ホルモンの産生と調節の入口

本文の目次

  1. 産生する場所と調節する場所
  2. 前段と後段を分ける
  3. 送出と受取り
  4. 変化を打ち消す調節
  5. 同じ臓器から、異なる分泌先へ
  6. 上位の指令と下位からの調節
  7. 作る酵素と、受け取る受容体

1. 産生する場所と調節する場所

概日リズムの調節に関わるメラトニンを分泌するのは脳内の松果体である。体内時計の中枢は視床下部の視交叉上核にある。松果体の酵素活性は体内時計と環境光の両方の調節を受け、メラトニン分泌には日内変動がある。全身のメラトニン産生の総量に対する割合は、ここから決めない。

2. 前段と後段を分ける

メラトニン合成の代表的経路では、セロトニンがNATによりN-アセチルセロトニンへ変わり、次にHIOMTを介してメラトニンへ進む。前段の生成物は後段の入力になるため、後段の酵素があっても、前段の材料と変換がそろうかを別に確かめる。

3. 送出と受取り

松果体で産生されたメラトニンは血液中へ分泌され、視交叉上核のMT1・MT2の受容体へ伝わる。産生する場所、血液中へ送る段階、受容体で受け取る段階を分けて整理する。ホルモンの産生場所と受容体は、調節の異なる部分を担う。

4. 変化を打ち消す調節

正常な甲状腺ホルモンの調節では、血中のホルモン濃度が増えるとTSHが低下し、甲状腺への刺激が抑えられる。濃度が下がる場合はTSHが上昇し、甲状腺への刺激が強まる。濃度の変化を打ち消す方向へ働く、負のフィードバックの例である。

5. 同じ臓器から、異なる分泌先へ

膵臓は膵液を膵管から十二指腸へ送り、血糖調節ホルモンを血液中へ分泌する。同じ臓器で作られていても、分泌先とそこまでの経路は異なる。分泌物を産生する段階と、経路を通って下流へ届く段階を分けて考える。

6. 上位の指令と下位からの調節

女性ホルモンの分泌は、視床下部・下垂体・卵巣のネットワークで調整される。視床下部で作られるGnRHは、下垂体からのゴナドトロピン産生を刺激する。LHとFSHは卵巣のホルモン分泌を調整する。上位から下位へ進む指令に対し、基本的には下位から上位へ負のフィードバックが働く。排卵前には、エストロゲン増加がゴナドトロピン分泌を高める正のフィードバックもある。

7. 作る酵素と、受け取る受容体

アロマターゼはテストステロンなどの男性ホルモンをエストロゲンへ転換する。核内エストロゲン受容体ERは、エストロゲンを受けて活性化し、標的遺伝子の調整領域へ結合して転写活性の調節に関わる。ホルモンを作る反応と、ホルモンを受け取って作用につなげる段階は分ける。この核内ERを介する経路を、エストロゲンのすべての作用と同一視しない。

用語を確かめる

松果体
脳内にあり、概日リズムの調節に関わるメラトニンを分泌する器官。体内時計の中枢である視交叉上核とは役割が異なる。
NAT
メラトニン合成経路で、セロトニンをN-アセチルセロトニンへ変換するN-アセチルトランスフェラーゼ。
HIOMT
メラトニン合成経路の後段で、N-アセチルセロトニンからメラトニンへの変換を担う酵素の略号。
メラトニン受容体
メラトニンを受け取るMT1・MT2の受容体。ホルモンを産生する器官とは別の役割を持つ。
甲状腺ホルモンの負のフィードバック
正常な調節で、血中甲状腺ホルモンの変化を打ち消す方向へTSHと甲状腺への刺激が変わること。
GnRH
視床下部で産生され、下垂体からのゴナドトロピン産生を刺激するゴナドトロピン放出ホルモン。
ゴナドトロピン
下垂体から産生され、卵巣のホルモン分泌の調整に関わるLH(黄体形成ホルモン)とFSH(卵胞刺激ホルモン)。
アロマターゼ
テストステロンなどの男性ホルモンをエストロゲンへ転換する酵素。
核内エストロゲン受容体ER
エストロゲンを受けて活性化し、標的遺伝子の調整領域への結合を介して転写活性の調節に関わる受容体。