骨盤底・会陰の筋

本文の目次

  1. 筋の付着から骨盤底をたどる
  2. 開口を含む床と、その下の会陰
  3. 恥骨・腱弓・坐骨棘を目印にする
  4. 恥骨直腸筋:直腸後方のつり帯
  5. 恥骨尾骨筋:前方から通路の近くへ
  6. 腸骨尾骨筋:薄く広がる後外側
  7. 尾骨筋:後方の支持を足す
  8. 浅い会陰:球と脚と会陰体
  9. 球海綿体筋:球の表面を包む
  10. 坐骨海綿体筋:外側の脚を覆う
  11. 浅会陰横筋:中心を横から安定させる
  12. 深会陰横筋:一律の板を仮定しない
  13. 男性型の外尿道括約筋
  14. 女性型では尿道周囲の成分を分ける
  15. 尿道圧迫筋:前方を渡る
  16. 尿道腟括約筋:二つの管の周囲へ
  17. 外肛門括約筋:肛門管の横紋筋
  18. 皮下部・浅部・深部
  19. 内肛門括約筋は平滑筋
  20. 骨盤側から来る枝と、会陰へ来る枝
  21. 浅深と男女を重ねず比較する
  22. 支持と通路の開閉は協調する

1. 筋の付着から骨盤底をたどる

骨盤内の臓器を下から支える構造については、既に骨盤隔膜・会陰膜・筋膜の違いを学びました。ここでは、恥骨、坐骨棘、尾骨などを目印に、それぞれの筋がどこをつなぎ、どの通路へ力を伝えるかをたどります。左右の対応する筋は同じ名前の型として読みます。

2. 開口を含む床と、その下の会陰

骨盤隔膜は肛門挙筋のまとまりと尾骨筋からなります。前方には尿道などの通る開きがあり、後方には肛門管が通ります。会陰は骨盤の出口側の領域で、前の尿生殖三角と後ろの肛門三角に分かれます。骨盤底に穴があることと、その管を筋が締めることは別の関係です。

3. 恥骨・腱弓・坐骨棘を目印にする

恥骨は前方、尾骨は後方です。坐骨棘は骨盤の側面の尖った目印で、座面側の坐骨結節とは別です。内閉鎖筋を覆う筋膜には、肛門挙筋の起こる線である肛門挙筋腱弓があります。会陰体は尿生殖側と肛門側の間で複数の筋が合わさる結合組織のまとまりです。靱帯・筋膜・腱弓は骨格筋そのものではありません。

4. 恥骨直腸筋:直腸後方のつり帯

恥骨直腸筋は左右の恥骨後面から後方へ走り、直腸と肛門管の移行部の後ろで反対側の線維と合わさります。このU字のつり帯が前方へ引き、直腸と肛門管の間の曲がりである肛門直腸角を保つのを助けます。筋の張りが弱まる弛緩は、角を開く協調に関わります。肛門挙筋の内側・下方に位置し、主な運動線維は仙骨前枝由来の肛門挙筋神経S3–S4です。会陰へ向かう陰部神経側の寄与も記載されますが、全枝を一律に固定しません。

5. 恥骨尾骨筋:前方から通路の近くへ

恥骨尾骨筋は恥骨後面と腱弓前方から、後内方へ広がります。会陰体、臓器周囲、肛門尾骨縫線、尾骨へ続く線維があり、部によって停止が異なります。肛門尾骨縫線は肛門後方から尾骨側へ続く結合組織の継ぎ目の目印です。骨盤底を引き上げ、尿道・腟・直腸などの周囲を支えます。主な運動線維は肛門挙筋神経S3–S4です。

6. 腸骨尾骨筋:薄く広がる後外側

腸骨尾骨筋は腱弓の後方と坐骨棘付近から、肛門尾骨縫線と尾骨へ内後方に広がります。薄い床として臓器を支え、骨盤底を引き上げます。主な運動線維は肛門挙筋神経S3–S4です。恥骨直腸筋・恥骨尾骨筋・腸骨尾骨筋の三筋をまとめた名称が肛門挙筋です。

7. 尾骨筋:後方の支持を足す

尾骨筋は坐骨棘と仙棘靱帯付近から、下部仙骨と尾骨の側縁へ走ります。仙棘靱帯は仙骨・尾骨側と坐骨棘をつなぐ靱帯で、筋はその骨盤側に近接します。骨盤底後方を支え、尾骨を前へ引きます。運動線維は主に仙骨神経前枝S4–S5です。骨盤隔膜を構成しますが、肛門挙筋の三成員とは分けます。

直腸後方のつり帯と、床の成員

上段は骨盤側からの前後をそろえた付着対応。恥骨直腸筋は直腸後方をU字に回り、前方へ引く。下段は肛門挙筋の三成員と尾骨筋の区別。全臓器や全筋束の実寸配置ではない。
上段は骨盤側からの前後をそろえた付着対応。恥骨直腸筋は直腸後方をU字に回り、前方へ引く。下段は肛門挙筋の三成員と尾骨筋の区別。全臓器や全筋束の実寸配置ではない。

8. 浅い会陰:球と脚と会陰体

浅い会陰の尿生殖側では、球海綿体筋が球を、坐骨海綿体筋が脚を覆い、浅会陰横筋が会陰体へ横に走ります。勃起組織は血液で膨らむ組織で、球と脚はその根元側の部位です。男性型の尿道球と左右の陰茎脚、女性型の左右の前庭球と陰核脚を同じ一個の塊にしません。

9. 球海綿体筋:球の表面を包む

球海綿体筋は会陰体から、男性型では正中縫線も目印として起こり、尿道球や尿道海綿体の筋膜、会陰膜付近へ続きます。球などを圧迫して尿道内に残った内容を送り出すのを助け、充血保持にも関わります。女性型では会陰体から前庭球・陰核側へ続き、前庭球や腟口周囲を圧迫します。腟の内腔にある筋ではありません。運動線維は陰部神経の会陰神経筋枝、主にS2–S4です。

10. 坐骨海綿体筋:外側の脚を覆う

坐骨海綿体筋は坐骨結節と坐骨恥骨枝から、陰茎脚または陰核脚を覆う白膜・筋膜へ付きます。坐骨恥骨枝は坐骨側と恥骨側が続く骨の枝、白膜は勃起組織を囲む丈夫な結合組織です。球海綿体筋より外側で脚を圧迫し、静脈への流出を抑えて充血の保持を助けます。運動線維は陰部神経の会陰神経筋枝、主にS2–S4です。

11. 浅会陰横筋:中心を横から安定させる

浅会陰横筋は坐骨結節の内側付近から、浅い会陰の後縁近くを内側へ走り、会陰体と反対側の線維へつながります。会陰体を側方から安定させる働きで、尿道や肛門を直接一周する筋ではありません。運動線維は陰部神経の会陰神経筋枝、主にS2–S4です。太さや存在、左右の形には変異があります。

12. 深会陰横筋:一律の板を仮定しない

深会陰横筋は、代表的には坐骨恥骨枝内側付近から会陰体・正中の反対側線維へ横走し、深い会陰の支持を助けます。会陰膜より深い側の成分として記載され、男性型でよく示される代表像です。女性型を同じ連続筋板に置き換えず、筋束のまとまりや存在の変異を保ちます。運動線維は陰部神経の会陰神経筋枝、主にS2–S4です。

13. 男性型の外尿道括約筋

外尿道括約筋は尿道周囲の横紋筋です。男性型では前立腺下部から短い中間部尿道付近へ広がります。尿道周囲の結合組織や会陰膜側への付着から、尿道周囲の線維と正中側の組織へつながり、形は高さによって違います。尿道を圧迫し、閉鎖を保つのを助けます。運動線維は陰部神経の会陰神経筋枝、主にS2–S4です。排尿にはこの筋の弛緩も関わります。

14. 女性型では尿道周囲の成分を分ける

女性型の外尿道括約筋複合体には、尿道周囲の括約成分、尿道前方を渡る尿道圧迫筋、尿道と腟を共に囲む尿道腟括約筋があります。尿道周囲の結合組織や会陰膜側から線維が連なり、同じ位置に同じ輪が三つ重なる図ではありません。いずれも尿道の閉鎖を助け、陰部神経の会陰神経の筋枝から運動線維を受けます。

15. 尿道圧迫筋:前方を渡る

尿道圧迫筋は女性型で、坐骨恥骨枝付近の会陰膜側の組織から尿道の前方を渡り、反対側の線維と合わさります。尿道を後方側へ圧迫して閉鎖を助けます。運動線維は陰部神経の会陰神経筋枝、主にS2–S4です。尿道だけを一周する成分でも、腟だけを閉じる成分でもありません。

16. 尿道腟括約筋:二つの管の周囲へ

尿道腟括約筋は女性型で、会陰体など尿道・腟周囲の結合組織から、二つの管を共に囲む線維へ続きます。尿道・腟の周囲を締め、尿道閉鎖を助けます。運動線維は陰部神経の会陰神経筋枝、主にS2–S4です。尿道圧迫筋の前方を横切る走り方と区別します。

尿道周囲、型と走り方を分ける

上段は男性型の外尿道括約筋の高さによる広がり。下二段は女性型の尿道前方を渡る成分と二つの管を囲む成分。三つの輪が同じ面で重なる図ではなく、個別の付着・走行の対応。
上段は男性型の外尿道括約筋の高さによる広がり。下二段は女性型の尿道前方を渡る成分と二つの管を囲む成分。三つの輪が同じ面で重なる図ではなく、個別の付着・走行の対応。

17. 外肛門括約筋:肛門管の横紋筋

外肛門括約筋は肛門管を取り巻く横紋筋です。前方の会陰体、後方の肛門尾骨靱帯などへつながりますが、層によって付着が違い、すべての線維が同じ骨から起こるわけではありません。周囲の線維や反対側と連絡し、肛門管を締めて閉鎖を保つのを助けます。主に陰部神経の下直腸神経S2–S4と仙骨側の枝が運動に関わり、各枝の寄与には変異があります。

18. 皮下部・浅部・深部

外肛門括約筋の皮下部は出口近くの皮下、浅部はその深い側、深部はさらに上方にあります。浅部の前後の付着と、深部の恥骨直腸筋との連続を分けて読みます。三つの部は同じ筋の中の位置の違いです。肛門後方の縫線や靱帯の呼称が違っても、それぞれの層をすべて同じ一本の付着にまとめません。

19. 内肛門括約筋は平滑筋

内肛門括約筋は肛門管の内側で、腸管壁の輪走平滑筋が厚くなった部分です。骨から起こって骨へ止まる筋ではなく、管壁と連続する輪走線維として読みます。静止時の閉鎖圧に寄与し、局所の神経と自律性の調節を受けます。外側の外肛門括約筋の横紋筋、さらに後方の恥骨直腸筋のつり帯とは組織と位置が違います。

20. 骨盤側から来る枝と、会陰へ来る枝

肛門挙筋の主な運動線維は骨盤側からの肛門挙筋神経S3–S4で、尾骨筋は主にS4–S5です。浅い会陰や尿道周囲の横紋筋には、主にS2–S4の陰部神経から会陰神経の筋枝が来ます。外肛門括約筋では下直腸神経が主な枝です。同じ仙骨の番号があっても一本の同じ末梢枝とは限りません。小枝の寄与には変異があり、運動枝と近くを通る感覚枝を混ぜません。

起こりの線と、運動枝の通り先

囲みで付着、骨盤側の運動枝、会陰側の末梢枝を分ける。S3–S4などは主な代表的な由来で全小枝や個体差を固定しない。各筋の作用と運動支配を、近くを走る感覚枝へ置き換えない。
囲みで付着、骨盤側の運動枝、会陰側の末梢枝を分ける。S3–S4などは主な代表的な由来で全小枝や個体差を固定しない。各筋の作用と運動支配を、近くを走る感覚枝へ置き換えない。

肛門管の内外と、横紋筋の三部

上段は管を横切る模式で内側の平滑筋と外側の横紋筋を分ける。下段は外肛門括約筋の皮下・浅・深の高さと付着の違い。筋全長が同じ二重円になる、あるいは三部が独立三本体であるという意味ではない。
上段は管を横切る模式で内側の平滑筋と外側の横紋筋を分ける。下段は外肛門括約筋の皮下・浅・深の高さと付着の違い。筋全長が同じ二重円になる、あるいは三部が独立三本体であるという意味ではない。

21. 浅深と男女を重ねず比較する

球海綿体筋と坐骨海綿体筋の骨側の支えや覆う対象を、男性型と女性型で対応させます。女性型の尿道圧迫筋と尿道腟括約筋は、尿道周囲の複合体の違う走り方です。浅会陰横筋、深会陰横筋、肛門挙筋の床を同じ横の板として描くと深さと付着を失います。骨盤側と皮膚側のどちらから見るかをそろえて比べましょう。

球・脚・中心、覆う対象を比べる

上段は男性型の球、左右の脚、会陰体の対応。横の帯は浅会陰横筋の会陰体への連絡。下段は女性型の対応する対象を別囲みで比較する。左右は一つの名前の型を倍数化しない。
上段は男性型の球、左右の脚、会陰体の対応。横の帯は浅会陰横筋の会陰体への連絡。下段は女性型の対応する対象を別囲みで比較する。左右は一つの名前の型を倍数化しない。

床・深い筋・膜・浅い筋の深さ

上下は骨盤側と皮膚側の深さの対応で、臓器の断面を精密に再現する図ではない。前の尿生殖側を読む図で、肛門三角まで会陰膜が同じ板で覆う意味ではない。深会陰横筋の変異と男女型を一律に固定しない。
上下は骨盤側と皮膚側の深さの対応で、臓器の断面を精密に再現する図ではない。前の尿生殖側を読む図で、肛門三角まで会陰膜が同じ板で覆う意味ではない。深会陰横筋の変異と男女型を一律に固定しない。

22. 支持と通路の開閉は協調する

骨盤底を支える筋、尿道を締める横紋筋、肛門管を囲む横紋筋と平滑筋は、近接しながら異なる力を伝えます。支える作用と、管を締めたり弛緩したりする作用を付着から読み分けると、正常の構造がつながります。男女の型や個体差を残し、一筋の説明だけから全排尿・排便の働きを決めません。

用語を確かめる

骨盤隔膜
肛門挙筋のまとまりと尾骨筋などがつくる筋性の骨盤底。
会陰
骨盤の出口側の領域。
尿生殖三角
会陰の前方の領域。
肛門三角
会陰の後方で肛門を含む領域。
肛門管
直腸から肛門の出口へ続く短い通路。
恥骨
骨盤の前方の骨。
尾骨
仙骨の下へ続く小さな骨。
坐骨棘
骨盤の側面の尖った骨の目印。
坐骨結節
坐骨の下方で座面側にある骨の目印。
肛門挙筋腱弓
内閉鎖筋筋膜にある肛門挙筋の起こる線。
会陰体
会陰中央で複数の筋が合わさる結合組織。
筋膜
筋を覆い、周囲へ続く結合組織。
肛門直腸角
直腸と肛門管の移行部の曲がり。
仙骨前枝
仙骨部脊髄神経の前側へ出る枝。
肛門挙筋神経
主に仙骨前枝S3–S4から骨盤側で肛門挙筋へ来る運動の枝。
肛門尾骨縫線
肛門後方から尾骨側へ続く結合組織の継ぎ目。
仙棘靱帯
仙骨・尾骨側と坐骨棘をつなぐ靱帯。
勃起組織
血液で膨らむ組織。
尿道球
男性型の尿道海綿体の根元の膨らみ。
前庭球
女性型で腟口の左右にある勃起組織の膨らみ。
陰茎脚
男性型の陰茎海綿体の根元で骨に沿う部分。
陰核脚
女性型の陰核海綿体の根元で骨に沿う部分。
陰部神経
主にS2–S4から会陰へ向かう体性神経。
会陰神経
陰部神経の、会陰の筋や感覚へ向かう枝。
会陰膜
尿生殖側で浅い側と深い側を分ける結合組織の膜。
坐骨恥骨枝
坐骨の枝と恥骨の枝が続く骨の部分。
白膜
勃起組織などを囲む丈夫な結合組織。
外尿道括約筋複合体
尿道周囲の横紋筋の成分のまとまり。特に女性型で走行が異なる成分を区別する。
肛門尾骨靱帯
肛門後方から尾骨側への結合組織性の連絡の呼称。
下直腸神経
主に陰部神経から肛門側へ向かう枝。
横紋筋
横紋のある骨格筋。外括約筋などの筋の組織。
平滑筋
横紋を持たず、腸管壁などにある筋。
輪走
管の周りを取り囲む方向の走行。
弛緩
筋の収縮による張力が弱まること。