前方肩関節脱臼に伴う腋窩神経傷害の可能性

柔道整復理論 脱臼病型と合併神経傷害の病態

本文の目次

  1. 前方脱臼と、合併する可能性のある損傷
  2. 既存の神経症状の評価に、具体名を加える
  3. 合併し得ることと、患者での確認を分ける

1. 前方脱臼と、合併する可能性のある損傷

MSD Manual Professional Editionは、前方肩関節脱臼に合併することがある損傷の一つとして、腋窩神経傷害を挙げている。脱臼した関節の情報と、周囲の神経に傷害があるかという情報を分けて読む。 この対応は、全ての前方肩関節脱臼で腋窩神経が必ず傷害されるという意味ではない。脱臼に伴い得る具体的な神経傷害として、病型と神経名を結び付ける。

2. 既存の神経症状の評価に、具体名を加える

既存の肩脱臼教材では、痛み、感覚の鈍さ、力の入りにくさを別の情報として扱った。それは神経に関わる変化を見落とさないための評価の観点である。今回加えるのは、前方肩関節脱臼に合併し得る神経傷害の具体名として、腋窩神経を対応させる知識である。 Bankart病変やSLAP病変で扱った関節唇の損傷部位、腱板断裂で扱った腱板の構造とは、確認する対象が異なる。同じ肩の外傷というだけで、関節唇、腱板、神経の傷害を一つの損傷名へまとめない。

3. 合併し得ることと、患者での確認を分ける

前方肩関節脱臼と腋窩神経傷害の対応を知っていても、脱臼という病名だけで、その患者に神経傷害があると確定できるわけではない。神経傷害の有無や状態については、患者ごとの評価情報と分けて扱う。 この章は合併損傷の対応を学ぶ範囲である。神経の正常な走行や筋支配とは学ぶ対象を分け、検査の手順、整復・固定の操作、治療方法や回復時期はここから導かない。

評価の観点と、具体的な合併神経名を合わせる

評価の観点と、具体的な合併神経名を合わせる
既存の肩脱臼教材とMSDの限定説明から作成した独自概念図。神経に関わる変化を分けて読む既存の評価の観点に、前方肩関節脱臼に合併し得る腋窩神経傷害の具体名を加える。線は二つの学習観点の対応を示し、全例の合併保証や処置の順序を示さない。