民法の基本原則と人の能力

法令基準日:2026年4月1日。適用時点は限定的に確認しています。

本文の目次

  1. 私権の行使を支える三つの原則
  2. 民法を解釈するときの基準
  3. 私権の享有は出生に始まる
  4. 外国人の私権享有と留保
  5. 意思表示をした時の意思能力
  6. 成年年齢と能力の問いを分ける
  7. 三つの観点を別々に確かめる

1. 私権の行使を支える三つの原則

民法1条は、私権が公共の福祉に適合すること、権利の行使と義務の履行を信義に従い誠実に行うこと、権利の濫用を許さないことを定めます。権利を持つことと、その権利をどのように行使してよいかを分けて読みます。信義誠実は義務の履行にも求められます。具体的な行為が濫用や信義則違反になるかは、関係する条文と事情を読む必要があります。

2. 民法を解釈するときの基準

民法2条は、個人の尊厳と両性の本質的平等を旨としてこの法律を解釈することを定めます。1条の基本原則が私権や権利行使・義務履行を対象とするのに対し、2条は民法の解釈の基準を示します。両性の本質的平等を、民法の解釈から切り離すことはできません。

3. 私権の享有は出生に始まる

人が私権を享有する出発点は、原則として出生です。ここで扱う権利能力は、私権の主体になれるという観点です。出生した子が私権を享有することと、その子が自分で法律行為を行う際の能力は、別の問いになります。胎児に関する個別の特則を、この原則だけで否定することもできません。

4. 外国人の私権享有と留保

外国人も私権を享有しますが、法令又は条約の規定により禁止される場合は除かれます。外国人をすべて私権の享有から排除する説明も、外国人への個別の禁止は一切ないとする説明も、条文の条件を読み落としています。特定の私権について禁止があるかは、その関係に適用される法令や条約を確かめます。

5. 意思表示をした時の意思能力

法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は無効です。見る時点は、その意思表示をした時です。成年か未成年かという年齢区分とは別に読みます。2020年4月1日から施行された3条の2は、施行日前にした意思表示には適用されないという経過措置があります。古い意思表示に、そのまま当てはめることはできません。

6. 成年年齢と能力の問いを分ける

2022年4月1日から、成年年齢は18歳です。この変更は、過去のすべての時点の成年年齢を18歳に置き換えるものではありません。現在18歳以上であっても、個別の意思表示時に意思能力を欠いていれば、その法律行為は無効です。逆に、17歳で意思能力がある人も、意思能力があるというだけで成年者になるわけではありません。

7. 三つの観点を別々に確かめる

私権を享有できるか、年齢上成年か、意思表示時に意思能力があるかを、別々に確認します。出生した子は原則として私権を享有しますが、成年者ではありません。成年者も、意思表示時の意思能力について別の確認が必要です。未成年者の法律行為に同意が必要か、同意を欠く行為を取り消せるかという行為能力の規律は、さらに条件を分けて学びます。

対象と基準を分けて読む

対象と基準を分けて読む
対象と基準を分けて読む

能力の三つの観点

能力の三つの観点
能力の三つの観点