人体の位置・方向・断面

本文の目次

  1. 姿勢を決めて方向を表す
  2. 頭足と前後を分ける
  3. 正中面への近さ
  4. 四肢の根元への近さ
  5. 矢状面と正中の位置
  6. 三つの面を使い分ける
  7. 体表からの距離
  8. 位置は比較する相手を添える

1. 姿勢を決めて方向を表す

解剖学的正位では、体をまっすぐにして前を向き、腕を体の両側に置き、手のひらと足のつま先を前方へ向ける。左右はその体の本人を基準にする。向かい合う観察者の左右と本人の左右は対向する。

本人の左右と、見る人の左右

本人は正面を向き、観察者Aと向かい合っている。Aは背中側から描いており、Aの視線は本人へ向く。本人の右肩の目印は図の左側にあり、A自身の左側に見える。本人の左側は図の右側でA自身の右側に見える。両者の前方矢印は互いへ向く。
向かい合うと左右は対向します。見える側が変わっても、本人の右・左の呼び名は変わりません。

2. 頭足と前後を分ける

人体全体の上方は頭側、下方は足側である。人体の体幹の前方は胸・腹側、後方は背中側である。実際の姿勢が変わっても、床からの高さや観察者の向きを解剖用語の基準へ置き換えない。

3. 正中面への近さ

身体の正中面に近い側を内側、正中面から離れる側を外側という。前後、体表からの深さ、臓器の内部・外部とは別の基準である。一つの場所が前方かつ内側というように、異なる軸の位置関係を同時に表せる。

4. 四肢の根元への近さ

四肢では、体幹への付着部・根元に近い側が近位、遠い側が遠位である。上肢の肩から肘、手首へ続く順では、肘は手首より近位、手首は肘より遠位となる。腕を挙げて床や天井からの距離が変わっても、この基準は変わらない。

5. 矢状面と正中の位置

矢状面は人体を右側と左側の部分に分ける縦の面である。そのうち正中を通って右半と左半へ分ける面が正中矢状面である。右半と左半は同じ形や同じ体積という意味ではない。面の向きを変えず正中から平行移動すれば、矢状面のまま正中以外を通る。

矢状面:右と左を分ける

正面寄りから見た立位の人体模型に、頭足方向と前後方向へ広がる縦の面を示す。図の左が本人の右、右が本人の左。面は人体を右側と左側へ分ける。斜めに見える幅は前後方向の奥行きを表し、面の傾きや実寸を表さない。
面を斜めから見た模式です。矢状面は左右を分ける向きであり、正中を通るとは限りません。

正中を通る面と、通らない面

一つの人体模型に平行な二つの矢状面を重ねる。実線の面は左右の中央を通る正中矢状面。破線と点模様の面は本人の右側、つまり図の左側へ平行移動した矢状面で、正中を通らない。二面は同じ向きで、異なる位置を通る。
二面の向きは同じです。正中を通るかどうかが違います。左右の器官が同じ形・体積という意味ではありません。

6. 三つの面を使い分ける

人体全体を前方と後方に分ける縦の面は冠状面で、前額面ともいう。人体全体の頭足軸に直角で上方と下方に分ける面は横断面で、解剖学的正位では水平面となる。正中矢状面と横断面を組み合わせると、左右の区分と頭足の区分を組み合わせられる。

冠状面:前と後ろを分ける

正面寄りから見た立位の人体模型に、頭足方向と左右方向へ広がる縦の面を示す。前後の奥行きは斜めの矢印で表し、前方は胸腹側へ向かう右下向き、後方は背中側へ向かう左上向きとして描く。前後方向の矢印は本人の左右を示すものではない。
前後の奥行きを斜めに描いています。冠状面(前額面)は前と後ろを分ける面です。

横断面:頭側と足側を分ける

立位の人体模型を頭足軸に直角な面が横切る。面の奥行きを斜めの四角で示すが、実際には人体全体の頭足軸に直角である。面より頭側は上方、足側は下方。個々の器官や曲がった四肢の軸の断面を示す図ではない。
水平な面の奥行きを斜めに表した模式です。解剖学的正位の人体全体の頭足軸を基準にします。

7. 体表からの距離

体表に近い側は表在、体表から遠い側は深部である。正中面への距離を使う内側・外側とは異なるため、表在で外側、深部で内側といった組合せも成り立つ。

8. 位置は比較する相手を添える

通常の胸部では心臓は胸骨の後方、胸椎の前方にあり、左右の肺より内側に位置する。「前方」「内側」のような語を使うときは、何と比べた関係かを添える。前後関係だけから正中面への距離が決まるわけではない。

用語を確かめる

解剖学的正位
人体の位置を表すための基準姿勢。立って前を向き、上肢を体の両側に置き、手掌と足趾を前方へ向ける。
本人の左右
その体の本人を基準にした右と左。観察者の左右と一致するとは限らない。
上方・下方
人体全体で頭側と足側をそれぞれ表す方向。床からの高さを基準に呼び替えない。
前方・後方
人体の体幹で胸・腹側と背中側をそれぞれ表す方向。
内側・外側
身体の正中面に近い側と、そこから離れる側。
近位・遠位
四肢で体幹への付着部・根元に近い側と、そこから遠い側。
矢状面
人体全体を右側と左側の部分へ分ける縦の面。正中を通るとは限らない。
正中矢状面
身体の正中を通り、右半と左半へ分ける矢状面。左右の臓器が完全に同じになる意味ではない。
冠状面(前額面)
人体全体を前方と後方の部分へ分ける縦の面。
横断面(水平面)
人体全体の頭足軸に直角で、上方と下方の部分へ分ける面。解剖学的正位では水平になる。
表在・深部
体表に近い側と、体表から遠い側。正中面への距離とは別の比較基準。