筋骨格の地図・骨と関節

本文の目次

  1. 全身の骨格を大きく分ける
  2. 頭蓋の主な骨の位置
  3. 縫合と、下顎が動く関節
  4. 脊柱の五つの領域
  5. 椎骨の穴と、連なる空間
  6. 胸郭をつくる骨と肋軟骨
  7. 肋骨の前方の接続を分ける
  8. 上肢帯を通る骨の接続
  9. 上腕の一本と前腕の二本
  10. 肘と手首で接する骨
  11. 手根、中手、指骨をつなぐ
  12. 一つの寛骨と骨盤の輪
  13. 大腿、下腿、股・膝・足首
  14. 足根、中足、趾骨と踵
  15. 骨質、骨膜、骨髄を分ける
  16. 骨の基質の材料
  17. 骨をつくる、吸収する、保つ細胞
  18. 更新が続くことと、正味の骨量
  19. 長骨が長く、太くなる場所
  20. 三つの軟骨の代表例
  21. 関節軟骨へ物質が届く道
  22. 骨の連結を構造で分ける
  23. 滑膜関節の断面を読む
  24. 靱帯と腱はつなぐ相手が違う
  25. 平面関節と球関節
  26. 蝶番関節と車軸関節
  27. 楕円関節と鞍関節
  28. 屈曲と伸展を角度で読む
  29. 肩や股の外転と内転
  30. 長軸の回旋と分回しを分ける
  31. 前腕の回内と回外
  32. 足首の背底屈と足部の内外反
  33. 筋の張力は腱を通って骨へ届く
  34. 反対向きの作用を持つ筋
  35. 下肢と体幹の代表的な働き
  36. 可動域と筋力を別に読む
  37. 体表の目印を骨の位置へつなぐ

1. 全身の骨格を大きく分ける

骨格は体を支え、内部の器官を守り、筋の力を受けて運動に関わります。頭蓋・脊柱・肋骨や胸骨のまとまりが軸骨格です。上肢・下肢と、それらを体幹につなぐ帯の骨のまとまりが四肢骨格です。上肢帯には鎖骨と肩甲骨があり、下肢帯は左右の寛骨からなります。帯を除いた四肢の部分を自由上肢・自由下肢と呼びます。図の左右は、その体の本人を基準に読みます。骨の内部には骨髄もあり、赤色骨髄では血球がつくられます。血球をつくる組織と、硬い骨質は同じものではありません。

全身の骨格の区分

正面骨格。頭蓋、脊柱、胸郭、骨盤と左右の四肢を骨の形で示す。本人の右は紙面左。下に軸骨格と四肢骨格の構成を記す。
解剖学的正位の正面を模式化。紙面左が本人の右。骨の細部や肩甲骨の背側位置は局所図で示す。軸骨格は頭蓋・脊柱・胸郭、四肢骨格は肢帯と自由上肢・自由下肢。

2. 頭蓋の主な骨の位置

頭蓋は、主に脳を囲む脳頭蓋と、顔面の骨格をつくる顔面頭蓋に整理できます。前頭骨は額から頭蓋の前方、頭頂骨は左右の上方、側頭骨は左右の側方、後頭骨は後方から下方に位置します。一枚の平らな板が頭全体を包むのではなく、複数の骨がつながって立体的な枠組みをつくっています。上顎骨は上の顎、下顎骨は下の顎の骨です。これらの主要な位置を、正面と側面などの図でつなげて読みます。

3. 縫合と、下顎が動く関節

頭蓋骨どうしの多くの接続には、線維性の組織で連結する縫合があります。一方、下顎骨は側頭骨と顎関節をつくります。顎関節は、向かい合う骨の関節面の間に関節腔という空間を持つ滑膜関節で、顎の開閉などに関わります。頭蓋の骨の接続を全て縫合や不動の連結と考えることはできません。縫合という構造と、下顎が動く関節の位置を分けて捉えます。

頭蓋の骨と顎関節

左側面の頭蓋骨。前頭骨が前、頭頂骨が上、側頭骨が側面、後頭骨が後に位置する。上顎骨は顔面前下部、下顎骨は下側を囲み、下顎後上端が側頭骨と顎関節を作る。
左側面を模式化。鼻側が前、後頭骨側が後。主な脳頭蓋の前頭骨・頭頂骨・側頭骨・後頭骨と、顔面頭蓋の上顎骨・下顎骨の位置を示す。多くの骨の境界は縫合で、顎関節は側頭骨と下顎骨の滑膜性関節。

4. 脊柱の五つの領域

脊柱は頭側から、頸椎、胸椎、腰椎、仙骨、尾骨へと続きます。典型的な成人では頸椎は7個、胸椎は12個、腰椎は5個です。仙骨は通常、5個の仙椎が癒合して一つの骨になったものです。尾骨も小さな椎骨がまとまった部分ですが、その数や癒合には個人差があります。領域の名前と位置を先に捉え、脊柱の全ての骨が同じ形で一つずつ独立しているとは考えません。

脊柱の五領域

側面の脊柱を上から頸椎7、胸椎12、腰椎5、癒合した仙骨、尾骨として示す。仙骨と尾骨を通常の分離した椎骨列と同じ形に扱わない。
成人脊柱の側面模型。前は紙面左。頸椎7個・胸椎12個・腰椎5個をそれぞれ別の骨として示す。仙骨は通常5個の仙椎が癒合した骨で、尾骨の個数には個人差がある。曲がり・大きさは測定値ではない。

5. 椎骨の穴と、連なる空間

典型的な胸椎では、前方の椎体と後方の椎弓が椎孔という穴を囲みます。脊柱で椎孔が連なると脊柱管という空間になります。その内部に位置する脊髄は神経組織で、穴や骨そのものではありません。多くの隣り合う椎体の間には椎間板があり、椎体間の荷重を受けることなどに関わります。椎間板の外周が線維輪、中心が髄核です。椎孔の中に椎間板が入っているという配置ではありません。環椎や癒合した尾骨などを、ここで示した胸椎と全く同じ形には当てはめません。

椎骨と別々の空間

胸椎の椎体、後方の椎弓、それらに囲まれた椎孔を上から示す。脊髄は椎孔の中の別の組織。側面では椎体間に椎間板があり、後方の脊柱管内に脊髄が通る。
上段は典型的胸椎の上面模型、下段は胸椎部の側面断面模型。椎体の後ろの椎孔が連なって脊柱管を作り、脊髄はその中にある神経組織。椎間板は椎体どうしの間で、外側の線維輪と中心の髄核を分ける。

6. 胸郭をつくる骨と肋軟骨

胸郭は胸部の枠組みです。主な骨性構造は、後方の胸椎、左右の肋骨、前方の胸骨です。胸郭の内側の空間は胸腔で、骨の枠組みそのものと区別します。肋骨の前方の連結には肋軟骨が関わります。肋軟骨は硝子軟骨で、骨性の肋骨とは異なる組織です。鎖骨や肩甲骨が胸部の近くにあることと、胸郭の骨性構成として分類することも分けます。

胸郭の前・横・後

右側面から見た胸郭模型。紙面左の胸椎から肋骨が曲がり、前方の肋軟骨を介して紙面右の胸骨へつながる。骨格の囲む内側が胸腔で、胸郭そのものとは区別する。
右側面に相当する模式図。後方の胸椎から肋骨が前へ回り、前方には肋軟骨と胸骨がある。骨と軟骨を輪郭と接続位置で分ける。ここで描いた肋骨は接続の代表で、全12対の数の模型は次図で分ける。

7. 肋骨の前方の接続を分ける

肋骨は通常12対です。第1〜7対はそれぞれ自分の肋軟骨を介して胸骨につながります。第8〜10対の肋軟骨は上の肋軟骨へつながり、胸骨へのつながりは間接的です。第11〜12対には前方で胸骨へつながる接続がありません。これらの肋骨も後方では脊柱に接続します。全ての肋骨が前方で胸骨へ直接関節する、あるいは前方の接続がない肋骨は骨格から離れている、とまとめないようにします。

肋骨の前方の接続

三段の側面模型。上段は肋骨から肋軟骨を経て直接胸骨へ。中段は下の肋軟骨が上の肋軟骨へ合流。下段の肋骨前端は胸骨に届かず自由である。すべての後端は胸椎へ接続する。
通常12対の肋骨を前方の接続で分けた側面模型。1〜7対は自分の肋軟骨で胸骨へ、8〜10対は上の肋軟骨を介して間接的に胸骨へ、11〜12対は前方で胸骨へ接続しない。どの群も後方の胸椎との接続を持つ。線数は各群の対数を再現していない。

8. 上肢帯を通る骨の接続

上肢帯の鎖骨と肩甲骨は、上肢を体幹へつなぐ位置にあります。鎖骨は内側で胸骨と、外側で肩甲骨と関節します。肩甲骨は胸郭の背側に位置する三角形の扁平な骨で、上腕骨にも関節します。胸骨から鎖骨、肩甲骨、上腕骨へと、直接の骨性関節の相手をたどれます。肩甲骨は筋などに支持されて胸郭の上を動きますが、肋骨との直接の骨性関節を持つという意味ではありません。近い位置にあること、支持されること、骨どうしが関節することを分けます。

肩甲骨と肩帯の接続

左肩の後面で肩甲骨が胸郭の背側にある。外側の関節面に上腕骨骨頭が対応し、その上に肩峰。下の接続模型では鎖骨の内側が胸骨、外側が肩甲骨に接する。上腕骨は鎖骨ではなく肩甲骨に接する。
上段は左肩の後面。三角形の肩甲骨と上腕骨の骨頭、肩峰の位置を示す。下段は前方の骨性接続を模式化し、胸骨―鎖骨―肩甲骨と、肩甲骨―上腕骨の接続を分ける。下段の肩甲骨は背側の骨を投影しており、前側へ移るという意味ではない。肋骨との直接の骨性関節はない。

9. 上腕の一本と前腕の二本

上腕には上腕骨があり、前腕には橈骨と尺骨があります。解剖学的正位では、橈骨は親指側の外側、尺骨は小指側の内側に位置します。左右どちらの上肢でも、本人の親指側と小指側を基準にできます。腕を回したときの見かけの位置と、正位で決めた名称や基準を混同しません。上腕と前腕は別の部位であり、肘を境につながります。

10. 肘と手首で接する骨

肘の関節のまとまりには、上腕骨と尺骨、上腕骨と橈骨、橈骨と尺骨の近位部の接続があります。同じ肘の近くでも、関節する骨の組合せは一つではありません。手首の橈骨手根関節では、橈骨は近位列の手根骨のうち舟状骨と月状骨に直接接します。尺骨と手根骨の間には関節円板があり、尺骨が橈骨と同じように手根骨へ直接関節するわけではありません。舟状骨と月状骨は手首に近い手根骨の名前、関節円板は骨とは異なる組織です。近位列の全ての手根骨が橈骨に直接接するとも考えません。

上腕と前腕の二骨

右上肢前面。上腕骨下端の外側に円盤状の橈骨頭、内側に尺骨の切痕が対応する。橈骨は紙面左の親指側、尺骨は紙面右の小指側で下へ続く。
右上肢を前から見る正位模型。橈骨は親指側・外側、尺骨は小指側・内側。肘では上腕骨と尺骨、上腕骨と橈骨、近位の橈骨と尺骨の接続を分ける。前腕の回旋は後の運動図で示す。

手首の接触と円板

広い橈骨の遠位面の下に舟状骨と月状骨がある。尺骨の下には関節円板があり、その下方に三角骨を描く。橈骨を全手根骨へ直接つながる一枚の板にはしない。
右手首の前面模型。手根骨を全て描く図ではなく近位の接触部を拡大。橈骨が直接接する手根骨は舟状骨と月状骨。尺骨側は関節円板を区別し、尺骨が三角骨などへ直接接する模型にしない。

11. 手根、中手、指骨をつなぐ

手の骨は、根元側の手根骨、手のひらの中手骨、指の指骨へと整理できます。手根骨は8個、中手骨は5個です。親指側の中手骨を第1中手骨と呼び、親指には2個の指骨、他の各指には3個の指骨があります。親指の第1中手骨は、手根骨の大菱形骨と接して第1手根中手関節をつくります。これは親指の根元の関節で、手首の橈骨手根関節とは別です。手首、指の根元、指の途中を全て同じ一つの関節としてまとめません。

手の三領域と親指

右手で親指は紙面左。手首側の8手根骨から5中手骨が伸び、指骨へ続く。親指は指骨2本、ほかは各3本。大菱形骨と第1中手骨は親指の根元で接する。
右手の手掌側。手根骨8個を別輪郭で示し、豆状骨は三角骨の手掌側に重なる位置。中手骨は5本。親指の指骨は2本、ほかの指は各3本。親指の大菱形骨と第1中手骨の間が第1手根中手関節であり、手首の関節とは位置が異なる。骨の大きさ・間隔は可読性のため簡略化。

12. 一つの寛骨と骨盤の輪

成人の一つの寛骨は、上方の腸骨、後下方の坐骨、前下方の恥骨がまとまった骨です。寛骨は左右に一つずつあり、それぞれの外側にある寛骨臼が大腿骨頭と関節します。左右の寛骨は後方で仙骨と関節し、前方では左右の恥骨が恥骨結合でつながって、骨性の骨盤輪をつくります。一つの寛骨の三つの構成部分と、左右寛骨・仙骨がつくる輪は異なる大きさのまとまりです。骨盤全体には尾骨も含まれますが、骨盤輪の主要な構成を説明するときとは分けて整理します。

寛骨と骨盤の輪

一つの寛骨は腸骨、坐骨、恥骨からなる。骨盤輪は左右の寛骨と後方の仙骨。前方で左右の恥骨が恥骨結合を作り、尾骨は仙骨の下に別に続く。
上段は左寛骨の外側面。腸骨は上、恥骨は前下、坐骨は後下にあり、外側に寛骨臼。下段は骨盤を正面へ投影した模型で、左右寛骨と仙骨を主な骨盤輪として区別し、前方の恥骨結合を示す。仙骨の後方位置を前面投影で表す。尾骨は仙骨の下にあり、主な輪の構成と同一にはしない。

13. 大腿、下腿、股・膝・足首

大腿には大腿骨があり、下腿には内側の脛骨と外側の腓骨があります。股関節では大腿骨頭が寛骨臼に接します。膝には大腿骨と脛骨の接続、大腿骨と膝蓋骨の接続があります。膝蓋骨は膝の前方に位置します。腓骨は脛骨に関節しますが、大腿骨に直接関節する骨ではありません。足首の主な関節である距腿関節では、脛骨と腓骨の遠位部が距骨を挟んで関節します。膝に近い骨を全て大腿骨の関節相手にしたり、足首の関節相手を踵骨へ置き換えたりしません。

下肢の骨と股・膝

右下肢前面。大腿骨頭が寛骨臼に向かい、下方の大腿骨が内側の太い脛骨へ接する。外側の細い腓骨上端は脛骨より下。膝蓋骨は膝の前面。
右下肢を前から見る模型。内側の脛骨と外側の腓骨を区別。股関節は大腿骨頭と寛骨臼。膝では大腿骨と脛骨、大腿骨と前方の膝蓋骨の接続を分ける。腓骨の上端は脛骨側へ接続し、大腿骨に直接接する関節を描かない。

14. 足根、中足、趾骨と踵

足の骨は、根元側の足根骨、足の甲などをつくる中足骨、足の指の趾骨へと整理できます。距骨と踵骨は足根骨に含まれます。距骨は踵骨の上方に位置し、上側で下腿の骨と距腿関節をつくります。踵骨は踵をつくり、後方へ張り出します。距骨と踵骨の間などにも関節があり、足首の距腿関節だけが足全体の接続ではありません。手と足に対応する大きな領域があっても、手根骨と足根骨の一つ一つが同じ名前や形ではありません。

足首と足の三領域

足首前面で内側の脛骨と外側の腓骨が距骨を挟む。側面では距骨が踵骨の上にあり、踵骨が後方の踵を作る。足根骨から前方の中足骨、趾骨へ続く。
上段は右足首前面で脛骨・腓骨の遠位部が距骨を囲む。踵骨はその下。下段は右足外側面の代表骨を示し、踵は後、足根骨から中足骨・趾骨が前へ続く。外側投影では骨が重なるため全骨本数の再現はしない。足首の脛骨・腓骨が直接接する相手は踵骨ではなく距骨。

15. 骨質、骨膜、骨髄を分ける

骨は硬いだけの無生物ではなく、血管と生きた細胞を含む組織です。主部をつくる骨質と、表面を覆う骨膜、内部の骨髄、関節面を覆う関節軟骨を分けます。骨膜は関節軟骨で覆われた面までそのまま覆うわけではありません。緻密骨では骨質が密にまとまります。海綿骨では、骨質からなる骨梁が網状に組み合わさり、その間に骨髄などのある空間があります。海綿骨の梁そのものが軟骨や骨髄という意味ではありません。骨質が占める割合と、その材料の種類は別の情報です。

16. 骨の基質の材料

骨の細胞の周囲には、細胞外基質である骨基質があります。有機成分の代表はコラーゲンで、引っ張る力への抵抗やしなやかさに関わります。無機成分の代表はカルシウムとリンを含むハイドロキシアパタイトで、硬さや圧縮する力への抵抗に関わります。これらの成分が組み合わさって骨の性質を支えます。骨が硬いことから、有機成分や細胞がないとは考えません。骨の強さを一つの材料だけで決めることもできません。

骨の断面と骨基質

骨端の関節面に軟骨、骨幹外側に緻密骨と骨膜、骨幹内側に骨髄。骨端には網目状の骨梁があり、間に骨髄のある空間。下に線維状コラーゲンと板状に模式化した骨無機成分を分けて示す。
長骨の縦断面模型。関節軟骨は関節面、骨膜は骨の表面の別の位置。緻密骨の内部には骨髄の空間があり、端の海綿骨では骨質の骨梁と梁の間の空間を区別する。下の材料模型は有機成分のコラーゲン線維と無機成分のハイドロキシアパタイトを拡大した概念図で、形・個数・割合の測定像ではない。

17. 骨をつくる、吸収する、保つ細胞

骨芽細胞は新しい骨基質をつくり、その石灰化に関わる骨形成側の細胞です。破骨細胞は骨の基質を吸収する側の細胞です。骨細胞は骨基質の中に位置し、基質の維持や力学的な情報の感知などに関わります。骨細胞が受け取った情報は骨の更新の調節にも関わります。形成、吸収、基質内の維持や情報感知は、それぞれの代表的な役割として分けます。骨髄で血球をつくる働きは、これらの骨基質を扱う役割とは別です。

骨を扱う三つの細胞

骨基質表面のくぼみに複数の核を持つ大きな破骨細胞、別の表面に並ぶ小さな骨芽細胞。骨細胞は骨基質の中に位置し突起を持つ。
表面の吸収部に破骨細胞、形成側の表面に骨芽細胞、骨基質内に骨細胞を模式化。骨細胞の細い突起は構造を示し、特定の情報伝達経路を確定する矢印ではない。骨髄での造血とは別の役割。

18. 更新が続くことと、正味の骨量

骨吸収と骨形成を繰り返して骨を更新する過程をリモデリングと呼びます。成人でもこの更新は続きます。長さの成長が終わったことや、外形が変わらないことは、骨代謝が止まった証拠ではありません。一定期間に形成される量と吸収される量が等しければ、更新があっても正味の量は変わりません。形成が吸収を上回るか下回るかによって正味の増減が変わります。骨への物理的刺激は両方の活性の調節やバランスに関わりますが、一つの刺激だけから個人の骨量や運動の効果を確定することはできません。

更新と正味の骨量

骨表面の基質が吸収され、続いてその場所に新しい基質が形成される。形成量と吸収量を一定期間で比べ、等しい、形成が多い、形成が少ない場合を正味の変化へ対応させる。
成人の骨の局所更新を吸収から形成への段階として模式化。下段は同じ期間に形成される量と吸収される量の比較で、等しい場合も更新は止まっていない。個々人の骨量や一つの運動刺激の効果をこの図から決めない。

19. 長骨が長く、太くなる場所

長骨の両端の部分を骨端、長く続く中央の部分を骨幹といいます。成長期には、骨端と骨幹の間の領域に成長板、すなわち骨端軟骨板があります。そこで軟骨細胞が増えたり大きくなったりし、骨幹側で軟骨が骨へ置き換えられて、長さの成長につながります。これは既存の硬い骨質を全体に引き伸ばす過程ではありません。幅や太さの増加には骨膜側の表面への骨添加が関わり、内側の吸収なども骨の形を変えます。軟骨の石灰化と、骨芽細胞などが関わる骨への置換は同じ過程ではありません。成長板が閉じると、その成長板による長さの成長は終わりますが、成人でも骨の更新は続きます。骨端の関節面を覆う関節軟骨と、成長期の成長板は、位置も役割も異なります。

長さと太さの成長

成長期の長骨上端に関節軟骨、内部の骨端と骨幹の間に成長板。成長板から骨幹側への置換と、骨幹側面の骨添加を異なる場所の矢印で示す。成人では成長板は閉じるが更新は続く。
上段は成長期の長骨。関節面の関節軟骨と、骨端・骨幹の間の成長板を別の場所に示す。成長板で軟骨細胞の増殖・肥大が起こり、骨幹側で骨へ置換されて長さが増す。左右の矢印は骨膜側の添加による太さの増加で、筋や関節の運動ではない。下段は成長板が閉じた成人という別条件。成長板由来の長さの成長が終わっても更新は続く。

成長板付近の置換

上の骨端側では小さな軟骨細胞が列に増え、その下では細胞が大きくなる。骨幹側の置換域では軟骨の残りの細い芯と周囲の骨基質、骨形成側の骨芽細胞を別形で示す。過程の下向き矢印は骨格の運動ではない。
成長期の成長板付近を拡大した局所模型。骨端側から骨幹側へ、軟骨細胞が増える段階と大きくなる段階を別の細胞形で示す。骨幹側では軟骨の残る部分と骨芽細胞によって加わる骨基質を別輪郭にした置換の模型。軟骨が石灰化しただけで同じ組織のまま骨になるという意味ではない。細胞数・大きさ・各段階の厚さは測定値でなく、既存骨の引き伸ばしも示さない。

20. 三つの軟骨の代表例

主な軟骨の型には硝子軟骨、弾性軟骨、線維軟骨があります。正常な成人の大腿骨の膝関節面を覆う軟骨や肋軟骨は硝子軟骨です。耳介の軟骨は弾性軟骨で、豊富な弾性線維が変形後に戻る性質に関わります。椎間板の外周の線維輪では、太いコラーゲン線維の束が目立つ線維軟骨がみられます。中心の髄核まで線維輪と同じ構造にまとめません。型の分類、成分の量、変形後に戻る性質は別の情報です。弾性線維の量が違うだけで、軟骨の型まで自動的に変わるとはいえません。

軟骨の型と場所

膝の大腿骨関節面を覆う硝子軟骨、耳介の弾性軟骨、椎間板外周の線維軟骨を三段に示す。椎間板は外周の線維輪と中心の髄核の輪郭を分ける。
型と実部位の代表例。正常成人の膝関節面の関節軟骨は硝子軟骨、耳介は弾性軟骨、椎間板外周の線維輪は線維軟骨。椎間板中心の髄核は線維輪と別の構造である。各部は異なる拡大率の位置模型で、線維量の測定図ではない。

21. 関節軟骨へ物質が届く道

関節軟骨は骨の関節面を覆い、衝撃を和らげ、滑らかな動きを助けます。正常な成人の膝の成熟関節軟骨の内部には血管がありません。関節腔の液体である滑液の側から、成分が軟骨の基質中を拡散して細胞へ届きます。拡散は、物質が濃度などの条件に応じて広がる過程で、内部に血管が走ることとは異なります。一方、関節包の内側の組織である滑膜には血管があります。滑膜への血液の道と、軟骨への滑液側からの道を分けます。供給経路を一つに限定した模型でその入口を止めても、別に保った組織の入口まで止めたことにはなりません。これは実際の軟骨への全供給源や組織の生存を一つの模型で判断するという意味ではありません。

22. 骨の連結を構造で分ける

骨どうしの連結は、線維性、軟骨性、滑膜性という構造で分類できます。線維性の連結の代表は頭蓋の縫合で、骨の間を線維性組織がつなぎます。軟骨性の連結の代表には恥骨結合や、椎間板を介する椎体間の連結があります。滑膜性の連結では関節腔があり、肩や股、膝などの主要な関節にみられます。構造分類と実際にどれだけ動くかは異なる比較軸です。全ての連結が関節腔を持つ、全ての軟骨性連結が全く動かない、全ての滑膜関節が同じ範囲で動く、とは考えません。

骨の連結の三構造

上段の縫合は複雑な骨縁の間を線維性組織が橋渡しする。中段の恥骨結合は骨の間に軟骨性組織。下段の滑膜関節は二つの骨面の間に独立した関節腔がある。
線維性は縫合の骨間を線維性組織がつなぐ、軟骨性は恥骨結合などの骨間に軟骨性の組織がある、滑膜性は関節腔を持つ。異なる部位の拡大模型。構造分類を可動域の大きさと同じ尺度にせず、全ての骨連結に関節腔があるとはしない。

23. 滑膜関節の断面を読む

滑膜関節では、骨の関節面の間に関節腔があり、関節全体が関節包に囲まれます。骨の関節面を覆う関節軟骨と、関節を包む関節包は別の構造です。関節包の外側は丈夫な線維膜、内側は滑膜です。滑膜は関節包の内面を覆いますが、関節軟骨の表面まで覆うわけではありません。関節腔にある滑液は液体で、滑膜という組織や関節軟骨そのものではありません。滑液は関節面の潤滑と、関節軟骨への物質供給に関わります。

関節包と軟骨への供給

二骨の端を関節軟骨が覆い、間に関節腔。側方の関節包は外の線維膜と内の滑膜。下の拡大模型では滑膜に血管があり、軟骨は別に滑液側から点線矢印で物質が届く。
成人膝の滑膜関節の断面模型。骨面上の関節軟骨、骨面間の関節腔と滑液、周囲の関節包を別の構造として示す。関節包の外層は線維膜、内層は滑膜で、滑膜は関節軟骨表面を覆わない。下の供給模型は滑膜内の血管と、滑液側から成熟関節軟骨内への拡散を分ける。軟骨内部に血管を描かず、全供給源や生存を確定する模型にはしない。

24. 靱帯と腱はつなぐ相手が違う

靱帯は骨と骨を連結し、関節部を補強します。腱は骨格筋と骨をつなぎ、筋の力を骨へ伝えます。これらは、骨の関節面を覆う関節軟骨や、関節を包む関節包とは異なる役割です。関節の周囲にあるという共通点だけで、全て同じ組織や働きにまとめません。

25. 平面関節と球関節

滑膜関節は関節面の形でも分類できます。平面関節では比較的平らな関節面の間の滑りが主となります。手根骨間の関節には、このような平面関節の部分がみられますが、手根部の全ての接続を同じ型へまとめません。球関節では球状の骨頭がくぼみに接し、屈伸、内外転、回旋など多方向の運動に関わります。肩甲骨と上腕骨がつくる肩関節(肩甲上腕関節)と、股関節が代表例です。同じ球関節でも、形の深さや周囲組織などが異なり、実際の可動域は同じとは限りません。

平面と球の関節面

上は平らな二つの骨面の間を平行に滑る。下は球状の骨頭がくぼみに接し、複数の方向への運動がある。
平面は比較的平らな面の間の滑りを、球は丸い骨頭とくぼみの対応を拡大模型で示す。実例は手根骨間の一部、肩甲骨―上腕骨の肩関節(肩甲上腕関節)、股関節。球の細い直線は複数の代表回転軸の投影、矢印は代表的な運動方向で、角度・可動域・拘束を測定していない。形の深さや周囲組織によって同じ型でも実際の可動域は異なる。

26. 蝶番関節と車軸関節

蝶番関節では主に一つの軸の回りの屈伸が生じます。肘の上腕骨と尺骨の接続は、その代表例です。車軸関節では主に長軸の回りの回旋が生じ、近位橈尺関節が代表例です。近位橈尺関節は肘の近くで橈骨と尺骨がつくる関節です。肘の関節のまとまり全体を一つの単純な蝶番とみなすと、前腕の回旋を説明できません。膝も屈伸が主ですが、姿勢などの条件に応じた回旋などがあり、全ての運動を一軸だけに固定しません。

蝶番と車軸の面・軸

上腕骨の丸い関節面を尺骨が受け、一軸の回りに屈伸する。下は尺骨側の位置を保ち、円盤状の橈骨頭が橈骨長軸の回りに回旋する。
上段は上腕骨―尺骨の接続を蝶番の面・軸の模型として示す。下段は近位橈尺関節で橈骨頭が長軸の回りに回る車軸の模型。運動矢印と軸の線を分ける。肘のまとまり全体や膝の全運動を単一の蝶番にまとめない。

27. 楕円関節と鞍関節

楕円関節は楕円形の関節面が対応する型で、手首の橈骨手根関節が代表例です。屈伸と、手を親指側・小指側へ傾ける動きなど、代表的な二方向の動きができます。鞍関節では互いに鞍のような凹凸を持つ関節面が対応し、親指の大菱形骨と第1中手骨がつくる第1手根中手関節が代表例です。ここでも二方向の動きが組み合わさります。六つの主な形は、平面、球、蝶番、車軸、楕円、鞍です。形と代表方向を対応させても、個人の正確な角度や全ての動きが形の名前だけで決まるわけではありません。

楕円と鞍の関節面

楕円関節は楕円の骨面が対応し、屈伸と親指側・小指側への傾きがある。鞍関節は互いの鞍状の凹凸が対応し、二方向の動きが組み合わさる。
上段は楕円面と対応するくぼみを持つ橈骨手根関節の代表模型。下段は一方向に凹、直交方向に凸となる鞍状面の対応を持つ、親指の大菱形骨―第1中手骨の関節の拡大模型。細線は二つの代表回転軸の投影、矢印は運動の代表的な二方向で、個人の正確な可動域を決めない。

28. 屈曲と伸展を角度で読む

肘や膝などでは、関節で骨のなす角度が小さくなる動きを屈曲、大きくなる動きを伸展と呼びます。肘を曲げて前腕が上腕に近づくのは屈曲、曲げた肘を伸ばすのは伸展です。肩や股を含む四肢の代表的な屈伸は、左右を分ける向きの矢状面に沿う動きとして整理できます。動きを表す面と、それに直交する回転軸は別です。手が床から上がったか下がったかだけでは、全ての関節の動きを決められません。

屈曲と伸展の角度

右肘側面で上腕を保ち、前腕が伸びた位置から前側へ回り角度が小さくなる。矢印で屈曲と逆の伸展を示し、軸と運動弧を別に描く。
右肘を側面から見た模型。前は紙面左。点線の前腕は伸びた位置、実線の前腕は曲がった位置。上腕と前腕のなす角度が小さくなる向きを屈曲、逆を伸展とする。小円と細い指示線は面に直交する回転軸、矢印付きの曲線は運動である。図は角度の実測値ではない。

29. 肩や股の外転と内転

肩や股関節で四肢が身体の正中面から離れる動きが外転、正中面へ近づく動きが内転です。横へ腕を開くような代表運動は、前方と後方を分ける向きの前額面に沿う動きとして整理できます。本人の正中面との関係が基準で、観察者の右へ動いたか左へ動いたかが基準ではありません。手指や足趾にはそれぞれの基準があるので、この四肢の基準を全ての指へ一律には当てはめません。

正中面と外転・内転

身体正面の正中面を縦線で示す。右腕が紙面左側へ開いて正中面から離れる外転、逆に近づく内転を運動弧で示す。
正面の右肩の模型。右腕は紙面左。正中面から離れる方向が外転、近づく方向が内転。点線は腕を下ろした位置、実線は外転した位置。代表的な動く面は前額面。手指・足趾の基準へ一律に広げない。

30. 長軸の回旋と分回しを分ける

肩や股関節で、上腕や大腿が自分の長軸の回りに回る動きが回旋です。前面が内側へ向く代表的な回旋を内旋、外側へ向くものを外旋と呼びます。一方、屈曲、外転、伸展、内転などが連なって四肢の先が円を描くように動くのが分回しです。分回しでは四肢の長軸の向きも変わり、純粋に長軸の回りに回る運動とは同じではありません。内旋・外旋の向きと、先端が円を描くことを分けて読みます。

回旋と分回し

左上腕断面が長軸の回りに回る回旋と、肩から伸びる四肢の方向が変わり先端に円状の軌跡を作る分回しを上下で区別する。
上段は左上腕を肩側から肘へ向かって見る断面の回旋模型。前は上、内側は紙面右。前面が内側へ向く内旋と外側へ向く外旋は上腕長軸の回りの運動。三角形は骨幹断面の方向を簡略化した形で、点線は回転後の位置。下段の分回しは肩側の位置を保ち、四肢の長軸自体の向きが変わって先端が円を描く別の関係。三つの腕は位置の例で同時に三本ある意味ではない。

31. 前腕の回内と回外

前腕の回外では、橈骨と尺骨はほぼ平行になる代表的な関係です。正位のように手のひらが前を向くときがその例です。回内では橈骨が尺骨の前を交差し、手のひらの向きが変わります。肘を曲げて前腕を前方へ向けた姿勢では、手のひらを上へ向ける回外と、下へ向ける回内として観察できます。この動きには近位と遠位の橈尺関節が関わります。橈骨と尺骨の関係の変化を、手関節だけの屈伸や肩の回旋へ置き換えることはできません。手の向きだけを見ると別の部位の運動も混ざり得るため、前腕の二骨の関係を確かめます。

前腕の回外と回内

上段の右前腕は橈骨と尺骨が並行。下段で近位橈骨頭の場所を大きく移さず、橈骨の遠位側が内側へ回り尺骨の前を交差する。交差部では橈骨が前景。
同じ右前腕を前から見る模型。上は回外の代表関係で橈骨が親指側にあり尺骨とほぼ平行。下は回内で橈骨が尺骨の前を横切るため、交差部で橈骨の輪郭を手前に描く。近位の橈骨頭は尺骨の近くを保ち、遠位では橈骨が尺骨の回りへ移る。骨同士の関節を示す細線は位置指示で運動矢印ではない。肩や手首だけの運動に置き換えない。

32. 足首の背底屈と足部の内外反

足首で足の甲を下腿の前面へ近づける動きが背屈、足の甲を下腿の前面から離す方向の動きが底屈です。距腿関節ではこれらの屈伸が主となります。一方、足底が内側へ向く動きが内反、外側へ向く動きが外反です。足部の内反・外反には距骨と踵骨の間など複数の関節が関わります。足の甲と下腿の角度が変わること、足底の向きが変わることは別の関係です。内反・外反を距腿関節一つの蝶番運動にはまとめません。

足首の背屈と底屈

下腿の位置を保ち、足の甲が下腿前面へ近づく上向きの背屈と離す下向きの底屈を示す。
右足外側面の距腿関節を中心とする代表屈伸。前は紙面右。足の甲を下腿前面へ近づける方向が背屈、離す方向が底屈。足部の点線は異なる時点の位置。つま先と下腿の直線距離だけで名称を決める図ではない。

足底の向きと内外反

右足前面の下腿位置を保ち、上段では足底の面が内側に向く。下段では足底が外側へ向く。複数の足部骨間で向きが変わる関係を示す。
右足を前から見る向きの模型で、内側は紙面右。上段は足底面が内側へ向く内反、下段は外側へ向く外反。足底は面として独立輪郭を付ける。距骨と踵骨の間など複数の足部関節が関わり、上方の距腿関節だけの蝶番として描かない。前足部を含む形や運動の組合せは簡略化。

33. 筋の張力は腱を通って骨へ届く

筋全体には筋細胞と、それらをつなぐ結合組織があります。腱は結合組織からなり、筋細胞を含む筋組織とは区別します。筋が生む張力は腱を通って骨へ伝わり、関節の位置関係に応じて運動や姿勢の保持に関わります。張力は引く力です。同じ筋が骨を反対向きへ押すことで、逆の動きをつくるわけではありません。靱帯の骨と骨をつなぐ支持と、筋から腱を通る力の経路を分けます。

筋・腱と骨・靱帯

骨格筋の筋腹は赤い紡錘状、端に細い腱が続き下側の骨へ付く。反対側に靱帯が上下の骨へ付き、筋からの力の経路とは分かれる。
二骨の関節周囲のつながりを位置模型で示す。赤い骨格筋の両端に結合組織性の腱が続き骨へつながる。別の帯は骨と骨をつなぐ靱帯。筋の張力の直線矢印は引く向きの例で、関節の運動弧ではない。特定筋の全起始停止を示す図ではなく、代表的な経路の模型。

34. 反対向きの作用を持つ筋

上腕二頭筋は上腕の前面側にあり、肘の屈曲に関わる代表的な筋です。上腕三頭筋は後面側にあり、肘の伸展に関わります。一つの動作について反対向きの作用を持つ関係を拮抗と呼びます。肘を曲げる筋には上腕筋などもあり、二つの筋だけが全ての力を担うわけではありません。動作や姿勢の保持によっては、反対作用の筋も同時に力を生むことがあります。主な動作を担う筋が活動するとき、拮抗筋がいつも完全に活動を止めるとは考えません。

上腕の前後の筋

前面側に上腕二頭筋、後面側に上腕三頭筋。二頭筋の遠位腱は橈骨、三頭筋の遠位腱は尺骨へ向かう。前面筋は屈曲、後面筋は伸展の代表作用である。
右上腕の側面を模式化し、前は紙面左。上腕前面の上腕二頭筋は遠位で腱を介して橈骨へ、後面の上腕三頭筋は尺骨の肘頭側へつながる代表位置。屈曲と伸展の反対作用を拮抗として読む。直線の矢印は腱に沿って骨へ働く張力の向きで、運動弧ではない。近位の全筋頭や上腕筋などは省略しており、二筋だけが全ての力を担う意味ではない。拮抗筋が常に完全停止するとはしない。

35. 下肢と体幹の代表的な働き

大腿前面の大腿四頭筋は膝の伸展に関わります。殿部の大殿筋は、大腿を後方へ動かす股関節の伸展に関わります。腹部の筋群と背部の筋群は、体幹の姿勢を支えることなどに関わります。筋の力があっても、外力とのつり合いなどによって見える位置変化が生じないことがあります。収縮は能動的に力を生むことを含み、常に筋全体が短くなるという意味ではありません。立っているときに動いていないように見えることから、筋の役割がないとはいえません。

下肢と体幹の筋

側面の身体と骨の上に赤い筋形を重ねる。腹部の筋群は前、背部の筋群は後、殿部に大殿筋、大腿前面に大腿四頭筋。足が床の位置を保つ姿勢でも筋の力を生む条件を示す。
左側面の位置模型。大腿前面の大腿四頭筋は膝伸展、殿部の大殿筋は股関節伸展へ関わる。腹部と背部の筋群は体幹姿勢を支える。図は姿勢保持の一例で、外力とのつり合い等で位置が変わらなくても能動的な力を生むことがある。筋収縮を常に筋全体の短縮と同一にしない。

36. 可動域と筋力を別に読む

関節可動域は関節が動く角度の範囲で、ROMとも呼ばれます。筋力は筋が生む力の大きさに関する量なので、二つは別の情報です。関節の周囲の靱帯、腱、筋、関節包などの性質も可動域に関わります。他の条件を同じにした模型で周囲組織の柔軟さが変われば、可動範囲の変化を考えられます。しかし、同じ割合で最大筋力も変わるとはいえません。関節の形や一つの組織だけから、個人の正確な可動範囲を決めることもできません。

37. 体表の目印を骨の位置へつなぐ

体表の形と内部の骨の位置を対応させると、身体の地図を読みやすくなります。肩の外側上方には肩甲骨の一部である肩峰があり、膝の前方には膝蓋骨があります。下腿前方の主要な骨の縁は脛骨前縁で、踵には踵骨があります。骨の名前、全身の部位、表面に現れる位置を結び付けます。目印の位置を学ぶことと、触診で状態を判定したり施術の場所を決めたりすることは別です。

体表と骨の目印

左肩後面の身体輪郭の中に肩峰、右膝前面に膝蓋骨、下腿前方の脛骨に前縁、右足側面の後方踵に踵骨。各指示線は体表点ではなく対応する骨の部分へ届く。
上段は左肩後面。異なる部位の拡大模型で、身体外側の柔らかい輪郭とその中の骨を対応させる。肩の外側上方の肩峰、膝前面の膝蓋骨、下腿前面の脛骨前縁、踵の踵骨を直接指す。骨の位置の学習であり、触診の判定や施術場所の決定を示すものではない。

用語を確かめる

軸骨格
頭蓋・脊柱・肋骨や胸骨などの骨格のまとまり。
四肢骨格
上肢・下肢と、それらを体幹へつなぐ帯の骨のまとまり。
上肢帯
鎖骨と肩甲骨からなる、上肢と体幹の間の骨のまとまり。
下肢帯
左右の寛骨からなる、下肢と体幹の間の骨のまとまり。
自由上肢・自由下肢
それぞれの帯を除いた上肢・下肢の部分。
脳頭蓋
主に脳を囲む頭蓋の骨のまとまり。
顔面頭蓋
主に顔面の骨格をつくる頭蓋の骨のまとまり。
前頭骨
額から頭蓋の前方に位置する骨。
頭頂骨
頭蓋の左右の上方に位置する骨。
側頭骨
頭蓋の左右の側方に位置し、下顎骨とも関節する骨。
後頭骨
頭蓋の後方から下方に位置する骨。
上顎骨・下顎骨
それぞれ上の顎・下の顎をつくる骨。
縫合
頭蓋骨どうしの多くの接続にみられる、線維性組織による連結。
顎関節
下顎骨と側頭骨がつくる滑膜関節。
頸椎・胸椎・腰椎
脊柱の頭側から順に続く主要な椎骨の領域。典型的には7個・12個・5個。
仙骨
通常は5個の仙椎が癒合した骨。左右の寛骨と関節する。
尾骨
脊柱の仙骨より尾側にある小さな椎骨のまとまり。数や癒合には個人差がある。
椎体
典型的な椎骨の前方にある主要な部分。
椎弓
典型的な椎骨で椎体の後方に続き、椎孔を囲む部分。
椎孔
典型的な椎骨で椎体と椎弓に囲まれる穴。
脊柱管
脊柱で椎孔が連なってつくる空間。内部に脊髄が位置する。
椎間板
多くの隣り合う椎体の間にある構造。外周の線維輪と中心の髄核を区別する。
胸郭
胸椎・肋骨・胸骨と肋軟骨などがつくる胸部の枠組み。胸腔という内部空間とは別。
肋軟骨
肋骨の前方の連結に関わる硝子軟骨。
鎖骨
内側で胸骨、外側で肩甲骨と関節する上肢帯の骨。
肩甲骨
胸郭背側の三角形の扁平な骨。鎖骨と上腕骨に関節する。
上腕骨
肩から肘までの上腕にある骨。
橈骨
正位の前腕で親指側、外側に位置する骨。
尺骨
正位の前腕で小指側、内側に位置する骨。
橈骨手根関節
橈骨などの前腕側と近位の手根骨がつくる手首の関節。橈骨は舟状骨・月状骨に直接接する。
舟状骨・月状骨
手首側の近位列にあり、橈骨に直接接する手根骨。
関節円板
関節の接続に関わる板状の組織。手首では尺骨と手根骨の間にある。骨とは区別する。
手根骨
手の根元側に集まる8個の骨。
中手骨
手のひらをつくる5個の骨。親指側が第1中手骨。
指骨
手の指をつくる骨。親指は2個、他の各指は3個。
大菱形骨
親指の第1中手骨と関節する手根骨。
第1手根中手関節
親指の根元で大菱形骨と第1中手骨がつくる関節。
寛骨
成人では腸骨・坐骨・恥骨がまとまった左右一対の骨。
腸骨・坐骨・恥骨
一つの寛骨の上方・後下方・前下方に対応する主要な構成部分。
寛骨臼
寛骨の外側にある、大腿骨頭の関節相手となるくぼみ。
骨盤輪
左右の寛骨と後方の仙骨が、前方の恥骨結合などの接続とともにつくる骨性の輪。
恥骨結合
前方で左右の恥骨をつなぐ軟骨性の連結。
大腿骨
股関節から膝までの大腿にある骨。
脛骨
正位の下腿で内側に位置する骨。
腓骨
正位の下腿で外側に位置する骨。脛骨に関節し、大腿骨へ直接は関節しない。
膝蓋骨
膝の前方にあり、大腿骨と関節する骨。
距腿関節
脛骨・腓骨の遠位部と距骨がつくる、足首の主な関節。
距骨
足根骨の一つ。踵骨の上方に位置し、下腿の骨と距腿関節をつくる。
踵骨
足根骨の一つで、踵をつくる骨。
足根骨
距骨や踵骨など、足の根元側の骨のまとまり。
中足骨
足根骨と趾骨の間に位置する足の骨のまとまり。
趾骨
足の指をつくる骨。
骨質
骨の主部をつくる、骨基質と細胞などを含む組織。骨髄とは別。
骨膜
関節軟骨で覆われる面などを除き、骨の表面を覆う組織。骨添加などにも関わる。
骨髄
骨の内部の空間にある組織。骨梁そのものとは別で、赤色骨髄では造血が行われる。
緻密骨
骨質が密にまとまる骨の構造。
海綿骨
骨質からなる骨梁が網状に組み合わさり、その間に空間を持つ骨の構造。
骨梁
海綿骨で網状に組み合わさる、骨質からなる梁。
骨基質
骨の細胞の周囲にある細胞外基質。有機成分と無機成分を含む。
コラーゲン
骨基質などに含まれる代表的なタンパク質性の材料。骨では引っ張る力への抵抗などに関わる。
ハイドロキシアパタイト
カルシウムとリンを含む、骨の代表的な無機成分。
骨芽細胞
骨基質をつくり石灰化に関わる、骨形成側の細胞。
破骨細胞
骨の基質を吸収する側の細胞。
骨細胞
骨基質内に位置し、基質の維持や力学的な情報の感知などに関わる細胞。
骨形成・骨吸収
それぞれ骨の基質を新しくつくる過程・吸収する過程。
リモデリング
骨吸収と骨形成を繰り返す骨の更新。成人でも続く。
骨端・骨幹
それぞれ長骨の端の部分・長く続く中央の部分。
成長板
成長期の長骨で長さの成長に関わる軟骨板。骨端軟骨板とも呼ぶ。関節面の軟骨とは別。
骨添加
骨の表面などに新しい骨を付け加えること。骨膜側の添加は幅の成長に関わる。
硝子軟骨
正常成人の大腿骨の膝関節面や肋軟骨にみられる代表的な軟骨型。
弾性軟骨
弾性線維が豊富で、耳介などにみられる軟骨型。
線維軟骨
太いコラーゲン線維の束が目立ち、椎間板の線維輪などにみられる軟骨型。
線維輪・髄核
それぞれ椎間板の外周・中心の構造。同一の軟骨構造にはまとめない。
関節軟骨
骨の関節面を覆い、衝撃緩和や滑らかな運動に関わる軟骨。
線維性関節
骨の間を線維性組織がつなぐ構造による分類。縫合などが代表例。
軟骨性関節
骨の間の軟骨性の連結による構造分類。恥骨結合などが代表例。
滑膜関節
関節腔を持ち、関節包に囲まれる構造による分類。
関節腔
滑膜関節で骨の関節面の間にある空間。
関節包
滑膜関節を囲む組織。外側の線維膜と内側の滑膜を分ける。
線維膜
関節包の外側の丈夫な層。
滑膜
関節包の内面を覆う組織。関節軟骨表面まで覆うものではない。
滑液
関節腔の液体。潤滑や関節軟骨への物質供給に関わる。
靱帯
骨と骨をつなぎ、関節部を補強する組織。
腱
骨格筋と骨をつなぎ、筋の力を骨へ伝える結合組織。
平面関節
比較的平らな関節面の間の滑りが主となる滑膜関節の型。
球関節
球状の骨頭とくぼみが対応し、多方向の運動に関わる滑膜関節の型。肩甲骨と上腕骨の肩関節・股関節が代表例。
蝶番関節
主に一つの軸の回りの屈伸に関わる滑膜関節の型。肘の上腕骨と尺骨の接続が代表例。
車軸関節
主に長軸の回りの回旋に関わる滑膜関節の型。近位橈尺関節が代表例。
近位橈尺関節
肘の近くで橈骨と尺骨がつくり、前腕の回旋に関わる関節。
楕円関節
楕円形の関節面が対応する滑膜関節の型。橈骨手根関節が代表例。
鞍関節
鞍状の凹凸の関節面が対応する滑膜関節の型。親指の第1手根中手関節が代表例。
屈曲・伸展
肘や膝などでは、関節で骨のなす角度を小さくする動き・大きくする動き。
外転・内転
肩や股の四肢では、身体の正中面から離れる動き・近づく動き。
内旋・外旋
上腕や大腿などの長軸の回りで、前面が内側へ向く回旋・外側へ向く回旋。
分回し
屈伸や内外転などが連なり、四肢の先が円を描くような動き。純粋な長軸回旋とは別。
回内・回外
前腕では橈骨が尺骨の前を交差する代表関係へ向かう動き・ほぼ平行な関係へ向かう動き。
背屈・底屈
足首では足の甲を下腿の前面へ近づける動き・足の甲を下腿の前面から離す方向の動き。
内反・外反
足底が内側へ向く動き・外側へ向く動き。足部の複数の関節が関わる。
張力
引く力。筋の張力は腱を通って骨へ伝わる。
拮抗
一つの動作について反対向きの作用を持つ関係。両側が常に交互に完全停止するという意味ではない。
上腕二頭筋
上腕前面側にあり、肘の屈曲に関わる代表的な筋。
上腕三頭筋
上腕後面側にあり、肘の伸展に関わる筋。
上腕筋
肘の屈曲に関わる筋の一つ。屈曲筋を上腕二頭筋だけに限定しない。
大腿四頭筋
大腿前面にある、膝の伸展に関わる筋群。
大殿筋
殿部にある、股関節の伸展に関わる筋。
関節可動域
関節が動く角度の範囲。ROMとも呼び、筋力とは別。
肩峰
肩甲骨の一部で、肩の外側上方の骨の目印となる部分。
脛骨前縁
下腿前方に位置する脛骨の主要な縁。