骨格筋の収縮の基盤

本文の目次

  1. 三つの筋を分けて読む
  2. 一本の筋線維は一個の細胞
  3. 筋節の部品と境界
  4. 部品の長さと全体の短縮
  5. 神経から筋へ渡す場所
  6. 終板の局所変化と筋の活動電位
  7. 表面の電位変化を奥へ伝える
  8. Ca²⁺でも出発点が違う
  9. 新しい刺激が止まることと回収
  10. Ca²⁺が相互作用を許す
  11. 架橋は結合と離脱を繰り返す
  12. 弛緩にもATPが関わる
  13. 使うATPと補充するATP
  14. 電位の波と力の波
  15. 運動単位と参加する数
  16. 同じ参加者でも時間で力が重なる
  17. 力が出ても長さは一通りではない
  18. 全体が一定でも内部は別
  19. どの段階まで確かめたか

1. 三つの筋を分けて読む

筋組織には骨格筋・心筋・平滑筋がある。骨格筋と心筋には横縞状の模様である横紋があり、平滑筋にはない。骨格筋は通常、意思による運動に関わるが、心筋と平滑筋の活動を同じように直接意思で操作するわけではない。横紋の有無と意思による調節は別の分類なので、横紋があるだけで骨格筋とは決められない。ここからは正常な骨格筋の収縮を読む。骨格筋でCa²⁺がトロポニンに結合するしくみを、そのまま平滑筋など全ての筋へ当てはめない。

2. 一本の筋線維は一個の細胞

筋全体は多数の筋線維を含む。典型的な成熟骨格筋の筋線維は、細長く伸びた一個の細胞で、多くの核を持つ。その細胞の中に並ぶ細い束が筋原線維で、一本の筋線維に多数ある。筋原線維の長さに沿って、同じ基本構造の筋節が繰り返し連なる。筋全体の中に筋線維、その中に筋原線維、筋原線維の長さに沿って筋節という順で、大きさと配置を分ける。筋原線維や筋節を、それぞれ独立した筋細胞とは呼ばない。

3. 筋節の部品と境界

筋節はZ線から隣のZ線までの区間で、サルコメアともいう。その中にある細いフィラメントの主成分はアクチン、太いフィラメントの主成分はミオシンである。フィラメントは細長いタンパク質の構造で、細胞ではない。細いフィラメントはZ線に結び付き、太いフィラメントと重なる部分を持つ。ミオシンの頭部がアクチンと相互作用して力を生むときの結合を、架橋と呼ぶ。

筋の中を拡大

上は筋全体を外側の丸みある輪郭で示し、中に多数の平行な筋線維を描く。その一本を濃い輪郭で選び、破線の拡大矢印で中央の筋線維へ対応させる。中央は一つの細長い細胞で、外周近くに複数の核、内部に複数の筋原線維がある。筋線維と筋原線維を同じ細胞の名称にしない。一本の筋原線維を選び、次の拡大矢印で下の筋原線維へ対応させる。下の筋原線維にはZ線が繰り返して並び、隣り合うZ線間を括弧で筋節と示す。筋節は直列に連なる区間で、別の細胞が並ぶ図ではない。段ごとの大きさは拡大模式で、実寸比ではない。
典型的な成熟骨格筋を、順に拡大した模式です。筋全体に多数の筋線維があり、一つの筋線維は複数の核を持つ一個の細胞です。その中の筋原線維には筋節が連なります。破線の矢印は拡大する対応で、物質の流れや寸法比ではありません。

4. 部品の長さと全体の短縮

筋節が短くなる滑走の模型では、細いフィラメントと太いフィラメント自体の長さはほぼ保たれ、互いの位置が変わる。Z線の間隔が狭まり、重なりが増える。短くなった区間と、その中の部品の長さを同じものとして読まない。力を発生していても、外からの負荷や固定条件によって筋全体の長さが変わらない場合もある。滑走による短縮の記録を、全ての力発生が必ず短縮するという意味には広げない。

部品は縮まず滑る

前後で同じ長さの薄いアクチンの線と太いミオシンの帯を描く。前は左右のZ線の間が広く、中央のミオシンとアクチンとの重なりは両側で小さい。後は左Z線とそこから伸びるアクチンが右へ、右Z線とそこから伸びるアクチンが左へ相対移動し、Z線の間が短くなる。中央のミオシンの帯は位置、長さ、太さが前後不変で、アクチン二本の長さと太さも前後不変である。重なり区間の点模様は前より後が長い。図内でZ線の位置を直接示し、部品の長さは同じ、重なる区間が広がると明示する。点模様は重なる区間の目印で、ミオシン頭部の個数や力の比率ではない。これは一つの筋節が短縮する場合の比較模式で、全ての筋節の同時同率短縮、全筋の短縮、力の比率は示さない。
同じ筋節が短くなる前後の模型で、前後は同じ縮尺です。各フィラメントの長さと太さは変えず、点模様で示す重なる区間が広がります。点の数は頭部の個数や力の比率ではありません。矢印は相対的な滑りです。全ての能動的収縮が筋全体の短縮を伴う意味ではありません。

5. 神経から筋へ渡す場所

運動ニューロンは筋へ運動の情報を伝える神経細胞で、骨格筋との連絡部位を神経筋接合部という。活動電位が神経の終末へ到着すると、終末の電位依存性Ca²⁺チャネルが開き、細胞外液から終末内へCa²⁺が入る。Ca²⁺はカルシウムイオンで、この流入が小胞からのアセチルコリン放出を促す。アセチルコリン(ACh)は、ここで神経から筋へ情報を渡す伝達物質である。神経終末と筋細胞の間には細胞外の間隙があり、二つの細胞質は一続きではない。

6. 終板の局所変化と筋の活動電位

神経に向き合う筋側の膜の領域を終板という。AChが筋側のニコチン性ACh受容体へ結合すると、受容体のイオン通路が開き、通常の条件では局所的な脱分極である終板電位が生じる。終板電位は大きさが変わり得る局所の変化で、筋の活動電位そのものではない。周囲の筋膜が発火できる状態で、この入力が開始に必要な閾値へ達すると筋の活動電位が生じる。膜の外側でのAChの結合から情報が伝わるので、ACh分子が筋の内部や筋節まで進むことを必要とする説明ではない。

神経から筋への連絡

上の神経終末と下の筋線維は別の細胞で、間には細胞外のすき間がある。神経の活動電位到着は破線矢印、細胞外から神経終末内へのカルシウム流入は実線矢印で示す。神経終末内の小胞と膜に融合する小胞を描き、内容物のアセチルコリンだけが細胞外のすき間へ放出され、下の筋側受容体の外側の結合部へ接触する。小胞全体が筋へ移動したり、伝達物質が筋の内部へそのまま入る矢印ではない。筋の受容体は膜をまたぐが、内側の線に物質矢印頭は付けない。そこから局所の終板電位、閾値などの条件が整ったときの筋の活動電位という別の段階を破線でつなぐ。神経終末に入ったカルシウムを筋へ渡す矢印はなく、筋の内部の別のカルシウム放出はT管と筋小胞体の別図で扱う。
典型的な正常骨格筋の神経筋接合部です。神経終末へは外液からCaが入り、アセチルコリンは筋の受容体の外側に結合します。局所の終板電位と、条件が整った後の筋の活動電位を別段階で示します。実線の矢印は物質、破線は電気の連絡です。分子の大きさや実際の間隔は省略・拡大しています。

7. 表面の電位変化を奥へ伝える

筋の活動電位は筋細胞表面の膜を伝わり、横行小管(T管)の膜にも伝わる。T管は細胞膜が内部へ入り込んだ構造で、その内腔は細胞外液につながる。これに対し、筋小胞体(SR)は筋細胞の中にある膜で囲まれた区画で、内腔にCa²⁺を蓄える。T管の内腔とSRの内腔は別の区画である。典型的な正常骨格筋では、T管の膜電位の変化に連なるしくみにより、SRのCa²⁺放出通路が開き、Ca²⁺がSR内腔から筋の細胞質へ移る。電気的な連絡とCa²⁺の移動を分けて追う。

8. Ca²⁺でも出発点が違う

神経終末で放出を促すCa²⁺は、神経の外液から神経終末内へ入る。一方、筋の収縮に向けて放出されるCa²⁺は、筋のSR内腔から筋の細胞質へ出る。同じイオン名でも、細胞・境界・出発点と行き先が違う。神経に入った一つのCa²⁺が、そのまま筋へ渡り筋節まで走るという経路ではない。神経のACh放出や筋膜の活動電位までを観測しても、未観測のSRからの放出や、その後の架橋の力を全て確認したとはいえない。

9. 新しい刺激が止まることと回収

間隙のAChはアセチルコリンエステラーゼという酵素により分解され、筋側への刺激が終わる。刺激の終了、筋の活動電位の終了、SRからの新たなCa²⁺放出の停止は、既に筋の細胞質にあるCa²⁺が戻り終わったこととは別である。Ca²⁺の回収には別の輸送が必要になる。情報の到着が終わった時点と、細胞内で応答を終える時点を分けて読む。

10. Ca²⁺が相互作用を許す

骨格筋では、筋の細胞質に増えたCa²⁺が薄いフィラメント側のトロポニンへ結合する。これによりトロポミオシンの位置が変わり、アクチンとミオシンが相互作用しやすくなる。Ca²⁺は相互作用を調節する側で、頭部の各段階に必要なATPを置き換えるものではない。Ca²⁺の条件と、ミオシン頭部のATPを使う過程がそろって、正常な周期が進む。

Caで薄い側が変わる

枠内の同じ位置にあるアクチンの丸の列、同じ長さのトロポミオシンの帯、トロポニンを表す三角、同じ準備されたミオシン頭部を前後で比べる。前では帯が頭部と向き合うアクチンの結合部位側を覆い、頭部の相互作用をしにくくする。後では筋の細胞質のカルシウムを表す一つの丸がトロポニンの三角に接触しており、帯の位置が変わって頭部と向き合う結合部位を露出する。同じ頭部がアクチンに触れるようになり、相互作用しやすい状態を示す。図内でトロポニン、トロポミオシン、アクチンを記号と対応付ける。帯の上下は薄いフィラメント周りの位置変化を見せる投影模式で、帯や分子の実寸移動距離ではない。頭部のATP条件は前後同じと図内に明示し、CaがATPを供給したり頭部へ直接エネルギーを渡す矢印を描かない。Ca放出やATP周期の全過程は他の図と本文で扱う。
正常な骨格筋の薄いフィラメント側を、同じ頭部のATP条件を保って比べる模式です。筋細胞質のCaがトロポニンへ結合すると、トロポミオシンの位置が変わり相互作用しやすくなります。帯の上下は位置変化を見せる投影で、実際の寸法や分子の移動距離ではありません。Caを頭部のエネルギー源にしません。

11. 架橋は結合と離脱を繰り返す

ATPは細胞のエネルギーの受渡しに関わる分子である。アクチンへ強く結合したミオシン頭部には、新しいATPが結合すると離脱が起きる。離れた頭部で、そのATPを水との反応で分解する加水分解が次の力発生へ向けた準備に関わる。薄いフィラメント側の条件が整うと、準備された頭部が再びアクチンへ結合し、力を発生する過程へ進む。その後、新しいATPが結合して再び離れる。この一周の中で、ATPの結合による離脱と、加水分解による準備と、再結合後の力発生を入れ替えない。ATPの結合だけが、直ちに引く動作そのものになるわけではない。

同じ頭部の一周

上に、Caによる薄いフィラメント側の条件が整うことを示す条件枠を置く。四つの縦のコマでは、丸が連なったアクチンと、その下の同じミオシン頭部・軸の関係を追う。第一コマは頭部がアクチンへ結合し力を生む段階で、頭部の相対的な向きの変化とアクチンの相対滑走を示す。第二コマは新しいATPが頭部へ結合するとアクチンから離れる段階。第三コマは離れた頭部でATPが加水分解され、向きが変わり次の力発生に向けて準備される段階で、まだ再結合していない。第四コマは薄い側の条件が整ったもとで準備された頭部が再結合する段階。外側の一周矢印で第一コマの力を生む段階へ戻る。ATPの結合を即座の引き動作にせず、Caを頭部の代替エネルギー源にしない。薄い側の詳細な調節分子やPi/ADPの時刻は省略し、一つの頭部の条件付き周期の模式である。
薄いフィラメント側が相互作用できる条件を保った、一つのミオシン頭部の周期模型です。力を生む結合、新しいATPによる離脱、加水分解による準備、再結合を別の絵で追います。Caによる薄い側の調節は頭部のエネルギー利用とは別です。矢印は段階や相対滑走を示し、実際の寸法・同時性・反応速度は表しません。

12. 弛緩にもATPが関わる

筋の細胞質にあるCa²⁺は、ATPを使う回収ポンプによってSR内腔へ戻る。細胞質のCa²⁺濃度が低下すると、薄いフィラメント側の調節が休止側へ戻り、力を生む相互作用が減る。筋が能動的な力を弱めていく弛緩にもATPが関わる。ATPを使ったという記録だけで、必ず力が増したと判断しない。SRからの新たな放出が止まっても、既存のCa²⁺の回収を省けるわけではない。

T管と別のCaの袋

典型的な正常骨格筋の筋線維を切った模式。上の細胞外の液体から続く白いT管腔が、筋の膜のU字の陥入の中へ深く続く。T管は筋の細胞膜で囲まれた外液側の通路で、緑色の筋の細胞質ではない。右の筋小胞体は独立した閉じた袋で、T管腔との開通は描かない。筋の活動電位が筋の表面からT管の膜へ伝わる破線と、その電位変化から放出へ連なる関係を袋側へ向けて示す。図内も電気と連関のラベルを分け、後者を活動電位が筋小胞体膜を伝導する道としない。筋小胞体内のカルシウムが袋の内腔から膜を越える下向き実線矢印で筋の細胞質へ放出される。これは神経筋接合部の図で示す細胞外から神経終末内へ入るカルシウムと出発・到着が違う。下の別場面は筋の細胞質のカルシウムがATPを使う回収ポンプを介して筋小胞体へ戻る方向を示す。回収ポンプは袋の膜上に位置し、図内の名称、輪郭とATP使用の表示で区別し、回収による細胞質Ca低下と調節の休止側への戻りを示す。放出停止と既に出たカルシウムの回収は別過程で、実際の寸法や全結合タンパク質は示さない。
筋線維の膜が内側へ入り込むT管の内腔は外液へつながります。筋小胞体はそれと開通しない別の袋です。上は電位変化に連なるCa放出、下はATPを使う回収を示す別の場面です。破線は膜の電気の連絡と放出への連関で、筋小胞体を活動電位が走る意味ではありません。実線矢印はCa移動で、配置と量は模式です。放出が止まるだけで回収が済む意味ではありません。

13. 使うATPと補充するATP

ATPを分解して使うことと、ATPを再生成して補充することは別である。最初にあるATPの量が有限なら、使い続けるには補充も関わる。グルコースや脂肪酸はエネルギーの材料になる栄養物質だが、その分子自体をATPとして数えるわけではない。ATPを作る経路はミトコンドリア内だけでなく、細胞質基質にもある。ここでは特定の経路の全反応や消費個数を暗記するのでなく、使用と再生成の役割を分ける。

14. 電位の波と力の波

一回の有効な刺激に応じて、機械的な力が上がって下がる応答を単収縮という。筋膜の活動電位は電位差の記録で、単収縮は力の記録である。通常の骨格筋では、活動電位とその不応期は、この機械的な力の応答より短い。不応期は同じ膜が再発火しにくい、またはできない期間を指す。必要なチャネルが回復すれば、先の力が残るうちに次の活動電位が起こり得る。まだ回復していない膜を、任意に再発火させられる意味ではない。時刻と単位を確かめ、短い電位の記録と長い力の記録を別々に読む。

15. 運動単位と参加する数

通常の力を生む骨格筋線維を外錘筋線維という。一個のα運動ニューロンと、それが支配する全ての外錘筋線維の組合せが運動単位である。α運動ニューロンは、これらの筋線維を支配する運動ニューロンの一種を指す。一つの筋全体には複数の運動単位がある。新しい運動単位を活動に加えることを動員という。同じ単位が単位時間に発火する回数である頻度や、一個の活動電位の大きさとは別の変化になる。

16. 同じ参加者でも時間で力が重なる

同じ筋線維群、同じ一回の力応答、同じ動員数を比べると、十分な弛緩の前に次の有効な刺激が来れば、残る力に次の応答が加わり得る。これが機械的な力の時間的加重である。ニューロンの局所電位の加重とは、記録する量が違う。力が大きいことから、一個の活動電位のピークが高くなった、参加する運動単位が増えたと決められない。力の応答には限界もあるので、頻度を上げれば無条件・無制限に力が増えるという則ではない。

電位と力は別の記録

上は二回の活動電位を電位の縦軸と時間の横軸に描く。同じ高さの二つの細い波形はそれぞれ元の電位へ戻り、二回目は膜が回復した後という模型条件を図内に示す。下は力の別の縦軸と、上と対応した同じ時間窓で、一回目と二回目それぞれの単発の力応答を破線と点線で描く。それぞれの力は電位波形より長く続き、最初の力が完全に戻る前に次の応答が生じている。太い実線はこの模型で重なった力を示し、活動電位の振幅が増えたり活動電位同士が融合した波形にしない。薄い縦の対応線は上下の時刻を合わせるためで、物質の移動や縦軸の換算ではない。個体の刺激間隔・不応期の数値、最大力、無限の頻度増大は示さない。
同じ筋線維群・動員数と同じ単発の力応答を保った模式です。横軸は上下とも同じ時間窓ですが、上の縦軸は膜電位、下は力です。膜が次の発火に必要な状態へ回復した後でも、前の力の応答が残れば力は重なり得ます。波形と間隔は説明用で、正常値や力の固定比率ではありません。

動員と頻度を分ける

上の前と中央の後は同じ二つの運動単位模型を同じ場所に描く。左の①は一個の運動ニューロンを表す円から二本の線維へ支配線が分かれ、右の②も別の一個の運動ニューロンからその二本の線維へ線が分かれる。線維は上下で同じ所属を保ち、繰り返し描いた線維を別単位に数えない。前は①だけが太い二重の活動枠、後は①に加えて②にも活動枠が現れる。番号①・②が同じ運動単位を識別し、二重の枠が活動状態を示す。下には同じ①だけの同じ時間窓・同じ高さの発火記録を二段置き、少ない回数と多い回数を比較する。単位の追加はなく、発火頻度の変化として動員と区別する。各発火に必要な回復がある指定模型で、頻度を無限に上げる能力や活動電位振幅・力の比例値は示さない。
二つの運動単位を置く支配模型で、各単位は一個のα運動ニューロンと、その支配する全ての筋線維からなります。上下で同じ支配関係を保ち、②を加える動員を示します。下は同じ①だけの頻度比較で、動員とは別の変化です。線維数・頻度・力の比率は実筋の固定値ではありません。

17. 力が出ても長さは一通りではない

収縮は、筋が能動的な力を生むことを含む。筋全体の長さを一定に保って力を生むのが等尺性収縮、短くなりながら力を生むのが短縮性収縮、外力に抵抗して力を生みながら伸びるのが伸張性収縮である。筋が伸びたという長さの記録だけで、活動のない受動的な伸びと同じとは決められない。逆に、能動的な活動がないと確認された筋にも、弾性による受動的な力が生じ得る。長さと能動的な活動をそれぞれ確かめる。

18. 全体が一定でも内部は別

筋全体の長さが一定という測定は、全ての内部構造が動いていないという測定ではない。筋節の配置や、筋の力を骨へ伝える腱などの弾性部分が変化して、全体の長さが保たれることもある。全体の条件と、各部品の記録を分ける。等尺性という言葉だけから、全ての筋節、筋線維、腱の長さがそれぞれ一切変わらないとは保証しない。

19. どの段階まで確かめたか

神経終末への到着、ACh放出、終板電位、筋の活動電位、筋の細胞質Ca²⁺、架橋の相互作用、外に示される力は、連なる別々の段階である。一段階の成功から、未記録の全ての段階の成功を付け足さない。力の大小や短縮だけで、未観測のCa²⁺量、ATPの状態、原因を一つへ決めることもできない。比べる筋線維群、参加数、刺激間隔、測定する長さや量をそろえ、記録されたことと未確認のことを分ける。

用語を確かめる

横紋
骨格筋と心筋に見られる横縞状の模様。横紋の有無と意思による調節は別の分類。
筋線維
典型的な成熟骨格筋では、細長い一個の多核の細胞。筋全体や、その中の筋原線維とは別。
筋原線維
筋線維内に多数ある細い束。長さに沿って筋節が繰り返す。
筋節(サルコメア)
筋原線維のZ線から隣のZ線までの区間。
フィラメント
筋節で相互作用する細長いタンパク質構造。細い側の主成分はアクチン、太い側はミオシン。
架橋
筋の力発生に関わる、ミオシン頭部とアクチンの相互作用による結合。
滑走
筋節の短縮時に、ほぼ同じ長さの細い/太いフィラメントが相対的に位置を変えること。
神経筋接合部
運動ニューロンと骨格筋の連絡部位。二つの細胞質が連続する場所ではない。
アセチルコリン(ACh)
正常な骨格筋の神経筋接合部で、神経終末から筋へ情報を渡す伝達物質。
終板
神経終末に向き合う筋側の膜の領域。
終板電位
正常な骨格筋の終板でACh受容体の作用により生じる、局所の段階的な脱分極。筋の活動電位とは別。
ニコチン性ACh受容体
筋の終板でAChの結合によりイオン通路を開く受容体。
横行小管(T管)
筋の細胞膜が内部へ入り込んだ構造。内腔は細胞外液につながり、筋小胞体内腔とは別の区画。
筋小胞体(SR)
筋細胞内の膜で囲まれた区画。内腔へCa²⁺を蓄え、細胞質への放出と回収に関わる。
Ca²⁺
カルシウムイオン。神経終末への外液からの流入と、筋のSRから細胞質への放出は別の移動。
トロポニン
骨格筋の薄いフィラメント側でCa²⁺を受け、相互作用の調節に関わるタンパク質。
トロポミオシン
薄いフィラメント側にあり、位置の変化がアクチンとミオシンの相互作用の調節に関わるタンパク質。
加水分解
水との反応による分解。筋の架橋周期ではATPの加水分解が次の力発生へ向けた頭部の準備に関わる。
弛緩
筋が能動的な力を弱めていくこと。Ca²⁺の回収などにATPも関わる。
単収縮
一回の有効な刺激に応じた、機械的な力の上昇・低下の応答。活動電位の電位記録とは別。
不応期
活動電位の後などに、同じ膜が再発火しにくい、またはできない期間。
運動単位
一個のα運動ニューロンと、それが支配する全ての外錘筋線維の組合せ。
外錘筋線維
通常の力を生む骨格筋線維。
動員
新しい運動単位を活動に加えること。同じ単位の発火頻度増加とは別。
力の時間的加重
十分な弛緩の前に次の有効な刺激が来て、残る力に次の機械的な応答が加わること。
等尺性収縮
筋全体の長さを一定に保ちながら能動的な力を生むこと。全内部構造の不変までは保証しない。
短縮性収縮
短くなりながら能動的な力を生むこと。
伸張性収縮
外力に抵抗しながら伸び、能動的な力を生むこと。
受動的な力
能動的な力発生と分けた、弾性などによる力。