タンパク質のリン酸化と働きの調節

本文の目次

  1. 同じタンパク質の状態を変える
  2. ATPからリン酸基を付ける
  3. 水を使ってリン酸基を外す
  4. 活性の向きは対象ごとに追う

1. 同じタンパク質の状態を変える

タンパク質は、アミノ酸がつながり、立体構造をもつ分子です。特定の部位にリン酸基を付ける反応をリン酸化、そのリン酸基を外す反応を脱リン酸化といいます。ここで扱うのは、同じタンパク質の特定部位を変える反応です。タンパク質全体を分解したり、新しく作り直したりすることとは分けます。

2. ATPからリン酸基を付ける

タンパク質へのリン酸基の付加を触媒する酵素が、プロテインキナーゼです。酵素は化学反応を進みやすくする物質です。代表的な付加では、通常ATPからリン酸基がタンパク質の特定部位へ移り、ATPはADPになります。ATPはアデノシン三リン酸、ADPはアデノシン二リン酸の略称です。付加が起きたことと、対象タンパク質の働きが強まったことは同じ意味ではありません。

3. 水を使ってリン酸基を外す

タンパク質のリン酸基を除く反応を触媒する酵素が、プロテインホスファターゼです。水を使って結合を切る加水分解により、指定部位のリン酸基が外れ、無機リン酸が生じます。付いたリン酸をそのままATPへ戻す反応ではありません。脱リン酸化でリン酸の付いていない状態に戻ることは、全てのタンパク質が不活性になることとも違います。

4. 活性の向きは対象ごとに追う

活性とは、タンパク質が対象の働きをする程度や状態です。リン酸化が活性を上げるか下げるかは、対象や部位によって異なります。比較のための模型で、Aはリン酸化前に活性があり、付加すると失います。Bは前に活性がなく、付加すると得ます。両方へ付加した後、Aだけの指定リン酸を完全に除けば、Aは活性のある状態へ戻り、Bも付加されたまま活性があります。この模型では量や他の部位は変わりません。タンパク質の量、リン酸化状態、実際の活性を別々に追い、Aの規則をBへ一律に当てはめないようにします。

リン酸の付加と除去、対象ごとの活性

上段にプロテインキナーゼの付加。タンパク質とATPから、リン酸付きタンパク質とADPへ下向き矢印。中央段にプロテインホスファターゼの除去。リン酸付きタンパク質と水から、タンパク質とリン酸へ下向き矢印。下段表の初めはA活性あり/Bなし、両方付加後Aなし/Bあり、Aだけ除去後は両方活性あり。
上段は通常ATPからタンパク質の特定部位へリン酸基を移す付加、中央段は水を使ってリン酸基を除く反応です。「リン酸付き」は同じタンパク質の指定部位にリン酸基が付いた状態を表します。下段は本文のA/B模型で、Aは付加で活性を失い、Bは得るという規則です。両方に付加後、Aだけを完全に除去し、量や他の部位は変えません。二酵素の反応と、標的ごとの活性の方向を分けて追います。分子全体の構造、反応速度や全シグナル経路は示していません。

用語を確かめる

タンパク質
アミノ酸がつながり、立体構造をもつ分子。
リン酸基
リン酸に由来する原子のまとまり。ここではタンパク質の特定部位へ付加・除去される部分。
リン酸化
ここでは、タンパク質の特定部位へリン酸基を付ける反応。必ず活性化という意味ではない。
脱リン酸化
ここでは、タンパク質に付いたリン酸基を除く反応。必ず失活という意味ではない。
プロテインキナーゼ
タンパク質へのリン酸基の付加を触媒する酵素。代表的には通常ATPから移す。
プロテインホスファターゼ
タンパク質に付いたリン酸基を加水分解で除く酵素。
ATP
アデノシン三リン酸。ここではタンパク質へ移すリン酸基の供与側となる。
ADP
アデノシン二リン酸。ここで扱うATPからのリン酸基移動の後に生じる。
無機リン酸
タンパク質などの有機分子に結合したリン酸基と分けて追う、切り離されたリン酸。
加水分解
水を使って結合を切る反応。ここではタンパク質の指定リン酸基を外す。
活性
タンパク質が対象の働きをする程度や状態。リン酸化状態や量と別に確認する。
可逆的な状態変更
ここでは、付加と除去によってリン酸化状態を戻せること。単一反応の単純な逆向きやATPへの直接再生を意味しない。