家族・社会権・財産権と義務

法令基準日:2026年4月1日。適用時点は限定的に確認しています。

本文の目次

  1. 生活の権利と、法律の定めをつなぐ
  2. 婚姻の原則と家族法の基準
  3. 生活を営む権利と国の向上努力
  4. 教育を受ける権利と、受けさせる義務
  5. 義務教育の無償という原則
  6. 勤労とその条件
  7. 勤労者の団体に関する権利
  8. 財産権の保障、内容、公共利用
  9. 納税と、主語・条件の確認

1. 生活の権利と、法律の定めをつなぐ

憲法は、家族の制度、生きるための生活、教育や勤労、財産、納税についても定めています。権利と義務を区別し、誰が何をするのか、法律が何を定めるのかを読むと、似た言葉を取り違えにくくなります。この章では条文の基本的な関係を確かめます。

2. 婚姻の原則と家族法の基準

24条1項は、婚姻が両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を持つことを基本として相互の協力により維持されなければならないと定めます。2項は、配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項について、法律が個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して制定されなければならないと定めます。婚姻についての憲法の原則と、婚姻・家族の法律を制定するときの基準を分けて読みます。現実の婚姻成立に必要な届出などの民法上の要件や、制度の合憲性の判断は別に学びます。

3. 生活を営む権利と国の向上努力

25条1項は、すべて国民が健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を持つと定めます。2項の主語は国で、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならないと定めます。国民の生活の権利と国の努力を、同じ主語の文として混ぜないようにしましょう。具体的な給付額や請求の条件は、この条文の文言だけで決まるものではありません。

4. 教育を受ける権利と、受けさせる義務

26条1項は、すべて国民が法律の定めるところにより、能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を持つと定めます。2項は、すべて国民が法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負うと定めます。自分が教育を受ける権利と、保護する子女に普通教育を受けさせる義務は、異なる役割です。子女を保護する国民も自身の教育を受ける権利を持ち、一人が両方の役割に当たることがあります。

5. 義務教育の無償という原則

26条2項の最後は、義務教育は無償とすると定めます。普通教育を受けさせる義務と、その義務教育についての無償の原則を対応させます。無償という一語から、学校生活に関わるすべての費用が当然に無償だと推論するのは早計です。具体的な費用の範囲は、法律や判例の学習で確かめます。

6. 勤労とその条件

27条1項は、すべて国民が勤労の権利を持ち、義務を負うと定めます。2項は、賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準を法律で定めるとします。法律で定める対象は、賃金だけではありません。3項は、児童を酷使してはならないと定めます。児童自身が同意すればこの禁止がなくなる、という例外の文言はありません。具体的な労働時間や賃金額は、続く労働法の学習で確認します。

7. 勤労者の団体に関する権利

28条は、勤労者の団結する権利、団体交渉その他の団体行動をする権利を保障します。団結だけを保障すれば団体交渉の保障を省いてよい、と読み替えないようにしましょう。条文の主語が勤労者であることにも注目します。個々の争議行為が適法か、公務員についてどのような制限があるかは、条文の語句を覚えた後に扱う課題です。

8. 財産権の保障、内容、公共利用

29条1項は、財産権を侵してはならないと定めます。2項は、財産権の内容が公共の福祉に適合するよう、法律で定めるとします。保障されることと、内容を法律で定めることを合わせて読みます。3項は、私有財産を正当な補償の下に公共のために用いることができると定めます。「公共のため」と「正当な補償の下」の二つを保ちましょう。補償さえあれば私的な便宜にもこの規定が当然に当てはまる、あるいは公共目的なら補償が不要だ、という読み方はいずれも条件を落としています。

9. 納税と、主語・条件の確認

30条は、国民が法律の定めるところにより、納税の義務を負うと定めます。具体的な税目や税額が30条だけで決まるわけではありません。教育では受ける権利と受けさせる義務、勤労では権利と義務、財産では保障と法定の内容・公共利用を組み合わせます。条文の主体、行為、法律の定め、目的や条件を残して説明できるか確かめてみましょう。

教育を受ける国民の権利と、その保護する子女に普通教育を受けさせる国民の義務を、二つの役割として比較する図。一人が両方に当たることもある

教育を受ける国民の権利と、その保護する子女に普通教育を受けさせる国民の義務を、二つの役割として比較する図。一人が両方に当たることもある
教育を受ける国民の権利と、その保護する子女に普通教育を受けさせる国民の義務を、二つの役割として比較する図。一人が両方に当たることもある