細胞膜を介した移動
本文の目次
1. 膜が通すもの
濃度差があっても、その物質を通さない膜では、その物質の横断拡散は起こらない。膜の透過性と移動の駆動力を分けて考える。水を通す膜でも、同じ溶質を通すとは限らない。
2. 量と濃度
物質量濃度は物質量を溶液の体積で割って求める。総物質量の大きい側が、必ず高濃度とはいえない。中性溶質の受動拡散を比べるときは、両区画の濃度と透過性を確認する。
3. 動き続ける平衡
受動拡散の動的平衡では、両方向の分子移動がつり合う。正味の移動がゼロでも、個々の分子は動き続ける。標識した一部の分子の動きと、全体の正味移動は同じ量ではない。
4. 水の浸透
水を通し、解離しない中性溶質Xを通さない膜で、Xだけを含む希薄な水溶液を隔てる。温度と初めの圧力が同じなら、水は非透過性溶質の低濃度側から高濃度側へ正味として移る。水の初期方向と、通れないXの移動を分ける。圧力差などの条件が変われば、この説明だけで方向を決めない。
5. 膜タンパク質を使う受動輸送
促進拡散は膜タンパク質を利用するが、輸送される物質の電気化学的勾配に沿う受動輸送である。膜タンパク質を使うことと、能動的に物質を逆勾配へ運ぶことは別である。
6. 直接と間接のエネルギー
ATPの分解を直接利用する一次性能動輸送と、別の物質の勾配を利用する二次性能動輸送を区別する。二次性の輸送体が直接ATPを使わなくても、その駆動勾配の形成や維持に別の過程でエネルギーが使われることがある。
7. 担体の処理能力
担体は物質を結合し、形を変えて反対側へ運ぶ。機能する担体の数と一つの担体の処理速度が一定なら、輸送速度は飽和する。濃度だけを増やすことと、担体の数を増やすことは異なる操作である。
8. イオンには電位差も働く
イオンには電荷があるため、濃度差だけでなく電位差も駆動力に関わる。二つの成分が同じ方向か逆方向かを区別する。イオンの方向を中性溶質の濃度差の説明だけで決めない。
用語を確かめる
- 濃度
- 物質量濃度の場合、物質量を溶液の体積で割って求める量。
- 正味移動
- 二方向の移動を差し引いた移動。
- 動的平衡
- 分子が動き続けながら、両方向の移動がつり合う状態。
- 浸透
- 選択的な膜を通じた水の移動。
- 促進拡散
- 膜タンパク質を利用し、輸送される物質の電気化学的勾配に沿って進む受動輸送。
- 一次性能動輸送
- ATPの分解などのエネルギーを直接利用し、輸送される物質をその電気化学的勾配に逆らって運ぶ輸送。
- 二次性能動輸送
- 共輸送される別の物質の電気化学的勾配を駆動力にする能動輸送。
- 担体
- 輸送される物質を結合し、構造の変化を伴って膜の反対側へ運ぶ輸送タンパク質。
- 飽和
- 有限の輸送装置などの能力によって、速度が上限に近づく性質。
- 電気化学的勾配
- イオンの移動について、濃度差と電位差の影響を合わせて考えた駆動力。
- チャネル
- 開いた通路を通じて、特定のイオンなどを通す膜タンパク質。