裁判と刑事手続の保障
法令基準日:2026年4月1日。適用時点は限定的に確認しています。
本文の目次
- 手続と裁判の保障を分ける
- 逮捕の令状と明記された例外
- 抑留・拘禁と理由、弁護人
- 捜索・押収の令状に必要なもの
- 拷問の禁止と刑事被告人の裁判
- 証人と弁護人の保障
- 38条の三つの保障
- 実行時の適法性、無罪と重ねた責任
- 刑事補償と賠償の規定
1. 手続と裁判の保障を分ける
31条は、何人も法律の定める手続によらなければ、生命若しくは自由を奪われ、又はその他の刑罰を科せられないと定めます。32条は、何人も裁判所で裁判を受ける権利を奪われないと定めます。手続の根拠を法律に求める保障と、裁判所で裁判を受ける権利を分けて読みます。32条の一文から、個々の訴えの要件や期間がすべて不要になると推論しないようにしましょう。
2. 逮捕の令状と明記された例外
33条は、現行犯として逮捕される場合を除き、権限を有する司法官憲が発し、理由となっている犯罪を明示する令状によらなければ、何人も逮捕されないと定めます。令状という書面の存在だけを覚えるのでなく、誰が発するかと、何を明示するかを併せて読みます。ここで例外として明記されているのは現行犯として逮捕される場合です。刑事訴訟法上の個々の逮捕の要件や、判例が扱う問題は続けて学びます。
3. 抑留・拘禁と理由、弁護人
34条の前段は、理由を直ちに告げられ、かつ直ちに弁護人に依頼する権利を与えられなければ、何人も抑留又は拘禁されないと定めます。二つの保障を一つで代わりに満たすことはできません。後段では、正当な理由がなければ何人も拘禁されず、要求があれば、その理由は直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならないと定めます。最初から必要な理由の告知と、要求があるときの公開法廷での理由の提示を区別します。
4. 捜索・押収の令状に必要なもの
35条1項は、住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利を定めます。33条の場合を除き、正当な理由に基づいて発せられ、かつ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ侵されないという保障です。2項は、捜索又は押収を、権限を有する司法官憲が発する各別の令状で行うと定めます。正当な理由、場所と物の明示、権限のある発出者を分け、一つの条件で別の条件を省かないようにしましょう。
5. 拷問の禁止と刑事被告人の裁判
36条は、公務員による拷問及び残虐な刑罰を絶対に禁じます。37条1項は、すべて刑事事件について、被告人が公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を持つと定めます。公開だけでなく、公平な裁判所と迅速さも文言に含まれます。刑罰の残虐性や裁判の遅延を具体的に評価する際には、事実と判例を別に確かめます。
6. 証人と弁護人の保障
37条2項は、刑事被告人がすべての証人に対して審問する機会を充分に与えられ、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を持つと定めます。3項では、刑事被告人がいかなる場合にも資格を有する弁護人を依頼でき、自らこれを依頼することができないときは国で附すると定めます。証人を求める費用についての2項と、弁護人を依頼できないときについての3項を混ぜないようにしましょう。具体的な手続の時期や国選制度の細目は別の学習です。
7. 38条の三つの保障
38条1項は、何人も自己に不利益な供述を強要されないと定めます。主語を刑事被告人だけに狭めてはいけません。2項は、強制、拷問若しくは脅迫による自白、又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白を、証拠とすることができないと定めます。3項は、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合、有罪とされ、又は刑罰を科せられないと定めます。強要をしないこと、対象となる自白を証拠としないこと、唯一の本人の自白だけで有罪や刑罰としないことは、異なる保障です。自白が任意であることだけで、唯一の証拠についての制限が消えるわけではありません。
8. 実行時の適法性、無罪と重ねた責任
39条の前段は、実行の時に適法であった行為又は既に無罪とされた行為について、何人も刑事上の責任を問われないと定めます。後段は、同一の犯罪について重ねて刑事上の責任を問われないと定めます。行為をした後に法律が変われば、その当時適法だった行為についても当然に刑事責任を問える、とは読めません。条文の刑事上の責任という対象を保ち、民事上の責任などにまで言い換えて広げないようにしましょう。
9. 刑事補償と賠償の規定
40条は、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたとき、何人も法律の定めるところにより国に補償を求めることができると定めます。17条の公務員の不法行為で損害を受けたときの賠償は、請求先が国又は公共団体です。40条の明文は、公務員の不法行為を条件として書いておらず、17条とは書かれた条件と請求先が異なります。この区別から二つの請求が現実に決して両立しないと結論づけたり、個別の法律の要件を省いて必ず請求が認められるとしたりするのではありません。まず、それぞれの条文の条件を保って説明しましょう。