総量が同じでも配分は変わる

二つの戻り道だけを扱う模型を考えます。勾配と毎秒100単位の供給を保ち、AではATP合成酵素へ80、UCP1へ20、Bではそれぞれ40と60が戻ります。ATP合成酵素経由の一単位当たりATP生成量が同じなら、その経路のATP生成速度の比は40÷80=0.5です。UCP1経由ではATPを合成せず、一単位当たり同じエネルギーを直接熱として散逸する条件なので、その経路の割合は20/100=0.2から60/100=0.6へ増えます。この割合は模型でUCP1を経由する部分であり、細胞全体の総熱量の割合ではありません。Bにも40単位のATP合成経路が残ります。単位は比較のための任意単位で、一単位が実際のH+一個やATP一個を表すわけではありません。

褐色脂肪のH+の二経路と指定模型

上の膜間腔から、内膜にあるATP合成酵素とUCP1へ別々にH+の矢印が入り、両経路から下のマトリックス側へ戻る。左はATP合成、右は熱への散逸。下の模型表はAがATP合成酵素80・UCP1が20、Bが40・60で、各100単位/秒。ATP経路量の比40/80=0.5、UCP1の割合0.2から0.6。
上は褐色脂肪細胞のミトコンドリア内膜の一部を示す模式図です。H+は膜間腔側からマトリックス側へ戻ります。ATP合成酵素を通る経路と、UCP1を経由して直接熱として散逸する経路を分けます。ATP合成経路や後のATP利用からも熱は生じるので、右の経路を全熱産生と同じにはしません。下は本文の勾配・供給・経路ごとの条件を保った二経路だけの模型です。数は任意単位/秒で、実H+個数やH+対ATPの化学量論ではありません。UCP1割合は総戻り量のうちその経路を通る部分で、細胞全体の総熱量の割合ではありません。