組織液を戻すリンパの基盤
本文の目次
1. 区画と経路を先に分ける
血管の中の液体成分を血漿、血管の外で組織の細胞間にある液を間質液(組織液)といいます。間質液の一部がリンパ管に入るとリンパ液と呼ばれ、リンパ管を進んで静脈へ戻ります。液の名前は場所や経路を表します。血管壁を越える移動、リンパ管に入る移動、静脈へ合流する移動は、それぞれ別の境界を越える段階です。
2. 最初の入口は、薄い内皮の壁
組織から液を受け入れる細いリンパ管を初期リンパ管といいます。末端が閉じた盲端をもつ部分があり、つながり合って網を作ります。組織に大きな管口が開いているという意味ではありません。壁は内皮という薄い細胞の層で、隣り合う細胞の一部が重なっています。この重なりは、液が入る入口で小さな弁のように働きます。後で出てくる収集リンパ管の、管の内側にある弁とは区別します。
3. 入口の開閉は、両側の圧を比べる
初期リンパ管の壁の一部を拡大して考えます。周囲の間質側の圧が管腔側より高いと、内皮の重なりが内側へ開いて、液が組織から管へ入りやすくなります。管腔側の圧が間質側より高いと、重なりが閉じる側へ押され、逆向きの流れを抑えます。これは同じ入口の両側の局所的な圧の比較です。血圧の値だけで入口の向きを決めたり、閉じた瞬間にあらゆる物質の移動が完全にゼロになるとしたりはしません。
初期リンパ管の内皮の入口
4. 管の壁が押す働きと、弁の働き
初期リンパ管から集められたリンパを運ぶ収集リンパ管には、壁に平滑筋があり、管の内側に弁があります。平滑筋は血管などの壁にもある筋で、体の運動に関わる骨格筋とは異なります。壁の平滑筋が収縮すると管内の圧が変わり、弁の間にある区間からリンパを送り出す助けになります。弁は圧差に応じて開閉し、逆流を抑えます。満ちる段階と送り出す段階では、前後の区間との圧の関係が違います。周囲の骨格筋の圧迫や呼吸に伴う圧変化も流れを助けるので、全てのリンパ流を壁の収縮だけに帰しません。
収集リンパ管の壁と内腔弁
5. 回収されるのは、水だけではない
血管壁を越えて間質へ移動する水や溶質があり、血漿のタンパク質の一部も間質へ出ます。どの物質がどの程度移動するかは、血管壁や圧などの条件に左右されます。全ての血漿タンパク質が一度に間質へ移るわけではありません。リンパ系は間質の液に加えて、そこにあるタンパク質の回収にも関わります。タンパク質を回収するために、必ずアミノ酸まで分解してから運ぶ必要はありません。
6. 戻る道筋と、量の記録は別
回収された液やタンパク質は、初期リンパ管から収集リンパ管などを進み、最終的に静脈へ合流します。これは血管の外から循環へ戻る道筋であり、初めから静脈内にあった液が進む経路とは違います。管内を進むタンパク質と、途中の細胞が新しく作るタンパク質も別です。この経路があることだけから、一定時間の回収量やリンパ液のタンパク質濃度は決まりません。
用語を確かめる
- 血漿
- 血管内を流れる血液の液体成分。血球の内部とは別。
- 間質液
- 組織の細胞間にある液。組織液ともいう。
- リンパ液
- リンパ管の中に入った液。
- 初期リンパ管
- 組織から液を最初に受け入れる、薄い内皮の壁をもつ細いリンパ管。
- 盲端
- 管の末端が閉じていること。液は大きな開口ではなく、壁の入口から入る。
- 内皮
- 血管やリンパ管の内面を作る、薄い細胞の層。
- 管腔
- 管の内側にある空間。管の壁や周囲の間質とは別。
- 局所の圧差
- 同じ場所で、組織側と管腔側など二つの側の圧が異なること。
- 収集リンパ管
- 初期リンパ管から集めたリンパを運び、壁の平滑筋と管内の弁をもつリンパ管。
- 平滑筋
- 血管や消化管などの壁にあり、自律的な収縮にも関わる筋の型。骨格筋とは別。
- 内腔の弁
- 収集リンパ管の管の内側にある、圧差に応じた開閉で逆流を抑える構造。初期リンパ管の壁の重なりとは別。
- 濾出
- ここでは、血管壁を越えて液が血管の外へ移動すること。
- 回収
- ここでは、間質の液やタンパク質をリンパ管へ受け入れ、循環へ戻すこと。
- タンパク質
- アミノ酸がつながった分子。血漿や間質の液中にも存在する。