿による排出へ進む。物質を代謝する肝臓と、尿を作る腎臓、尿をためる膀胱は別の働きを担う。
6. 濾過と再吸収
腎臓では血液から物質が濾過され、濾液が尿細管へ進む。尿細管ではブドウ糖やアミノ酸、水分や電解質などが再吸収される。再吸収は尿細管側から血液側への戻りであり、濾過されたことがそのまま尿への最終排出を意味するわけではない。
7. 尿を作ることと出すこと
腎臓で作られた尿は尿管を通って膀胱にたまる。排尿時には膀胱壁の排尿筋が収縮して尿を押し出し、膀胱の出口の括約筋がゆるむ。尿の形成と、たまった尿の排出を分けて考えられる。
8. 下肢の筋と姿勢
太腿の前にある大腿四頭筋は膝を伸ばす。臀部にある大臀筋は大腿を後方へ振る。腹筋群と背筋群は上体を支える。これらは日常動作と、重力に対する立位の姿勢維持に関わる筋である。
9. 筋収縮とATP
骨格筋はATPを分解した際のエネルギーを利用して収縮する。組織内のATP量には限りがあるため、ATPを生成する過程も収縮を支える。ATPを使うことと、新たにATPを作ることは別の過程である。
10. 有酸素性エネルギー代謝
有酸素性エネルギー代謝は主にミトコンドリアで行われ、酸素を必要とする。グルコースや脂肪酸はこの代謝に利用され、ATPが生成される。材料があることだけでなく、その過程に必要な酸素も区別する。ATPを生成する経路には、有酸素性以外の経路もある。
11. 一回の力と反復する力
筋力は一回の収縮で発揮する力、筋持久力は繰り返し収縮し続ける能力である。一回の大きな力が確認されても、それだけで反復し続ける能力の順位は決まらない。測定した観点と、まだ測定していない観点を区別する。
12. 筋線維の性質と構成
速筋線維はパワーが高い一方で持久性が低く、遅筋線維はパワーは小さい一方で持久性が高いという一般的な特徴がある。筋力には筋の断面積だけでなく、速筋線維と遅筋線維の割合も関わる。同じ断面積だけで最大筋力の一致が保証されるわけではない。
13. 材料と酵素をつなぐ
肝臓や脂肪細胞で作られるアンジオテンシノーゲンは、腎臓から分泌される酵素レニンの作用を受けてアンジオテンシンⅠになる。Ⅰはアンジオテンシン変換酵素(ACE)の作用でⅡになる。一段目の生成物が次の反応の材料となる。材料を作る場所と、それに働く酵素の分泌源は分けて考えられる。
14. 血管とホルモンへの二つの経路
アンジオテンシンⅡは末梢血管を収縮させるほか、副腎皮質からのアルドステロン分泌を促す。アルドステロンはナトリウムの再吸収を促し、カリウムの排泄を促す。血管に働く経路と、別のホルモンを介して水・電解質の調節につながる経路を区別する。
15. 血液の濃度と細胞内の貯蔵
血糖値は血液中に含まれるブドウ糖の濃度であり、細胞内に蓄えられたグリコーゲンの量ではない。インスリンの作用を受ける細胞は血液中のブドウ糖を取り込み、余ったブドウ糖をグリコーゲンや中性脂肪として蓄える。血液から細胞への取り込みと貯蔵は、血糖値を下げる方向に働く。
16. 関節の動く範囲と力
関節可動域(ROM)は、関節が生理的に動く範囲を角度で表す。靱帯・腱・筋肉・関節包などが関節を取り巻く性質は、この動く範囲に関わる。より柔軟な条件と、より強固な条件では、動く範囲への影響の方向が異なる。動ける角度と、一回の収縮で発揮できる筋力は別の性質である。
17. 筋線維の中で連なる変化
骨格筋(横紋筋)の正常な収縮の説明では、筋線維表面の形質膜の電位変化に続いて細胞内カルシウム濃度が上昇し、筋原線維の収縮につながる。リアノジン受容体は、この細胞内カルシウム濃度上昇に重要な役割を持つ。骨格筋はATPを分解した際のエネルギーを収縮に利用する。筋線維内に起こる変化と、収縮のエネルギー供給を分けて整理できる。
18. 脂質の貯蔵と皮脂の分泌
皮下組織の脂肪細胞は脂質としてエネルギー源を蓄える。皮脂腺では、脂分を蓄えて死んだ腺細胞自身が分泌物となり、皮脂として毛穴から排出される。同じ脂質に関わっていても、体内に蓄える細胞と皮膚表面へ分泌する腺細胞は、場所と役割が異なる。
19. 腎の単位と二つの流れ
糸球体は毛細血管が小さな球状にまとまった構造で、ボウマン嚢に包まれている。糸球体とボウマン嚢で腎小体となり、そこから伸びる尿細管と合わせてネフロンという機能単位を構成する。血液から濾過された物質は濾液として尿細管へ進む。尿細管で再吸収された物質は血液側へ戻るため、尿側に残って先へ進む物質と分けて考えられる。
用語を確かめる
- 真皮
- 表皮の下にある結合組織の層。線維芽細胞が作るコラーゲンなどが弾力と強さを支える。
- 角質層
- 表皮の最も外側の層。皮膚のバリア機能を担う。
- 毛乳頭
- 毛球の下端のへこんだ部分。毛細血管が入り込み、毛母細胞へ栄養を届ける。
- 毛母細胞
- 毛の形成に関わり、盛んに分裂する細胞。分裂した新しい細胞は押し上げられ、角化して毛を作る。
- 腱
- 関節を動かす骨格筋を骨につなぐ結合組織。
- 靱帯
- 骨同士を連結し、関節部を補強する組織。
- 再吸収
- 腎臓で濾過された物質の一部が、尿細管側から血液側へ戻る過程。
- 排尿筋
- 膀胱壁にあり、排尿時に収縮して尿を押し出す筋。
- 大腿四頭筋
- 太腿の前にあり、膝を伸ばす働きをする筋群。
- 大臀筋
- 臀部にあり、大腿を後方へ振る働きをする筋。
- 腹筋群・背筋群
- 上体を支えることに関わる、腹側と背側の筋群。
- ATP
- アデノシン三リン酸。骨格筋はその分解で得られるエネルギーを利用して収縮する。
- 有酸素性エネルギー代謝
- 酸素を必要とする、ATPを生成する経路。主にミトコンドリアで行われる。
- 筋力
- 筋肉が一回の収縮で発揮する力。
- 筋持久力
- 筋肉が反復して収縮し続ける能力。
- 速筋線維・遅筋線維
- 筋線維の一般的な特徴の区分。速筋は高いパワー/低い持久性、遅筋は小さいパワー/高い持久性が特徴である。
- 筋線維組成比
- 筋を構成する速筋線維と遅筋線維の割合。
- アンジオテンシノーゲン
- 肝臓や脂肪細胞で作られ、レニンの作用を受けてアンジオテンシンⅠになる物質。
- レニン
- 腎臓から分泌されるたんぱく質分解酵素。アンジオテンシノーゲンをアンジオテンシンⅠへ変える。
- アンジオテンシンⅠ
- アンジオテンシノーゲンにレニンが働いて生じ、ACEの作用でアンジオテンシンⅡへ変わる物質。
- ACE(アンジオテンシン変換酵素)
- アンジオテンシンⅠからⅡへの変換に関わる酵素。
- アンジオテンシンⅡ
- 末梢血管を収縮させる作用と、副腎皮質のアルドステロン分泌を促す作用を持つ物質。
- 血糖値
- 血液中に含まれるブドウ糖(グルコース)の濃度。
- インスリン
- 膵臓から分泌されるホルモン。作用を受ける細胞のブドウ糖取り込みや、余ったブドウ糖の貯蔵を促し、血糖値を下げる方向に働く。
- 関節可動域(ROM)
- 関節が生理的に運動できる範囲を角度で表したもの。
- カルシウム(筋収縮の経路)
- 横紋筋の正常な収縮の説明で、筋線維内の濃度上昇が筋原線維の収縮につながる物質。
- リアノジン受容体
- 横紋筋の正常な収縮に至る過程で、細胞内カルシウム濃度上昇に重要な役割を持つたんぱく質。
- 皮脂
- 脂分を蓄えて死んだ皮脂腺の腺細胞自身に由来し、毛穴から排出される分泌物。
- 腎小体
- 糸球体と、それを包むボウマン嚢で構成される構造。
- ネフロン
- 腎小体と尿細管で構成される、腎臓の基本的な機能単位。