数量・単位の読み方
本文の目次
- 数値に単位を添える
- ミリと10の累乗
- 溶液の総量と濃度
- 薄めるときに保たれる量
- 混ぜるときは総量から考える
- 割合には対応する全体がある
- ポイント差と基準に対する変化
- 量と率を時間でつなぐ
- 異なる長さの区間を合計する
- 出入りと残る量
- 正味の差と各方向の移動
- molは数に対応する量
- 質量との間をモル質量で換算する
- 単位と比較の条件を点検する
- 表示の細かさと丸め
- 保証された範囲内で比較する
1. 数値に単位を添える
数値は単位と一組で量を表す。g(グラム)やmg(ミリグラム)は質量、L(リットル)やmL(ミリリットル)は体積の単位である。mol(モル)は、指定した分子や原子などの数に対応する物質量の単位で、質量の単位ではない。0.5 gと0.5 mgのように、同じ数値でも単位が違えば同じ量ではない。
2. ミリと10の累乗
ミリは元の単位の1000分の1を表す。1 g=1000 mg、1 L=1000 mL、1 mol=1000 mmolである。10⁻³は1/1000=0.001を表すので、2.5×10⁻³ Lは0.0025 Lである。指数の負号は量そのものを負にしない。単位換算では量は変わらず、数値と表す単位の組合せが変わる。
3. 溶液の総量と濃度
溶液は、溶媒の中に物質が溶けた全体を指す。一様な溶液の質量濃度は、溶けた物質の質量を最終溶液の全体積で割った値で、例えばmg/mLと表す。分母は使い始めた溶媒だけの体積ではない。濃度に対応する溶液体積を掛ければ、その体積に含まれる物質の総質量となる。尿などの名称が付いた液も、ここでの確認は与えられた質量と体積の比だけである。
4. 薄めるときに保たれる量
溶けた物質を追加も取り去りもせず、反応や損失もないまま溶媒を加えると、その物質の総質量は保たれる。最終溶液体積が増えるので、一体積当たりの量である濃度は下がる。分母は最終体積で、加えた溶媒の体積だけではない。一様な液の一部を取れば、液と同じ濃度の物質も一緒に出るため、液量だけ減らして物質全量を残すことはしない。
5. 混ぜるときは総量から考える
同じ物質の二つの溶液を、物質の反応・損失なしで混ぜるときは、それぞれの濃度×体積から物質の量を求めて足す。その合計を混合後の最終溶液体積で割る。体積は混ぜれば常に厳密加算できるとは一般化せず、最終体積の記録や加算可能という条件を使う。異なる体積の液の濃度を単純平均する方法とは違う。
6. 割合には対応する全体がある
割合は部分÷対応する全体で、百分率はその100倍に%を付ける。分母の全体は、何を数えた集団・時点なのかもそろえる。同じ部分の人数でも全体が違えば割合は違う。全体が0なら、部分÷全体という式で割合は定まらない。標本抽出率とは、ある集団から選んだ人数÷その集団の人数という割合である。
7. ポイント差と基準に対する変化
20%から25%になったとき、差は5百分率ポイントである。一方、元の20%に対する相対増加は(25−20)/20=0.25=25%である。増加・減少の向きと、どちらを基準にしたかを確認する。前が0%ならポイント差は計算できても、前を分母にする通常の相対変化の式は使えない。
8. 量と率を時間でつなぐ
ある期間の総量÷その期間の長さが平均の率で、mg/分などと表す。一定の率なら、率×経過時間から総量を求められる。1時間は60分で、120 mg/時間は2 mg/分である。変動する率の最後の瞬間だけの値では、全期間の総量は決まらない。数量の例でいう一回拍出量SVは一拍当たりの体積、心拍数HRは一分当たりの拍数、心拍出量COは一分当たりの体積である。SV×HRでは拍の単位が対応して体積/分となる。
9. 異なる長さの区間を合計する
各区間で率が一定なら、区間の量は率×区間の長さである。全期間の総量は各区間の量を足し、平均率はその総量÷全時間とする。区間の長さが違うと、二つの率を単純平均しても全期間の平均とは限らない。平均で使う重みは、何の合計から平均を作るかによって決まる。
10. 出入りと残る量
同じ物質・同期間・同単位の流入と流出を対応させる。内部の生成・消費や他の出入りがない容器なら、量の変化は流入−流出で、終了時の量は初期量+その変化である。内部生成や消費がある模型では、内部生成量を足し、内部消費量を引く。終了時の量は初期量+流入−流出+内部生成−内部消費で、無条件に流入−流出だけとしない。後半の流出が不明なのに、前半だけの流出を一時間全体へ使わない。
11. 正味の差と各方向の移動
内部の生成・消費やほかの出入りがない模型では、正味変化は入った量から出た量を引いた差である。5 mg入り5 mg出れば変化は0だが、両方向の移動はある。何も入らず出ない場合も差は0なので、正味だけでは各方向の総移動量までは決まらない。収支の記録に計上漏れや余分な計上があれば、含めるべき量と含めない量を直してから差を求める。窒素はこの例で追っている同じ物質の名称で、代謝の機序を使う計算ではない。
12. molは数に対応する量
1 molは、指定した粒子6.02214076×10²³個に対応する物質量である。原子・分子・イオンなど何を数えるかを指定する。同じmol数なら指定した粒子数は同じだが、一粒の質量は物質によって違う。molからmmolへの換算は物質量の表し方を変えるだけで、gやmgという質量へは直らない。物質量濃度は物質量÷溶液体積で、例えばmmol/Lと表す。
13. 質量との間をモル質量で換算する
指定した物質1 mol当たりの質量をモル質量Mという。Mをg/mol、物質量nをmolで表せば質量m=M×nはgになる。逆にn=m/Mである。異なる物質にはそれぞれのモル質量を使う。モル質量が未提示なら、異なる物質のmgとmmolを数値だけで同じに扱ったり比較したりしない。
14. 単位と比較の条件を点検する
mg/mL×mLはmg、mg/分×分もmgとなる。式の各量を対応する換算にそろえ、目的量の単位が残るかを確かめる。mgとmLのように異なる種類の量を足せば質量になるわけではない。大小を比べるときは単位だけでなく、対象・定義・観察期間など必要な条件もそろえる。条件がないときは、与えられた数値を並べるだけで結論を確定しない。
15. 表示の細かさと丸め
表示の小数桁が多いことは、真の値への近さを保証しない。表示の刻み、繰り返し測ったときのばらつき、参照値からのずれは別の情報である。丸め規則を決めると複数の元の値が同じ表示になり得る。非負値を0.1刻みに四捨五入する模型なら、0以上0.05未満が0.0となるので、表示0.0から元の値0とは断定できない。
16. 保証された範囲内で比較する
表示と真の値の差の絶対値が一定量以下と問題で保証された模型なら、その上限から可能な区間を作れる。二つの区間が重なれば、表示の大小だけで真の大小を固定できない。丸め表示や誤差の情報を越えた桁まで差を確定しない。現実の測定で示された不確かさは、真の値を必ず含む絶対上限だと無条件に読み替えない。
用語を確かめる
- 質量
- 物質の量を質量として表したもの。この単元ではgやmgで表し、体積や物質量と区別する。
- 体積
- 占める空間の量。この単元ではLやmLで表す。
- 物質量
- 指定した粒子数に対応する量。単位はmolであり、質量とは別の量である。
- ミリ
- 接頭語mで表し、元の単位の1000分の1を意味する。
- 指数
- 累乗の回数を表す数。10⁻³は10の3乗の逆数、0.001である。
- 溶媒
- 物質を溶かす側の成分。使い始めた溶媒の体積と最終溶液体積は区別する。
- 溶液
- 物質が溶媒の中に溶けた全体。
- 質量濃度
- 溶液に含まれる物質の質量を溶液体積で割った値。
- 割合
- 部分を対応する全体で割った値。分母0のときこの式の値は定まらない。
- 百分率
- 割合を100倍し、%で表した値。
- 百分率ポイント
- 二つの百分率の数値の差を表す単位。
- 相対変化
- 変化量を基準となる元の値で割った割合。基準0では通常の式は定まらない。
- 率
- この単元の量と時間の場面では、単位時間当たりの量。割合の意味の率とは分母を確かめて区別する。
- 平均率
- 期間内の総量を、その期間全体の時間で割った値。
- 正味変化
- 流入と流出などの増減を差し引いた変化。各方向の総移動とは別である。
- モル質量
- 指定した物質の1 mol当たりの質量。例えばg/molで表す。
- 一回拍出量
- ここでの数量例では一拍当たりに出る体積。心臓の機序を新しく学ぶことは求めず、問内の体積/拍として扱う。
- 心拍数
- 一分当たりの拍数。数量例では拍/分の率として使う。
- 丸め
- 決めた表示刻みへ数値をまとめる操作。異なる元値が同じ表示になり得る。
- 絶対値
- 正負の符号によらない0からの距離。差の絶対値0.5以下は、差が−0.5以上+0.5以下を表す。